和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

神戸から東京。

2007-07-27 | Weblog
日野原重明(ひのはらしげあき)の連載があったので、はじめて人となりを読むことができました(読売新聞2007年6月13日~7月11日「時代の証言者」)。

それを読むと、日野原氏は神戸から東京へと来ているのですね。
では順を追ってみます。

1911年(明治44年)に山口市にある母、満子の実家で生まれる。
生涯を伝道にささげた父・善輔は、「14歳の時に出会った宣教師に感化されて、クリスチャンになったんだけど、浄土宗の家だから、理解してもらえなかったらしい。故郷を離れ、神戸市にできたばかりのミッションスクール、関西学院に入ったんです」。ご本人の重明氏は1918(大正7)年に神戸市立諏訪山小学校に入学。関東大震災のころはどうしておられたか。どうも受験のことばかりです。「もともと、父が神学を教えていた関西学院に興味があってね。子弟は授業料が免除されていたし。でも名門校に運良く受かったからということで、神戸一中の入学式に行ってみたんだ。1924(大正13)年のことでした。」それからすぐに関西学院に行くことになります。「本格的に医者を目指したのは中学4年のときでした。1929年(昭和4年)には、第三高等学校(京都)の理科に合格してね・・三高では文芸部に入って、詩集を出したり、随筆の文集を出したりしたんだ。ちょうど、グールモンなどのフランスの詩集を、堀口大学が精力的に翻訳し始めたころで、ジャン・コクトーといった前衛的な詩にも傾倒したね」。1932年、京大の医学部に合格。「大学院修了に1年残した1941年(昭和16年)のことでした。住んでいた地塩寮にキリスト教青年会(YMCA)同盟の学生総主事が来て、東京の聖路加国際病院で循環器のできる若い人を探しているけど、君はどうかと言われたんです。もともと、大学を出たら、東京で勝負したいという気持ちが心の隅にあったので、僕は飛びついた。東京は東大閥だからいじめられるよ、とみな反対したけど、8月、聖路加に赴任しました。でも、働きだしたら、橋本寛敏院長は東京帝国大学医学部卒なのに東大の学閥が大嫌いで、医局にも残らなかったという逸話の持ち主ということが分かったんです。聖路加には学閥がないので僕はいじめられもせず、好きなことをやらせてもらったの」。

関東大震災を体験しなかった日野原氏が、ここで東京大空襲に遭遇するのでした。
「空襲が激しくなり、警報が鳴るたびに、何百人単位の患者が病院に押し寄せてきました。東京大空襲では、礼拝堂まで、やけどの患者で埋まってね。床にマットレスを敷いて寝かすんだけど、薬が全然ないでしょ。やけどした表皮に分泌物が出ているからって、新聞を燃やした炭の粉を振りかけたりして。あとは何もできずに、どんどん人が死んでいく。そういうことを僕は空襲の時に経験したんです。」

ちょいとさまざまな経験をされている日野原氏ですので、端折るのがもったいなのですが、あと一つだけ引用させていただきます。

1995年3月20日。
「僕が院長になってからは、月曜日の早朝は定例幹部会と決めていて、その日も7時半から、本館の5階に3人の副院長を含め、責任者が集まっていてね。すると、8時過ぎに、『地下鉄で事故が起きて、患者が大量に発生した』と消防署から連絡が来たんです。医師を近くの築地駅に出したら、何かわからないけど、動けない患者が大勢いると報告があってね。1月には死者6400人を出した阪神・淡路大震災があったばかりだから、一人でも多くの患者をこの病院で引き受けなければと。救急センターに医師を集めるように指示してね。同時に、外来診療を中止して、その日の手術でまだ麻酔がかかっていない患者の手術を延期しました。520のベッドの2割は空いているというし、震災に備えてチャペルや廊下にも医療機器が完備しているでしょ。看護師も敷地内の宿舎から呼び出せばいいからと思い、『全員を受け入れなさい』と指示を出したんです。そして、僕は救急センターの入り口で、受け入れの指揮を執ってね。看護大の職員やボランティアも救援に駆けつけてくれて、640人を収容することができたんだ。患者はせきが激しくて、瞳孔がみな収縮していたの。でも、何の中毒かわからないから、中堅の医師で、原因究明班を作ってね。そのうち、どうも長野県松本市でまかれたサリンに似ているという話になって、信州大学付属病院からの電話で、その症状なら全く同じで間違いないと。大阪から解毒剤を取り寄せて、全員に点滴しました。・・・聖路加は緊急事態の際、情報を共有し、素早く方針を決定するための訓練を十分に重ねていたし、大勢のボランティアが援助してくれた・・・」

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