『現代建築のトリセツ』松葉一清/PHP新書
■ リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』を中断し、建築評論家・松葉一清さんの『現代建築のトリセツ』をここ数日間読んでいた。
**ヨーロッパの都市において、「現代建築」が市民の議論の洗礼を受けて、やがてはその街に定着し、歴史的な資産とともに、今日の文明となっていくのを目の当たりにするのは、決して珍しいことではありません。それは「流行」とは異なる世界です。
日本の現代建築もそうあるべきです。そして、そのために、まずは市民が、そして建設の旗振り役となる政治家や経済人が、さらに公金としての税金を建設に投じる公務員が、もっと建築に対する「目を肥やす」必要を痛感します。**262頁 松葉さんは巻末の「おわりに」代えて にこのように書いている。
市民の現代建築への疑問に丁寧に答えること、これが本書を書いた主たる目的。とすれば本書は現代建築観察ガイドブックといったところ。
ヨーロッパやアメリカの市民は建築に対する知識が深く、関心も高いことから、新しい建築のデザインに異を唱えることもしばしばだと聞く。市民がデザインを了解しないことには、計画が前に進まないという。比してこの国の状況は、上掲文から明らか。
アメリカでは建築に関する教育プログラムがきちんとしていて、建築について子どものころから広く学習するようだ。この国でも環境教育(その実情を知らないが)の一環として、建築について学ぶ機会をつくるべきだろう。