金峯山寺長臈(ちょうろう)田中利典師の「宇宙飛行士と山伏」(全5回)を追っかけている。師は2007年12月13日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)主催「宇宙ことづくりフォーラム大阪講演会」で、「山に伏し野に伏す修験道の世界~宇宙飛行士と山伏修行~」という講演をされた。
※トップ写真は、吉野山の桜(2023.3.28撮影)
講演録は残っていないがこのあと、JAXA理事の小林智之氏から公式サイト用のインタビュー取材を受けられ、師はその内容を5回に分けてご自身のブログに、アップされた。第2回の今回のタイトルは「ことを起こす4つのキーワード」だ。
ご存じの通り、利典師の多大なご尽力により、「紀伊山地の霊場と参詣道」が2004年(平成16年)世界遺産に登録された。師は、このようなことを起こすキーワードは、①無私であること、②理念(目的、コンセプト)、③人とのつながり、④時代・社会との適合性、の4つであるとする。では、師のブログ(2016.1.3付)から全文を抜粋する。
「ことを起こす4つのキーワード」ー宇宙飛行士と山伏②
~田中利典著述を振り返るH28.1.3
小林:今先生がお話になった気づきというのは、気が付くこと。田中先生が広く21世紀の問題、社会問題に対し、今回の修験道を通じたお考えを伝える。これは人と人との気づきが重要である。その持つ言葉の意味を、受ける側がどう受けるかということが問題になってきますが、先生はたとえばどういう例えで、人と人との気づきを訴えようということになりますか。
田中:人間の話は会話によって成り立つわけですが、言葉というのはしゃべった瞬間に自分の言っていることと相手の受け取ることに違いが生まれ、必ず一致しているわけではないですね。私がしゃべったことが「きっかけ」となって、勝手に何かが生まれることもあるわけです。それに気づかせるために私はしゃべっているというのはおこがましいことですし、まして何人もおいでになったら余計それは難しいことですからね。
きっかけとしての何かの講演であったり、執筆であったりしますが、それを受け取った側は、どう受け取るかということですよね。もしかしたら、私がしゃべった内容以上の気づきを勝手にお持ちになる場合もあるかもしれない。これは私についてもそうで、いろいろな話を聞いて、その人がしゃべっていること以上のことに気づくこともありますから。それだから面白いんですよね。
小林:言葉というのは誤解もありますし、100倍に受け止めて広げていく人もいる。そのときに、田中先生が事業を、世界遺産を1つ「こと」として起こされた。その後に続く新しいこと、というか事業を作るきっかけというのが、気づきをベースにおやりになろうとされると私は受け取ったのですが、そのときに、例えば、ことを起こすときにものすごく重要だなという要素なり、そういったものというのはどういうものをお考えですか。
田中:いくつかありますが…。1つは、私が無いこと。「無私」であること。自分の欲とかが前に出ると「こと」は成りにくいですよね。もちろん、私だって欲はありますよ…、ありますけど、やはりものごとを「私」しないというのが、人と一緒に仕事をする上で、ものが成る1つの大事な要素だと思います。もし、私のこれまでの活動も、世界遺産登録をして何か金儲けをしようとか、地位を上げようとか、そういう私的な目的がどこかにあったら、協力してくれる人がすごく減っていたと思うんですね。
そういう意味では、ものを成す上では、なるべく「私」が少ない方がいい、ということを常に思っています。当然、人間には「私」がありますが、出来るだけ無いほうがものは成りやすいでしょう。
次に、理念が大事だと思います。理念というか、目的というか、そういうのをきちんと持っていて、それを全て皆に披瀝するかしないかは別にして、きちんと最初に理念というかコンセプトというか、そういうものを自分の中に持っていないと、途中でわけわからなくなってしましますから。
それが確立していると、臨機応変にいろいろな発想や可能性を皆が生んでくれる。「私」がないことと、理念をきちんとして、コンセプトを持っておくというは大事なものを作っていく要素だと私は思いますね。
それと、人とのつながりですね。そういう意味では、「私」の無いことが1つの人との大きなつながりを広げていくのです。やはり人間がやる仕事ですから、いかに多くの人との繋りを持つかというのは大変大事だろうと思います。
もう1つ大事なことは、時代性というか社会性というか、そういうものにマッチしなければいけない。独りよがりではいけない。うまくいかなかった例を見ると、やはり内向きだけでものをやっている場合が多い。内向きでものを進めると、時代性とか社会性とかが著しく乏しくなるのです。
