映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「LIFE!」 ベン・スティラー

2014-03-26 12:02:58 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「LIFE」を映画館で見てきました。
これは想像よりもよかった!何よりも映画を見た後味がいい。

現代アメリカ映画を代表するコメディアンであるベン・スティラー自らが監督する主演映画である。予告編で見たときにはある変人の物語のように感じて、見るつもりはなかった。ただ、ショーン・ペンが出ていることだけが気になっていた。彼の出演、監督作品でハズレはない。しかも、ショーンペンは天才的ロケ・ハンターである。「イントゥ・ザ・ワイルド」「プレッジ」などいつも美しい風景をバックに楽しまさせてくれる。「きっとここが帰る場所」もそうだ。彼が出演するだけで、映画の内容からして同じような展開になると予測できた。その直感は当たっていた。グリーンランド、アイスランドなんて、自分はおそらくは生涯行きそうもない場所をロケしてくれた。ダイナミックで美しい映像だ。心の底から爽快な感覚を持つことができた。しかも、ベンスティラーだけでなく、オスカー俳優の大物ショーンペン、シャーリーマクレーンの2人が熟練の演技でうまいくらいにスパイスを利かせてくれる。実にお見事!

アメリカのグラフ誌「LIFE」は1936年の創刊から2007年に休刊されるまで、世界で幅広く読まれていた。主人公のウォルター・ミティ(ベンスティラー)は写真管理部で働くLIFE誌のネガ管理者だ。独身のウォルターは毎日変化のない日々を過ごしていた。唯一の楽しみは、現実から逃避する空想をすることだった。美人で子連れの同僚に魅かれていた。しかし、経営不振でLIFEの廃刊が決まった。会社に整理担当者が来て、リストラが始まりだしたのだ。そんなある日、LIFE誌の最終号の表紙を飾る大切な写真のネガがないことに気付いた。ネガの行方を確認するためにカメラマン(ショーン・ペン)を探しにでる。ウォルターは一大決心をしてグリーンランドに向うのだが。。。

昔アンカレッジ経由でパリに向かう飛行機の中からグリーンランドの大陸を眺めたことがある。地図上でいつも気になる場所だった。そこへ主人公が向かう。のどかな港町から見る海岸の地形が美しい。そこで主人公はヘリコプターに乗り込む。そしてヘリコプターから海へ飛び込む。さすがにサメはニセモノだろうけど、実際にベンスティラーが荒海に飛び込んでの撮影に挑戦している。この臨場感ある映像が凄い。

そしてアイスランドに向う。カメラマンがアイスランドから空路移動するという話を聞いた。あわててそばに向おうとする主人公は、自転車で懸命に追いかけるが、そこはものすごい火山地帯だ。
スケートボードに乗り込み、懸命に追いかける。爽快な映像だ。そして向った場所で、火山の噴火に直面する。桜島の噴火のような噴煙を避けるように逃げていく。このあたりの映像は見ていて楽しい。
結局カメラマンはヒマラヤへ行ったらしい。そこで現地人2人を雇い登っていく。雪山を空の上から映し出す映像もダイナミックだ。

このあたりの映像美は実にすばらしい。
行ったことないところへ連れてくれるのがうれしい。

最初ニューヨークの真ん中で主人公が妄想するシーンを映し出す。CGバリバリの楽しい映像だ。
これはこれでいいのであるが、旅に出た後は実写の凄みを見せてくれる

ショーペンの出番は少ない。でもとっても味がある。彼は額のしわがトレードマークである。
今回山の上の撮影ということで、たぶん一緒に登ったんだろう。そういう苦労を思わせるような味のある顔をして出てくる。しわがいい感じに映る。
そこで2人が交わす会話もいい。

シャーリーマクレーンの母親役がやさしくていい感じだ。最近ジャックブラック主演「バーニー」で稀代の意地悪ばあさんを演じた。
ここでは正反対。年をとるにつれ、「奥様は魔女」の母親のような役も増えてきた。往年のオスカー俳優だけに緩急つけた演技がお見事
ここに来てジャンヌモローもそうだが、最後の華を見せてくれる。


そしてオチに向う。
ヒッチコック映画で「北北西に進路をとれ」のマイクロフィルムとかキーとなっている小物(マクガフィン)が出てくる。ここではネガである。
25番と指定されるが、24番、26番あっても肝心な部分が抜けている。両方の写真にある手がかりを追って向ったグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤに行く。
最終に向けて、どうなるのか?推理小説のような楽しみができた。
そして最後に種が明かされる。これがいい!

