【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「ヒートアイランド」垣根涼介(文春文庫)

2010年06月15日 22時28分34秒 | 読書(小説/日本)


「ヒートアイランド」垣根涼介(文春文庫)

日曜日にほとんど読み終わっていたんだけど、都合でアップが遅くなった。
(週末雨だと、読書がすすむ)

垣根涼介さんには、現在2つのシリーズがある。
一つは、「君たちに明日はない」シリーズ
リストラ面接官を主人公に、リストラされる会社と社員を克明に描く・・・これは面白いよ!
現在、3冊が既刊されている。(3冊とも読了済・・・2作目が特に面白かった)

  • 「君たちに明日はない」(2005年 新潮社 / 2007年 新潮文庫)
  • 「借金取りの王子」(2007年 新潮社 / 2009年 新潮文庫)
  • 「張り込み姫」(2010年 新潮社)
  • さて、もう一つのシリーズが「ヒートアイランド」シリーズ
    ストリートギャングを描いている。
    今回読んだのが、シリーズ1作目。
    非常にテンポ良く、ストーリーが展開してハラハラどきどき。
    (なんとなく、奥田英朗さんの「最悪」を思い出した)
    シリーズ既刊本は4冊。
    (順次、読んでいこうと思っている)

  • 「ヒートアイランド」(2001年 文藝春秋 / 2004年 文春文庫)
  • 「ギャングスター・レッスン」(2004年 徳間書店 / 2007年 徳間文庫 / 2010年 文春文庫)
  • 「サウダージ」(2004年 文藝春秋 / 2007年 文春文庫)
  • 「ボーダー」(2010年 文藝春秋)
  • 【参考リンク】
    垣根涼介 Dawning day, Dawning life.

    【ネット上の紹介】
    渋谷でファイトパーティーを開き、トップにのし上がったストリートギャング雅。頭のアキとカオルは、仲間が持ち帰った大金を見て驚愕する。それはヤクザが経営する非合法カジノから、裏金強奪のプロフェッショナルの男たちが強奪した金だった。少年たちと強奪犯との息詰まる攻防を描いた傑作ミステリー。


    YAMAKEI SQUARE

    2010年06月15日 22時08分02秒 | クライミング(一般)
    YAMAKEI SQUAREより、メールが届いた。
    クライマーの興味ありそうなところを下記に抜粋する。

    ★YAMAKEI ONLINEで、クライミングジムのデータベースを公開。
       http://cm.impress.co.jp/?5_75580_3787_2


    ★『日本100岩場 4 東海・関西』増補改訂版 6月25日発売!
      http://cm.impress.co.jp/?5_75580_3787_6
      *フクベボルダーとかが追加されている。

    ワールドカップ・・・「観戦」の杞憂

    2010年06月14日 19時52分08秒 | 身辺雑記
    南アフリカ共和国でワールドカップが行われている。
    それについて、少し心配なことがある。
    杞憂とか大きなお世話とか言われそうだけど・・・。

    世界中から、観戦に訪れている。
    その数約45万人と予測される。
    観光客を見込んで、イベント等観光産業が活発化してる。
    ・・・もちろん、夜の商売も。
    前回、ドイツでおこなわれたワールドカップでは、需要を見越して集まった娼婦は4万人。
    南アフリカ共和国のHIV感染率は5人に1人。
    これは素人も含めた率、玄人の感染率は50%と言われている。
    ・・・大丈夫なのだろうか?
    今回のワールドカップで、一気に世界中に拡散する可能性を考えている。
    前回4万人の娼婦が集結した、ということは、需要があったんでしょう。
    4万人の娼婦が、それぞれ1人を相手にしたとしても、買春客は4万人。
    (まず、そんなことは無いでしょう・・・多分10人以上?)
    それでは、娼婦4万人×10人=40万人(計算上)
    (まぁ、1人で何回も買春する方もいるから、実際は10~20万人くらい?)
    観戦に来て、感染し、予定外の「土産」を持ち帰る可能性は高い。
    単なる杞憂に終わることを祈るばかりだ。

