透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「再生巨流」 今年最初の読了本

2008-01-05 | A 読書日記



■ 昨年末に読み始めた『再生巨流』を読み終えた。今年最初の読了本。京都日帰り行に連れて行った文庫。この作家の作品の魅力は大胆かつ緻密な構想だが、この作品も例外ではなかった。

左遷人事を受けた主人公が物流の世界に画期的なシステムを導入するまでのプロセスを描いた小説。実践の参考になりそうな台詞が頻出する。

**こうした大きなプロジェクトを行なう時にはな、まず最初に理想的な最終像を具体的な形でメンバーの全員が共有するのが大切なんだ。**

**プレゼンに使うパワーポイントの画面はもっと要点を絞り込んでおいた方がいい。手渡す資料とプレゼンの画面が一緒なんて、能無しのすること。**

**こけおどしのようにぶ厚い資料を用意するのは能無しのやること。**

この台詞で『企画書は1行』という本を思い出した(野地秩嘉/光文社新書)。

この作家の小説はとても知的。欠けているものを敢えて指摘すれば、それは「恋」。不倫でもなんでもいいい。男と女の恋愛を織り込んでもらったら嬉しいが、私の知っている限り物語はいつもクールに展開する。

主人公は極めて優秀、目的を実現するために知恵を絞り、必死になって働く。いくつもの困難を乗り越えて夢に向かって突き進む。

最後に大どんでん返しが待ち構えているのかと思いきや、ハッピーなエンディングだった。そう小説はやはりハッピーエンドがいい!

**駅前からタクシーに乗り込んだ吉野は、「南禅寺へ」と、ドライバーに行き先を告げた。**

この辺は帰りの新幹線で読んだがまさかこんな場面が出てくるとは思わなかった。偶然。

さて『したたかな生命』ダイヤモンド社を読み始めよう。年末年始に読む予定の最後の1冊。「ロバストネス あらゆるシステムの基本原理」って一体なんだろう・・・。


 


京都その5 銀閣寺

2008-01-04 | A あれこれ

 南禅寺から哲学の道をひたすら歩いて銀閣寺へ



総門の正面は緑のアイストップ、参道が右に伸びている。



銀閣へのアプローチの演出。印象に残る空間。



参道の先にある中門を出ると唐突に銀閣が全貌を現す。



向月台と銀沙灘、銀閣寺型の手水鉢と敷石。どれも幾何学的な造形、庭園や銀閣、東求堂との対比的な美。





友人のブログに載っていた苔のサンプルを見つけた!苔も温暖化の影響を受けていると聞いた。苔ってこんなに種類があるんだ。

  *****

「京都日帰り行」はここ銀閣寺でタイムアップ。

この国の人々の素晴らしい美意識に触れることができた。

今回の結論↓



銀閣寺から京都駅に向かう市バスで目にした広告のコピー。

 


京都その4 南禅寺

2008-01-04 | B 繰り返しの美学








繰り返しの美学が多用されている水路閣、今も現役







和と洋の共生、と黒川さん。



きつい秩序とゆるやかな秩序

■ 三十三間堂からタクシーでここ南禅寺に移動。2年前に気の置けないオジちゃんやオバちゃん達と2回目の修学旅行をした際にもここを訪れたが、その時は三門の内部を見学したくらいであとはざっと見て湯豆腐屋さんへ移動してしまった。そう、オバちゃん達に気を使ったのだった。



今回は湯豆腐より見学を優先した。ここの方丈石庭は龍安寺の石庭と共に好きな酩酊じゃなかった名庭、遠州のデザイン力に脱帽(龍安寺の石庭の作者としては遠州説が有力だが特定はできていないと下記の新書にある)。一日費やしてもいいくらい南禅寺には見所がたくさんある。

『京都名庭を歩く』宮元健次/光文社新書 によるとこの庭は石の大きさを左から右(手前から後方)に向かって次第に小さくして遠近感を強調しているという。パースペクティブ効果はヨーロッパでは建築にも庭園にもよく利用されているが、遠州はそのテクニックを身につけていたらしい。

