百醜千拙草

何とかやっています

存在の根拠

2020-02-25 | Weblog
しばらく前に、臨床治験が始まるというニュースを聞いて、骨髄間葉系ステムセルとして数年前に発表されたMUSE細胞とREC細胞について書きました。基礎研究上の必要があってこれらの細胞のことを調べようと思ったのですけど、文献が乏しくて困っておりました。私はヒトではなくマウスの細胞を使っており、骨髄のいわゆるMSCのprecursorと考えられる細胞に興味があるのですけど、これらの細胞は数が非常に数が少ない上に、かつ特異的なマーカーに乏しいので分離、解析に苦労しています。そういう事情で他に使えるマーカーを探している間にMUSE細胞などに行き当たったわけですが、以前、書いた通り、この細胞については日本のオリジナルのグループを含む2,3のグループ以外から論文はなく、Knoepflerのブログの読者も7割以上がその存在を疑っているという状況でした。私も試しにマウスのMSCでやってみましたが、SSEA3陽性の細胞は見つかりませんでした。忠実に発表されているプロトコールを再現しようとしたわけではないので、なんとも言えませんけど、とにかくこの細胞の性質についての情報が乏しく、ナゾめいています。正式な論文以外に情報を更に探してみると、とある研究者の方が数年前に書いたブログに、MUSE細胞はある、と断言してあるサイトを見つけたので、MUSE細胞が存在するという根拠を教えて欲しい、とコメントしたら、返事がありました。この方は、ブログで、STAP細胞が存在しない根拠をかなり詳しく論理的に説明されていたので、MUSE細胞についても詳しいのだろうと考えたのですけど、その一行の返事をみると、どうも存在すると断言する根拠はないと考えたほうが良さそうです。

この細胞は発表されてからずいぶん経ちますけど、RNA-seqなどの基本的な遺伝子発現データも公開されておらず、細胞のcharacterizationも十分にされていないので、研究者の方でそれらしい細胞を分離することができなければ、ナゾのままです。多分、そういうこともあって独立した研究室からの論文が乏しいのでしょう。多少の期待もあったこともあり、マウスで我々が使った抗体では検出できなかったのでどうしようかと思っていましたが、この返事で背中を押されました。忘れて次に行くことにします。

しかし、このナゾの細胞、治験に使われるとされる細胞は誰が作って、誰がクオリティーチェックをしているのだろうとふと思いました。この辺の情報は公開されていないので。




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