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東大寺学園中学が「東大寺学」を授業

2011年06月17日 | 奈良にこだわる
東大寺 (別冊太陽 日本のこころ)
西山厚 監修
平凡社

今朝(6/17)の毎日新聞大阪本社版社会面に「東大寺に学ぶ 進学校で授業 歴史、写経・読経に田植え…」という記事が載っていた。《関西屈指の進学校、東大寺学園(奈良市)が今年度、東大寺の歴史や仏教などを学ぶ「東大寺学」を中学校のカリキュラムに組み込んだ。同学園が授業に宗教教育を取り入れるのは創立以来初めて。人間性豊かな将来のリーダーの養成に役立つと判断した》。

《「東大寺学」は道徳の授業に組み入れ、中学3年間で計20回程度を予定。東大寺の歴史や創建の精神などを同学園常任理事で東大寺清涼院住職の森本公穣さん(42)が教える。5月には、2年生に「聖武天皇と大仏さま~大仏はなぜつくられたか」というテーマで授業をした。講義だけでなく、写経や読経、田植え体験なども予定している》。

《同学園は、前身の金鐘中等学校が設立された1926年から86年に現在の奈良市山陵町に移転するまで、東大寺境内にあった。戦前は、若い僧侶らが授業を担当。戦後も、生徒らは、大仏殿に向かって帽子を取って一礼するルールが引き継がれるなど、寺を身近に感じながら学んだという。移転で環境が変わった後も、心の教育を求める保護者の声があり、リーダーに必要な素養を幅広く身に着ける目的もあって「東大寺学」の導入を決めた》。

考えてみれば、お寺が作る学校なのだから、宗教や道徳の授業でお寺のことを学ぶのは、ある意味で当然のことなのだ。しかし、何しろ東大に43人・京大に65人が合格する(11年度)という名うての進学校なので、なかなか時間が取れなかったのだろう。

東大寺とか大仏と聞いてまず思い出すのは、西山厚氏(奈良国立博物館学芸部長)の話である。古代史ブーム、仏像ブームのなかで、あまりに有名であるために、かえって軽視されている東大寺や大仏に、もっと注目すべきだとおっしゃっている。たとえば「大仏はなぜ造られたのか」(株式会社ウェッジが発行するメールマガジン「WEDGE Infinity」09.10.14付)には《大事なのは次の文章である。「事成り易く、心至り難し」。富と権力で造るのなら簡単だが、それでは心がこもらない。だからだめだと聖武天皇は主張する。ではどうするのか。大仏造立に関わる人は、一人一人が自分の盧舎那仏を造るように。造っている最中から、日に三度、盧舎那仏を拝みなさい‥‥。不思議な言葉である。しかし、聖武天皇がめざすところがわかるような気がする》。

《「人有(あり)て、一枝の草、一把(にぎり)の土を持ちて、像を助け造らむと情(こころ)に願はば、恣(ほしいまま)に聴(ゆる)せ」。もしも、誰かが、一枝の草や一握りの土を持ってきて、自分も大仏造立を手伝いたいと言ったならば、これを許せ、と言っている。一枝の草、一握りの土。そんなものが何の役に立つだろうか。何の役にも立ちはしない。力もない。お金もない。でもみんなを幸せにする事業に自分も関わりたい。そういう人たちが現れてくれることを聖武天皇は願っていた。そういう人たちの力を結集して造らなければ、大仏を造る意味がない。聖武天皇はそう考えていたのである》。

《盧舎那仏とはどういう仏なのか。そして『華厳経』とはどういう経典なのか。「盧舎那仏」は光の仏という意味。「華厳」とは世界を華で飾るという意味。さとりを求めて実践する菩薩たちのさまざまな行為が「華」となり、世界を美しく飾っていく》《盧舎那仏が住む世界は蓮華蔵世界と呼ばれる。蓮華蔵世界は、盧舎那仏がまだ菩薩だった頃に、長い時間をかけ、みずからの実践によって美しく飾った世界である。その美しい世界を、今度は私たちが、私たちの実践によって、さらに美しく飾っていこうというのが『華厳経』の考え方である》。

《人間も、そのほかの動物も、植物も、命なき細かい塵さえもが、等しく尊いと『華厳経』は説いている。人間と塵を平等とみなす思想。私たちの常識や想像を越える究極の平等思想である。『華厳経』によれば、盧舎那仏が住む蓮華蔵世界は、一切香水海という大海と、幾層にも重なる大地と風の渦に下支えされている。そして最下層に位置する風の渦の名は「平等」。「平等」に支えられた蓮華蔵世界は、あらゆる存在によって美しく飾られた、究極の平等世界なのである。動物も植物もともに栄える世を願い、一枝の草や一握りの土をもって現れる人たちを待ち望む聖武天皇。その思いの背後に『華厳経』があることは明らかだろう》。

こういう教えを、将来の日本を背負う東大寺学園の生徒たちが学ぶのは、素晴らしいことである。私も、こっそり聞いてみたいなぁ。
コメント (4)
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