tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

インバウンドの極意 by ブラッド・トウル氏 観光地奈良の勝ち残り戦略(83)

2014年12月09日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
一般社団法人「地域づくり支援機構」は12月4日14:00~、カナダ人のブラッド・トウル(Brad Towle)氏を招き「事例に学ぶインバウンド事業~今、奈良に必要なのはなにか!?~」という講演とトークセッションを「奈良県婦人会館」で開催した。トウル氏は、インバウンドのカリスマとして知られる。和歌山県田辺市にある一般社団法人「田辺熊野ツーリズムビューロー」のプロモーション事業部長である。
※写真はすべて12/4に撮影

早速この日の内容を、NPO法人「スマート観光推進機構」理事長の星乃勝さんが上手にまとめ、メールで送ってくださった。特に私にとって目からウロコだったのは、以下の6点である。


聞き手は松村洋子さん(奈良SGGクラブ)

1.「ブーム」より「ルーツ」。流行を追うのではなく、当地の歴史を売ることが大切。
2.当地ではワークショップを数十回重ねた(宿泊施設の女将の会、バス関係者、熊野本宮大社関係者など)。地元民の受け入れ体制を整えることが先決。
3.旅館や土産物店、飲食店の人が英語で説明できるよう、お店ごとに英語版「指差しツール」を作った。パンフレットはその場では使えない。指差しツールだと、その場ですぐ使える。
4.温泉は「spa」(沸かした風呂)ではない。onsenのままで良い。そのような誤訳が多すぎる。
5.初めて日本に旅行した時、成田山に連れて行ってもらったが何も分からなかった。仏教を知らない外国人も多い。説明が必要。
6.朝食に洋食を出すのは、おもてなしではない(逆に和食を出すのも)。相手(外国人)に選んでもらうことが大切。



では、星乃さんに送っていただいた講演録を紹介する。

外国人観光客受け入れ促進のための講習会
主催:(一社)地域づくり支援機構 (2014年12月4日)

講演:「外国人から見た『熊野』」
田辺市熊野ツーリズムビューロー:ブラッド・トウル
・田辺市熊野ツーリズムビューローは、設立の翌年に市町村合併があり混乱したが、ゼロからスタートがかえって良かった。既存の壁を越えるほうが大変。
・基本スタンスは、①「ブーム」より「ルーツ」、②「乱開発」より「保全・保存」、③「マス」より「個人」、④世界に開かれた「上質な観光地」に⇒持続可能で質の高い観光地「田辺市」とした。
・現地のワークショップを数十回重ねた(宿泊施設の女将の会、バス関係者、本宮大社など)。自分ができるようになるためのワークショップを目指した。
・お店の人が英語で説明ができないので指差しツールを作った。多くの自治体は同じものを作って配布するが、熊野では、お店ごとに伝えたいスタンスが違うので、お店ごとの指差しツールを作った。



・看板は英語表記だけで十分。たくさん書き込むと見にくいだけ。
・ビューロー立ち上げ前は看板の色も形も文字も違っていたが、看板を統一した。下に英語表記。
・英語のメニューやグルメマップも統一した。統一することで外国人も利用しやすくなった。
・バス時刻表が統一されてない。バス停名まで違う。今20種類の時刻表があり、外国語表記の時刻表を作るのが大変。しかし最も使われているのは時刻表。
・観光地をPRしても予約の仕方が分からない。小さな民宿なども統一した予約システムを作った。旅行免許がいる⇒着地型旅行会社を作った。この会社が旅行者と観光事業者をつなげた。宿泊施設90、語り部20、交通・飲食13  計123が利用している。
・ 熊野本宮大社を訪れる外国人は、2003年218人 2009年843人 2010年1629人(予約システムを作っただけで倍になった) 2013年2859人 2014年6月末2975人と増加した。
・世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)「明日へのツーリズム賞」に日本で初めてノミネートされた。



