tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

広東風 四川風 薬膳料理、医食同源 ならまち 枸杞(くこ)/奈良市紀寺町

2023年03月21日 | グルメガイド
紹介するのが遅くなった。先月(2023.2.8)、「中國菜(ちゅうごくさい) 奈良町 枸杞(くこ)」(奈良市紀寺町91)を訪ねた(完全予約制)。ここは予約が取れないので有名な店だが、同行した常連のSさんが取ってくださった。ディナーコースをいただき、@15,000円(税サ込み)だった。仕入れにより、値段は変動するそうだ。お店のHPには、
※トップ写真は、カラフルで豪華なオードブル!


築100年以上の町家を改装したそうだが、仕舞屋(しもたや)にしか見えない


唯一の目印が、この標柱だ


山添村産の白茶(パイチャ)が出てきた。大和橘と仏手柑(ぶっしゅかん)を合わせてある

身土不二 医食同源 歴史ある地から生み出す 伝統的で独創的な中国料理 古くは約千三百年以上前の奈良時代。中国に渡った遣唐使により伝えられたとされている、奈良がルーツの食材があります。


この日(2/8)は、七十二候の「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」日だった

豆腐、お茶、スパイス、薬草、野菜発酵技術、蘇、味噌、しょうゆ、うどん、清酒、饅頭など非常に多岐にわたります。弊店はこの日本食文化発祥の地である古都奈良にて、永く多くの人々にそっと寄り添い、いつしか、なくてはならない存在になれることを強く願っています。そう、古来から不老長寿の生薬であった『枸杞』のように。


気仙沼産フカヒレ(魚翅)スープには、今市カブ(かつて奈良市今市町で栽培)が丸ごと1個!

料理
奈良町から10分ほどの場所にある自然豊かな山間の場所に枸杞の畑はあります。絶滅危惧種等の生態系を保全しながら環境保護に繋がる農産物の自家栽培に取り組んでいます。



いきなりパンチライン!こんな豪華なオードブルが出てきた、彩りも見事(=トップ写真)。向かって左手前は大和肉鶏のよだれ鶏、中央は長崎のアオリイカ、右は愛媛県のカンパチ、その上が紅芯大根と片平あかねの醤油漬、その左がスパイシーカシューナッツ、中央が赤酢クラゲ、左が香辣 (シャンラー) 海老 などなど

私たちが 無農薬・化学肥料不使用 で栽培し育て収穫した大和伝統野菜と中国野菜は、環境に配慮して栽培された農産物である ブランドの一つとして専門機関に認証をしていただいております。


点心。ヤマトポーク、フカヒレ(魚翅)、菜心(アブラナ科の中国野菜)を使用

「ぺたきんの恵み」認証を受けた農産物は、安心安全であるだけでなく、枸杞でご提供する農産物をお客様が召し上がることで間接的に、生物多様性保全=環境保護に貢献できるという特徴がございます。※環境に配慮した野菜作りを評価されて、2022年4月ミシュラングリーンスターを獲得しました。


「海鮮」の皿。四川児菜(しせんあーさい=子持ち高菜)、ホタルイカ、エビを炒めてある

ミシュランガイドのサイトには、このように紹介されていた。

ミシュランガイドのビューポイント
☆一つ星:近くに訪れたら行く価値のある料理

中国食文化の基となる“医食同源”を志す宮本和幸シェフ。広東と四川の経験を重ね、接客担当の妻と薬膳も学んだ。奈良の良質な食材を選び、中国野菜や伝統野菜は自ら育てる。青菜の腐乳炒め、在来大豆を使う麻婆豆腐など発酵調味料や香辛料を利かせた品々。健康的な食事を目指す“食養生”も実践する。



黄金柑(ゴールデンオレンジ)とグリーンレモンを使った氷菓(シャーベット)