今回は日帰り、龍安寺も「繰り返しの美学」している渡月橋も諦めた。また次回、っていつのことやら・・・。

京都その3 三十三間堂

2008-01-04 | B 繰り返しの美学






■ 東寺から三十三間堂へタクシーで移動。

三十三間堂は2年前に外観だけチラッと見ているが、内部を見学するのは中学の時の修学旅行以来、  年ぶり。

実に繰り返しの美学に満ちたお堂だ。長さは120mもあるという。内部には中央の中尊を中心に左右に各500体の観音立像、合計1001体の観音像が規則正しく並んでいる(とパンフレットに書いてある)。伏見稲荷大社の鳥居とは違ってここの観音像の数は正確だろう。

繰り返しの美学! これだけの観音像が規則正しく並んでいると荘厳というかなんというか・・・、とにかくすごい。やはり平安時代の人達も「繰り返し効果」に気が付いていたに違いない。繰り返しの美学の歴史は実に長い!

京都その2 東寺

2008-01-04 | A あれこれ





 伏見稲荷大社から京都駅まで電車で戻り徒歩で東寺へ。

改めて書くまでもないが五重塔は屋根が5層繰り返されている。今回感じたのは五重塔は丹下さんの建築と同様に「近景より遠景の方がずっと美しい」ということだ。

塔は昔は京の都のランドマークだった。遠くからでもあちこちの五重塔がよく見えただろう。夕景にシルエットとなって浮かぶ塔は特に美しかったに違いない。

ところで五重塔がなぜ地震で倒れないのか、未だに明快な説明がなされていない。『五重塔はなぜ倒れないか』上田篤 編/新潮選書の帯には**「五つの帽子を積みあげたような五重塔は、地震のときにスネーク・ダンスをするが、真中を通っている心柱がその乱れを抑えて、しだいに振動を弱めていく**と不倒理由が示されてはいるが・・・。

東寺の五重塔の初層は、毎年正月三が日だけ一般公開されているそうで、昨日は内部に安置されている仏像を拝むことができた。


京都その1 伏見稲荷大社

2008-01-04 | B 繰り返しの美学



 昨日の歩数、22,619歩。よく歩いた。

JR京都駅からJR奈良線に乗り換えて最初に訪れたのがここ。「繰り返しの美学」の原点。

「千本鳥居」と呼ばれているが、実際にはもっと数が多いとタクシーの運転手から聞いた。例えば千山万岳や万里の長城というように千や万は数量が多いという意味でも使う。この場合も鳥居の数がすごく多いという意味なのだろう。

建築家の出江寛さんは、平凡なものの集合はときとして芸術にまで高められると指摘し、この鳥居については繰り返しがデザインとしての奇抜さを生み、畏怖感のようなものを表現していると述べている。

ここまで密に鳥居が並ぶと等間隔に繰り返しているというよりは連続していると脳は知覚するのだろう。繰り返し感をそれ程感じなかった。

いつかここを訪れてみたいとずっと思っていたがようやくその願いが叶った。

ここは上の写真1枚で充分。


 


京都行き 本日決行!

2008-01-03 | A あれこれ


 昨年末「京都に行きたい!」とこのブログに書いた。日帰りで京都行きなど考えてもみなかったが、年末に日帰りでもOKだとコメントしていただいた。決めた、きょう日帰りで京都に行ってくる。

「箱根駅伝を見ながらビール」も捨てがたいが、それより健康的だろう。ここ数年続けてきた善光寺参りは昨年の12月に済ませたから今年の正月は省略。

昨日ニュース番組で、既にUターンラッシュが始まっていると報じていた。帰りの新幹線は混雑するだろう・・・。京都名古屋間、所要時間は1時間に満たない。立っていてもしれている。名古屋からの「しなの」はたぶん大丈夫だろう、座れないなどということはあるまい。

正月の京都は初めて。今回は目的がはっきりしている、そう「繰り返しの美学」を巡ってくるということ。伏見稲荷大社の千本鳥居をまず見に行く。JR奈良線で稲荷駅下車か・・・。あとは調べてないが地図を持参すればなんとかなるだろう。