    PS
    感染対策として、W杯期間中、国際サッカー連盟(FIFA)公認のホテルにはコンドームが置かれている、とのこと。
    今回のワールドカップが、HIV対策の契機となれば、と思う。

    【本日のお言葉】
    『健全なる精神は健全なる身体に宿る』

    【関連記事】
    W杯はエイズ啓発の好機 (1/2ページ) - MSN産経ニュース
     
    W杯でエイズ拡大懸念 売春合法化求める声も - MSN産経ニュース

    努力と結果

    2010年06月13日 21時50分06秒 | クライミング(一般)
    先日、外来語について書いた。
    モチベーションとインセンティブの違い。
    使い方分かった?
    例えば、コンペがあるとする。
    何とか優勝したい、と君が願う。
    「優勝して、女の子にモテたい、がんばるぞ~」、ってのはモチベーション。
    主催者が大会を盛り上げるため、賞金を100万円にして車もプレゼント、って企画にした。
    「よし、がんばって、賞金をゲットするぞ~」、と君は思う。
    この大会システム(賞金や車を含めて)は「インセンティブ」である。

    さて、前フリはここまで。
    皆さん、日々クライミング上達のため、努力していることと思われる。
    世間でも、「努力をすれば結果が出る」、と言われる。
    でも、これは正確な言い回しではない。
    正しくは、「努力すれば結果が出るときもある」、である。
    少なくとも、クライミングではそう。

    私は努力しているし、周りの方も努力している。
    全国レベルの大会に出場する方なんて、もっと努力してるでしょうね。
    でも、アキヨちゃんのように、ワールドカップで優勝するような方もいれば、
    同じくらい努力しても、結果の出ない方もいる、と思う。
    いくつか理由がある。
    ①現在の年齢・・・同じ練習でも若い方と、年寄りでは身につくものが異なる。
    ②クライミングを始めた年齢・・・これも上記と同じ理由。
    ③時代・・・昔はジムも無かったし、グレードも揃ってなかった。時代を超えるのは難しい。
    ④才能・・・これを言うとキリがないけど、背が高い、低い、太りやすい体質とそうでない方。手の長い方、身体の柔らかい方、硬い方。モチが高く、持続する方。・・・これら全て才能の要因であり持って生まれたものが大きい、と思われる。

    だから、人と比べると悲しくなる。
    あまり、気にしてはいけない。
    (逆に、優越感もよくない・・・劣等感の裏返しだから)
    我々は楽しみとして、趣味としてクライミングをしている。
    身体を動かすだけでも楽しいし、登れたらもっと楽しい。
    ムーブを解決したら嬉しいし、終了点までいけたら気分がいい。
    さらに、上達したら、もっと楽しい。
    プラス思考でクライミングをしたい、と思っている。

    天山の巫女ソニン(全5巻)菅野雪虫(講談社)

    2010年06月13日 08時13分53秒 | 読書(小説/日本)



    シリーズ全5巻。
    (最後の1巻入手に手間取り、アップが遅くなった)
    これは面白い、予想以上に楽しめた。
    全5巻が短く感じられる。

    この作品は、1巻目が出版された時から知っていた。
    でも、ある程度まとまってから読もう、と思って保留にしていた。
    先日、梅田に行ったときに、書棚に5冊並んでいるのを見つけた。
    「あっ、もう5冊もでてる!」、と。
    それで、心の準備が一気に整い、読みたくなった。

    さて、実際読み始めてみると・・・う~ん、75点くらいかなぁ、って思った。
    面白いけど、すごく面白いかと言われると・・・どうかなぁ、と。
    ところが、2巻目から格段に面白さのレベルが上がってくる。
    (途中でやめないでよかった)

