透明タペストリー

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記憶

2022-06-28 | D 新聞を読んで



 6月27日付信濃毎日新聞の9面(科学面)に「まるでSF小説・・・脳に光照射  つらい記憶消去」という見出しの記事が掲載されていた。

記事のリード文に京都大や理化学研究所、大阪大などのチームが**特殊なタンパク質と光を利用してマウスの記憶を消すことに成功。**とある。一体どのような方法によってマウスの記憶を消去したのかということ、それからどのような方法で記憶が消去されたことを確認、実証したのかということに興味を抱き、記事を読んだ。

記憶のメカニズム:新しい記憶はいったん脳の「海馬」に不安定な状態で一時保存され、その後「大脳皮質」に転送されて長期保存されると考えられている。

記憶の形成を阻止する方法:活性酸素は記憶の形成に関わるシナプスのタンパク質の働きを妨げる。特定の波長の光を照射すると活性酸素を放出するイソギンチャク由来の蛍光タンパク質、このタンパク質をつくる遺伝子を脳に組み込む。脳の狙った場所に光を照射して活性酸素を放出させ、シナプスのタンパク質の働きを妨げる。こうして記憶の形成を阻止する。なるほど。

では、このような方法でマウスの記憶を消すことができたことをどうやって実証したのか。

記事には分かりやすいイラストが掲載されている。暗いボックス(部屋)と明るいボックスをつなげた実験装置。暗い場所を好むマウスは明るいボックスから暗いボックスに移動する。そこで電気刺激、マウスびっくり恐怖体験。で、光ファイバーで脳に光を照射したマウスと照射しなかったマウスを翌日明るいボックスに入れる。すると光を照射されて恐怖体験の記憶を消されたマウスは躊躇せずに暗いマウスに移動し、記憶が消えていないマウスはおびえてなかなか移動しない。なるほど。

動物実験の実証方法には感心する。

『魚にも自分がわかる 動物認知研究の最先端』幸田正典(ちくま新書)や『モンシロチョウ キャベツ畑の動物行動学』小原嘉明(中公新書)で紹介された実験は実に興味深く、おもしろかった。

 

新聞記事を読んで思った。消してしまいたい記憶だけ無くなるならいいけれど、ずっと覚えていたい記憶まで消されてしまったらやだなぁ、どうしても思い出せない記憶をよみがえらせてもらえないかなぁ、脳内の映像記憶をディスプレイに映し出すというアイディアは実現できるかもしれないなぁ、などと・・・。