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田中利典師の「金剛蔵王権現の怒りと救世」(朝日新聞「人生あおによし」第13回)

2023年12月29日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「金剛蔵王権現の怒りと救世」、2014年の朝日新聞奈良版「人生あおによし」第13回である。師は〈蔵王権現様は人間の愚かさを怒っているのではないでしょうか〉とお書きだが、怒っているのは利典師の方ではないだろうか。
※トップ写真は、吉野山の桜(2022.4.7撮影)

海外ではウクライナ戦争、ガザでの戦闘、国内では自民党の裏金疑惑やダイハツの認証不正問題…。来年こそ、マトモな年であってほしいものだ。では、全文を紹介する。

金剛蔵王権現の怒りと救世
蔵王堂の秘仏金剛蔵王大権現は、ほぼ同じ形相のお姿で三体で祀られています。三尊は釈迦如来、千手観世音菩薩、弥勒菩薩が本地(元のお姿)で、それぞれが過去、現世、未来を司る守護仏です。

白鳳の昔、金峯山上で千日間の苦行に入られた役行者が、衆生を三世に渡って救済するご本尊の出現を願い、それに応えてお姿を示されました。

しかしいずれも柔和なお姿なのでさらに勇ましいご本尊の出現を念じられたところ、三尊が変化して、大憤怒の形相で現れたのが蔵王権現なのです。顔を怒らせ、右手に三鈷杵を打ち振るい右足で虚空を蹴る、悪魔降伏のお姿。この恐ろしい姿で過去現世未来をお守り下さっているのです。

一人の人間の一生にも三世は存在します。なのに死んだら終わりだと考えている人のなんと多いことか。この世でこしらえた罪は未来永劫背負うことを知るべきです。寿命が延びたといってもたかだか80年、三世で考えなければ今生を正しく生きる意味は見いだせません。

文明社会がまきちらした環境破壊という災禍に怯える時代に、蔵王権現様は人間の愚かさを怒っているのではないでしょうか。怒りは大いなるエネルギーの発現です。そして怒りの形相は衆生済度の姿でもあるのです。
コメント
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