百醜千拙草

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ステムセルビジネス

2020-02-14 | Weblog
思わぬ事情でステムセル系の論文を読むことが増えました。私は別にステムセル研究者ではないのですけど、何となくこの分野の端の方に接触するようになりました。それにしても、成人の組織特異的ステムセルは怪しいものが多いですな。とにかく論文数が多すぎてとてもカバーしきれないのと、教科書的な部分でさえ、実験室や実験系によって知見がなかなか一致しないようで、私といえば、目標を見失った大海の真ん中でとにかく溺れないようにあがいているというような有様です。普通、マウスの遺伝学的実験系だと比較的はっきりした結論が得られることが多いのですけど、ステムセル業界は、マウスの系を使った実験でもスッキリしないものが多いし、まして、培養細胞系であれば、一体、何を信じればいいのか、という感じです。うっかり信じて痛い目にあったことは数知れず、科学では「信じるものは、騙される」という友人の警句を忘れないようにしないといけません。

というわけで、MUSE細胞に続いて、数年前に出た慶応大からのNGFRとVCAM1陽性の間葉系ステムセル(増殖が早いのでRapidly expanding clones (RECs)と名付けられています)の論文を見つけました。ステムセル業界ではトップ ティアの雑誌に載っていますけど、その後、あまり論文がなく、気になって調べてみると、島根大に研究室が移ったようです。そこでのバイオベンチャーで作成された細胞は研究用に販売されており、さらにその細胞を使っての臨床治験が今年に計画されているとのこと。一バイアル、(ディシュ1枚分ほど?)が十万円という値段。

何れにしても基礎研究は進んでいるように見えないのに、日本では、臨床治験やビジネスへの応用が早いように思います。一方で、HarvardのStem Cell Institute (HSCI)は、設立20年、Nature, Cell, Scienceに300本の論文を出したが、臨床への応用は全く進んでいない、との見解。基礎がよく分からぬのに取り敢えず臨床応用というのはどうなんでしょうか。
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