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「ピエタ」大島真寿美

2011年05月24日 22時09分01秒 | 読書(小説/日本)

ピエタ
「ピエタ」大島真寿美

久しぶりに大島真寿美作品を読んだ。
大島真寿美作品の特徴は、家族や友情がテーマ、文章はあっさり系。
今回も、そのあたりは変わらず。

舞台は18世紀、ヴェネツィア、孤児を養育するピエタ慈善院。
そこでは、ヴィヴァルディが〈合奏・合唱の娘たち〉を指導。
この娘たちの友情、連帯、その周りの人々が描かれる。

感情もストーリーもおさえ気味演出。
登場人物のキャラクターの濃い影を表現せず、物語も静かに進行する。
(このあたり、好き嫌いが出るでしょうね・・・私も少しもの足りなく感じる)
大きな感情の振幅がないなぁ、このまま終了するのかな、と思っていたら・・・。
最後にガツンと来ました。
楽譜の謎が解ける、その瞬間がすばらしい。
感情が解放される。(P320-322)

ねえ、エミーリア、あれはなんという歌。
ずっと押し黙ったままだったヴェロニカが、わたしに訊ねた。
ああ、あれは・・・・・・すみません、名前はわからないのですが、あれは、ヴィヴァルディ先生がロドヴィーゴさんのために作られた歌なのだそうです。ロドヴィーゴさんしか知らない歌なのだそうですよ、と説明する。
そうなの?
ヴェロニカは納得がいかないという顔をして、ほんとうに?と訊ねた。
ほんとうもなにも、とわたしは言いかけてヴェロニカの異変に気づく。

このシーンのためにこの物語があったんですね。
いろいろ不満を感じながら読み進んできたけど、このシーンで全てが許される。
そのように、私は感じた。


PS
ピエタというと、ミケランジェロを思い出すでしょうが、
本作とは関係ないので、悪しからず。
ピエタ (ミケランジェロ)

【参考リンク】
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=80007180

【ネット上の紹介】
18世紀、爛熟の時を迎えた水の都ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で“合奏・合唱の娘たち”を指導していた。ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる―聖と俗、生と死、男と女、真実と虚構、絶望と希望、名声と孤独…あらゆる対比がたくみに溶け合った、“調和の霊感”。今最も注目すべき書き手が、史実を基に豊かに紡ぎだした傑作長編。