【課題】
・高野山と熊野のアクセスが課題。アクセスの補助金は「市民が利用する」ことを目的としているため、観光客が利用するのに理解が得られないでいる。住民の利用が減り、その穴埋めを観光客が補っているので、ひいては住民に貢献しているといえると考えるが…
・ローマ字、英語など表記方法がバラバラ。「熊野古道」の言葉は世界に通じるが、英語に直訳したものは外国人に通じない。温泉/spa(沸かした風呂のイメージ)。温泉は温泉で良い。JNTOは「onsen」を使っているが、国土交通省の道路標識では「spa」を使っている。観光庁がガイドラインを作ったので統一される方向にある。
・文化を守りながら、経済効果を高めるキャパシティをどのように増やして行けば良いかが課題。
・和歌山、奈良、三重県の全体的なプランが必要。
・インバウンド目線、お客様のために役立つ目線が求められている。
・その他、バスの時刻表が日本語のみや看板不足が課題。


 熊野三山 (楽学ブックス)
 Kankan
 JTBパブリッシング

トークセッション「外国人目線で奈良の魅力を引き出す」&質疑応答
(ブラッド/松村洋子(奈良SGGクラブ))
・日本に旅行した時、成田山に連れて行ってもらったが何も分からなかった。もう少し説明があればもっと理解できて楽しかっただろう。
・外国人は仏教を知らない人もいるので、理解しやすい説明がいる。
・多くの外国人はメインの観光コースを歩くことになるだろうが、いろいろなメニューを紹介することが大切。奈良はこんなにもたくさんの魅力のあるのかと感じてもらえる。
・世界合気道大会が開催された。合気道大会があるから外国人も来ると説明したが、理解してもらうのに苦労した。英語メニューある店が繁盛した。
・自分の店のためだけでなく、街全体のためにと考える視点が重要。
・観光客の人数が多過ぎると自然が損なわれる。経済発展とのバランスが大事。


 これからの観光政策と自治体―「稼げる地域資源」と「観光財源の集め方」―
 松井 一郎
 イマジン出版(自治体議会政策学会叢書/COPA BOOKS)

・大きなバスツアーは旅行会社が得意とするが、熊野は大勢のお客様を受け入れられなかった。ツアー客はツアー会社に任せることですむので楽。個人客への対応は手間がかかる。
・「JRパス」を利用する人が多いが、「JRお出かけネット」ではJR東海の路線検索ができない。
・外国人は7泊も8泊もする人もいる。滞在型観光を楽しみにきている。
・日本語の文章を英訳する時に直訳しても面白くないので、外国人に伝わりやすい英語に翻訳したが、その英語が間違っていると言われた。そのため再度日本語に直して説明した。この作業は大変だった。
・外国人もバックグランドも違えば個人ごとの好みも違う。相手の性格をつかんで(友達のようになって)通訳する事が大切。相手の人にあわせること。
・朝食を洋食で出すのはおもてなしではない。外国人にも自分で決めてもらうこと、選択できることが大切。(箸を出さずに、スプーンとフォークを出すのも同じ)



講演とトークセッションのあとは、場所を東向商店街の「飛天」に移し、交流会。希望者約60人がトウルさんを囲み、交流を楽しんだ。私の知人も多かったが、会のあと、5人ほどの方からFacebookの友リクをいただいた。

奈良県では日帰り観光客は増えたが、宿泊客は減っている。そのためには、修学旅行客を増やすことではなく、外国人観光客を増やすことが大切だ。児童・生徒は国宝の有難味すら分からない。その点、外国人は奈良を理解しようと努めてくれるし「7泊も8泊もする人もいる。滞在型観光を楽しみにきている」。

この日は県や市町村からも、たくさんの職員が来られていた。国は挙げてビジット・ジャパンキャンペーン(訪日旅行促進事業)に取り組んでいる。奈良県も市町村も力を合わせて「ビジット奈良キャンペーン」に取り組みましょう!
コメント (7)
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