サステナビリティを積極的に推進しているレストラン
☆ミシュラン グリーンスター

"私たち夫婦は、持続可能な農作に取り組んでいます。料理に使う中国野菜や伝統野菜は二人で育てたものです。無農薬で栽培し、自然環境と健全な土壌を守ります。また、地域の食材に目を向け消費し生産者を支えています。"



大和牛(やまとうし)、飛鳥蓮根、花椰菜(カリフラワー)にピリリとしたソースがかかる


「時菜」(旬の野菜)。自家製干し肉(ヤマトポーク)と春日早生(奈良の伝統的な葉物野菜)

このお店は『家庭画報』(2022年4月号)にも、紹介されていた。

薬膳スープ、点心など医食同源のコースが魅力「中國菜 奈良町 枸杞
自家菜園で無農薬野菜を栽培し、医食同源の料理を理念とする宮本和幸さん。「福臨門酒家」や「中國菜 老四川飄香」で研鑽を重ね、昼は香辛料を効かせた前菜や薬膳スープ、点心のコースを提供しています。



麻婆豆腐。大和大鉄砲の豆腐に白子がつく。やはりここには白ご飯が合う。「白」の三重奏だ!


締めの「宋嫂魚面」。南宋風スズキのあんかけスープと中華麺

「地元で受け継がれてきた野菜には野趣味があり、中国の食材や調味料とよく合います」と語り、化学調味料を使わず、野菜の塩漬けや発酵唐辛子といった自家製の発酵食品や香辛料で調味。複雑で深みのある独自の味で食通たちを魅了しています。


これは楽しい!ハリネズミの饅頭、揚げていないゴマ団子、焙煎釜煎り茶


ハリネズミの菓子に目があったって、いいじゃないか!



「複雑で深みのある独自の味」とは、うまいことを言ったものだ。発酵調味料(野菜の塩漬、発酵唐辛子など)や花椒(ホアジャオ)などを使い、広東風・四川風・薬膳風に仕上げた料理は、とても新鮮だ。化学調味料は使わず、無農薬・化学肥料不使用の自家製野菜は、食べていて、体の中から浄化されるような思いがする。

宮本シェフ、奥さん、ごちそうさまでした。Sさん、ご予約・ご同行ありがとうございました。皆さん、予約を取るのは大変ですが、ぜひいちど、チャレンジしてください!(予約方法は、こちらをご参照。)
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田中利典師の「吉野山巡礼」/『奈良大和路の桜』(淡交社刊)より

2023年03月20日 | 田中利典師曰く
2015年3月、淡交社から「奈良を愉しむ」シリーズとして『奈良大和路の桜』が刊行された。共著者は田中利典師、岡本彰夫師、岡野弘彦氏、桑原英文氏、菅沼孝之氏という錚々(そうそう)たる顔ぶれである。同じシリーズには『奈良大和路の紅葉』がある(2014年10月刊)。
※トップ写真は、ウチの近隣公園のヤマザクラ(コロナ禍の2020.4.5に撮影)

田中利典師はご自身のFacebook(3/17付)で、 本書所収の「吉野山巡礼」を公開された。吉野山の桜を詠んだ短歌や俳句を交え、分かりやすく書かれているので、ここで紹介させていただく。ぜひ、熟読玩味していただきたい。

「春を前に哀しいお知らせ…」
東大寺のお水取りも終わり、春到来が告げられています。今年の桜は早いようです。そんな春本番を目の前に、哀しいお知らせ…。写真家の桑原英文さんの写真に私の随筆などとコラボして出版された、奈良の桜を紹介する『奈良大和路の桜 』(淡交社刊)が、絶版となりました。先週、出版社から連絡がありました。えーー、春本番を前に??って思いましたが、大変残念です。

まだAmazonでも在庫はあるようなので、お求めの方はお急ぎ下さい。万一欠品の場合は私の手持ちも少しあります。フェイスブックメール(メッセンジャー)でご連絡下さい(サイン付きですよ〜ん)。本書で書いた私の、吉野の桜の解説文を紹介します。