気分よく映画館をあとにできた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ウォールストリート・ダウン」

2014-03-25 05:23:59 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ウォールストリートダウン」は2013年公開のアメリカ映画だ。
何気なくdvdを手にとってレンタルしたが、最後まで飽きさせない展開であった。

ウォールストリートに働く人を次から次へと殺していくという展開はいかにもやりすぎな気もする。あくまで底辺社会からの視線でそれらの人の共感を得ようとする。でもこんな映画が成り立ってしまうこと自体驚きだ。アメリカが格差を憂う社会になってしまったのか?しかも日本だったらこんなことは起こるだろうか?この映画を見て考えさせられることが多い。

主人公ジム(ドミニク・パーセル)は元は海兵隊員で今は現金輸送車の警備員として働き、美しい妻(エリン・カープラック)と暮らしていた。ところが、妻が難病にかかる。治療のための注射一本に300$もかかるという。しかも、高額医療につき医療保険対象外だと病院の事務に指摘される。その場はクレジットカードで払う。

彼は蓄えたお金を債券を購入し運用していた。治療費に充てようと引き出そうとしたら、金融危機のせいで元金がほとんどショートしているという。
クレームをつけても、加えて6万ドルを追加で入れろと通知が来る。すぐさま弁護士に相談するが、請求を退けるために1万ドル費用がいると言われる。途方に暮れるが、警備員の仲間が弁護士費用を出してくれた。地方検事補へ相談に行くが会ってはくれない。金を支払ったのに弁護士も全く機能しない。その上もう一人弁護士を雇えという。

そうしてくるうちにカード利用が不能になり、高額医療のお金が払えなくなる。支払い要求の督促状が山ほどきて、しまいに家を差し押さえるといわれる。そして夫の様子を察して妻の自殺という悲劇が襲う。彼は途方に暮れるが、自分の怒りの矛先をウォールストリートに働く人物に向けるようになるが。。。


以下ネタばれあり。

証券会社の人がこの映画見たら怒るだろうなあ!
時代劇で悪代官とその仲間役が正義の味方の武士にめった切りにされるのと同じように、主人公はウォール街で働く金融マンたちを撃って撃って撃ちまくる。実際に撃たれた中には不正取引に無関係な人だっているのだ。そして最終場面に向かっても、映画の当事者はずっと主人公をかばい続ける。いくらなんでもこれってアリ??

要はウォール街に働く人物すべてが悪役というのがこの映画の主旨である。
その昔「豊田商事」という詐欺まがいの会社で大金を集めていたのは有名だ。あの時は豊田商事の社長がよく訳のわからない右翼2人にメタメタに刺されて殺された。あの事件とこれは違う気がするんだけど、襲撃する主旨は一緒だ。
この映画では、主人公が投資したお金は10%はまわると言われて投資する。ところが、相場の変調で投資した債券の元本がないと言われる。ブローカーも何がなんだかよくわからないという。
この映画の投資商品は僕もよくわからない。信用取引や商品取引のようなレバレッジ投資に入れ込むのならわかるんだけど、違うみたい。ゼロっていうのはあるのかしら?しかも、映画では商業不動産に投資してと言っているが、追い金を要求されるというと不思議?

もしこの映画のようになったらさすがに訴えるだろう。日本だったら大騒ぎのはずだ。ただ、普通だったらありえないんだろうなあ?詐欺まがいのブローカーに引っかかったなら「投資はすべて自己責任」というのに当てはまるよね。

いずれにせよ、ウォールストリートに働く人たちがアメリカ経済を支えているのは事実。この映画のような襲撃を是認すること自体はありえないと感じる。

医療保険が高額医療になる使えないという。確かに健康保険対象外になる診療は日本でもあるが、日本では一定以上の高額医療費のバックが申請すればある。差額ベッドなどは別なんだろうけど、この映画の妻は自宅診療だ。一本300$の注射を毎日うつわけでもあるまい。あとは所得税の医療費控除だってある。(これはアメリカでもあると思うけど)オバマは公約で健康保険の充実を訴えているけど、実際問題日本はかなり恵まれているのかもしれないし、ここで起きるような状態はないのかもしれない。だから日本が財政がおかしい。そんなことを考えていた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「それでも夜は明ける」

2014-03-12 18:45:04 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「それでも夜は明ける」を映画館で見てきました。

