tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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醸造アルコールの添加、誤解と真実

2013年12月15日 | 意見
昨日(12/14)は、奈良市での「日本酒で乾杯条例」制定の話を書き、たくさんのアクセスをいただいた。今日はその流れで「醸造アルコール添加」の話を紹介する。日本経済新聞(12/14付)に「日本酒でも偽装 醸造アルコールとは何か 」という長文の記事が出ていて、NPO法人「スマート観光推進機構」(Myまち遊び)の星乃勝さんがメーリングリストとHPで解説されている。抜粋すると(太字はtetsuda)、

日本酒の偽装が問題になっている。確かに偽装は認める訳にいかない行為だが、単に混ぜ物にして粗悪品を流通させているだけでないことが、日経新聞のレポートで分かった。また、国により酒税法のあり方が異なっている点も課題としてあるようだ。今の時代にあった,消費者に理解されやすい日本酒のあり方を、本質に立ち返って議論する必要があるのだろう。

【ポイント】
・ 日本酒の偽装は、純米酒に醸造アルコールを混ぜたケースが多い。
・ 国税庁の基準では、純米酒の原料はコメと米こうじだけで、醸造アルコールの添加は認めていない。
・ 醸造アルコールを加えると味がすっきりして淡麗辛口になりやすい。純米酒に比べて飲みやすい。
・ 吟醸酒の香りの成分はアルコールに溶けやすい。醸造アルコールを添加することで、それまで酒かすに移っていた香りが酒にとどまる。
・ 純米酒はコメの品質や気候などに大きく左右される。酒質を安定させる役割も担う。

・ 日本酒の消費量はこの15年で半減した。吟醸酒は前年度比7%増。純米吟醸酒は同8%、純米酒は2%増。一方で普通酒は6%減。高級な日本酒にシフトしている。
・ 輸出も好調だ。2012年の輸出量は約1万4000キロリットル。10年前の2倍近い。中でも米国と韓国、香港の伸びが著しい。特に米国、香港、シンガポールは、純米吟醸酒などの高級酒に対する引き合いが強い。
・ 米国の酒税法では(1)ビール(2)ワイン(3)蒸留酒に分類されるが、醸造アルコールを添加したものは税率の高い混成酒に分類される。
・ 醸造アルコールを添加していない日本酒(純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒)はビールと同じ扱いとなり、醸造アルコールを添加したもの(吟醸酒、大吟醸酒、本醸造酒、普通酒)は(税率の高い)蒸留酒扱いとなる。
・ 海外での販路を広げるためにも、表示の適正化と簡素化が欠かせない。


新聞には《吟醸酒などの高級酒では、添加数量の上限が定められている。白米の重量の10%以下となっており、増量目的というよりは品質面への効果が期待されている》《「酒かすに移っていた香りが酒にとどまるようになったのです」。実際、全国新酒鑑評会では吟醸酒をはじめとして出品される酒の大半が醸造アルコール入りだ》。外国人には《「安酒には増量目的、高級酒には香りを高めるために添加している」との説明が理解できないようだ》などの記述が続く。

吟醸酒・大吟醸酒へのアルコール添加は、日本酒の香り成分を閉じこめるために行われるもので、決して悪いことではなく、添加できる量も10%に満たない。ひと口飲んでみて「この吟醸酒は香りが立っているなぁ」と思ってラベルを見ると、たいていアルコールが添加されているし、全国新酒鑑評会のお酒も、確かにアルコール添加が主流だ。なおアルコールを添加すると、味は辛口になる(日本酒度が下がる)。焼酎の水割りを作るとき、焼酎が多いと辛く感じるのと同じ理屈である。

吟醸酒・大吟醸酒へのアルコール添加は、高度成長期の安酒(アル添酒、三増酒)とは、意味が違うので、目の敵にする必要はない。ただし、香りを閉じこめる目的でアルコールを添加しているのに「純米酒」の表示をすると、これは偽装表示だし、米国では脱税行為となる。

日本の消費者が純米酒にこだわるのは、かつての「アル添酒」「三増酒」の悪いイメージが根強いからだ。私も学生時代(昭和40年代後半)に安くてまずいアル添酒を飲み、長年、その先入観から抜け出せなかった。だからある意味、酒造業者の「自業自得」という面があることも否めない。

日経新聞は《和食の無形文化遺産登録は、消費低迷が長期化している日本酒にとって反転攻勢のチャンスでもある。海外での販路を広げるためにも、表示の適正化と簡素化が欠かせない》と記事を締めくくっている。正しい表示をしつつ、「アルコール添加した吟醸酒・大吟醸酒は、こんなに美味しい」と、堂々とアピールしていただきたいものだ。

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