「ルポ餓死現場で生きる」石井光太
石井光太さん最新刊。
飢餓現場での詳細が語られる。
過去の著書と異なる点は、具体的な数字データが豊富なこと。
数字データ+豊富なエピソードで構成される。
いくつか文章を紹介する。
アフリカは欧米のNGOが多数入っているため、一部の国や地域では児童労働を規制する動きが盛んになっています。かつてケニアのコーヒーの産地にある村を訪れたとき、不思議なことに女の子が非常に少ないことがありました。村の人は次のように説明しました。
「数年前に、欧米のNGOがやってきてプランテーションから子どもを一掃したんだ。そのせいで、子どもは地元で働けなくなってしまった。それで仕方なく、他の町に家政婦として出稼ぎにいくことになった。それで若い女の子が減ってしまったんだよ」P57
かつて、エチオピアにある売春婦が集まるバーの従業員が次のようなことをはなしていました。
「少女売春婦は、田舎から出てきていきなり売春をはじめるわけじゃない。最初は家政婦として働くんだ。彼女たちはそこでひどい性的暴行を受けて逃げ出す。けど、そこから先の行き場所がなくなるだろ。貧しい田舎に帰るわけにもいかないし。よそで働いても同じように性行為を強要されるのがオチだ。そこで、いっそう体を売った方がマシだと考えて売春婦になることが多いんだよ」(P85)
アフリカ内戦構造について(P206)
たとえば、フランスがある国を植民地支配していたとします。フランスはその国にいたA民族に政治権力を与えて分割統治をしていました。1960年になり、フランスは民族同士のいがみ合いをさんざん煽った挙句、突如として自分の国の都合によりA民族に権力を与えたまま独立を許し、軍隊を引き上げてしましました。すると、これまでA民族に冷遇されていたB民族やC民族が「A民族の支配下に置かれるのは嫌だ。俺たちに支配権をよこせ」といいだします。A民族はそんなことを許せば自分たちの立場が危うくなることを承知していますので、彼らを武力で押さえ込みます。すると、B民族やC民族は武器を手に取り、A民族を政権の座から引き摺り下ろそうとし、内線が勃発します。簡単にいえば、これがアフリカ諸国で起きていた民族紛争の代表的な構造なのです。
以上、如何でしょうか?
私が1番インパクトを受けて、『救われない』と感じたのは、第6章『子供兵が見ている世界』、である。
書店で見かけたら、手にとって読んでみて。
【ネット上の紹介】
飢餓に瀕して、骨と皮だけになった栄養失調の子供たち。外国の貧困地域の象徴としてメディアに描かれる彼らも、ただ死を待っているわけではなく、日々を生き延びている。お腹がふくれた状態でサッカーをしたり、化粧をしたりしているのだ。ストリートチルドレンや子供兵だって恋愛をするし、結婚をするし、子供を生む。「餓死現場」にも人間としての日常生活はある。世界各地のスラムで彼らと寝食を共にした著者が、その体験をもとに、見過ごされてきた現実を克明に綴る。
[目次]
第1章 餓死現場での生き方;第2章 児童労働の裏側;第3章 無教養が生むもの、奪うもの;第4章 児童結婚という性生活;第5章 ストリートチルドレンの下克上;第6章 子供兵が見ている世界;第7章 なぜエイズは貧困国で広がるのか