    私がファンタジーに求めるものは、一般の小説に求めるものと同じ。
    ①リアリズム・・・感情移入させてくれる本当らしさ
    ②ストーリー展開の妙・・・ハラハラドキドキさせて欲しい
    ③主人公の魅力・・・好きになれない人物、興味のわかない人物の話を読みたくない
    ④脇役の魅力・・・主人公だけで引っ張るのはしんどい
    ⑤心理描写・・・キャラの魅力を引き出すのは、「行動」と「心理描写」・・・車の両輪のようなもの。内面から言うと「感情」「思念」→「会話」→「行動」、それぞれリンクする。(でも、一致するとは限らない)矛盾した方がキャラに深みが出て、生きてくるけど、その溝を埋めるのは心理描写の巧みさ・・・紋切り型心理では、いくらストーリー波瀾万丈でも上滑りして魅力半減。

    1巻目はストーりーだけで保たせていたけど、2巻目からキャラクターの魅力が開花してくる。
    この「欲の無い」、ピュアな性格が好ましい。
    設定に不自然さもないし、リアリズムも巻を追って深みが出てくるし。(政治と経済をきちんと描いている)
    登場人物同士のからみ、影響し合い、変化していく楽しさ。
    ヒロインをはじめ全ての登場人物のフェロモンも抑制されていて、好感度が高い。
    (作品全体に「恋愛要素」が薄い・・・これは希少価値があり、好ましい)
    私はファンタジー苦手なので、あまり読まないけど、日本トップクラスでしょう。
    次作楽しみ。

    PS1
    これで「完結」なんでしょうか?
    こういう終わり方は好きだけど、第二部に続きそうな予感もある。

    PS2
    それにしても、今回は大収穫。
    このような実力ある、新しい作家との「出会い」があるから読書はやめられない。

    【ネット上の紹介】
    生後まもなく、巫女に見こまれた天山につれていかれたソニンは、十二年間の修行の後、素質がないと里に帰される。家族との温かい生活に戻ったのもつかのま、今度は思いがけない役割をになってお城に召されるが…。三つの国を舞台に、運命に翻弄されつつも明るく誠実に生きる、落ちこぼれの巫女ソニンの物語、第一部。新しいファンタジーの誕生!講談社児童文学新人賞受賞。 2007年 第40回 日本児童文学者協会 新人賞受賞


    「金春屋ゴメス」西條奈加(新潮社)

    2010年06月12日 08時44分38秒 | 読書(小説/日本)

    「大江戸ミステリー」、だけど、ちょっと毛色が異なる。
    未来の話・・・日本から「江戸」が独立し、治外法権を得て、鎖国する。
    著者は江戸オタク、と思われ、蘊蓄が語られる。
    かなり正確な江戸が再現され、そこで謎の疫病が流行る。
    これは何者かの意図によるものなのか?
    江戸入国をはたした辰次郎が長崎奉行ゴメスのもとで、謎を追う。
    以上、あらすじ。

    う~ん、奇抜な発想だけど、江戸描写が詳細なので、入り込んでしまう。
    ただ、私としては以前読んだ「烏金」の方がおもしろく感じられた。
    こちらも江戸を舞台にしているが、「金融」に的を絞って描写。
    登場人物の描写もこなれているように感じた。

    【ネット上の紹介】
    300倍の難関を潜り抜け、日本から江戸国へ入国を果たした大学生の辰次郎。連れは、元外資系金融勤務の時代劇オタク松吉(NY出身・24歳)&28ケ国を渡り歩いた海外旅行マニアの奈美(25歳)。身請け先は、容貌魁偉、冷酷無比、極悪非道、厚顔無恥、大盗賊も思わずびびる「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった!ゴメスは、辰次郎に致死率100%の疫病「鬼赤痢」の謎を追えと命じる―。第17回日本ファンタジーノベル大賞・大賞受賞作。

    練習と負荷

    2010年06月09日 19時33分19秒 | クライミング(一般)

    前回のつづき。
    このブログを何年も前から読んでいる方は解っていると思うが、
    私の練習方法は、80%くらいの力で登れるルートを数多くトライする方法である。
    ウォームアップは60~70%くらいで登れるルートを多い目にトライ。
    メインディッシュは、80%前後の力で登れるルートを多数トライ。
    場合に寄っては、それ以上の難しいルートもトライする。
    (でも、それはデザート程度)
    ・・・こんな感じで練習している。

