tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

古事記完成1300年 ゆかりの地でイベント続々 by 日経電子版

2012年07月09日 | 記紀・万葉
今朝(7/9)の新聞はお休みだが、こういう日には電子媒体が活躍する。日本経済新聞電子版(7/8 17:23配信)に《「古事記」完成1300年 ゆかりの地でイベント続々》という記事が出ていた。奈良、松江、宮崎の各支局長による現地レポートで、これは力が入っている。奈良のところでは奈良交通の水田さん、ホテル日航奈良の高場さん、県の谷垣さんや私のコメントも登場する。以下、奈良を中心にピックアップして紹介する。

■奈良では神社など巡るバスツアー
6月末、奈良県南部・宇陀市の山あいにたたずむ八咫烏神社に40人近い日帰りバスツアーの一行が訪れた。ガイド役は高岡市万葉歴史館(富山県)の坂本信幸館長。参加者は古事記に登場する八咫烏の話や神社のいわれなどの解説に熱心に聞き入った。

このツアーは奈良交通と、実業印刷(奈良市)が発行する季刊誌「まほろびすと」が企画。神武天皇が築いたとされる城跡伝承地「菟田の高城」(うだのたかぎ、宇陀市)、天武天皇をまつる「浄見原神社」(吉野町)など奈良県南部の古事記ゆかりの地を巡った。奈良交通は昨年秋、専門家が解説するバスツアーを開始。毎回、想定を上回る申し込みが続き、参加を断る回が出るほど。7割が女性で、首都圏など他地域からの参加も多い。水田典男営業推進部長は「予想を超える状況。専門家のわかりやすい解説も人気につながっているのでは」と話す。



写真は、葛木坐火雷神社(笛吹神社)。トップ写真とも、7/3撮影

ご当地検定「奈良まほろばソムリエ検定」の最上級・ソムリエ資格合格者でつくる「奈良まほろばソムリエ友の会」(奈良市)は、メンバーがガイドを務めるバスツアーを計画する。鉄田憲男事務局長は「古事記はわかりにくいという人が多いが、食わず嫌いを払拭して あまり知られていない奈良の奥深い魅力を知ってもらえれば」と意気込む。


棚機神社(棚機宮 7/3撮影)

奈良まほろばソムリエ友の会と奈良交通がタイアップして行うバスツアーは、まずは本年9月から11月まで3コース・計6回実施される。9月は畝傍山・天香久山周辺、10月は田原の里(奈良市)・田原本町・大和郡山市周辺、11月は葛城市周辺を訪ねる。各コースとも同月内に2回実施される予定で、私は11月の葛城コースをガイドする。


博西神社(7/3)

葛城は、棚機(たなばた)神社、太田古墳群、博西(はかにし)神社、葛木坐火雷神社(かつらきにいますほのいかづちじんじゃ 笛吹神社)、角刺(つのさし)神社(角刺宮跡)など、相当ディープでニッチなコースである。各コース@5,800円~6,000円というリーズナブルなツアーだ。また奈良交通は、後述する「神話博しまね」を訪ねる1泊ツアーの販売も開始している。


角刺神社(7/3)

■ウオーキング地図付き宿泊プラン
「神話めぐり~古事記(ふることぶみ)」と題した宿泊プランを設けているのはホテル日航奈良(奈良市)。1室2人利用の場合、1人1泊7800~9800円で朝食付きと通常より割安のうえ、ゆかりの地を歩くウオーキングマップやガイドブックを贈呈する。古代から奈良盆地の東側の山裾を南北に通る「山の辺の道」をテーマにした第1弾(昨年10月~今年2月)は1000人超が利用。平城宮跡(奈良市)北側の古墳群を巡る第2弾「佐紀路」(3月~7月)は現時点で約830人と「山の辺の道」に迫る人気ぶりだ。



ホテル日航奈良ロビーの「古事記ゆかりの地マップ」、中央が高場さん。6/27撮影

8月からは第3弾「大和三山」も計画。広報担当の高場順子さんは「マップは担当者が実際に現地を歩いて作製しました。1300年以上前の人々がどんな思いでその場所を歩いていたのか、感じてもらえれば」と期待する。