本年度アカデミー賞作品賞に輝く作品だ。
感想としてはともかく重いといった印象。よくぞここまでというくらい主人公は次から次へと窮地に陥る。
黒人人種差別を描いた映画は多々あるけれど、ここまでドツボにはめる映画は記憶にない。
助演女優賞をルピタ・ニョンゴが受賞したが、これは当然そうなると思わせるすごい演技だと思う。

バイオリニストのソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は、幸せな暮らしを送っていた。愛する妻は腕の良い料理人で、幼い娘と息子も元気に育っている。1841年、アメリカ・ニューヨーク州サラトガ。ソロモンは生まれた時から自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた。

ある時、知人の紹介で、ワシントンで開催されるショーでの演奏を頼まれる。契約の2週間を終え、興行主と祝杯をあげたソロモンは、いつになく酔いつぶれてしまう。
翌朝、目が覚めると、ソロモンは小屋の中で、手と足を重い鎖につながれていた。様子を見に来た男たちに身分を告げるが、彼らは平然と「おまえは南部から逃げてきた奴隷だ」と宣告し、認めないソロモンを激しく鞭打つ。
興行主に騙されて売られたと気付いた時には、既に船の上だった。屈強な二人の黒人たちと共に反乱を目論むが、女を助けようとした一人が虫でも潰すように刺し殺されるのを見て、抵抗が無駄だと悟る。

ニューオーリンズの奴隷市場に着くと、奴隷商人(ポール・ジアマッティ)から無理やり“ソロモン”という名前すら奪われ、男も女も全員裸で並べられ、子どもは「将来は立派な家畜になりますよ」と紹介される。こうしてソロモンは、大農園主のフォード(ベネディクト・カンバーバッチ)に買われていく。

有能なソロモンはすぐにフォードに気に入られるが、大工のティビッツ(ポール・ダノ)からは何かと難癖をつけられる。ついにソロモンの中で何かが弾け、殴りかかるティビッツに反撃してしまう。仲間を引き連れて戻ってきたティビッツは、ソロモンの首に縄をかけて木に吊るす。監督官が彼らを銃で追い払うが、フォードが戻るまで、ソロモンはかろうじて爪先が地面に着く状態で何時間も放置される。
フォードは面倒を起こすソロモンを、借金返済を兼ねてエップス(マイケル・ファスベンダー)に売る。フォードは優しい主人だったが、所詮奴隷は“財産”なのだ。広大な綿花畑を所有するエップスに仕え始めたソロモンは、今まではまだ地獄を覗いていただけだと悟る。エップスは、とても正視できない暴力で奴隷たちを支配し、まだ年若いパッツィー(ルピタ・ニョンゴ)をサディスティックに弄ぶ。ソロモンに信頼を寄せたパッツィーは、ある夜「自分を殺してくれ」と頼むが、彼にはできない。
(作品情報より引用)

この主人公はもともとは奴隷だったわけではない。はめられて奴隷になってしまったのである。
酔って朝気がつくと、手も足も鎖につながれている。そうしているうちに気がつくと奴隷として売買されるのだ。こんな感じで奴隷になってしまった黒人たちはきっとほかにもいたのであろう。
いくらなんでもひどすぎる。

助演女優賞のルピタ・ニョンゴが演じたのは、主人の寵愛を受けてこっそり浮気する役柄だ。でも奥さんにバレて逆に虐待を受ける。これがむごすぎる仕打ちだ。逆に死んでしまった方が楽だと思うくらいの仕打ちだ。このシーンには目をそむけざるを得ない。つらいなあ。

最後感動の場面が映されるが、全く涙は出てこなかった。
生まれながらに奴隷になり、死ぬまで逃れられない黒人たちが大勢いることを思うとやりきれない気持ちになったからだ。
本当にやるせない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ダラス・バイヤーズクラブ」 マシュー・マコノヒー

2014-02-25 20:36:41 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ダラス・バイヤーズ・クラブ」を映画館で見てました。

いよいよ週末に発表になるアカデミー賞
主演男優賞の下馬評では、マコノヒ―がとる可能性が高いと言われている。であれば、発表前にきっちり見てディカプリオと比較をしてみたいという誘惑にかられた。余命30日のエイズになった主人公が、認可されていないエイズの特効薬を自ら使って効果を確かめ、自己利用だけでなく、同じような悩みを持つ人たちに売り渡すためにつくったのが「ダラスバイヤーズクラブ」である。何度も取り締まりを受けながらもしぶとく生き延びていく。実際エイズになってから6年間も生存したようだ。

