透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

063 064 複数の視点

2010-09-20 | A 火の見櫓っておもしろい


063 火の見櫓のある風景 清々しい朝  松本市岡田にて




064 火の見櫓のある風景 実りの秋  松本市波田にて

 「花」という対象に対する視点、アプローチの方法はさまざまだ。画家と植物学者とでは全く異なる。画家は自身の美的感性によってひたすら花から「美」を抽出しようとする。一方植物学者は知的好奇心に根ざした分析的な視点で、例えば花の構造を把握しようと仔細観察する。

対象を火の見櫓に変えても同じこと。火の見櫓のある空間の雰囲気、風景を捉えようと観察する人や、ぐっと火の見櫓に近づいてその構成要素、パーツを分析的に観ようとする人もいる。遠景に関心を寄せる人も近景に関心を寄せる人もいる、と言い換えてもいい。

言いたいのはどちらが優れているか、ということではない。対象に対する視点やアプローチの方法は人それぞれでいい、ということだ。

ところで、木を見て森を見ないとか、医者は病気を診て人を観ないというようなことが言われる。この批判めいた指摘は複視的に部分だけでなく全体もみるべき、ということだ。

趣味で火の見櫓を観察しているのだから、このような指摘など気にすることはない。前述したように、人それぞれでいい。でも私は火の見櫓を先に挙げたふたつの視点で観察したい。

時には火の見櫓のある風景の郷愁を、時にはものとしての成り立ち、システムを。 


 


062 松本市二子の火の見櫓

2010-09-20 | A 火の見櫓っておもしろい


062

 この火の見櫓、先日取り上げた白馬村の火の見櫓(←過去ログ)と立ち姿が似ていると思った。脚部に付けられていた銘板を見るとやはり同じ鉄工所でつくられたものだった。

プロポーションがなかなか良く、清々しい。屋根と見張り台の大きさのバランスが良いし、飾りのないシンプルな手すりも好ましい。また、屋根の上の避雷針の長さもちょうど良いし、そこに付けられているつる状の飾りもまた、良い。

あえて気になる点を挙げるとすれば、半鐘。ドラ型ではなく寺院にある釣鐘と同型のものが屋根の下に吊るされていれば、私はこの火の見櫓の意匠(立ち姿という評価項目)に五つ星をつける。


 


「トラや」を読んだ

2010-09-20 | A 読書日記


 『トラや』南木佳士/文春文庫

南木佳士の作品は文春文庫で出るたびに読んできた。

母猫がいなくなって軒下に取り残された二匹の子猫、トラとシロ。やがてシロもいなくなって・・・。うつ病に苦しむ著者と15年間生活を共にしたトラ。著者が病気から回復するのを見届けると静かに逝ったトラ。

著者は**トラに不安神経症を押しつけて治っていったような気がする。**と綴る。


メモ)
内田百の「ノラや」ちくま文庫を意識してつけたタイトルだろう。
「からだのままに」←過去ログ


― 稲倉の火の見櫓

2010-09-20 | A 火の見櫓っておもしろい





 
060(再)松本市稲倉の火の見櫓 100919

 反りのきつい六角形の屋根。頂部の球状の飾りをつくるのは大変だっただろう。避雷針にトンボがとまっている(写真ではよく分からないが)。矢羽根の向きには意味があるのだろうか。

三角形の平面形の櫓は主材(柱材)、水平材(横架材)とも鋼管が使われ、斜材(ブレース)にスリーブジョイントが使われている。スリーブ型のターンバックルを火の見櫓で見たのは初めて(環状のターンバックルが一般的)。建造年は不明だが、これらの使用部材や接合部の様子から比較的新しい火の見櫓と判断される。