    多数トライして体力をつけ、疲れていても、そこそこ登れる、ってのを目指している。
    つまり、海外ツアーで連日登るのを想定している。
    でも時々、疑問に思うこともある。
    「こんな練習でいいんだろうか?」、と。

    ボルダラーの方の練習を見ていると、私の練習と全く異なる。
    ①登れるかどうか分からないくらい難しいルートを設定してトライしている。
    ②自分の限界グレードに近いルート、限界以上のルートを100%~120%のパワーでトライする。
    ③落ちても、失敗しても、何回もトライする。
    ・・・見ていて、かっこいい。
    あれぐらいムーブ力とパワーがあったらな、と。
    私もこのような、限界に挑戦する練習を取り入れようか?、と誘惑に駆られる時がある。
    でも、待て待て・・・そんな事をして大丈夫か?、と思いとどまる。
    この練習は負荷が高くて、リスクも高い、身体を壊す可能性も高い。
    また、長モノでグレードを上げると、インターバルが長くなる。
    『短い時間で、効果的な練習』、と心がけているので、私の主義に反する。

    私の実力は12前半のOSが限界、である。
    12後半以上をOSし、13を(1ツアーで)RPしようと思ったら、現状ではムリ。
    何とか現状打破したい。
    でも、ムリはしたくない・・・あぁ、心が揺れる。
    そんなわけで結局、結論はでない。
    (これだけ引っ張っといて、結論無しかい!)
    まぁ、(ほんの気持ちだけ)負荷をあげる日を作ってもいいかも。
    不惑を過ぎてなお惑う・・・今日この頃。
    申し訳ない!


    RUKA・RA・GHAAM(6月)

    2010年06月07日 21時16分51秒 | ジム練習
    RUKA・RA・GHAAM通信をいただいた。
    5月号がなかったので、「都合で中止?」、と思っていた。(たまたま休んだだけ、らしい)
    デジタル時代に、アナログな葉書であるが、もらうと嬉しい。
    今月号は・・・
    記事(1)=ストレッチの効用、
    記事(2)=ビュークスについて。
    ビュークスは20年近く前に訪問した。(昔日の感あり)
    懐かしくなって、トポを出してきて見なおした。
    今のクライマーは、ヨーロッパと言えばスペインに行くが、我々の頃はフランスが最先端。
    その中でも、ビュークスが最も有名エリアであった。
    ラ・ローゼルバンピール、ル・ミニマム、ラ・ミッション、シュカ、アジンコート・・・超有名ルート目白押し。
    スラブ~垂壁が中心で、一部薄かぶり~前傾、ランナウトした状態で核心突入がパターン。
    非常にテクニカルで、パワーだけで押し切れない難しさ。
    (私が有名ルートで登ったのは、レーブ・ド・パピヨンのみ)
    もし今、再訪したらどうだろう?
    う~ん・・・やはり、登れる気がしない。

    さて日曜日、RUKA・RA・GHAAMに行ってきた。
    まず、ウォームアップは、いつもどおりボルダーサーキット、□白テープ20本。
    次に、『6月のお題』をトライ。

    □・・・5本、これは問題なし。
    ・・・5本、これは少し難しい。(いつもより少し難しく感じた)
    ・・・5本、かなり難しい。
    黄色5本のうち、3本がのぼりやすく、2本が難しい。
    これは、先月と同じで、難しさも同じくらいに感じた。
    絶妙な課題設定でおもしろい、良くできている。
    何回かトライしていくうちに、少しずつ手数が進み、最後にRP出来るようになっている。

    さらに上級者用課題もあるがトライせず。
    →3本、
    →1本
    このところ、心が揺れている。
    もっと果敢に限界グレードに挑戦したほうが上達するのではないか、と。
    また、心の一方では、そんな事をすれば身体を壊すぞ、と諫める声がする。
    これについては、また後ほど書こうと思っている。
    (下書きはしてあるので、いずれアップ予定)
    本日は、これまで。