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「吉野山巡礼」金峯山寺 田中利典
吉野山は質と量、そしてその歴史ともども、誰もが認める日本一の桜の名勝地でしょう。ただし、漠然としてその花の美しさを訪ねるのはもったいないことですね。私は二通りの味わい方をお勧めしています。

一つ目は、吉野の桜の、本来の意味に触れる鑑賞です。吉野の桜は山桜…。今から千三百年の昔、修験道の開祖役行者が、吉野の奥、金峯山山上ヶ岳で一千日の修行をされ、蔵王権現というわが国独特の御本尊を祈り出されました。そしてそのお姿を山桜の木に刻んで堂に祀ったのが金峯山寺の始まりであり、以来、山桜は蔵王権現のご神木とされました。

役行者は「桜は蔵王権現の神木だから切ってはならぬ」と里人に諭されたといわれ、吉野山では「桜は枯枝さえも焚火にすると罰があたる」といって、大切に大切に守ってきました。また訪れる人たちが権現様への信仰の証としてご神木の献木を続け、山を埋め、谷を埋めて、桜花爛漫の山となっていったのでした。吉野山の桜は、決して、観光地や名所地にしようと植えたものではなく、蔵王権現への信仰によって育まれた「生きたお供え花」だったのです。

それ故、三万本にも及ぶ全山の桜は金峯山寺本堂蔵王堂を中心に、広く下千本、中千本、上千本、そして奥千本と山肌に連なるようにして咲き揃います。ちょうど、上千本花矢倉辺りから俯瞰して蔵王堂を望むと、その様子が手に取るように眼下に広がります。神宿る花として桜を見る…吉野山でこその、古き良き日本の花見と言えるでしょう。

もう一つは、そういった信仰の歴史とは別の、吉野山ならではの、深い歴史に重ねて花を楽しむという訪ね方です。吉野から挙兵して壬申の乱を勝利した大海人皇子こと天武天皇をはじめ、吉野の桜を愛した西行法師。愛妾静と逃げ来たった源義経主従。南北朝の後醍醐天皇。栄華を極めた太閤秀吉。江戸期には芭蕉や良寛、本居宣長など、もう枚挙に暇なく歴史上の人物がその足跡を花に残しました。中千本桜本坊の境内に伝わる「天武天皇夢見の桜」に遙か古代のロマンを探してみては如何でしょうか。

 「花を見し昔の心あらためて 吉野の里に住まんとぞ思う」(西行法師)
少し足を伸ばして、奥千本を尋ねれば、三年のわび住まいをした西行法師寓居跡に遅咲きの桜が待っているでしょう。

「ここにても雲井の桜咲きにけり ただ仮そめの宿と思うに」(後醍醐天皇御製)
雲井の桜は獅子尾坂の登り詰めた付近にありました。残念ながら今はその名残を探すことも出来ませんが、吉水院(現吉水神社)の後醍醐天皇行宮からは天皇も愛でたであろう一目千本の絶景が望まれ、吉野朝宮跡(金峯山寺南朝妙法殿)のしだれ桜に佇めば、南朝哀史が甦ります。

 「とし月を心にかけし吉野山 花の盛りを今日見つるかな」(豊臣秀吉)
文禄三年四月、徳川家康や伊達政宗など戦国大名の勝ち残り五千人を引き連れて、吉野での大花見の宴を催した豊臣秀吉は、満開の花の下、蔵王堂の庭前に舞台を設えて、新作能「吉野詣」を舞ったと伝えられています。

 「春雨の木下につたう清水かな」(芭蕉)
西行を慕い二度にわたって吉野を訪れた芭蕉。何故か桜の句は一首も詠んでいませんが、西行庵近くに湧く苔清水を詠んだ歌が残っています。

