エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

青春の1ページ

2008-01-18 | 日々の生活
              【麗しの磐梯 :崎川浜】

 
 宮本輝「流転の歳月」の2回目を視聴する。(教育テレビ1/16 p.m.10:25~)
前回、波乱の少年時代を語る宮本に、今にも泣き出しそうな様子を見た。でも今回は、青春時代の思い出を明るい表情で語っていた。
 実に彼の波乱の人生である。でも、少なからず、誰にもそれなりに、人生を決めた、人生の岐路と言えるような体験はあるだろう。それは、偶然の時間との出会いである。漫然と生きてきたわけではない。誰しも、悩み、考え、精一杯の日々を生きてきたはずだ。そう思いたい。そうした集積が今日の人格を作っているのだろう。

 彼の学生時代の体験が作品「青が散る」に書かれているという。一読したいと思った。
 思えば、彼の語った学生時代は、同じように自分にもあった。
 ある意味、苦学生であった自分も、多くのアルバイトをした。部活動にも打ち込んだ。好きな人が出来て、青春の恋もした。そんな体験は同じではなかったかと思った。楽しそうに話す宮本の青春は、間違いなく楽しく充実していたものだった。自分の青春に重ねてそう思った。

私のアルバイトは、家庭教師、引っ越しの手伝い、道路の穴掘り、繊維工場での蚕の繭運び・・・。中でも印象に残っているのは穴掘りと、トラック助手。
 信越線の線路沿いに、ケーブルを埋設するための穴掘りだった。最低ノルマが8㍍、慣れた労働者は半日で帰って行くが、一日がかりで掘り終えた。細いケーブル埋設の深さは80センチだが幅は狭くてもいい。でもツルハシ、スコップでの手彫りだから身体の幅は必要、途中大きな石に出くわし大変だった。黙々と1週間ほど続けた。トラック助手は、飲み屋のカーちゃんに頼まれブドウの産地から大坂へ。荷の上げ下ろしである。運転手の居眠り運転に冷や冷やしながら、ようやく朝の市場に間にあった。途中休憩での食事、風呂に入った記憶がかすかに甦ってきた。

自分にも、宮本に変わらない、楽しい、それなりの充実した青春の1ページがあったのだ。

 次週3回目の放送は「父との約束」、父との思い出の予定。楽しみにしている。