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田中利典師曰く「奥駈の1日(下)」(朝日新聞「人生あおによし」第7回)

2023年12月16日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、朝日新聞奈良版「人生あおによし」の第7回「奥駈(おくがけ)の1日(下) 」。この連載は2014年11月9日から、20回のシリーズとしてスタートした。掲載当時の原稿に少し手を入れたものを師から送っていただいたので、掲載順に紹介させていただいている。
※写真は三重テレビ放送「新・ええじゃないか」(11/13)。僧侶は師のご子息の佑昌さん

この頃、還暦をお迎えになった利典師の「前半生の振り返り」である。前回、「奥駈の1日(上)」を掲載すると、師から「もう奥駈修行はとても行けないです」というコメントをいただいた。それほど大変な修行なのである。では、全文を紹介する。

奥駈の1日(下)
奥駈の初日は夜9時に床に就きます。2日目は朝3時起床、4時に山上本堂前で勤行をし、弥山山頂を目指し出立します。3日目には大峯山系で最も高い1915㍍の八経ケ岳を登頂、晴れた日には360度さえぎるもののない絶景に歓喜します。

釈迦ヶ岳からは下りが続き、脚を痛める人も多く、私もひどい目にあった経験があります。前鬼山に至って3日目を終え、前半行が満行となります。長期の休みを取れない人を考慮するためです。

峻険な登り道にかかると、先達の号令で「さーんげさんげ、ろっこんしょうじょう!」という掛け念仏の大合唱が始まります。「さんげ」とは懺悔、六根清浄は眼耳鼻舌身意の感覚器官を清らかにするという意味です。一心不乱に声を出して体を前に進めるうちに、身も心も掛け念仏に同化していくのです。

後半の南奥駈道は、1日休んでバスで上北山村浦向まで移動し、ここからは女性の行者らも合流します。5日目は林道を使い行仙(ぎょうせん=十津川村)の山小屋まで直登して奥駈道に復帰します。6日目は上葛川から玉置神社、そして7日目には最終地熊野本宮に至ります。

健脚組は夜半に玉置を出て山中を行きますが、別動組は下山してバスで本宮に入ります。現代的にアレンジされてはいますが、千年以上前から続く荒行であることは間違いありません。
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