tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良県は、神仏に抱かれた日本の聖地。観光地奈良の勝ち残り戦略(78)

2014年02月02日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
「南都和唱会(なんとかしょうかい)」は、奈良県の活性化を考える異業種交流会である(会員数:約150人)。奈良県を「何とかしよう」という趣旨だ。私は2年ほど前からメンバーに加えていただいている。その2014年初の会合が1/29(水)、近鉄奈良駅ビル5階の「クラブツーリズム奈良旅行センター」で開催された。観光振興に関するシンポジウムのあと、懇親会が開かれた。



今回は、なんと!私が「基調講演」の講師&「パネルディスカッション」のモデレーター(司会)を仰せつかった。日頃から考えていることを「ドーする、ドーなる!奈良の宿泊観光~泊まってもらえる仕掛けを作ろう~」というPower Point(16枚のスライド)にまとめて講話(30分)し、そのあと「奈良を訪れる理由づくり」という演題のパネルディスカッション(30分)に臨んだ。



パネラーは、JTB奈良支店長の森慎也さんと、クラブツーリズム奈良旅行センター支店長の宮本津由(つゆ)さんだ。会場には近年では最高の、約100人もの方にご来場いただいた。私の講演の概要は、以下の通りである。

奈良県民800人へのアンケート(南都経済研究所 2010年調べ)では、8割の人が「県を代表するお土産がない(少ない)」「交通の便が悪く複数の観光地を移動するのが不便」「県を代表する美味しい食材や料理がない(少ない)」「女性や若者に受ける観光スポットや施設が少ない」と答え、7割が「社寺以外に観光客にPRできるものが少ない」と答えている。これで「観光立県」といえるのか。

他府県の好事例として紹介した「ホテル玉之湯」。森支店長のご紹介で先月訪ねた。部屋も温泉もバリアフリー。朝晩は館主の手打ちそば。毎日午後8時から、地元シンガーソングライターによる無料ライブ

観光振興で大切なのは「入込客数」ではなく、「宿泊客数」だ。泊まってもらわなければ、おカネは落ちない。県内での宿泊客数は全国で46位(ビリから2番目 2013年度観光白書)。これは他人事ではない。内訳を見ると県外客や外国人観光客は結構、泊まってくれているのだ。泊まっていないのは「県内客」、つまりは奈良県民。とりわけ、北部の人が南部に泊まっていない。

こちらは私がお薦めする県下の民宿。楽天トラベル5つ星の「民宿あおば」と、囲炉裏と五右衛門風呂の「里舎」。どちらも館主の「お・も・て・な・し」が最高だ

じゃらんリサーチセンターによる県民による「地元の愛着度」「地元への旅行おすすめ度」調査(2009年)でも、奈良県は下位にランキングされている。奈良県は観光資源に恵まれているし、良い宿も多いのに…。このくだりは、会に参加されていた奈良新聞客員論説委員(元編集部長)のKさん(川上村出身)が、奈良新聞(2/1付)のコラム「國原譜(くにはらふ)」に紹介してくださった。



JTB北海道はツアー「感動の瞬間(とき)100選」を売り出している。《あまり知られていない「その土地ならでは」の自然・情景等で、その土地に来ていただきたいお客様に「感動」していただける「瞬間」を集めたもの。最高の一瞬と出会うため、是非とも体験いただきたい「感動の旅」》(エースJTBパンフレット)というものだ。しかし、奈良県下にも「感動の瞬間」はたくさんあるではないか。



若草山の「山焼き」、野迫川村の「雲海」、二上山へ の「落日」、稲渕(明日香村)の「棚田」、春日大社の「若宮おん祭り」、御船の滝(川上村 )の「氷瀑(ひょうばく)」、高見山の「霧氷」などなど。これら観光資源を上手に活かし、感動していただき、何度も訪れていただく奈良県にしなければいけない。



講演のあとはパネルディスカッション。「地元旅行会社として、奈良への観光客誘致に関し、どんな取り組みをされていますか?」「奈良への観光客誘致に関し、これがネック(阻害要因)になっていると思っておられることはありませんか?」「奈良への観光客誘致はやりにくいですか。それはどんなところで感じますか?」「奈良の観光はなぜ、もっと盛り上がらないのでしょう?」という質問を投げかけた。