    PS
    ロクスノ最新号が送られてきた。
    今回はクラック特集。
    ★『ROCK & SNOW 2010夏号 No.48』
      http://cm.impress.co.jp/?5_74876_5014_3

    金比羅山▲573m、寂光院

    2010年06月05日 21時26分26秒 | 登山&アウトドア(関西)

    (↑ピーク手前の分岐点からの撮影)

    ハイキングに行ってきた。
    京都大原・金比羅山(こんぴらさん)▲573m。
    このあたり平家物語ゆかりの地。
    下記にデータを記す。

    戸寺パス亭→江文神社→琴平新宮社→金比羅山▲573m
    →翠黛山(すいたいさん)546m→寂光院→大原バス亭→出町柳

    歩行3時間30分 距離7.8km
    資料データ:「行楽の山歩き」(東京地図出版)より
    【覚書】:出町柳5番出口、出町柳→戸寺バス亭(380円)
    大原バス亭→出町柳(420円)
    戸寺バス亭横に土産物店あり、おはぎ2ヶ420円、きんつば2ヶ420円

    今回のコース、思った以上に良かった。
    静かで、おもむきがある。
    ほとんど、登山者に遭遇せず。
    下山後の観光も充実している。
    今回利用しなかったが、寂光院近くに温泉もある。
    (そば、うどん等の食事とセット)
    三千院は時間の都合で今回パスしたが、紫陽花がキレイなはず、拝観料700円。

    寂光院は、今回3回目の訪問。
    平家物語ゆかりの寺なので、外すわけにはいかない。
    本尊は地蔵菩薩。
    本尊の(向かって)左が建礼門院、右が阿波内侍(あわのないじ)。
    建礼門院=平清盛の娘・徳子=高倉天皇の中宮=安徳天皇の母

    壇ノ浦での有名な科白:「浪の下にも都のさぶろうぞ」・・・これは平清盛の妻で安徳天皇の祖母二位の尼のセリフ。
    建礼門院も入水するが、助かってしまう。
    これは、当時女性の髪が長かったため、海に浮かんだから、と聞いた。
    (あるいは、心のどこかでこの世に未練があったのかも)
    非常に有名なシーンなので、印象に残っている。

    また、謡曲「大原御幸(おおはらごこう)」では寂光院が舞台となる。
    平家一門と高倉・安徳両帝の冥福をひたすら祈っていた建礼門院のもとへ、後白河法皇が訪ねてくる。
    その時、女院は山へ花摘みに出掛けて留守・・・その山、ってのが翠黛山(すいたいさん)546m。
    (もちろんピークは踏んでない、と思われるが)
    また、後白河法皇が、その時のアプローチに使ったのが江文峠。
    そんなわけで、今回ほとんど後白河法皇の気分?

    (寂光院入口の階段、閉館寸前だったので人影まばら)
    京都大原 寂光院別ウィンドウで開く

    「家族の言い訳」森浩美(双葉文庫)

    2010年06月05日 08時20分16秒 | 読書(小説/日本)

    家族小説、人情話、直球の人生小説集。
    私は、こういう「家族の絆」「夫婦の蘊蓄」を語った作品が好き。
    思った以上におもしろかった。
    良くできている。
    例えば、「乾いた声でも」では・・・・・

    「よく夫婦を戦友に例える人がいるでしょう。僕はちょっと違う意見なんだな。妻は一緒に戦ってくれなくてもいいんです、戦いは僕がしますから。だからその代わりにせめて味方でいて欲しいんですよ」
    「味方ですか?」
    「はい、それも絶対的な味方です」

    (中略)
    所詮、夫婦は他人なのであれば、その距離を埋めるためにも言葉は必要だ。

    「カレーの匂い」なんて、向田邦子作品に匹敵する内容、と思う。
    出版社副編集長・舞子はキャリアウーマン(死語)である。
    母親が舞子に説教するシーン。(P134-P135)

