「萬有の眞相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」。」 辞世の詩(うた)を残して華厳の滝に入水自殺を遂げた旧制一高の学生、藤村操は有名である。明治時代の話である。場所は華厳の滝であり新幹線車内と異なり、周囲に人はいない。入水後、遺体を引き上げる作業やらで警察関係者には迷惑をかけたのであろうが「巻き添え」で死んだ人はいない。同じ自殺でも根本的に周囲への迷惑度や社会へ与える影響は違うのである。ガソリンをかぶった後、周囲の乗客に「あなたも早く逃げなさい」と言ったそうである。周囲の人を巻き込みたくなかったら、あんなところで火をつける行為など最初からしないほうがいい。直前の精神状態が不安定であったことがうかがえるが、周囲の人を気遣うくらいの理性があるのであれば、火をつけるのは思いとどまってほしかった。それにしても死因は不確かではあるが、52歳の女性が巻き添えになったのが痛ましい。