透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

松本市島立の彩色道祖神

2023-04-19 | B 石神・石仏

「本の蔵1885 お座敷一箱古本市」が松本市島立の亀田屋酒造店の母屋で今月15日に開催された。午前10時ころ出かけた。1885って何? 会場で受け取ったチラシによると、会場の古民家の建設された1885年に因んでいるとのこと。


ダイナミックな吹き抜け空間に目を奪われた。


会場の和室には14組の箱主さんが出店していた。一通り見てから『沿線風景』原 武史(講談社文庫2013年)を買い求めた。この本については稿を改めて書きたい。


会場の亀田屋酒造店前の路傍に彩色された双体道祖神と二十三夜塔が祀られていた。






高さがおよそ1mの自然石に大きな円窓を納め、その中に祝言像を彫っている。男神は盃を、女神は提子を手に持ち、内側の手を相手の肩に掛けている。疫病神を寄せ付けない熱々カップル像。像の下に嶋立・・・、何という字だろう。見たことのない漢字。

思い出した、漢字の偏旁の位置を変えることがあった。左右の配置を上下に変えている。これは町だ。町村。そういえばここに至る国道158号の交差点の信号は「島立町区」と表記されている。

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像の向かって左側面に天保十三年壬寅三月十二日と刻字されている。この年は西暦で1842年、今から181年前に建立された道祖神。この道は千國街道、と説明板にある。この道が千國街道だなんて思いもしなかった・・・。


右側面 さて・・・。読めないが大意は何となく分かる。要するに帯代15両いただきますということ。この(道祖)神を他村に移し、お祀(祭)りしたことで、その後栄えてお祝いすることになったら金十五両いただきますよ。

ただ帯代何両と刻字してある道祖神は時々見かける(過去ログ)。

  


 


「東京、はじまる」追記

2023-04-19 | A 読書日記


『剛心』木内 昇(集英社2021年)
**百年前、この国の未来を拓こうと闘い続けた建築家がいた。**


『帝国ホテル建築物語』植松三十里(PHP文芸文庫2023年)
**僕たちは日本人の希望の星を造るんだ**

『剛心』は明治の建築家・妻木頼黄(よりなか)を主人公に据えた小説。妻木頼黄は東京駅や日本銀行を設計した辰野金吾と迎賓館赤坂離宮(旧東宮御所)を設計した片山東熊とともに明治の三大建築家と言われている。

昨年読んだこの小説に続き、今年2月に**二十世紀を代表する米国人建築家、フランク・ロイド・ライトによる飽くなきこだわり、現場との対立、難航する作業、襲い来る天災・・・。次々と困難が立ちはだかったが、男たちは諦めなかった。**このようにカバー裏面に紹介されている『帝国ホテル建築物語』を読んだ。



『東京、はじまる』門井慶喜(文春文庫2023年) 

 今月8日に買い求めて読んでいたこの文庫を東京に出かけた時に持っていった。東京駅の設計者として広く知られている明治の建築家・辰野金吾が主人公の物語。13日の朝、東京に向かう特急あずさで読み、都内を移動する地下鉄で読んだ。そして六本木ヒルズのスタバで友だちを待つ間に読み終えた(長時間待たされたわけではない、念のため)。

地下鉄の乗客は皆スマホを見ていて、ぼくのように本を読んでいる人はまわりには一人もいなかった。ぼくはこれからも電車内でスマホとにらめっこすることはなく、本を読むだろう。

前半は東京駅と共に辰野金吾の代表作である日本銀行本店の、後半は東京駅(中央停車場)の設計・建設をめぐる物語。とは言え、どちらも設計・建設工事そのものに関する話題はあまり描かれていない。

日銀本店の工事では1階の躯体がほぼ出来たと思ったら、その後の工事に関する描写はなく、いつの間にか次の様になっていた。
**結局。
落成式は、
――明治二十九年(一八九六)三月二十二日に、おこなう。
と、決定した。**(191頁)

東京駅も同様で工事に関する描写はあまりない。

作者の門井慶喜さんは建築そのものより、人間・辰野金吾を描きたかったのだろう。東京駅は1914年に竣工するが、辰野はその5年後、1919年に当時大流行していたスペイン風邪に罹って死去する。

物語は辰野金吾の最期が描かれて終る。辰野は家族や親族、友人たちらの名をいちいち呼び、相手に応じたごく短い話をする。
**(前略)訓示はなく、命令はなく、批判はなく、最後はつねに感謝の表明。あとのほうの者になると言うことが思いつかなかったのか、ただ、
「ありがとう」
とのみ言った。(後略)**(433頁)

これで国会議事堂、帝国ホテル(ライト館)、日本銀行本店、東京駅という日本における西洋建築の黎明期を代表する建築に関わった建築家たちの物語を3編読んだことになる。どの建築も背後にドラマチックな人間物語があった・・・。


東京駅 過去ログ


かつて東京駅を取り壊して新しい駅ビルをつくる、という計画があったことはよく知られている。このことを伝える新聞記事の切抜き(19770421付読売新聞朝刊)が手元にある。解体されなくて本当に良かった。


スヌーピーの切手

2023-04-19 | D 切手


 切手を貼った封書を受け取ることなんてあまりないなぁ、と思っていた。でも貼られている切手に注目するようになって、思いの外多いことに気が付いた。先日届いた封書にはスヌーピーの切手が貼られていた。縁取りの赤紫色は好みの色。

この切手のことを調べた。2023年1月11日に発行された1シートにイラストの異なる10枚の切手「スヌーピーとピーナッツのなかまたち」の1枚だと分かった。

なぜスヌーピーの人気って何年も何年も続いているんだろう・・・。いいなぁ、スヌーピー。


 


3「重要文化財の秘密」@近美(追記)

2023-04-19 | A あれこれ


 六本木ヒルズから地下鉄を乗り継いで東京国立近代美術館へ。「重要文化財の秘密」を観た。高橋由一「鮭」、黒田清輝「湖畔」、岸田劉生「麗子微笑」、萬鉄五郎「裸体美人」、高村光雲「老猿」・・・。「ひぇ~、美術の教科書に載っているような絵画や彫刻が並んでる」

教科書で見ていている作品でも大きさは分からないし、色のニュアンスも分からない。本物を直接鑑賞して初めて分かることがある。「麗子微笑」って案外小さいんだな。「湖畔」って思っていた以上に淡い色使いなんだな。「裸体美人」のメリハリの効いた色使いって、はやりいいな。閉館時刻5時までおよそ1時間。残念ながら重文作品を鑑賞する十分な時間がなかったためによく知る作品を重点的に鑑賞した。



 美術の教科書で馴染みの高橋由一「鮭」と高村光雲「老猿」 

この「鮭」を描こうという作者・高橋由一の感性がすばらしい。そう、描画力というテクニックより、まずは見るものを美しいと感じる美的感性。これがポイント!