透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

えんぱーく体験

2011-06-12 | A あれこれ

■ 建築デザイン。その主眼は美しい建築空間の創出から、建築空間を成立させるシステムの提案へと移りつつあるようだ。海外の事情には明るくないが、国内では伊東豊雄の「せんだいメディアテーク」がそのはしりだったかもしれない。独創的な空間構成システムをいかに提案するか・・・。「せんだい」では、チューブと呼ばれる籠状に組まれた鋼管トラスとプレートと呼ばれるフラットスラブによる空間の構築システムが提案され、実現している。


森のコート


太陽のコート

■ 塩尻の「えんぱーく」、2006年に行われた設計競技の当選案には「壁柱」と呼ばれる、プレキャストコンクリート(PC)と鋼板の複合版(厚さ約200mm)によって床を支えるというシステムが提案されていた。


約100枚の壁柱が創りだす空間ってどんなものだろう・・・。柱ではなくて壁柱。設計競技の公開審査では壁柱について、図書館というオープンであるべき空間にとってはうっとうしい、できれば無い方がいい存在になるのでは、という指摘もあったように記憶している。

実際に空間体験してみると、壁柱はまったく気にならない。むしろ壁柱がいろんな空間を創りだすのに欠かせない存在になっていることがわかる。来館者はお気に入りの場所を見つけて、そこで読書をしたり、原稿を書いたり、勉強をしたりして過ごしている。


月のコート



今日の午前中、「月のコート」と呼ばれる吹き抜け空間に面する一角で『吾輩は猫である』を読んで過ごした。トップライトから自然光が降り注ぐ明るい空間は細かな活字を追うのによい。数回目のえんぱーく体験。


 


「白鳥の歌なんか聞えない」

2011-06-12 | A 読書日記

 
白:昭和46年2月発行
■ 庄司薫は若い人には馴染みのない作家だと思う。昭和44年(もう随分昔のことだけれど)、『赤頭巾ちゃん気をつけて』で芥川賞を受賞している。作品はその後、薫くん(主人公の名前)シリーズ4部作としてまとまる。

その第3作『白鳥の歌なんか聞えない』はNHKでドラマ化された。このドラマで仁科明子がヒロインの由美(薫くんのガールフレンド)役でデビューしている。このときの経緯を彼女は『いのち煌めいて』小学館に次のように書いている。

**高校三年の夏。この夏、私は、ある雑誌のグラビアに、父といっしょに出た。それが、ちょうど庄司薫さん原作の『白鳥の歌なんか聞えない』をドラマ化しようと、出演者を探していたNHKのプロデューサーの目にとまり、姉のマネージャーに出演を打診してきたのだ。話が決まったのは、もう二学期の終わりころだった。(16頁)**

調べてみるとこのドラマが放送されたのは昭和47(1972)年3月のことだった。ストーリーは忘れたが彼女がすごくかわいかったことだけは今でも覚えている。そう、当時高校生だった彼女はぼくの好みにぴったりだったのだ。

ぼくはドラマ化されたのは『赤頭巾ちゃん気をつけて』だったとずっと思っていて、昨日(11日)カフェ・バロでそのことを話したのだが、違っていた。なぜこの小説のことを話題にしたかは書かないでおく。

**女の子にもマケズ、ゲバルトにもマケズ、男の子いかに生くべきか。さまよえる現代の若者を爽やかに描く新しい文学の登場!**「赤頭巾ちゃん気をつけて」の帯。

**早春の陽ざしに音もなく忍びよる死の影。生命あることの寂しさ空しさを見すえて互いに求めつつさすらう若い魂を、光と影の交錯の中に美しく描く永遠の青春像**「白鳥の歌なんか聞えない」の帯。

ぼくの青春時代とシンクロしている小説で、書棚から取り出してながめているととても懐かしい想いがする。一冊だけ再読するなら、やはり『白鳥の歌なんか聞えない』かな・・・。


  
薫くんシリーズ    
赤:昭和44年8月発行      黒:昭和44年11月発行     青:昭和52年7月発行