映画としてのテンポは正直どんよりして、アカデミー賞作品賞には到底およばないだろう。ただ、主人公の演技は極めてすばらしい。「リンカーン弁護士」の彼を知っているだけに役作りも半端じゃない。その昔トムハンクスはエイズにかかった弁護士を演じた「フィラデルフィア」でアカデミー賞主演男優賞を受賞した。この映画は個人的に好きな映画である。ここのデンゼルワシントンが彼のベストだと自分は思っている。トムハンクスも当然いいのであるが、「ダラスバイヤーズクラブ」を見ると、エイズを演じた2人では明らかにマシュー・マコノヒーの方が上と言わざるを得ない。

1987年のテキサス州が舞台だ。
ロデオ好きの電気工のロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)は酒とドラッグと女に狂うその日暮らしをしていた。当然家庭を持っていない。男っぷりを競うロデオ好きはゲイを毛嫌いしていた。ところが、ケガをして行った病院で、血液検査をしたらHIV陽性反応が出て余命30日と医者に伝えられる。彼はゲイでないのに何故?と驚き、図書館でエイズについて猛勉強を始める。

生きたい欲求にかられた彼は、自分を診察した女性医師イブ(ジェニファー・ガーナー)を訪ね、AZTという未承認の薬を処方してくれるように頼むが、断られる。そこで彼はメキシコへ渡り、毒性の強いAZTではなく、アメリカでは未承認だが効果がみこめる薬を国内に持ち込み、患者たちにさばき始める。


同じくエイズ患者であるレイヨン(ジャレッド・レト)とともに非合法組織ダラス・バイヤーズクラブを設立し新薬の提供を始めたところ、会費を取る代わりに、政府が承認していない薬を会員に配布したのだ。最初は自分自身のためにはじめたことだが、それが奇妙な広がりをもっていく。ネットワークはどんどん拡大した。しかしそんな彼に薬事法を管理する当局は目をつけるが。。。。

堕落しきった男である。まともな人生とは程遠い。
金と引き替えに無理やり医者に処方箋を作ってもらって、エイズ特効薬を外国で仕入れる。それを密輸のように運び込む。
世間のために尽くしてというわけでもない。自分のためにするわけだ。でも幾分か悪知恵が働く。当然当局は目を付ける。薬の販売は日本もそうだが、当局の管理が厳しい。でも認可している薬ではむしろ容態が良くなるどころか、悪くなる一方である。まわりは彼のことを頼りにするわけで、口コミでクラブは繁盛する。
そんな役柄を実にうまく演じたと思う。

マシュー・マコノヒーの一人舞台と言えるが脇を固めるジャレッド・レトやジェニファー・ガーナーの存在もよかった。
単なる女医と患者だった関係が少しづつ変わっていく。絶対に接近しそうもないと思われる2人が少しづつ接近する。そこには女医とも友人であるレイヨンの存在が媒介となるのであるが、淡々と双曲線のように近づけていく構図を見るのは悪くない。

あとはマークボランの使い方がうまかったことが印象的かな。日本へ買い付けに行くシーンが出てきたのには驚いたが、どうも現代の渋谷のようだ。「林原」という会社の固有名詞もでてきた。

どうやらマシュー・マコノヒー有利で決まりそうな印象

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ラッシュ」

2014-02-23 17:41:32 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ラッシュ」を映画館で見た。ロンハワード監督の新作である。
これはなかなか良かった。実話と聞くとますます背筋がぞくぞくするノンフィクション映画だ。


カーレースの迫力がすごいとは聞いていたが、そればかりではない。
ジェームスハントとニキ・ラウダのライバル物語である。基本的にスポーツマンのライバル物語は幼少時から好きなので2時間じっくりと楽しめた。2人の性格、こだわりに焦点をあてている人間ドラマとしても見れる。2人の絶頂の場面だけでなく、落ち目乱調の場面、復活する感動の場面と見せ場が盛りだくさんだ。出来過ぎのフィクションのようなこんなすばらしい対決がこの世に存在していたことは知らなかった。

1976年8月のドイツF1レースでのレース前の光景が映し出される。
そこでは2人のレーサーが視線を合わせている。ジェームスハントとニキ・ラウダだ。
雨が降っているので、タイアの選択に各レーサーとも戸惑っており、他のレーサーの動きに敏感になっている。

