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田中利典師の「一千座護摩供」(朝日新聞「人生あおによし」第9回)

2023年12月20日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「一千座護摩供(いっせんざごまく)」。2014年の朝日新聞「人生あおによし」第9回である。師は京都府綾部市の自坊で、1日9回護摩を焚き、それを112日続けた。食事は1日2回で、睡眠時間はわずか4時間。これは金峯山寺ではなく、比叡山で行われている修法だそうだ。これは奥さんも、さぞ心配されたことだろう。
※トップ写真は、吉野水分(みくまり)神社の桜(2022.4.7撮影)

この荒行のことは、別のところ(一千座護摩供)でも書かれていて、そこでも「修行をしても何にもならんかった」とお書きだった。しかし決してそんなことはなくて、その後の八面六臂のご活躍は、このときに得たパワーが基になっていた、と振り返っておられる。では、全文を以下に紹介する。

一千座護摩供
平成5年6月、金峯山寺を休職し、私は自坊で4ヵ月にわたって毎日護摩を焚き続ける「一千護摩供」を発願しました。午前1時半に起床して水垢離を取り、3時、4時半、6時と護摩行を行じます。

法楽勤行して、一汁一菜の朝食を取り、更に午前8時、9時半、11時と護摩行を続け、昼食後も午後2時、3時半、5時と修法します。最後の法楽を終えると午後7時を回ります。夜食は取りません。一日2食。就寝は9時半で平均4時間の睡眠です。

加えて最後の百座行では五穀と塩を断ちました。三間四方のお堂で護摩を修すると、夏の堂内は60度以上の灼熱地獄になり、大量に汗をかきます。さらに体力が落ちました。ですが、それとは逆に気力は充実し、体は軽くなりました。役行者は空を飛んだという伝説がありますが、塩を断ち続ければ人は誰でも飛べるかもと思ったものです。

体重は15㌔減りました。満行日は多くの方に祝っていただき、へなちょこな行者を守って下さったご本尊のお陰であると感涙にむせびました。実は千回も護摩を焚き続けたのに一度もご本尊との一体感は得られず、雑念ばかりを燃やし続けたようなことでした。

しかし金峯山寺に戻ってからは修験三本山合同や役行者霊場会の設立、吉野大峯の世界文化遺産登録、修験道大結集、紀伊山地三霊場会発足など次々と大きな事業を成就させることが出来ました。「修行しても何にもならん」と悟った護摩供でしたが、今から振り返るととてつもなく大きな力を与えていただいたのかもしれません。
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