■ 建築家にしてエッセイストでもあったバーナード・ルドフスキーの『建築家なしの建築』。この本は1984年に鹿島出版会のSD選書として刊行されたものが一般によく知られているが、1975年に「都市住宅」別冊として出版されている(写真)。
■ 今日(13日)、この煙突を松本市内で見ていてふとこの本のことを思い出した。
訳者・渡辺武信氏はあとがきに**本書は世界各地の無名の工匠による風土的な建築をパノラマ的に紹介したもので(後略)**と書いている。そう、日本も含め、世界各地の「風土的、無名の、自然発生的、土着的、田園的」建築を紹介している。
海岸の小石が繰り返し繰り返し波に洗われて次第に形が丸く整っていくように、建築家なしの建築は建築家に替わって風土が、永い時の流れが、建築に合理的な形を与えたと言っていいだろう。茅葺きの民家もその好例のひとつだ。
**風土的な建築は流行の変化に関りがない。それは完全に目的にかなっているのでほとんど不変であり、まったく改善の余地がないのである。(12頁)**とルドフスキーは本書に書いている。
現代建築の大胆な造形を見るにつけ、その依拠するものは一体なんだろう・・・、と思う。