 「わが宿に咲けるを見ればますますに 今日は吉野の桜思ほゆ」(本居宣長)
宣長は子供に恵まれなかった両親が願掛けして授かったという、金峯山一山水分神社の申し子。その恩に報いるために、生涯に三度の吉野詣をして、桜に思いを寄せています。上千本天王橋から猿引坂にかけての左右にある「布引桜」の並木を行けば、宣長の心を感じ取ることが出来るかもしれません。。

かくの如く、千年以上にわたって日本人の心をとらえ続けた吉野の桜。まあ、とやかく言わずして、満開の桜を前に身を置けば、蔵王権現と共に、花の精たちが深く癒してくれることでしょう。

***********

本書には巻頭解説として、もう一文「大和の桜、吉野の桜」も書かせていただきました。よろしければ是非、この本書をガイドブックに奈良県各地の桜名所をお訪ね下さい。
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蹴抜塔(気抜けの塔)が残る金峯神社(吉野町吉野山)/毎日新聞「やまとの神さま」第38回

2023年03月19日 | やまとの神さま(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「やまとの神さま」を連載している。先週(2023.3.16)掲載されたのは〈金峯神社(吉野町)/金鉱の守り神 義経伝承も〉、執筆されたのは兵庫県姫路市在住の池内力(いけうち・ちから)さんだった。
※トップ写真は、金峯神社の拝殿=吉野町吉野山で

池内さんは遠方にお住まいなのに、よく奈良へお越しになる。先週(3/13)も「奈良の茶がゆ、いただきます!」というイベントで、県指定文化財「旧細田家住宅」(奈良市)に来て下さった。初めてお召し上がりになったほうじ茶の茶粥は「格別の味わいでした」とお書きになっている。2021年からは、ブログ「やいちの歴史探訪」もスタートされた。では、毎日新聞の記事全文を紹介する。

金峯神社(吉野町)
金峯(きんぷ)神社は吉野山の奥千本、大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)の第二門である修行門(二之鳥居)を過ぎて、急坂を登った木立の中にあります。

祭神は金山毘古神(かなやまびこのかみ)で、伊邪那美命(いざなみのみこと)が火の神を産んだ時、苦しんで吐いたものから生まれた金鉱守護の神です。金峯山が金脈の存在する山「御金(みかね)の岳(たけ)」だと信じられていたので、地主神として祭られるようになりました。

明治時代の神仏分離以前、金峯山寺(きんぷせんじ)には山上の蔵王堂(現在の大峯山寺(おおみねさんじ))と山下(さんげ)の蔵王堂(現在の金峯山寺)がありました。金峯山寺と金峯神社は一体の存在でしたから、金峯神社も山上と山下にあったと考えられます。

このことは、藤原道長が大峯山に埋めた国宝の金銅経筒を金峯神社が所蔵していることからも推測できます。明治初期には、金峯山寺蔵王堂が金峯神社の口ノ宮となっていたこともあります。

境内地を一段下がった所には、源義経が屋根を蹴破って追手から逃れたとの伝承がある「蹴抜塔(けぬけのとう)」があります。

この建物の中に修行者を入れ、ガンガンと鐘を鳴らして俗気を抜く行が行われることから、「気抜(けぬ)けの塔」とも呼ばれています。現在の建物は大正時代の再建です。(奈良まほろばソムリエの会会員 池内力)
 
(住 所)吉野町吉野山1651
(祭 神)金山毘古神
(交 通)近鉄吉野駅下車、吉野山ロープウェイ「吉野山駅」から徒歩約2時間
(拝 観)境内自由。駐車場無
(電 話)0746・32・3012(宮司宅)


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田中利典師の『霊山へ行こう』(17)修行に「日常」を持ち込んではいけない

