透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

機能性と意匠性の合一

2007-07-13 | A あれこれ



 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)が昨年12月20日に施行され、それに伴って高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)が廃止された。 このことを実はごく最近まで知らなかった。不明を恥じるばかりだ。

移動ではなくて移動等となっているがその対象範囲はよく知らない。高齢者や障害者の移動等の円滑化を促すと聞いてまず思い浮かぶのは手すり。

今回は手すりについて何か書こうと思っていたので夕方松本駅の階段の手すりの写真を撮った(左)。

手すりは機能的に重要な役目を負っている。それと同時に空間の雰囲気を規定する意匠的に重要な要素でもある。

その機能は次のように大別できる。

〇 墜落防止(マンションのバルコニーなどの手すり)
〇 歩行補助(廊下や階段の手すり)
〇 動作補助(トイレや浴室の手すり)

特に階段の手すりのデザインに昔から建築家たちは心血を注いできた。たかが手すり、されど手すりなのだ。

意匠と機能とは本来不可分なのもだと思うが、階段や廊下の手すりに関して言えばこの関係を無視したものが多い。意匠的には優れているものの機能的ではない、あるいはその逆のデザインが案外多いのだ。

松本駅の階段の手すりは2段。下の手すりの方が細い。身長の小さな人(子ども)の利用を想定しているのだろう。機能的には問題なさそうだが、木の質感が空間の雰囲気に合っているとは思えない。

一方右の写真は雑誌に掲載されているある老人ホームの廊下の手すりだが、引き手やドア枠などと同材のパーチ合板が使われている。

手すりは丸いものという固定観念にとらわれるとこのような手すりは使いにくいと思ってしまう。だが、機能性を無視して見てくれだけを気にしたデザインだと結論付けるのは早計だ。

丸い手すりはきちんと握ることを前提としているので、握力の弱い老人には不向きだ。むしろ手すりの上面に掌を置くことが出来るような断面形状の方が好ましい。図面によると上面の幅は36ミリ、そのくらいの厚さの本で試してみると思いの外使いやすい。機能的にも意匠的にも優れた手すりの好例だと思う。