![]() | 認定 全国ご当地グルメGP |
INFASパブリケーションズ | |
INFASパブリケーションズ刊 |
年末から年始にかけ、新聞雑誌に目を通したうちで、目についたのが「食」に関する特集記事だった。週刊奈良日日新聞(1/1付)には《B級グルメ参上 おいしくて 安くて ルックスもグー》という特集記事が載った。《今、大きなブームとなっている「B級グルメ」。県内でも地元の素材をふんだんに使い、「味」「値段」「見ため」の3拍子そろった究極の食は存在する。しかし、意外と知られていないものも多い。奈良日日新聞社は今回、奈良発「とっておきB級グルメ」5つを紹介する》。
紹介されたのは「ならサンド」500円(奈良市大安寺町の居酒屋「きらく」)、スイーツ「月の誕生石」(橿原商工会議所、近鉄八木駅前の「やさい菓子工房cocoai」)、「古代米サラダ&鶏肉の奈良漬風味」(桜井市の老舗料理旅館「大正楼」の懐石の1品)、「大和牛とヤマトポークのハンバーグ」ご飯・味噌汁つき840円(かしはら万葉ホール「ほうらんや」)、「大和牛コロッケバーガー」250円(大和路へぐりくまがしステーション)の5つだった。
![]() | B級グルメが地方を救う (集英社新書) |
田村 秀 | |
集英社 |
毎日新聞奈良版(12/31付)には、「杖だんご」が紹介されていた。《「うまいものなし」返上へ 先月から御杖で 団子の商品化に取り組む》《地元産の農産物を使った特産品や企業の食品開発を手助けしようと、県内の企業経営者らが任意団体「新商品づくり支援機構」の設立を目指して活動している》《みつえ体験交流館(同村)で23日、メンバーと地元の主婦らが集まり、開発中の「杖だんご」を試食した。村の家庭では、餅米とうるち米を丸めて焼き、みそを塗った香ばしい団子が作られてきた。これを特産品として売り出そうと、11月から話し合い、杖をイメージした竹の枝でくし刺しにするなど工夫を重ねてきた》。
《試食品には、赤米やヨモギを使った三色団子も並び、塗る味噌も金ゴマ、黒ゴマ、ゆずなど種類を増やした。メンバーが宣伝のロゴマークのデザインを提案。今後、アンケートの取り方などのノウハウも提供する》《団子を作った農業、中谷フミヨさん(70)は「昨年、三重の百貨店の村特産品コーナーで手作りの餅が飛ぶように売れてびっくりした。元々何かを作るのは好きだが、特産品づくりは私たちだけでは無理。支援はありがたい」と期待を膨らませる》。
朝日新聞の投書欄「声」(1/3付)は、「B級グルメ」がテーマだった。紀州田辺市の「あがら(=私たち)丼」(地元の旬の魚介類・畜産物を使った丼)、自家製の「イワシの山椒煮」、飛騨の「漬物ステーキ」、高知の「鍋焼きラーメン」、ワサビを使った「豊川いなり寿司」などのほか、本年11月に姫路で開かれる「B-1グランプリ」に備えて「岡山B級グルメ盛り上げ隊」を結成した話などが出ていた。岡山県では「ひるぜん焼きそば」(2位)と「津山ホルモンうどん」(4位)が、昨年のB-1グランプリで上位入賞しているのだそうだ。
![]() | 作務衣を着た主人の店にうまいものはない。 |
小野 員裕 | |
双葉社 |
朝日新聞の新年特集「ニッポンver.2.0」の「食」(1/4付)では、料理評論家の小野員裕(おの・かずひろ)さんが《新橋おやじ発うまみ革命》のタイトルで、面白いことを書いていた。《化学調味料だけで味付けされた料理は、嫌な刺激が舌に残り論外です。でも、本来、化学調味料は「隠し味」で、うまみを底上げする働きがある。ある程度きちんとダシを取った上に加えると、劇的にパンチが利く。しかも、ふんだんにカネをかけた料理に比べれば、信じられない価格でうまみを演出できます》《今、気になっているのは「うまみ=甘み」という感覚が世にはびこっていることです。トマトやトウモロコシも糖度が高いものほど好まれる。(中略) でも、「強すぎる甘みは味を壊す」のは料理の世界では常識。甘さに頼ろうとするのは、センスのない料理人なんです》。