続いて1970年に時間軸を戻す。
ジャームスハント(クリス・ヘムズワース)はF3の人気レーサーである。ナンパで女と見たらすぐに声をかけ、イタしてしまう。病院で知り合った彼女と付き合いながら活躍を続けていた。イギリスの貴族であるアレクサンダー・ヘスケス卿のレーシングチームに入って、タバコなどのスポンサーに頼らずにレースに出ていた。一方、ニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)はオーストリアの実業家の家に生まれ、育ちがよかった。親の反対を受けながらもレーサーを目指し、多額の持参金つきで財政難のF1レーシングチームに入った。そこで、すぐさま車のメカの知識を活かして車を改造してスピードのあるレーシングカーを作りだす。ラップは大幅に短縮だ。周囲も彼に一目を置き、ニキのチームも強くなっていく。

やがて2人は互いにF1に参戦する。
75年にはニキ・ラウダはフェラーリがエースドライバーとなっていた。勝利を重ねて年間ワールドチャンピョンとなった
一方のジェームスハントはニキ・ラウダの活躍を横目で見ながら、虎視眈眈とトップを狙う。チーム・オーナーであるヘスケス卿の懐具合が悪化して、新しいスポンサーを探さなければならない状況に陥る。売り込みを続けた挙句、土壇場で「マクラーレン」のチームに入ることができた。ところが、妻との間は徐々に不仲になっていた。
翌76年のシーズンもニキ・ラウダは絶好調であった。徐々にポイントを重ねてトップを走っていた。一方ジェームスハントはリタイアとなるレースが続く。勝ったスペインGPも車体幅が若干広いということで後日失格。しかも、妻が俳優のリチャードバートンと付き合っているというゴシップがマスコミで広がる。結局離婚となるが、ツキに恵まれない不遇な状況だった。

そして映像はドイツGPのシーンに戻る。
もともとドイツのニュルンベルクのレース場は難コースとして有名だった。しかも、雨が降る中レースをするのは危険とニキ・ラウダは参戦するレーサー全員とミーティングをした。ニキ・ラウダの中止要請に対して、ジェームスハントは反対し、多数決で結局レースは実施されることになった。
しかし、レース中にニキ・ラウダの車は大破して炎上してしまう。400度の火を1分間浴びて彼は大やけどを負ってしまったのであるが。。。

ちょうど彼らがF1を走っているころは、自分史では最も自動車に関心がない時代であった。それなので、こんなライバル関係があることは知らない。村山対長島などの野球対決や今回のフィギュアのキムヨナ、浅田真央対決のようなライバル物語が存在する。どちらかというと、矢吹ジョー対力石徹のボクシングのライバル物語に近い気がしている。でもここまでのドラマティックなストーリーは珍しい気がする。シーズン途中まで不遇だったジェームスがニキの事故によって浮上、しかもニキが奇跡の復活を遂げる。

この復活自体ちょっと信じられないフィクションのような話だ。そして最終決着をつけるため2人は再度日本の「富士スピードウェイ」で対決する。うーん、しびれるなあ。

印象に残るのは
女好きのジェームスハントが自由奔放に遊びまわるシーン。彼は屈託なく明るい。先日「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でディカプリオ扮する主人公の遊び人ぶりが映し出されるが、それに匹敵する。レーサーというのは女にもてる。特に、ジェームスハントは気にいったら、どこにいてもすぐイタす。動物学者で素敵なエッセイを書く竹内久美子さん流に言うと「シンメトリーな男」なのだ。



ニキラウダがのちの妻と知り合うシーンもいい感じだ。ニキがある上流のパーティに誘われていった際、自分は合わないと先に帰ってしまう。その時に1人の美女に街まで送ってもらう。途中でニキは車の不調に気がついていたが、彼女は整備したばかりだと言いきる。でもニキの言ったとおりにエンストしてしまう。そこでヒッチハイクで通る車に助けてもらおうとするが、なかなか引っかからない。そこで彼女が手をあげると、車が止まる。彼女目当てかと思った2人の男は美女を無視して、「ニキ・ラウダがいる」と大騒ぎ。でも彼女は彼の存在を知らない。その後ニキガ普通に静かに運転しているのを見て、まさか彼がレーサーなんてわけないでしょと言ったら、ニキラウダが豪快に運転を始める。するとヒッチハイクで助けてくれた2人が大騒ぎ、彼女が唖然
このシーンなんかほのぼのしていいなあ


そしてニキラウダが復活する場面で、自分のテンションが高くなる。トップをとったわけではない。でもレース中の炎上から奇跡の復活を遂げて第4位だ。本当にすごい!しかも事故から40日ちょっとしかたっていないのだ。感動した。実在するニキ・ラウダには改めて称賛のエールを送りたい。

