一徳掛之割増を百姓不受合時、例に成る仕法を見るに、内
檢見立の坪も三歩舛一篗(ワク)入、又百姓見立ての坪も仕法同前
なり、此双方の例籾を双方の延畝込に掛渡し、其割を打
合せ是を二ツに割其一ツを定割と極る事、いかなる處に
正道ありてか、徳掛ハ毛上摺拂にして勾配ハ了簡米のか
ね合にて差引する法とあれハ、徳掛のからきハ内檢の所
為にもあらさるか、左はありなから見渡しにて究る割の
事なれハ、何れの所も一撫れ成るにもあらす、中にもか
らけたる所は、了簡米にハ氣を不當、只徳掛のからきを
恨る也、後にはいか程了簡の可貰哉も測りしられぬ事な
れハ、下情にてハことわりにあらすや、此意より例し
て、若は上るとも迚もかく情けなきにといとわぬ計の氣指に
て例をするも有と見えたり、此時におひて、内檢も人情
の有前なれハ、極たる割よりも可起増毛上之尤延畝ある
を見立る心何れあるへし、又上下を心得分ヶ正道なる内
檢ハ、中道の坪に究たく思ふ事ありといへとも、百姓ハ
又徳懸より可例田、中道なるにしてハ元毛上摺拂ひ見極た
る割増ゆへ、双方を撫しては見込み之割に可引入事を不
忍、心ならすせゝり廻り所謂せり例也、双方之舛場究以
の外之心行上下非分を顕して其間隙取ニも忌々敷有様な
り、禍はげより起る、元悪る工ミをなす故にてもあるへ
けれとも、猶上ハ法の正敷を備へて飽まて不教ハ、いか
に奸を防くとも止ミ果へき期あるまし、寶暦之比、歩下
米見積極之法に出たる例之仕法尤以道理あれとも、是も
又下に奸を生せハ拵も可成歟、此寶暦の例の仕法ハ内檢
見立中道之畝ニて三歩舛一篗切、此有籾を其坪の延畝と
もに掛割を究メ、次に百姓見立の坪内檢例之向寄ニて、
一反以上の坪を見立共、中の上中下毛三ヶ所ニ三歩舛三
篗切、此九歩之籾を撫、延畝ニ不拘籾之差引にて割を究
内檢例・百姓例双方之割を打合せ、是を又二ツに割其臺
ツを定割に究、延畝も上下双方に持合のかねに當り、正
道なる究めなり、此正法を崩し今田ふし(奉仕か)ハ幾、不當之例
しハ徳懸を辛くするゆへかくあらすしてハ難成、利非を
不論極たる法にてもあるへき歟、又ハ股を扮口に喰ふ小
人の御為つくかと疑ハれしも、又見返れハかく仁政の世
の中に、假にも左あるへきにハあらす、只下の奸に泥ミ
てうるわしき法の顕ハれさる物か、今三歩舛の株極内責
外責二方極、残る二方を行なうに篗入の仕法ある計ハ天
地神も照覧有へし、此良法に添て例の畝舛毛の究上下平
均にして、正道の筋あるへけれとも、諸人に渡る法なれ
ハ、一概の見込にて究る事難かるへし、其大概の正義に
よらハ左に顕す所のかねに、良智の人増補して法を立行
ハ、的當にあらすとも正道の輪は抜間敷歟、委敷僉議あ
りたし
一一村ニて延畝・中延畝又ハ有畝位此三ツを能糺し、撫合
の延畝を其村のかねに定、若三坪にて不正は三坪宛三通
りも可撫歟、又高免と下免の境を高に不寄、地味に不
寄、廣狭にて免の高下を極たる所も有へし、心を付吟味
して可定事
一例の坪は廣狭を不論、毛上も見立ても所柄も中道にして
其村の惣躰の毛上に可應と見えたるを参談して決定の
上、又其坪の内の上中下毛を三段に能見分ヶ、此處舛坪
ニ可當といふ篗場に印を立、爰にて用る法の舛を正道に
三篗入、此壹坪にて極るへし、坪數は前に顕す延ひかね
を本前の畝にかけ渡し、此出る所の延畝何程を二ツ割其
一ツを本前之畝に加へて、是に舛前の籾をかけ下見前之
籾を差引、割を極る時ハ延畝の籾上下に分ヶ持正道にし
て、下に奸をなす事なるまし、竿入のわつらひもなく閑(簡か)
易にして、今より道理あるへきか、其荒増を爰に顕スな
り、又三坪撫延かね之事、綿密なるにはあらされとも、
石詰の下見といふに執柄も有へきか、試之例ニも此法を
用ひて徳懸の割極ハ試の村も其精/\を盡し究る事、外
の村に同しかるへきなり
例目録
中道壹枚何番 何村
一田八畝拾貮歩 何 某
見立籾壹石八斗四升八合 反貮石壹斗
九歩例
有籾八升壹合 壹歩ニ付九合
延四拾四坪壹合
二ツ割貮拾貮坪五勺 撫延かね壹割七分五朱
惣坪數貮百七拾四坪五勺
此籾貮石四斗六升六合四勺五才
内
壹石八斗四升八合 村見立籾引
残て六斗壹升八合四勺五才
割ニ〆三割三歩四朱六厘五毛九弗