パネラーの森支店長(向かって左)と宮本支店長

話のなかで、神戸のご出身で、転勤により奈良に来られた宮本支店長にお聞きした。宮本支店長は奈良に来られて大の奈良ファンになり、昨年は奈良検定2級を取得して今年は1級を受験。奈良支店の社員さん全員に、受験を薦められている。「なぜ、そんなに奈良県が好きになられたのですか? 奈良のどこが魅力的ですか?」との私の質問に対し、「奈良県はどこを訪ねても神仏に包まれている気がします。素晴らしいところです」とのお答えで、これには会場からタメ息が漏れた。全くその通りだ。


会場の井阪英夫さん(南都経済研究所)から、質問をいただいた

この催しのあと、Facebook上でも様々な意見が交わされた。奈良市で観光に関わるN先輩は《 tetsuda様 「直球でズバリ」の素晴らしい講演お疲れさまでした。いつもながらさすがですね》《宮本さんは「奈良では神仏に包まれている気がする。素晴らしいところ」とお話でした。まったく同感です。よそ者も地元民も、奈良への愛着・思い入れを前面に出せばまだまだ伸びシロは多いかと…どこでも、判っていない人もいますが、すばらしい人たちもたくさんいますよね》。

これに対し、吉野町から参加された僧侶のTさんは《そこが本質で、そこしかないっていうほどのことだと、もう10年以上言ってきたのですが…》《旅館やいまの観光関連の環境では京都や大阪に太刀打ちはできないでしょ。唯一勝てるのはっていうのはひとつしかないと、ふつう思うのですが》《本質を、関わる人間が分かっていないので、訪れる人や招くシステムに反映されないというジレンマを感じます》。


懇親会の前に挨拶される明日香村の森川村長

「神仏に抱(いだ)かれた日本の聖地」。これは奈良県のイメージの根本に関わる素晴らしいコンセプトだ。京都などをはるかに凌駕している。3年ほど前に東京駅に行くと、聖林寺(桜井市)の十一面観音菩薩像のポスターが、至る所に貼られていた。今は、當麻寺(葛城市)のポスターである。JR東海の「うましうるわし奈良」キャンペーンであるが、これは本質を突いている。當麻寺編のうたい文句は、


古来、大和の人々は二上山の向こうに極楽浄土を幻視してきた。
その極楽への入り口、當麻寺。
「なも、阿弥陀ほとけ。あなたふと、阿弥陀ほとけ」
二上山に来迎した阿弥陀仏を見て、蓮の糸で「當麻曼荼羅」を織ったという中将姫の伝説。
そこから導かれる不思議な伽藍配置と、奇跡的に残された名宝の数々。
多くの謎と魅力に導かれて、當麻寺の1300年に逢いに行く。


「なも、阿弥陀ほとけ。あなたふと、阿弥陀ほとけ」は「ああ、阿弥陀仏、なんと尊い、阿弥陀仏…」という意味で、折口信夫『死者の書』に登場する中将姫のささやきである。これはよく勉強している。


王寺町から駆けつけた「雪丸」の着ぐるみ。雪丸は聖徳太子の愛犬である

NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は、JTB主催のバスツアー(日帰りのオプショナルツアー)のガイドをしている。「美仏巡り号」(長谷寺、室生寺、聖林寺、安倍文殊院)と、「世界遺産号」(東大寺、唐招提寺、法隆寺)の2本だが、いずれもご好評をいただいている。これからは式年造替を控えた春日大社や、修験道の聖地・金峯山寺をコースに取り入れるのも良いだろう。

閑話休題。奈良県を安物の観光地にしてはいけない。「神仏に抱かれた日本の聖地」という古くて新しいコンセプトのもと、奥深い奈良県の魅力を発信し、多くの心ある旅人を引きつけなければならない。折しも今年は「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録10周年。県南部の神仏霊場から、奈良県を盛り上げよう!

「南都和唱会」幹事の山本太治さん(三輪そうめん山本社長)、JTB奈良支店長の森慎也さん、クラブツーリズム奈良旅行センター支店長の宮本津由さん、お世話いただいたJTB奈良支店の山本敏明さん、お世話をおかけいたしました。おかげさまで、有意義な会とすることができました。ご参加いただいた皆さん、本当に有難うございました!
コメント (11)
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