《今まで、世の「うまみ」を支配し、「自然志向、甘み志向」を世に広めたのは、たとえば銀座のOLの感覚だったように思います。この女性たちのすぐ近くに、こうした食の世界を覆う常識から、完全に自由な人々がいます。新橋駅や神田駅周辺に巣くうサラリーマンたちです。財布は軽い。その中で会社のストレスを発散して明日への活力を得るため、体で感じるうまい物を食べることに貪欲です。求めているのは、体を快楽物質で満たしてくれる「本当のうまさ」と「低価格」だけです》。こういう飲み屋街は、東京より大阪に多い。お初天神、阪急東通り、道頓堀、千日前、新世界、ジャンジャン横丁、鶴橋などがそれに当たるだろう。
![]() | 奇跡の“カリスマバイヤー”秘伝 「売れる」仕掛けはこの人に聞け! (East Press Business) |
内田 勝規 | |
イースト・プレス |
週刊ダイヤモンド新年合併号(10.12.25、11.1.1)は「総予測2011」という特集を組んでいた。そのなかに「地方食ブーム」の項目があった。筆者は内田勝規さん(オフィス内田代表)である。《地方発の食に注目が集まっている。全国を回っていると、それぞれの地域が今までになく活発にものづくりをしており、驚かされる。しかも、1つの地域だけでなく、積極的に地域間で交流をするようになっている》《東京を中心に置いた流通構造も変わってくるだろう。地方発で東京に売り込むという構図から、地方同士が手を結び、首都圏だけでなく海外にも目を向けるという意識が高くなってくいる》。
後半部分が鋭い。《「ご当地グルメ」や「B級グルメ」という言葉が流行だが、一過性のブームに終わったのでは意味がない。自分たちが日常的に食べているもの、地元の歴史に根ざしたもの、地元の産品に独自の加工をするといった地に足の着いた取り組みでなければならない。やすきに流れて、誰でもどこでもできるご当地カレーなんてでっちあげても、全国の消費者はだまされないだろう》。
《また、ものりづくりの志があるのなら、自分たちが生み出したものを自ら「B級」などと称してほしくない。これからのものづくりは、ないものねだりではなく、“あるもの探し”。地域にあるものをいかに磨くかということに徹したところが、注目を浴びるはずだ》。確かに「B級グルメ」という言葉は、何となく卑下したような趣きがあって食べ物さんに対して失礼なので、最小限の使用とし、できるだけ「ご当地グルメ」「地元ファーストフード」等々と呼ぶことにしたい。
![]() | 富士宮やきそば 公式ガイドブック |
(株)しずおかオンライン編集部 | |
しずおかオンライン |
さて、先ほど出てきた「B-1グランプリ」(B級ご当地グルメの祭典)である。第1、2回では「富士宮やきそば」、第3回では「厚木シロコロ・ホルモン」、第4回では「横手やきそば」、第5回では「甲府鳥もつ煮」がゴールドグランプリを獲得した。ここに先ほどの「津山ホルモンうどん」を加えて眺めると、いかにも「新橋駅や神田駅周辺に巣くうサラリーマンたち」が飛びつきそうな「体で感じるうまい物」である。しかも、地名を冠していることからお察しのとおり、営利目的ではなく、あくまで「食による地域おこし」を目的とする団体が出場資格を持つのである。
奈良には数々の郷土食・伝統食があり、美味しい野菜も畜産物もあるが、「阪急東通りやジャンジャン横町に巣くうサラリーマンたち」をグッと引きつけ、「体を快楽物質で満たしてくれる」食べ物とは、イメージもジャンルも違う。何とか、ご当地グルメの祭典に出場できそうな「体で感じる奈良のうまいもの」は、発掘できないものだろうか。