■ 前々稿で「建築ジャーナル」という月刊誌に黒川さんがコーン(円錐形)が好き、だから使うとインタビューに答えている記事を見つけたと書きました。発注者を納得させるのにはなぜコーンなのか理由をきちんと説明する必要があります。
なんとなくコーンが好きですから・・・などという説明では発注者はその採用を渋るかもしれません。採用するデザインにいかにもっともらしい理屈を後からつけるか、建築に限らず広くデザインにかかわる人たちに必要な能力、といってもいいでしょう。そう、はじめに理屈、理念、コンセプト(どの言葉でもいいですが)ありきではなく、それはあくまでも後から考えだすものなのです。結果(デザイン)から川を遡って源流の理念、コンセプトに到達するんです。
黒川さんは「共生」をキーワードに、採用するデザインの「必然性」を説明してきました。 国立新美術館の曲面の外壁とコーンの組み合わせ。幾何学的な形状は近代建築の特徴。近代と未来の共生。
いくらでもある幾何学的な形状のなかでコーンを近代建築の象徴として採用するのはなぜか。
**天文学者は天動説から地動説へ、そして円形軌道から楕円軌道であることを発見した。円錐は水平に切ると円形、でも斜めに切ると楕円形になる。この特徴に歴史的、宇宙的な魅力を感じる。**
前々稿ではこの部分を引用し落としました。こういうことを説明されるとコーンに確かに魅力を感じます。発注者はその採用をOKするでしょう。
昨日東京の表参道に在るこのコーンの前を通りました。この記事を読んだからでしょうか、コーンが魅力的に見えました。黒川さん、このコーンは自分の作品に印すサインなんですと説明しても発注者は了承すると思いますけど。