tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

東京の奈良ファン(あやかさん)の声 観光地奈良の勝ち残り戦略(73)

2013年07月17日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略

これまでに50回も奈良に来られているという東京在住の「奈良を愛するあやか」さんから、猿沢荘が8月末廃業へというブログ記事に丁寧なコメントをいただきました。とても参考になるご意見ですので、ここで全文を紹介させていただきます(以下、青字があやかさんのコメント、黒字は私の意見です)。

もう50回も奈良に行くと、長所と同時に、奈良の弱点や欠点もいろいろ見えてきます。首都圏から見ると、われわれの感覚とかなりずれているなあ、と思います。耳に痛いとは思いますが、あえて都心の現実をお話しします。

一昔前なら、夏休みに家族で奈良、というのはありうることだったのです。ところが今では格安航空券で、同じ値段で沖縄や北海道に行けるのです。暑い中、わざわざ阿修羅を見に行くか、それとも海水浴を楽しむか、勝算は明らかです。韓国に至っては、奈良旅行より安いのです。そうでなくとも、今は、「マイル」というものがあります。病院の会計でもマイルが貯まるのです。そして航空券をゲットして、スイスやイタリアへ…こういう現実があります。

なるほど、マイレージサービスを利用することで、格安で海外に行けるのですね。「スペイン村へ行くより、スペインに行く方が安い」と言っていた人がいましたが、必ずしも冗談ではないのです。今の時代、全世界と競争しなければならない時代になりました。

奈良の人は親切だなあ…いつも思います。商店街だって庶民的で大好きです。しかし… 観光の構造の変化は明らかです。しかも… わたしには旅館の努力不足とは思われません。こういった「国際的な構造の変化」は明らかだと思います。

奈良の人は皆さん親切で、「もてなしの心」をお持ちです。心ない一部業者の「サービス」が悪くてガッカリして帰る方もいらっしゃいますが、住民の皆さんはやさしい方ばかりです。「旅館」については、残念ながら構造変化についていけなくなっていると思います。高度成長の時代、各地ではホテルがどんどん建ちました。しかし奈良では旅館業者などの反対で、ホテルを建てさせなかったり、客室数に上限を設けたり…。結局、観光客は京都や大阪のホテルに泊まって奈良に日帰りするようになりました。「部分最適」を求め過ぎた結果、「全体最適」でなく「全体最悪」となったパターンです。

吉野に行った時のことです。大変な混雑で桜は見れない、奥千本行くバスは一時間待ち、それはいいのです、ところが、ロープウエーに乗ろうとしたら、ドアに掛け金だけで安全対策はしていない!事故が起きたら遅いのです。これは早急に対策をするべきです。新薬師寺の火災だってそうです。国宝に類焼しなくてよかった、ではなくて、こんなに防火対策が不十分だったのか、ということです。わたしは以来、吉野や新薬師寺へ行くことをやめてしまいました。

今、企業では「事業継続体制」とか「危機管理」と言われ、懸命に取り組んでいるところです。社寺や観光地でも、防火やセキュリティに万全を期さなければなりません。電気座布団で法隆寺が焼けた時代からどれほど進化しているのか、気になるところです。

法隆寺、小学生でも知っています。しかし交通は不便。JRの奈良駅は立派ですが、ホームはガラガラ、本数は少ない。都心では電車が一時間4本「しかない」と思われてしまうのです。器をいくら作っても、内容が伴わなければ宿泊客はやってきません。現実に、東京での関心事は、オリンピックではなくスカイツリーです。そうでなくとも、首都圏では「重文」だって貴重です。京都や奈良の社寺が、火災になると大騒ぎになります。

法隆寺へはJR利用となりますが、近鉄がメインと考えると乗り換えが不便ですね。郡山・筒井間の近鉄と交差する場所に駅を作ってもらうとか、かつての「天理軽便鉄道」を復活してもらうとか、何か手はないものでしょうか。私はたいてい近鉄筒井駅⇔法隆寺間はバスを利用しますが、休日は混んでなかなか進まないのが難点です。

一方、ならまち界隈の取り組みは評価できます。明日香村のとりくみは英断だと思います。もはや文化財頼み阿修羅頼み、では通用しないのです。他にも優れた観光物件は沢山あります。たとえば天理図書館。国会図書館と並んで、日本の二大図書館と国際的にいわれています。奈良国立博物館。正倉院展のみが関東では有名ですが、春の特別展や坂本コレクションはあまり知られていません。世界的な博物館なのに、もったいないです。

ならまちも明日香村も、頑張っています。頑張っている所には、必ず仕掛け人がいます。天理市には、「天理参考館」という素晴らしい博物館があります。教会本部の神殿なども、お願いすればガイドツアーをしていただけます。来年の天理市制60周年を機に、何か仕掛けをしてほしいところです。

奈良国立博物館は、ピーク時(正倉院展開催時)の1日当たりの来館者数は、世界一です。しかし青銅器館(坂本コレクション)は、あまり知られていませんね。すごい展示ですが、奈良に来られるお客さまには、中国古代の青銅器というものが、あまりピンとこないのかも知れません。もったいないことです。私も、もっとPRしなければ…。

近鉄西大寺駅。乗り換えが分かりづらいと部外者は思うのでは。興福寺の三重塔。あそこの桜は絶品だと思いますよ。人気が少ないですが。唐招提寺だって大修理の影響は大きかったとおもいますよ。これからは、薬師寺の大修理で結構観光客が減るのでは。文化財というのは、観光資源であると同時に、アキレス腱ともなるのです。ましてや法華寺や大安寺を訪れる人はどれだけいるのでしょうか…。

大和西大寺駅は、橿原神宮方面に行くときなど、私も時々迷うことがあります。興福寺の国宝三重塔は桜どころか、三重塔の存在すらあまり知られていないのが残念です。法華寺は観音さまやお庭がよく知られていますが、大安寺の仏さまをご存じの人は少ないと思います。光仁会(がん封じ笹酒祭り)のときだけは、大混雑するのですが…。

談山神社はいまだにトイレは汲み取りなのですか。トイレがきれいでなければ、現代では通用しません。器を作るのではなく、既存の文化財を再発見して、観光対策を行っていくことが先決のように思います。tetsudaさん。ありがとうございました。

知人(談山神社総代)に聞きましたが、水洗だそうです。詳しく書きますと《社務所と社務所の近くの公衆トイレは(大化改新1350年祭の時ですので)18年前くらいに水洗化いたしました。正面は9年くらい前でここだけは下水浄化が循環式で、基本的に汚水を出さない浄化槽となっています》とのことです。トイレを増やしたり、きれいにしたりすることは大切ですね。お寺や神社のトイレなど、まだまだ不十分なところが多いですから。

「器を作るのではなく、既存の文化財を再発見して」というのは、全く同感です。先ほどの天理教の施設などを活用すれば、もっと多くの参拝客を呼べると思います。山添村も、東京発の夜行バスが早朝(奈良県で最初の停留所)に到着しますから、これを観光客誘致に使わない手はないと思います。

観光まちづくりなどには「ヨソ者、若者、バカ者」が必要、といいますが、私はこれでは不足で、ここに「知恵者」が要ると思います。観光客誘致は行政頼みにせず、民間の知恵と努力を結集して実現しなければなりません。奈良を愛するあやかさんのコメントは、とても参考になりました。有難うございました、ぜひ今後に活かしてまいります。
コメント (3)
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