和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

わかりにくかった時代

2023-11-14 | 本棚並べ
鶴見俊輔著「期待と回想」(朝日文庫・2008年)。
この本の副題は「語り下ろし伝」とあります。

この朝日文庫の解説が津野海太郎。解説の題は
『マチガイ主義がわかりにくかった時代』(p602~608)。

ところで、おさらい。
鶴見俊輔は、1922年東京生まれ。

「鶴見さんに質問をぶつけて、じっくり話を聞いてみたい。
 それをまとめて本にしたらどうか。 」(p596・塩沢由典)

その質問の会が10回(1993年~1996年)。
ちょうど、鶴見俊輔が70歳を過ぎてからの語りが
この本となっておりました。

解説の津野さんの文には、
「 60年代から70年代にかけて、同年配の友人たちにくらべれば、  
  私(津野)は鶴見の著作にけっこう持続的にしたしんでいた
  ほうだと思う。  」(p606~607)

そして、こうありました。

「 むかしの私に『マチガイ主義』がのみこみにくかったのは、
  おそらく私のうちに、なんらかの『マチガッテハイケナイ主義』が
  根をはっていたからにちがいない。・・・・

  なんにせよ私は、まちがいに価値をみいだす習慣を身につけることなく、
  まちがうことをおそれ、正しいことをいわなければとのみ思いつづけて
  若い時代をすごしてしまったらしいや。 ]


それでは、鶴見さんのいう『マチガイ主義』の定義とは。
そこも、解説に引用されておりました。

「 マチガイ主義(falliblism)
  絶対的な確かさ、絶対的な精密さ、絶対的な普遍性、
  これらは、われわれの経験的知識の達し得ない所にある。

  われわれの知識は、マチガイを何度も重ねながら、
  マチガイの度合の少ない方向に向かって進む。
  マチガイこそは、われわれの知識の向上のために最も良い機会である。

  したがって、われわれが思索に際して仮説を選ぶ場合には、
  それがマチガイであったなら最もやさしく論破できる
  ような仮説をこそ採用すべきだ。         」(p603)

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