2023年03月18日 | 田中利典師曰く
金峯山寺長臈(ちょうろう)田中利典師は以前、『霊山へ行こう』という対談本を準備されながら、上梓されなかった。利典師はその原稿(自らの発言)に大幅に加筆され、Facebookに17回にわたり連載された(2023.1.21~2.10)。心に響く良いお話ばかりなので、当ブログで紹介させていただいている。
※トップ写真は大和郡山市・椿寿庵のツバキ(2010.2.6 撮影)

いよいよ今回は最終回、タイトルは「結び:諸縁を捨てる」。しかしこの回は、今年書き足された「おまけ」なのだそうだ。だから、とても力が入っている。のちに「大行者」となったRさんは初回の奥駈修行では、宿で株取引を指示していた、という「トホホ」な話が紹介されている。では師のFacebook(2/10付)から、全文を紹介する。

シリーズ「山人vs楽女/結び:諸縁を捨てる」⑰
著作振り返りシリーズの第6弾の最終稿です。諸般の事情で上梓されなかった対談書籍の下書きの、私の発言部分を大幅に加筆して、掲載し続けてきました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。最後は、まあ、おまけを書き足しました。みなさまのご感想をお待ちしております。

**************

「結び:諸縁を捨てる」
とても生きにくい時代を今の私たちは生きています。人間性というか、心の平安を脅かされる毎日を生きている、といっても過言ではありません。

大自然の運行から隔絶され、自分たちの「我欲」だけを優先することをよしとする現代社会。人を蹴落とし、家畜や自然を食い散らかし、ものの豊かさのみをもとめて、心が病んでしまうような世界と言うべきか。SDGsとか環境保全とか、実のない虚言ばかりに魂が惑わされています。いやですよねえ。

ですから、せめてたまには「魂を清めに山に来て修行して下さい」という思いで本文を書き綴りました。この稿⑰のところはおまけで、2023年の今日、書いています。

なにせ元原稿が力不足な文章なので、伝えたいことをうまく書けていないかもしれません。加えて、楽女先生との対談なので、先生とのやりとりで話が深まっていくという内容なのですが、ここでは私の文言だけしか掲載していませんから、十分にはお伝えきれないことがたくさんありました。ちょっと残念です。20年前、出版されていたら、それなりに意味があった本になっていたと確信しています。

その分、私の言うべき世界のみを大幅に加筆しています。山の修行の醍醐味や有効性については熱く語れたと思いますし、読んで頂いた方には少し届いたのではないかと思います。ただし、私の悪い癖で、ついつい近代的自我とか、近代合理主義うんぬんなどと小難しいことも呟いてしまいました。自分では、そこ、好きなんですよね。

でも大事なことなのですが、現代社会は、まるで神からも仏からも見放されつつある現状ながら、山の修行を通じて、神仏は等しく迎えてくれはりますから、まずそこから神仏を取り戻しましょうよと、山伏の私は言いたかったのです。

最後にもうひとつ、言い忘れたことがあります。行にはいる時の基本の心得として、「山に入らせていただく、山を歩かせていただく」という話を冒頭の稿で綴っていますが、それとは別に、山での修行で、もうひとつ大事なことを書き忘れていました。

それは「修行では所縁を捨てる」ということです。どの修行でもそうなのですが、「日常」(自分の都合)を修行に持ち込んでは修行にはならない、ということです。都会の論理、自分の論理を捨てて、山の論理、行の論理で行ずる、ということなのです。

もう亡くなった奥駈仲間で親友R氏は初めて奥駈に来たとき、毎日毎日、宿に着く度に自分の会社に電話して、株の取引の指示をしていました。「ばかもーん」という話です(笑)。その彼も行を終えて、そこでようやく気づいたようで、翌年からはすっぱり、株のことは奥駈中はやめていました。

彼はそれから25年ほど、奥駈に来て、総奉行を担う大行者になりましたが、お行に入る心構えというのは最初はなかなかわからないものなのですよね。行を重ねる中で、行をするっていうことの本当の意味に彼は出会ったのだと思います。前稿で「奥駈病」という話を紹介しましたが、私が「奥駈病やな」と名付けた最初の行者が彼でした。