~JAXA(宇航空研究開発機構)宇宙ことづくりプログラムインタビュー(2008年2月)より(インタビュアー:JAXA理事 小林智之氏)
※トップ写真は、吉野山の桜(2023.3.28撮影)
講演録は残っていないがこのあと、JAXA理事の小林智之氏から公式サイト用のインタビュー取材を受けられ、師はその内容を5回に分けてご自身のブログに、アップされた。第2回の今回のタイトルは「ことを起こす4つのキーワード」だ。
ご存じの通り、利典師の多大なご尽力により、「紀伊山地の霊場と参詣道」が2004年(平成16年)世界遺産に登録された。師は、このようなことを起こすキーワードは、①無私であること、②理念(目的、コンセプト)、③人とのつながり、④時代・社会との適合性、の4つであるとする。では、師のブログ(2016.1.3付)から全文を抜粋する。
「ことを起こす4つのキーワード」ー宇宙飛行士と山伏②
~田中利典著述を振り返るH28.1.3
小林:今先生がお話になった気づきというのは、気が付くこと。田中先生が広く21世紀の問題、社会問題に対し、今回の修験道を通じたお考えを伝える。これは人と人との気づきが重要である。その持つ言葉の意味を、受ける側がどう受けるかということが問題になってきますが、先生はたとえばどういう例えで、人と人との気づきを訴えようということになりますか。
田中:人間の話は会話によって成り立つわけですが、言葉というのはしゃべった瞬間に自分の言っていることと相手の受け取ることに違いが生まれ、必ず一致しているわけではないですね。私がしゃべったことが「きっかけ」となって、勝手に何かが生まれることもあるわけです。それに気づかせるために私はしゃべっているというのはおこがましいことですし、まして何人もおいでになったら余計それは難しいことですからね。
きっかけとしての何かの講演であったり、執筆であったりしますが、それを受け取った側は、どう受け取るかということですよね。もしかしたら、私がしゃべった内容以上の気づきを勝手にお持ちになる場合もあるかもしれない。これは私についてもそうで、いろいろな話を聞いて、その人がしゃべっていること以上のことに気づくこともありますから。それだから面白いんですよね。
小林:言葉というのは誤解もありますし、100倍に受け止めて広げていく人もいる。そのときに、田中先生が事業を、世界遺産を1つ「こと」として起こされた。その後に続く新しいこと、というか事業を作るきっかけというのが、気づきをベースにおやりになろうとされると私は受け取ったのですが、そのときに、例えば、ことを起こすときにものすごく重要だなという要素なり、そういったものというのはどういうものをお考えですか。
田中:いくつかありますが…。1つは、私が無いこと。「無私」であること。自分の欲とかが前に出ると「こと」は成りにくいですよね。もちろん、私だって欲はありますよ…、ありますけど、やはりものごとを「私」しないというのが、人と一緒に仕事をする上で、ものが成る1つの大事な要素だと思います。もし、私のこれまでの活動も、世界遺産登録をして何か金儲けをしようとか、地位を上げようとか、そういう私的な目的がどこかにあったら、協力してくれる人がすごく減っていたと思うんですね。
そういう意味では、ものを成す上では、なるべく「私」が少ない方がいい、ということを常に思っています。当然、人間には「私」がありますが、出来るだけ無いほうがものは成りやすいでしょう。
次に、理念が大事だと思います。理念というか、目的というか、そういうのをきちんと持っていて、それを全て皆に披瀝するかしないかは別にして、きちんと最初に理念というかコンセプトというか、そういうものを自分の中に持っていないと、途中でわけわからなくなってしましますから。
それが確立していると、臨機応変にいろいろな発想や可能性を皆が生んでくれる。「私」がないことと、理念をきちんとして、コンセプトを持っておくというは大事なものを作っていく要素だと私は思いますね。
それと、人とのつながりですね。そういう意味では、「私」の無いことが1つの人との大きなつながりを広げていくのです。やはり人間がやる仕事ですから、いかに多くの人との繋りを持つかというのは大変大事だろうと思います。
もう1つ大事なことは、時代性というか社会性というか、そういうものにマッチしなければいけない。独りよがりではいけない。うまくいかなかった例を見ると、やはり内向きだけでものをやっている場合が多い。内向きでものを進めると、時代性とか社会性とかが著しく乏しくなるのです。
~JAXA(宇航空研究開発機構)宇宙ことづくりプログラムインタビュー(2008年2月)より(インタビュアー:JAXA理事 小林智之氏)