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「邪魔」奥田英朗

2011年05月08日 10時20分04秒 | 読書(小説/日本)


「邪魔」奥田英朗

奥田英朗さん、初期傑作。
「最悪」と同じ群像劇となっている。
それにしても、巧い。
ストーリー構築、キャラクター設定、詳細な描写とリアリティ、巧みな演出。
現代日本文壇のトップクラスの筆力、と思う。
『引き出し』の多さも抜群、である。
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」のようなユーモア小説。
「ガール」「マドンナ」のような軽妙なオフィス小説。
「サウスバウンド」型破りな父に翻弄される家族と少年を描く人生案内小説。
そして「最悪」「邪魔」のような急降下する群像劇。

特に巧いと感じるのは、心理的追い込み。
逼迫する状況から、登場人物をどんどん追い込んでいく。
そして、登場人物は突然「切れる」てとんでもない行動に出る。
このあたりの描写が実に巧い。
詳細な描写がリアリティを醸す。
強烈なベクトルで最終ページまで一気読み、である。

PS1
予想もつかないエンディング。もう、何というか・・・絶句。

PS2
本道とは関係ないけど、引っ掛かった個所がある。P125

「パートでも有給休暇はあるんですよ。六ヶ月、勤めれば」
「そうなんですか」
「そうです。給料がもらえて休めるんです。それに一年以上働いて年収90万円以上の見込みがあれば、雇用保険にだって入れます」


これは、現状とは異なっている。
以下を参考にしてみて。
雇用保険の適用について
雇用保険制度(厚生労働省ホームページ)
http://osaka-rodo.go.jp/(大阪労働局)

【ネット上の紹介】
及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供二人と東京郊外の建売り住宅に住む。スーパーのパート歴一年。平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。日常に潜む悪夢、やりきれない思いを疾走するドラマに織りこんだ傑作。

参考図書・・・こちらも楽しめる。