■ 昨年末に読み始めた『再生巨流』を読み終えた。今年最初の読了本。京都日帰り行に連れて行った文庫。この作家の作品の魅力は大胆かつ緻密な構想だが、この作品も例外ではなかった。
左遷人事を受けた主人公が物流の世界に画期的なシステムを導入するまでのプロセスを描いた小説。実践の参考になりそうな台詞が頻出する。
**こうした大きなプロジェクトを行なう時にはな、まず最初に理想的な最終像を具体的な形でメンバーの全員が共有するのが大切なんだ。**
**プレゼンに使うパワーポイントの画面はもっと要点を絞り込んでおいた方がいい。手渡す資料とプレゼンの画面が一緒なんて、能無しのすることだ。**
**こけおどしのようにぶ厚い資料を用意するのは能無しのやることだ。**
この台詞で『企画書は1行』という本を思い出した(野地秩嘉/光文社新書)。
この作家の小説はとても知的。欠けているものを敢えて指摘すれば、それは「恋」。不倫でもなんでもいいい。男と女の恋愛を織り込んでもらったら嬉しいが、私の知っている限り物語はいつもクールに展開する。
主人公は極めて優秀、目的を実現するために知恵を絞り、必死になって働く。いくつもの困難を乗り越えて夢に向かって突き進む。
最後に大どんでん返しが待ち構えているのかと思いきや、ハッピーなエンディングだった。そう小説はやはりハッピーエンドがいい!
**駅前からタクシーに乗り込んだ吉野は、「南禅寺へ」と、ドライバーに行き先を告げた。**
この辺は帰りの新幹線で読んだがまさかこんな場面が出てくるとは思わなかった。偶然。
さて『したたかな生命』ダイヤモンド社を読み始めよう。年末年始に読む予定の最後の1冊。「ロバストネス あらゆるシステムの基本原理」って一体なんだろう・・・。