また遠くから聞えるお寺の鐘の音色は、ある意味心のやすらぎを与えてくれる「ヒーリング・ミュージック」である。しかも鐘の音色は、その余韻を楽しむものなのである。連続的に鐘を突かれたんじゃ迷惑この上ない。実は自分は昔、各地のお寺の音色を集めた企画CDを買ったことがある。この鐘をつくタイミングや間隔は絶妙の「間」がある。つまり難しいのである。しかも突き方によっては音の遠達度も異なるし、また感じられる余韻もまったく異なるのである。例えばであるが、縁側を開け放し心地よい風が流れる初秋の夕暮れを想像して頂こう。オレンジ色に染まった座敷に座ってお茶を啜りながらゆっくりと聞く遠くの寺の「ゴォ~~~~ン」という鐘の音は、誰がどう考えたって極上で贅沢なひとときなのである。この情景を頭でイメージしただけでおそらくは気持ちが安らぐであろう。それを犬が紐をくわえてゴンゴンのべつ幕なしに突かれたんじゃあ、きっと周辺の住民は迷惑しているに違いない。この飼い主は、それでも自分の犬の鐘つきの方が面白いのであろうか? なんだか最近はペットに甘い世の中になっているような気がする。