和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

至るところに発句書く。

2022-12-09 | 詩歌
昨日のつづきです。
「挨拶句・存問(そんもん)」という用語を
6㌻ほどで紹介されているのは宇佐美魚目氏。

昨日、省略した箇所をあらためて引用。
定義・歴史・具体例とならんでいます。
その『歴史』の最初は『三冊子』から引用
されておりました。そこから

「 服部土芳は師であった松尾芭蕉のことばを書きとめた
  著者『三冊子』の中で挨拶について次のように述べている。

 《 ――客発句とて、
     むかしは必ず客より挨拶第一に発句をなす。

     脇(わき)も答ふるごとくにうけて
     挨拶を付け侍(はべ)る也。

     師の曰く
    『 脇、亭主の句をいへる所、即ち挨拶也 』。
     雪月花の事のみいひたる句にても
     挨拶の心也との教(をしへ)也  ≫

このあとに、つづけて

  山本健吉は《 俳句は滑稽なり。俳句は挨拶なり。俳句は即興なり ≫
  と三つの命題の上に俳句は存立すると明言。

このあとに、昨日引用紹介した山本健吉・高浜虚子の言葉がありました。
高浜虚子といえば、

  高浜虚子著「虚子五句集」(岩波文庫・上下巻)があります。
  題の下に小さく「付 慶弔贈答句抄」ともあります。

はい。せっかくなので、この機会に本棚からもってくる。

   上巻は、五百句・五百五十句・六百句。
   下巻は、六百五十句・七百五十句・付慶弔贈答句抄
   下巻には、大岡信氏が18㌻の解説を載せております。

パラパラ読みの私には、うってつけの文庫です。

 『 明治29年鼠骨庵の障子に題す 』とあり
 
   春の旅至るところに発句書く   高浜虚子

この文庫二冊、「至るところに発句」を見出せます。
うん。この句集には、日付があるので、それも楽しめます。
無精の私は、師走を飛び越してお正月の句を並べることに。  

  水仙や表紙とれたる古言海(げんかい)  昭和7年1月28日
  神近き大提灯(おおぢょうちん)や初詣  昭和10年1月1日
  藪入(やぶいり)の田舎の月の明るさよ  昭和10年1月10日
  
  初句会浮世話をするよりも        昭和13年1月1日
  粛々と群聚はすすむ初詣             1月1日
   
  初詣神慮は測り難けれど        昭和14年1月1日
  願(ね)ぎ事はもとより一つ初詣        1月1日
  大寒にまけじと老の起居かな          1月13日

  厳かに注連(しめ)の内てふ言葉あり  昭和15年1月8日
  凍土(いてつち)につまづきがちの老の冬    1月8日
  福寿草遺産といふは蔵書のみ          1月10日
  松過ぎの又も光陰矢の如く           1月10日

  道のべの延命地蔵古稀の春       昭和18年1月7日

  思ふこと書信に飛ばし冬籠(ふゆごもり)昭和20年12月27日

  去年今年追善のことかにかくと     昭和22年1月1日

  今年子規五十年忌や老の春       昭和25年12月13日
  去年今年貫く棒の如きもの       昭和25年12月20日

はい。有名な句で終わってもいいのでしょうが、
キリがないけど蛇足もまたよいかもと続けます。

  志(こころざし)俳諧にありおでん食ふ 昭和33年12月21日
  推敲を重ぬる一句去年今年           12月25日
  静(しずか)なる我住む町の年の暮       12月30日
  君は君我は我なり年の暮            12月30日
  ふとしたることにあはてて年の暮        12月30日


今回の引用は、これくらいで。
年の暮れ、いたるところに発句あり。
なぞと、つい言ってみたくなります。

     

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4 コメント

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Unknown (水仙)
2022-12-09 17:08:51
私に対する挨拶歌かと思いましたが…。↓

水仙や表紙とれたる古言海(げんかい)  
返信する
こんばんは。 (和田浦海岸)
2022-12-09 17:17:16
こんばんは。水仙さん。
コメントありがとうございます。
もう五時過ぎるとこちらは真っ暗。

道路脇の花壇に、水仙の緑があったのですが、
今日になって、咲いているのに気づきました。
返信する
いたるところの発句 (kei)
2022-12-09 21:12:10
こんばんは。

時節に合って発想が自在で、
即興感、滑稽寒など感じられるし
「いたるところに発句」、
読んでいて楽しいものですね。
返信する
即興読み。 (和田浦海岸)
2022-12-10 08:50:26
おはようございます。keiさん。
コメントありがとうございます。

俳句は即興なり。
はい。この高浜虚子の文庫を読むのには、
ふさわしいのは即興読みかも知れません。

俳句は滑稽なり。
うん。寒さにむかって『滑稽寒』。
偶然の配合の妙で印象に残ります。
寒稽古くらいしか思い浮かばぬ頭
には妙に新鮮な言葉の組み合わせ。

俳句は挨拶なり。
こんなことばかりを思っていると、
今年も年賀はがきまで至りません。
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