『再生巨流』楡周平/新潮文庫は往復の車中で読了できるかな。


「自治体格差が国を滅ぼす」

2008-01-02 | A 読書日記


 『自治体格差が国を滅ぼす』田村秀/集英社新書 

年末年始の休みに読もうと購入した4冊のうちの1冊、年末に読了。集英社新書は九つにジャンル分けされているが、この本はBの社会に分類されている。因みにAは政治・経済、Cは哲学・思想、Dが歴史・地理、Eが教育・心理といった具合。Bは全く疎いジャンル(疎いのはBに限らないが)だがタイトルが気になって敢えて読んでみた。

まず第1章で拡大を続けている地域間格差の実態が示される。第2章から第5章までは勝ち組自治体と負け組自治体の紹介。勝ち組の自治体としてまず紹介されるのが浦安市。負け組は、そうあの夕張市。それぞれいくつかの自治体が取り上げられているが残念ながら各自治体の実態に深く迫っているわけではなく表面的な紹介に留まっている。

国は各自治体を構成要素とするシステムと捉えることも可能だから、自治体の破綻が国の存亡に影響を及ぼすということは理解できる。そのことを実証的に論じているだろうと期待して読んだが、そのような私の期待に適う内容ではなかった。

最終章(第6章)の最終節で、自治体が生き残るための方策が示されているが総論が並んでいるだけだった(としか理解できなかった)。

年末のアルコール漬けの頭で読んだ私が重要な指摘を読み落としているのかもしれないが、少し物足りなさを感じた。





ねずみから始めよう

2008-01-02 | A あれこれ

 今年の干支は子、ねずみ。最初に取り上げる本はねずみに関するものにしようと自室の書棚を探す。



『ラトポリス ねずみたちの都市』ジル・テリアン/共立出版 という本が見つかった。30年以上も前(1977年11月)に購入した古い本だが捨てることはできない。

内容はすっかり忘れているが、目次を見ると動物学、行動学、生態学などという章立てになっている。今は新書がブームでよく売れる、この本も今なら新書として出版してもおかしくない内容だ。この本の購入動機は記憶の彼方、不明。

廊下の書棚にはねずみに関する絵本が何冊かあった。よく知らないがこの絵本のシリーズは有名らしい。

 路上観察は今年も続けたい。最初はやはりねずみを取り上げる。土蔵の窓にねずみが3匹。



「ねずみの嫁入り」という昔ばなしを思い出す。娘を一番強い太陽、民話だから太陽じゃなくてお日さま、そうお日さまに嫁がせようとした親ねずみだったが、お日さまより雲、雲より風、風より蔵と巡って結局ねずみのところに嫁がせるという話。確か相手は娘が好きなねずみだったような記憶があるが・・・。

土蔵の中には米俵がいっぱい積んである、という情報を発信するねずみ。

他にねずみは・・・



こんなCDがあった。


おめでとう 2008

2008-01-01 | A 読書日記



『アフターダーク』村上春樹/講談社文庫
『建築家捜し』磯崎新/岩波現代文庫
『幕の内弁当の美学』榮久庵憲司/朝日文庫
『思春期をめぐる冒険』岩宮恵子/新潮文庫
『てのひらの闇』藤原伊織/文春文庫



『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎/新潮文庫
『芽むしり 仔撃ち』大江健三郎/新潮文庫
『ディスクロージャー』マイクル・クライトン/ハヤカワ文庫
『逃亡くそたわけ』絲山秋子/講談社文庫
『海辺のカフカ』村上春樹/新潮文庫



『ご新規熱血ポンちゃん』山田詠美/新潮文庫
『ザ・センター』D・ショービン/文春文庫
『イッツ・オンリー・トーク』絲山秋子/文春文庫
『マンボウ酔族館』北杜夫/新潮文庫
『スプートニクの恋人』村上春樹/講談社文庫


今年もよろしくお願いします。

2008/01/01/U1