透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「小川洋子対話集」

2010-09-22 | A 読書日記



 『小川洋子対話集』幻冬舎文庫読了。

小川洋子さんは『博士の愛した数式』を書くにあたって、数学者の藤原正彦さんを取材している。藤原さんは、同小説(新潮文庫)の解説文にその時の小川さんの印象を**清楚な大学院生のような人だった**と書いている。

彼女は取材の時**携えたノートに質問事項がびっちり書いてあり、次々と質問を投げかけてきた。**そうだ。

小川さんの優等生ぶりはこの対話集にも出ている。相手のことを実によく下調べしているのだ。

例えば江夏豊さんとの対話では**(前略)二年目の、奪三振日本記録のエピソードがすごいですね。まずタイ記録を王選手から奪って、さらに新記録も、王選手からとるためにわざと打者を一巡させた。**と発言。小川さんは大の阪神ファン、でもこんなことは調べないとわからないことではないだろうか。

これに江夏さんは**あれは、数え間違えたんです。**と応じ、新記録だと思っていたら、まだタイ記録だとキャッチャーの辻さんに教えられ、下位打者に三振されないように投げ、公言していた通りふたたび王選手から三振を奪って記録を達成したことを明かしている。

**でも確か、0対0の試合でしたよね。打者を一巡させるといっても、打たれるわけにもいかない。**と小川さんはマニアな発言。

また、田辺聖子さんとの対話では**田辺さんのお母様も岡山からお嫁に来られて、大家族のなかで、ご苦労はあったと思います。**とよく調べておかないとできない発言をしている。

では、仮に川上弘美さんとの対話なら一体どんなことが話題になるだろう。ふたりとも芥川賞の選考委員だから、文学についての話題が中心になるだろう。小川さんは川上さんの作品をどう評するだろう・・・。既にどこかに書いているかもしれないな。