ピア レビューと出版ビジネスの話の続きを書こうと思っていましたが、二週間ほど前にNatureのフロントページでカバーされていた今月始めにあったElizabeth Holmesの有罪評決の記事を目にしたので、少し。この事件はバイオテク業界の人ならよくご存知かと思いますし、詐欺事件として大手新聞にもとりあげられたので、彼女の写真を見た人も多いと思います。若くてブロンド美人、革新的アイデアでハイインパクトなビジネスを展開するスタンフォードの才女、それが15年前の彼女のイメージでしょう。
この事件は、新規科学技術をネタにしたニュービジネスに関しての詐欺事件ですが、ここまで大規模な詐欺事件に発展したのは、Natureによると、ピア レビューが働かなかったことだと分析しています。しかしながら、ピア レビューはdue deligenceを助ける一つのシステムにしか過ぎないと思います。論文であれビジネスであれ、騙す方が悪いのは間違いないですが、結局は、簡単に騙される方にも非があります。これだけ多くの投資家、薬局、それから従業員などの関係者がいながら、ごく初歩的な問題を誰も真剣に考えたり検証したりすらしなかったというのは驚きです。研究者や企業者のカリスマ性は容易に事実に対する批判的な眼を曇らせるのでしょう。有名研究者だから、大手の企業や投資家や有名人がついているから、という理由で、その主張を盲目的に信じてしまう人間心理ですね。しばしば有名研究室からあやしいデータが出版されるのも同じメカニズムなのでしょう。
ふつう、二十歳かそこらの若い女の子が現実も知らずに描いた餅の絵にホイホイとカネを出す方も出す方です。もしこの人がブロンド美人ではなく、スタンフォードでもなかったら、カネを出した方もビジネスのパートナーとなった方ももっと慎重だったであろうと思います。
弁護するつもりはないですけど、Holmes本人も最初から騙すつもりはなかったでしょう。若さゆえの成功への野心で、猪突猛進し、絶対に失敗できないと思い込み、小さなウソが積み重なって、引くに引けない状況に追い込まれていったのではないだろうかと思います。
DeepLで一部翻訳。
エリザベス・ホームズ評決:研究者が科学への教訓を語る
血液検査に革命を起こすと約束した悪名高いバイオテクノロジー企業の最高経営責任者、エリザベス・ホームズが詐欺罪で有罪になった。セラノスの創業者は意図的に投資家を欺いたと、米国連邦陪審は約4カ月に及ぶ裁判の末、昨日結論づけた。ホームズはおそらく、最高で20年の禁固刑と高額の罰金を科されることになる。彼女にはまだ判決は下っていない。
この事件は、バイオテクノロジーの起業家が投資家にアプローチする方法を形作ることは間違いないと、Nature誌に語った研究者たちは言う。そして、ピアレビューを通じて初期の研究を検証することの重要性をはっきりと示している。
、、、
ホームズは2003年、カリフォルニアのスタンフォード大学を中退する直前、19歳でセラノスを創業した。彼女の目標は、血液検査を消費者が直接受けられるようにする会社を作ることだった。標準的な診断機器を操作するために必要な、大きな針や血液のチューブをなくしたいと考えたのだ。そのために、わずか数滴の血液で200以上の検査ができる装置を開発したという。
このように、ホームズは野心的で魅力的な人物であったため、メディアは実験室診断にかつてないほどの関心を寄せるようになった。、、、
この事件は、バイオテクノロジーの起業家が投資家にアプローチする方法を形作ることは間違いないと、Nature誌に語った研究者たちは言う。そして、ピアレビューを通じて初期の研究を検証することの重要性をはっきりと示している。
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ホームズは2003年、カリフォルニアのスタンフォード大学を中退する直前、19歳でセラノスを創業した。彼女の目標は、血液検査を消費者が直接受けられるようにする会社を作ることだった。標準的な診断機器を操作するために必要な、大きな針や血液のチューブをなくしたいと考えたのだ。そのために、わずか数滴の血液で200以上の検査ができる装置を開発したという。
このように、ホームズは野心的で魅力的な人物であったため、メディアは実験室診断にかつてないほどの関心を寄せるようになった。、、、
カリフォルニア州パロアルトに本社を置く同社は、約9億4500万ドルを調達し、従業員数は800人以上にまで成長した。また、いくつかの大手小売業者との契約も結んだ。2013年、薬局チェーンのウォルグリーンはアリゾナ州の店舗にセラノスの「ウェルネスセンター」を置き始め、最終的に40カ所を設置した。
投資家も一般大衆も、セラノスは受け取った血液サンプルを斬新な機械で分析しているのだと信じていた。しかし、実際には、同社のプラットフォームで実施できる検査はごくわずかであった。残りの検査は、他社が開発した従来型の血液検査装置を介して行われていた。そのため、指を刺して採取した血液を希釈して量を増やす必要があり、検査結果の信頼性に欠ける。
シアトルにあるワシントン大学の診断学開発者兼研究者であるポール・イェガーは、「一滴の血液からすべてを得るという考え方には、根本的な欠陥がありある」と言う。
2015年、ホームズの策略は崩れ始めた。ディアマンディスがセラノスを罵倒した後、ウォールストリート・ジャーナル紙の記者ジョン・キャレルーがセラノスの機械の欠点を派手なニュース記事で暴露したのだ。、、、
セラノス社のスキャンダルは、本や映画、ポッドキャストなどの刺激的な題材を提供している。しかし、それ以上に重要なのは、この物語が、血液診断会社や起業を志す科学者への訓話になっていることだ。、、、ホームズの破滅の一因は、「セラノスの技術を専有物とし、それを公表せず、コミュニティと共有しようとしなかった」ことだ。ホームズがピアレビューに参加していれば、投資家を欺く前に技術の問題点を発見できたかもしれない、と専門家は言う。そうすれば、ホームズは方向転換を余儀なくされるか、会社を閉鎖せざるを得なかったかもしれないが、犯罪を犯すこともなかったかもしれない。このように、科学は何度も何度も自己修正し、私たちを救ってきた」とイェガーは言う。、、、「問題は、このようなことが二度と起こらないようにするために、我々は何を学ぶことができるのか、ということです。