昨日(12/19)県は、県営プール跡地に建設する国際級ホテルに関し、「森トラスト」のグループを「優先交渉権者」に選んだ、と発表した。これで当地への高級ホテル建設が、一歩前進したことになる(朝日新聞の記事は、こちら)。しかしそんな朗報の一方で、こんな残念なニュースが飛び込んできた。まだマスコミでは報じられていない。
奈良県新公会堂内のレストラン「奈良迎賓館」と、シルクロード交流館内のレストラン「クイーンアリス・シルクロード」が、本年(2014年)末をもって閉店するというのだ(公式HPは、こちら)。新公会堂のFacebookをチェックしていたYさんから、この情報をいただいた。これら2つのレストランは、初代料理の鉄人として知られる石鍋裕がプロデュースしていた。
以前から、これらレストランに関する芳しい評判はあまり聞かなかった。とりわけ「奈良迎賓館」は、「4,752円(通常平均)、8,000円(宴会平均)、3,888円(ランチ平均)」(ぐるなびの「平均予算」)と、手軽に食べられる値段ではなかった。顧客ニーズと価格設定にギャップがあったようだ。
業者側はよく「奈良で食べ物商売は難しい」と言う。お客側は「奈良では、なかなか思い通りの食事ができない」と言う。需要と供給がうまく一致しないのだ。だから奈良市で最も集客力のある東向商店街は、大規模外食チェーン店にどんどん浸蝕されている。「とんかつがんこ」や「天下一品」や「マクドナルド」なら、当たり外れがないからだ。
「小売りは立地」と言われるが、飲食店も立地に大きく左右される。奈良県新公会堂やシルクロード交流館は、商売をするには「微妙」な場所だ。ゴールデンウィークや正倉院展の時期ならいざ知らず、普段はわざわざ足を運んで食事をする場所ではない。「夢風ひろば」も、似たようなことが言えるかも知れない。奈良国立博物館の「葉風泰夢(ハーフタイム)」は、中国料理の桃谷楼が運営する美味しいカフェだが、正倉院展の時期以外は苦戦しているのではないだろうか。
もっとも、その一方で善戦しているお店もある。釜飯の「志津香(しづか)公園店」は、いつも行列が出来ているし、東向商店街の「おしゃべりな亀」や「チャイナダイニング 飛天」や「おかる」も、コンスタントに集客できている。一定の水準を突き抜けると、クチコミやSNSで評判がぱあっと広がり、多くの新規客やリピーターが訪れるのだろう。
いつまでも「奈良で商売は難しい」と歎いてばかりいるわけには行かない。最近は外国人観光客もたくさん訪れている。これら顧客のニーズをよく読み、メニューや価格設定や見せ方を十分工夫して、「奈良は社寺だけでなく、食事も美味しかった」と言っていただける観光地をめざしてほしいものだ。