透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

人との出会いは偶然か

2007-07-08 | A あれこれ



『偶然と必然』J.モノー/みすず書房

この本について書こうというわけではありません。人と知り合いになるということ、それは偶然?それとも必然? 

クールに考えれば人との出会いは全くの偶然なんでしょう。そもそも人がこの世に存在するということが偶然ですし、出会いに必然性など考えようもありません。

でもこの考え方では割り切れないのも事実です。運命的な出会い、生まれる前から赤い糸で結ばれていた・・・。人との出会い、特に異性との出会いを必然だと捉えたい時にはこのような表現をすることがあります。

あの時、電車で隣り合わせなければ・・・、声をかけなければ・・・、メールアドレス交換しなければ・・・。いくつもの偶然が重なるとなんとなく必然のようにも思えます。

川は低い方に向かって流れています。来し方を振り返るとそれは川の流れのように必然だとも思えます。今までに出会った多くの人達、それぞれの出会いもなんとなく必然であったように思えます。

人との出会いを偶然などと割り切って考えるより必然だと考える方が、私は好きです。



 


村上春樹の短編を読む

2007-07-08 | A 読書日記



『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』新潮文庫を読み始めたが、文字が細かくて中年の目にはつらい。

昨日書店の文春文庫の棚でこの本を見つけた。新潮文庫や講談社文庫ほど目立たないが文春文庫にも村上春樹の作品が何点か収録されている。

短編を読むつもりはなかったが、**村上春樹は短編も凄い!**という帯のコピーに、つい読んでみようと買い求めた。今朝表題作の「レキシントンの幽霊」を読んだ。

ケンブリッジに住んでいた時に建築家のケイシーと知り合った僕。ある時彼の家の留守番を頼まれた僕は彼の家に泊まった最初の夜に「幽霊体験」をする。

半年後に二人は偶然再会してカフェテラスでコーヒーを飲む。ケイシーは「僕の母が死んだとき、僕はまだ十歳だった」と過去の話を切り出す。彼の父親は彼女のことをとても深く愛していて、葬儀が終ってから三週間も眠り続けたと語る。彼もまた愛していた父親が死んだとき二週間くらい眠り続けたという。

**そのときには、眠りの世界が僕にとって本当の世界で、現実の世界はむなしい仮初めの世界に過ぎなかった。(中略)つまりある種のものごとは、別のかたちをとるんだ。それは別のかたちをとらずにはいられないんだ。**

40ページに満たない作品だが、村上春樹の世界のモチーフが凝縮されてる。80日間で彼の世界を巡る予定だが、ときどき路地にも入り込まなくては旅の魅力が充分味わえないのかもしれない・・・。