東大寺をイメージした客室「華」

ホテル日航奈良はロビー壁面にも、大きな「古事記ゆかりの地マップ」を掲示している。東大寺をイメージしたコンセプトルーム「華(はな)」を設置するなど、「奈良」を前面に打ち出した戦略を展開中である。




おお、こんなところにもカキモトの華倭里行燈(かわりあんどん)が…

こうした民間の動きがある一方、奈良県は今年から日本書紀1300年に当たる2020年までの9年間、「記紀・万葉プロジェクト」を展開する。パビリオンなど箱モノや大型イベントといった旧来型の催しとは一線を画す試みだ。古事記関連の出版物を対象に「古事記出版大賞」を創設。12月に奈良市で表彰式を開くほか、9月には奈良県橿原市、来年1月には東京・銀座で記紀・万葉をテーマにしたシンポジウムを開くなどソフト事業を中心にする。県ならの魅力創造課の谷垣裕子課長は「(効果が一時的な)大型イベントではなく、息の長い集客が狙い。記紀・万葉についてわかりやすく情報発信し、各地の取り組みを紹介するのが県の仕事」と説明する。太安万侶の業績をたたえる記念碑も建立された。出身地とされる奈良県田原本町の小杜神社で、今月6日に除幕式が開かれた。

■「神話博しまね」21日に開幕
盛り上がりは奈良だけではない。島根県では今月21日、出雲大社(出雲市)や古代出雲歴史博物館、隣接する特設会場などを会場に「神話博しまね」が始まる。会期は11月11日まで114日間の予定。巨大スクリーンに神話にちなんだ作品映像を上映する神話映像館や各種店舗、情報発信ステージなどを設け、期間中に140万人の来場者を目標に掲げる。

出雲大社周辺では、もてなしの町づくりが始まっている。参詣道の「神門通り」は現在、電線地中化や車道・歩道を石畳にする工事が進む。「良縁に恵まれますように」「地域が豊かになりますように」。敷設する石材の裏に、観光客や地域住民が自由にメッセージを書き込める企画が人気を集めている。商店街関係者らでつくる「神門通り甦りの会」も観光客が休憩できるように店先に縁台や麻製の日よけのれんを設置。通りには常に紫色のはっぴを着た観光案内人を5人配置する。

古事記で日向神話の舞台となる宮崎県でも、関連イベントが目白押し。11月には宮崎市で「古事記ゆかりのご当地グルメまつり(仮称)」が開かれ、宮崎、奈良、島根3県の屋台を並べ、伝統芸能を披露する計画だ。



博西神社のガクアジサイ(7/3撮影)

■宮崎、「ワンコインツアー」好評
奈良県と同じく宮崎県も日本書紀とセットで盛り上げようと、今年2月に地元自治体や民間などと「記紀編さん1300年記念事業」の推進協議会を設立。観光客の誘致に取り組み始めた。河野俊嗣知事は20年に、文化の国体と呼ばれる「国民文化祭」を招致する意向を表明している。

神話の舞台とされる伝承が高千穂町や西都市、日南市、宮崎市など県内の各地に残っており、地元では観光客向けのイベントも始まっている。県は宮崎交通(宮崎市)などの協力で、ボランティアのガイドが同行し、古事記にゆかりのある地を500円で巡れる「神話巡りワンコインツアー」を実施、好評を博している。みやざき観光コンベンション協会(同市)も09年から若い女性をターゲットに県内の神社などいわゆるパワースポットを訪れる「宮崎恋旅」を展開。4月からは「ケータイ片手に恋つ神」キャンペーンを始めた。

この3県以外にも三重県など各地で様々な動きがある。旅行者だけでなく地元住民にとっても、歴史に根ざした地域の魅力を再発見するきっかけになりそうだ。(奈良支局長 川上寿敏、松江支局長 毛塚正夫、宮崎支局長 本田寛成)


『るるぶ古事記』で取り上げている地域は、島根、鳥取、淡路島、奈良、宮崎。このほか伊勢神宮の三重、ヤマトタケルの愛知・滋賀、吉備の岡山など、ゆかりの地はまだまだたくさんある。以前当ブログで、各県のゆかりの地それぞれが古事記をテーマとした「着地型ツアー」を組めば面白い、という提案をしたことがある。今年はぜひ古事記を「歴史に根ざした地域の魅力を再発見するきっかけ」とし、様々なイベントやツアーを展開していただきたいものである。
コメント (4)
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