tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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外国産ロブスター問題 または「料理人の自殺」

2013年11月16日 | 意見
 味覚極楽 (中公文庫BIBLIO)
 子母澤寛
 中央公論新社

食材偽装の報道が止まらない。とうとう昨日(11/15)の毎日新聞では、コストを削減するために「人工フカヒレ」を使っていた(価格差10倍)、というとんでもないホテルのことが報道されていた。

子母澤寛著『味覚道楽』(中公文庫)に、ブルタニーの海老(ブルターニュ産オマール海老)の話が紹介されていると、「デスクメモ」(11/12付奈良新聞)で知った。本書を買ってきて読んだところ、伯爵・寺島誠一郎氏からの聞き書きとして「料理人(シェフ)の自殺」という逸話が収録されていた。

パリのある公爵が、同じ食通の友人たちを呼んで一夕の宴を張る。料理人はこのために生命をけずる思いで献立をこしらえた。その中に北の方でとれる有名なブルタニーの海老がある。ところがどうしたものか大切な時間になってもその海老が着かない。助手たちはいろいろな海老を持って来てそれで間に合わせようとしたけれども、料理人は頑としてそれを却(しりぞ)け、いよいよという時間になってとうとう自殺してしまったいう話がある。すべて料理人はこの心持が大切である。

「デスクメモ」の筆者は《高価な料理だからでなく 料理人の普遍の精神を説いていることにひかれ、早速、ネット書店で注文しました》とある。「外国産ロブスター」を「伊勢エビ」と虚偽表示していた鳥羽市の老舗旅館の料理長に聞かせてやりたい逸話である。

食材の偽装問題の広がりは、とどまるところを知らない。加工食品や生鮮食品の表示については、JAS法で品種や産地などを示すよう規制されているが、外食の表示については対象外だった。そのスキをついてこのような偽装が広く行われた訳だが、とうとうそんなところまで規制しなければならない日本になったとは、誠に情けない話である。
コメント (3)
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