    「仕事をバリバリこなすのが悪いとは言わない。舞子はね、みんなからカッコいいとか言われて満更でもないでしょうけど、そんなに人って差はないものなのよ。あなたは全部勝とうとするから、棘が出ちゃうの。大きなことばかりが勝負じゃないし、案外小さなことの積み重ねなのよ。人生なんて、51賞49敗程度でいいの。でもね、その二つの勝ちの差が最後に物を言うんだから……本当に賢い女は負けてあげられる余裕を持っているの。それはね、小さくてもしあわせに繋がる急所の掴み方を心得てるってことのなのよ」

    この作品は、そのまま人生処世訓として終わるのかと思っていたら、最後にどんでん返しが!
    まいった・・・向田邦子クラスだ。

    ところで、森浩美さんは男性である。(まぎらわしい名前だ)
    女性心理の描写が巧いので、てっきり女性と思っていた。(欺された)
    今回の短編集はすべて直球勝負。
    それが勝因、かと思う。
    もし、これにユーモアが入ってくると、山本幸久さん、奥田英朗さんの領域になる、と思う。
    また、この方はもともと、作詞家だったようだ。
    ネット上の著者紹介を下記にコピーする。

    放送作家を経て、1983年より作詞家。現在までの作品総数は700曲を超え、荻野目洋子「Dance Beatは夜明けまで」、酒井法子「夢冒険」、森川由加里「SHOW ME」、田原俊彦「抱きしめてTONIGHT」、SMAP「青いイナズマ」「SHAKE」「ダイナマイト」、Kinki Kids「愛されるより愛したい」、ブラックビスケッツ「スタミナ」「タイミング」など、数々のヒット作を手掛ける

    PS
    ちょっと気になったので、追加しておく。
    著者は、夫婦は戦友でなく味方云々・・・と書かれている。
    この「夫婦は戦友」、って考えは、作家・田辺聖子さんがエッセイや小説でよく書かれていること。
    森浩美さんは田辺聖子さんの考えを100%理解していないのだろうか?
    おそらく、言語上のロジックとして書かれているだけ、と思う。
    もし人生が戦いだとするなら、妻が敵なら困る。
    さらに、第三者として中立を表明されたら、もっとなさけない気分かも。

    【ネット上の紹介】
    家族に悩まされ、家族に助けられている。誰の人生だってたくさんの痛み、苦しみ、そして喜びに溢れている―。作詞家・森浩美がその筆才を小説に振るい、リアルな設定の上に「大人の純粋さ」を浮かび上がらせた。『ホタルの熱』『おかあちゃんの口紅』はラジオドラマや入試問題にもなった出色の感動作。あなたの中の「いい人」にきっと出会える、まっすぐな人生小説をお届けします。

    TV、外来語

    2010年06月03日 23時12分58秒 | 身辺雑記

    映画「氷の微笑」、ってのがある。
    原題はBasic Instinct(基本的本能)。
    邦題のつけ方が巧いなぁ、と感心した。
    でも、最近の邦題は、捻りがない。
    「アリス・イン・ワンダーランド」・・・そのままやんけ!

    先日、シリーズ(全12回の途中)TVを観ていた。
    知らない外来語を普通に使うので「あれ?」「何それ?」、って感じ。
    例えば、次の言葉。

    インセンティブ
    アファーマティブ・アクション
    レガシー・アドミッション

    上記3つとも知っている方、エライ!
    (皆さんはご存じなのだろうか?私は知らなかった)
    知識人ってのは、一般人とは異なる言葉を使用し文章を構築する。
    例えば、こんな感じ・・・「知識人とはヒエラルキーに於けるアリストクラートである」、とか。(どう?)
    まぁ、これはどの業界でも言えるんだけど。
    放送業界では、放送業界用語がある。
    政治家然り、である。
    司法業界、ってのも一般人に解りづらい言葉を連発する。
    その業界だけに通用する言葉、身内意識を高め、部外者を除外する排他的な言葉使い、と感じる。
    以前、こういったものは『方言』の一種である、と読んだことがある。
    そう考えれば解りやすい。
    法曹業界の方言、知識人同士の方言。
    なまりが強くて、理解不能・・・標準語で話してよ、って感じ。