諸縁を捨てて、行ずる…とても肝心なことです。山伏達は、在家行者でいわゆる優婆塞。社会でのたくさんの繋がりを大切にしつつ、自分の修行にも邁進します。でも、修験のお行は在家も出家も別はなく、同等に行じますが、どちらにしろ、行のときは諸縁を捨てて行ずるのが基本なのです。

だからこそ、大会社の社長さまであろうが、幹部であろうが、ひら社員であろうが、大工さんもお百姓さんも公務員も鍼灸師もアーティストも大学の先生も、みんな一緒になって、同じ道を同じように歩くことが出来るのです。だから山の修行は素晴らしい…。これを最後のまとめとします。

***************

私は5歳で大峯に登り、山上ヶ岳には112度、25歳から入った奥駈修行は17度、金峯山寺の正式入峰「蓮華入峰修行」には28度と山修行を重ね、まさに大峯に育てて頂いた行者人生でした。へなちょこ山伏でしたが、なんとか、ここまで山伏を続けさせて頂き、たくさん学び、教えて頂き、鍛えて頂きました。

そんな私の立場からお話しする「霊山へ行こう」という内容の対談本が企画され、じつは吉野で二度にわたり、楽女先生と書籍のための対談をしたのでした。最終的に上梓されることなく、ながいこと、お蔵入りのままでした。

今回は意を決して、私の当時の心情を吐露する形で、著作振り返りシリーズの第6弾として、認(したた)めさせていただきました。拙い文章に長らくお付き合いいただいたみなさまに感謝申し上げます。けっこう書きごたえ、なおしごたえがある毎日でした。
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法隆寺の特設ステージで野外オペラ、5月18日(木)~21日(日)!(2023 Topic)

2023年03月17日 | お知らせ
法隆寺の五重塔・金堂と大講堂の間に特設ステージを作り、2023年5月18日(木)~21日(日)、野外オペラ「トロヴァトーレ《吟遊詩人》炎の復讐劇」が開催される。原語での上演だが、日本語の字幕がついている。チケット購入は、こちらから。さわかみオペラ芸術振興財団の公式HPによると、

ジャパン・オペラ・フェスティヴァル 2023 法隆寺公演
野外オペラ「トロヴァトーレ〈吟遊詩人〉」~炎の復讐劇~


2023年5月18日(木)・19日(金)・20日(土)・21日(日)[全4日間公演]
【開場・開演】南大門開場:17時30分/客席開場:18時00分
 開演:18時30分(終演予定:21:10頃)※休憩は2幕終了時に1回
会場 法隆寺特設ステージ

演目 オペラ「トロヴァトーレ〈吟遊詩人〉」全4幕/原語上演/日本語字幕付き
作曲 ジュゼッペ・ヴェルディ
台本 サルヴァトーレ・カンマラーノ、レオーネ・エマヌエーレ・バルダーレ(補作)
原作 アントニオ・ガルシア・グティエレス/戯曲「エル・トロヴァドール」

主催 ジャパン・オペラ・フェスティヴァル実行委員会
   公益財団法人さわかみオペラ芸術振興財団
共催 テレビ大阪
協力 近畿日本鉄道/南都銀行
後援 奈良県/斑鳩町/在日イタリア大使館/奈良県教育委員会

指揮:吉田 裕史
演出:フランチェスコ・ベッロット
照明デザイン:ジャン・ポール・カッラドーリ
主要キャストはWキャストです。※順次発表
Rosso:5月18日(木)、20日(土)
Bianco:5月19日(金)、21日(日)
演 奏:モデナ歌劇場フィルハーモニー
開催地:法隆寺(奈良県、斑鳩町)


本格的なイタリアのオペラ、法隆寺での開催は珍しい。奮ってお申し込みください!
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