透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「カミジョウミカ展2021+1」

2022-06-15 | A あれこれ

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「カミジョウミカ展2021+1 芋虫のような手指で描く自分」


作品展が開催されている朝日美術館

 朝日美術館に行き、開催中の「カミジョウミカ展2021+1 芋虫のような手指で描く自分」を鑑賞してきた。会場に展示された数多くの作品の楽しい形、豊かな色彩、細密描写に魅せられた。微風にも野の草花が揺れるように、心に浮かぶイメージを何かに縛られることなく自由に表現しているように思われる。うまく描こうなどという邪念を全く感じない作品に感動、作品を鑑賞し始めて間もなく涙が出た。

**描くことは生きること。生きることは描くこと。
そして、日々「おもしろオカシク楽しく描く」**
というカミジョウミカさんのことばがリーフレットに載っている。これは単なるコピーではもちろんなく、心から思い、日々実践していることだろう。


数多くの作品(*1)に彩られた展示室




ぼくは抽象画が好き。どの作品もとても魅力的だったけれど、左側の展示パネルの紫色の作品「マボロシの街に宇宙人がいた」が一番気に入った。好きな色使いだから。会期中にもう一度出かけたい、と思う。

 緑豊かな朝日村の美術館(長野県東筑摩郡朝日村古見1308 電話:0263-99-2359)で開催中の「カミジョウミカ展2021+1」をみなさんにおすすめします。


*1 作品リストには176点もの作品が載っている。


「篝火」

2022-06-15 | G 源氏物語

「篝火 世に例のない父と娘」

 この帖(巻)は短く、「角田源氏」では4ぺージ(実質3ページ)しかない。

内大臣が引き取った近江の君の評判が芳しくない。この姫君の扱いをめぐって内大臣が非難されている。世間の噂を聞くにつけ、玉鬘は自分も実の父親である内大臣のおそばに参っていたら、恥ずかしい思いをしていたかもしれないと思い、光君に引き取っていただいて良かった、としみじみ幸運を感じている。

光君は玉鬘に下心を持ってはいるものの、男女の関係を迫ろうとはしない。で、玉鬘も次第に心を開くようになる。秋のある夜、**光君は琴を枕にして姫君とともに添い寝している。**(124頁) こんなことをしているのに・・・。

その夜、光君は女房に見咎められるかもしれないと思って帰ろうとするけれど、庭先の篝火に照らされる玉鬘があまりにも美しいので、帰りがたくてぐずぐずしている。そこで、**「篝火にたちそふ恋の煙(けぶり)こそ世には絶えせぬ炎なりけれ」**(124頁)と恋心を詠む。このくだりを読んでいて、「君といつまでも」と願う気持ちは加山雄三の歌にもあるなぁ、と思う。

これに対する玉鬘の返歌が実に好い。**「行方なき空に消(け)ちてよ篝火のたよりにたぐふ煙とならば」**(125頁)篝火のついでに立ちのぼる程度の恋なんですね。そんな恋の煙なんて果てのない空に消し去ってくださいな。やはりこの姫は賢い、いや紫式部は賢い。

この後、夕霧と柏木たちが招かれて笛を吹いたりする。玉鬘を実の姉とも知らずに恋心を抱く柏木は、彼女を前に緊張しながら琴を弾くのだが、この場面はわたしにはどうでもよくて(今後の展開上意味があるのだろうけれど)、この短い帖は上に挙げた玉鬘の返歌に尽きると思う。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔 
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