■ 読書週間(10/27~11/9) 10月の読了本は5冊。
『本所おけら長屋』十七巻 畠山健二(PHP文芸文庫2021年)
この巻に収録されている短編4編もこだわりの「ひらがな4文字タイトル」。帯に**思いっきり笑えて、気持ちよく泣ける、人情時代小説の決定版!**とあるが、本当にその通り。巻末に掲載されている著者のプロフィールに、演芸の台本執筆も手掛け、ものかき塾の講師もしていることが紹介されているが、よくこれだけの物語を創作できるものだと思う。才能のある方なのだろう。何巻まで刊行されるのか分からないが、ずっと追っかけをしたい。
『門』夏目漱石(新潮文庫1948年発行、1994年100刷)
手元にある文庫は100刷、名作は読み継がれる。読書の秋に漱石の小説は相応しい。他の本を読む間、中断していた『虞美人草』を読み始めた。
『全国2974峠を歩く』中川健一(内外出版社2018年)
峠は歴史を感じさせるタイプカプセルだという著者が10年間で訪ねた約3,000カ所!の峠の歴史を紹介する。対象が何であれ、マニアの世界を紹介する本は面白い。
『ヴィジュアルを読みとく技術』吉岡友治(ちくま新書2021年)
どうやらこの本の内容を読みとく技術が私にはなかったようだ。
『魚にも自分がわかる』幸田正典(ちくま新書2021年)
魚もヒトと同じように鏡に映った魚を見て、それが自分だとわかるということを実証的に明かす研究。ホンソメワケベラという小さい熱帯魚を使った実験。寄生虫に似せた茶色の印を喉に付ける。喉は直接見ることが出来ないが鏡でなら見ることができる。ホンソメワケベは鏡を見て、寄生虫に似せた印を確認。砂底に降りて、喉を砂で擦ったという。まるで「あ、喉に寄生虫が付いている!」と確認したかのような行動。鏡に映った姿を見てそれが自分だと分からないと、このような行動はとらない。「鏡像自己認知」。さらに砂で喉を擦ったあと、また鏡をのぞき込む行動が見られたという、「寄生虫、とれたかな」と確認するかのように。
研究は「魚の自己意識」の確認へと進む。一体どうやって?と思いながら読み進むと、なるほど!な実験方法が紹介されている。2020年に東大で開催されたシンポジウムで鏡像自己認知について発表すると、この研究に関する論文に反論を書いていたドゥ・ヴァール教授(*1)から絶賛されたという。この件(くだり)を朝カフェで読書していて涙が出た。そう、新書で涙。
*1 鏡像認知ができるのは、ヒトや類人猿までだとする研究者も多い。底辺の魚類に自己認知ができるのなら、彼らが築いてきた価値観がひっくり返るし、彼らの常識からはあり得ないのだ。典型的な批判者は、チンパンジー研究の第一人者であるドゥ・ヴァール教授や、何度も名前が挙がっているギャラップ教授である。**(150頁)