『魚にも自分がわかる 動物認知研究の最先端』幸田正典(ちくま新書2021年)
■ 久しぶりに知的好奇心を刺激されるおもしろい本と出会った。
魚類の脳の構造はヒトの脳の構造と同じと書いてある(22頁)。中学のときかな、単純な魚の脳に、次第に新たな脳が加わって哺乳類の複雑な脳ができたと教わったと思う。でも、そうではなくて、魚もカエルも鳥も同じ構造だというのだ。それが今世紀に入ってからの脳の捉え方だという。脳の構造が同じであれば機能も同じと考えるのが自然だろう、その性能には差があるだろうが。
魚も相手個体の顔を見て個体識別をしているとのこと(46頁)、そう、ヒトと同じように。え、そんなことをどうやって実証したのかな? 本書で著者はこの疑問に対して、なるほど!な実験方法と実験結果を紹介し、実験結果についても注意深く論考している。さらに魚も鏡像自己認知ができるということも紹介している。そう、鏡に映る魚が自分だと分かるというのだ。本書の第四章の章題は「魚類ではじめて成功した鏡像自己認知実験」。
本書はロジカルな展開で理解しやすい。ちょうど半分くらいまで読み進んだ。この本は年末に挙げる「今年の3冊」の1冊になると思う。