透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「初音」

2022-06-05 | G 源氏物語

「初音 幼い姫君から、母に送る新年の声」

 「初音」では新年を迎えた六条院の様子が描かれる。「少女」で六条院が完成し、概要が説明されている。六条院は4つのブロックからなり、春夏秋冬、四季の造園がなされている。春の庭園は春に映えるように、冬の庭園は冬の光景が映えるように。**春の御殿の庭はとりわけ、梅の香りと御簾(みす)の内から流れる香が混ざり合い、この世の極楽浄土とまで思える。**(47頁)このような様子。

光君は六条院に暮らす女君たちを年賀に廻る。紫の上、明石の姫君、花散里(夏の住まいで今はその季節ではなく、静まりかえっている。だが上品に暮らしている様子)、玉鬘。

大塚ひかりさんの『カラダで感じる源氏物語』(ちくま文庫2002年)を読んだので、光君と花散里の関係について**(前略)しっとりとした夫婦仲である。今はもう男女の関係ではないのである。**(50頁)このような件(くだり)に気が付く。

日暮れ頃、光君は明石の御方の住まいに向かう。部屋の中はぬかりなく洒落たセッティング。光君は紫の上のことを気にしながらも、泊まってしまう。で、朝帰り。**「変にうたた寝をしてしまって、大人げなく眠りこんでしまったのを、そう言って起こしてもくれないものだから・・・」**(52頁)などと新年早々の外泊の言い訳。紫の上は悲しいし、悩むよなぁ・・・。

数日後、光君今度は二条東院へ。学問に打ちこむ末摘花は、髪は白く薄くなっている。この物語、年月が経っているのだなぁ。空蝉は仏道一筋に勤めている。六条院とは違い、地味な暮らし。

その後催された男踏歌(おとことうか)という儀式については省略。

紫式部はこの帖を読者に光君と関係のある女君たちの生活の様子を知ってもらうという意図で書いたのだろう。彼女たちの人生もいろいろだ。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔 
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