■ 5月の読了本は以下の4冊。まあ、毎月このくらい読めばいいかな、と思う。
『途中下車の味』宮脇俊三/新潮文庫
著者が若い編集者とともに万事未定(というわけでもないが)の旅へ出かける。9回の旅行で日本列島の北海道、本州、四国、九州をほぼ縦断している。下車駅未定、宿泊地未定の旅を私もしてみたい。
『山行記』南木佳士/文春文庫
南木佳士の作品は文春文庫になると読んでいたが、カバー折り返しの作品リストを見ると最近の5作を読んでいない。『草すべり』は読んでみたい小説だ。松本駅前の丸善に出かけなくては・・・。他にも読みたい小説がある。
『伊勢神宮 東アジアのアマテラス』千田 稔/中公新書
**道教の最高神はその名が時代とともに変わるが北極星を象徴化している、つまり星の宗教である。星の宗教である道教が、日神アマテラスの祭祀にとりれられるということが現実になされたのだ。「星の宗教」の「太陽の宗教」への変換的受容といってよい現象が、古代日本においてみられたという事実は注目すべきである。**(66頁)
第一章「アマテラスの旅路」と第二章「中国思想と神宮」が本書では興味深い。 アマテラスの原型を東アジアに求める論考。
『道草』夏目漱石/新潮文庫
『道草』は長年漱石の心の負担となっていた養父との問題をモチーフとして書かれている。4歳(*1)で塩原昌之助・やす夫妻の養子に出されるも、夫婦が離婚したために籍を残したまま、9歳の時に生家に帰ったという漱石。その後塩原は夏目家というか、漱石に金銭的援助を求め続けた。この復籍に関する書類を紐解く場面が『草枕』に出てくる。
**「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ、色々な形に変るから他(ひと)にも自分にも解らなくなるだけの事さ」**(268頁)『道草』のラストで主人公の健三(漱石自身)は奥さんに向かって吐き出す様に言う。
漱石の心の奥底には暗い闇が広がっていたようだ。仲間と楽しく語っているときでも、ふと「孤独」が漱石の心を占める。あの「猫」にさえ孤独が見え隠れしているという。そうなのか・・・。
(過去ログ再掲)
*1 『硝子戸の中』によると、漱石は生まれたまもなく里に遣られるが、しばらくして取り戻される。そして**然しじき又ある家へ養子に遣られた。それは慥(たしか)私の四つの歳であったように思う。**(73頁)とのことだ。
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