流言蜚語をネット検索したらこうある。
明確な根拠がないのに言い触らされているうわさ。
世間にひろがる根も葉もないうわさ。デマ。
[使用例] 眼前の事実よりもいわゆる流言蜚語の方が現実感においてまさっているという経験は、戦争末期においての私たちの経験でもあった[堀田善衛*方丈記私記|1970~71]
[解説] 「流言」は根拠のないうわさ、つくり話のこと。
「蜚語」はどこからともなく出てくる根拠のないうわさ、
無責任なうわさ、のことで「飛語」とも書きます。
「蜚」はもともとはゴキブリをさしますが、「飛ぶ」の意があります。
うん。言葉には、意味があって、それをたどるのは、楽しい(笑)。
「使用例」を、堀田善衛著「方丈記私記」の本文にさがしてみる。
ありました。第五章「風のけしきにつひにまけぬる」の中です。
鎌倉武士に関する箇所にこうあります。ちょっと長めに引用。
「鎌倉は、たしかに関東武士に発する新しい理念、
京都にはまったくない機動性ゆたかな理念を生んだ。
そこに新しい日本は、たしかに芽生えていた。けれども、同時に、
その理念をうちたてるために払わなければならなかった犠牲もまた、
あまりに多すぎた。そうしてその犠牲の多くは、
きわめての短期間のあいだの、近親殺戮に類したものであった。
幕府開設以来、公暁出家まで、25年に満たずして、
鎌倉はすでに疑心より暗鬼の生ずる夢想、夢魔に
つかれたような状況になっていた。
眼前の事実よりもいわゆる流言蜚語の方が
現実感にまさっているという経験は、
戦時末期においての私たちの経験でもあった。・・・・・
かつはまた、ほとんど例によって、と言いたいくらいに、
京にも鎌倉にも連続地震の季節がふたたび襲いかかって来る。 」
( P113~114 堀田善衛著「方丈記私記」ちくま文庫 )
もどって、「流言蜚語」の「蜚」を、ここでは、
「新潮日本語漢字辞典」でひいてみることに。
【 蜚 】 ( ひ・とぶ ) p1993
① とぶ。
ふわふわと浮き上がって宙を行く。
非常に速く行く。「 蜚語(飛語) 」
② 飛ばす。遠くへ及ぼす。
③ 「飛蠊(ごきぶり・ひれん)」
昆虫の名。体は平たく光沢のある黒褐色。
長い触角を持つ。人家にすむ種は伝染病などを媒介する害虫。
油虫。
➃ 農作物を食う害虫。油虫あるいは飛蝗(ばった)。
うん。最後には小学館の
「 故事・俗信 ことわざ大辞典 」をひらいてみる。
流言蜚語は、みあたらなかったのですが、こんな言葉が拾われておりました。
【 流言は知者に止まる 】 p1221
根拠のないうわさは愚人の間では次々とひろまるが、
智者は聞いてもそれを人に言ったりしないからそこで止まってしまう。