    我々も業界に媚びてはいけない。
    変に外来語を多用しないよう、私自身も気をつけている。
    (台所の流しををシンク、尊敬をリスペクト・・・ムリして横文字使わなくてもいいんじゃない?)
    さて、最初の課題にもどる。

    「コミットメント」と同じく、「インセンティブ」も日本語にしにくい。(モチベーションと比較して覚えるとよい)
    アファーマティブ・アクション=肯定的措置・・・これだけでは解りにくい(【参考】「ポジティブ・アクション=和製英語)
    レガシー・アドミッション=レガシー=遺産、アドミッション=入会、入場の許可(例えば、親がその学校出身者なら、その子どもを入学させる制度・・・日本にもあるのか?・・・ちなみに、レガシー・システム=時代遅れの役に立たないシステムのこと)

    それにしても、外来語は訳しにくい。
    文化&政治背景が異なるからか。

    【参考】
    [三省堂辞書サイト]10分でわかる「インセンティブ 
    アファーマティブアクション とは - コトバンク<button class="ws"></button> 
    ポジティブ・アクション - Wikipedia<button class="ws"></button>


    「臨床真理」柚月裕子

    2010年06月02日 21時09分46秒 | 読書(小説/日本)
    「臨床真理」柚月裕子(宝島社)

    2008年第7回、『このミス』大賞受賞作品。
    私は、面白い作品なら、何でも読むようにしている。
    でも、決まった設定が好き、特定のジャンルに弱い、ってのも事実。

    例えば・・・
    ①平安朝宮廷を舞台にした作品=氷室冴子さんの「ジャパネスクシリーズ」、松田志乃ぶさんの一連の作品、「小袖日記」(柴田よしき)、「千年の黙」(森谷明子)、「泥ぞつもりて」(宮木あや子)等
    ②バレエもの=「バレエシューズ」(ノエル・ストレトフィールド)、「バレエ・ダンサー」(ルーマ・ゴッテン)、「ロイヤル・バレエダイアリー」(アレクサンドル・モス)、「ドリーナ・バレエシリーズ」(ジーン・エストリル)・・・(当然「アラベスク」「テレプシコーラ」は必須)
    ③番目として、「病院」を舞台にした「心理」もの、つまり「臨床心理」を描いた作品にも弱い。
    (例えば、「症例A](多島斗志之)、「十三番目の人格」(貴志祐介)、「シーラという子」(トリイ・ヘイデン))

    今回の作品「臨床真理」は、この③番目のジャンルに入る。
    この著者・柚月裕子さんは、これがデビュー作。
    だから、どうしてもイマイチ感は否めない。
    (『このミス』大賞受賞作品なので、ある程度の面白さはあるけど、私の『基準』はさらに高い)
    作品の展開が読めてしまうので、盛り上がりに欠けるかな。
    (作品の出来不出来にかかわらず、ジャンルそのものによりある程度の満足を得られるけど)
    でも、次作の「最後の証人」はレベルが上がって面白い、と聞いているので、少し期待している。


    PS1
    デビュー作でいきなり「すごく面白い」「レベルが高い」、ってのは難しいものですね。
    少しずつ、経験をつんで「作家」になっていくんでしょう。
    (「花宵道中」(宮木あや子)や「告白」(湊かなえ)は特別か?)

    PS2
    上記以外の『好みのジャンル』では、「学園」「寄宿舎」「超能力」「霊」「格闘技」「山岳」・・・
    だから「RDG」は、私の好みのエッセンス、なのだ。

    【ネット上の紹介】
    臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という二十歳の青年を担当することになる。司は、同じ福祉施設で暮らしていた少女の自殺を受け入れることができず、美帆に心を開こうとしなかった。それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司はある告白をする。少女の死は他殺だと言うのだ。その根拠は、彼が持っている特殊な能力によるらしい。美帆はその主張を信じることが出来なかったが、司の治療のためにも、調査をしてみようと決意する。美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久志の協力をえて、福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。しかし、調査が進むにつれ、おぞましい出来事が明らかになる。『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。