小学生のころ、街で暴走族が荒れた運転をしている話題になると、自分の担任の先生は「そんなにスピード出したいなら富士山に行けばいいんだ」とよく言っていた。レーシングカーと言うと富士スピードウェイと当時の子供たちは連想した。富士でF1のレースがあって、大事故になったのはテレビで繰り返し報道されていた。でもここに描かれているようなすごい悪条件でよくやったものだ。

いずれにせよ、途中だれることなく楽しめた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」 レオナルド・ディカプリオ

2014-02-16 12:48:12 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」を映画館で見てきました。
レオナルド・ディカプリオがウォール街の異端児という役柄に没頭する。

マーティンスコセッシとの名コンビで、今回はディカプリオから監督やらないかとお誘いしたという。
アメリカ証券界で一世を風靡した男の半生記をもとにつくられた作品で、見るのを楽しみにしていた。
内容はちょっとぶっ飛ぶ。1年前に同じように贅沢三昧を前面に出す「華麗なるギャツビー」を演じたが、今回は時代が80年代後半から90年代と現代に時代を移し、ドラッグ、sexとかなりきわどい場面が多い。若干品がなく長いかな?という気もしたが、ディカプリオのパワーに驚く。

ニューヨークの中流家庭に育ったジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)は、22歳でウォール街に株式ブローカーとしてデビューするも、その日に87年のブラック・マンデーが発生し、会社がつぶれてしまう。未上場企業のボロ株を売りつける転職先で先輩(マシュー・マコノビー)からコツを教わり、ブローカーの才能を発揮する。26歳で(ジョナ・ヒル)や仲間と証券会社を設立する。


ベルフォートの指導でセールスのコツをつかんだ営業も金持ちの顧客を次から次へとつかみ、会社の規模をどんどんと拡大した。ベルフォートは年収49億円を稼ぎ出すようになる。稼いだ金で仲間たちと連日ドンチャン騒ぎで「ウォール街のウルフ」と『フォーブス』誌に取り上げられる。



ジョーダンは、苦労時代を共にした妻を捨て、元モデルの金髪美女(マーゴットロビー)と再婚し、我が世の春を満喫する。しかし、36歳になった彼には、FBIの捜査官(カイルチャンドラー)の手が迫っていた。
ジョーダンは贅沢な暮らしを維持するために、違法な株取引で稼いだ裏金をスイス銀行の頭取(ジャン・デュルジャン)のもとに運び込んでいたが、手口は読まれつつあった。



マーチンスコセッシ監督の音楽好きは有名だ。今回は彼の好みでロックを基調としたバックミュージックで、映画のテンポにはピッタリだ。エンディングのクレジットを見たら、ザ・バンドのロビーロバートソンの名前もあった。
個人的趣味でいうと彼の作品でも好き嫌いがある。一番好きなのはロバートデニーロ主演の初期の傑作「レイジングブル」だ。猛獣のようなボクサーの主人公が荒れ狂う姿に圧倒された。この主人公と同じような匂いをさせるのが「ギャングオブニューヨーク」のダニエルデイルイスの悪党ぶりである。リズミカルでテンポの良い「ディパーテッド」も大好きだ。逆に「ヒューゴの不思議な発明」は全然いいと思えず退屈だった。ノミネート多数にもかかわらずオスカーで受賞を逃したのは当然だろう。



この映画は「レイジングブル」ジョーぺシが演じたようなマネジャーと同じように、ジョナヒルをフルに活躍させる。このあたりがマーチンスコセッシの人使いがうまいところだ。映画「マネーボール」ジョナヒルブラッドピットと組んだ。同じような二枚目俳優との組み合わせの妙で今回も三枚目ぶりが冴える。「マネーボール」ではイェール大出の数字オタクであるインテリ策略家の役柄だったが、今回はまじめ一筋ではない。2人で一緒になって、ドラッグにSEXに狂うディカプリオの相棒を演じる。刺激の強いドラッグでメロメロになったり、立ちションをオフィス内でしたりするシーンが笑える。



この映画では営業を高揚させる場面が何度か出てくる。アフターファイブの時間でなく、真昼間からオフィスで売春婦を呼びながら大フィーバーするシーンは珍しい。今回のアカデミー賞主演男優賞候補のライバルでもあるマコノビーに営業を教えてもらうシーンもなかなか味がある。

自分で証券会社を始めてからの経営者としてのパフォーマンスはビジネスマンとして勉強になる。学歴も職歴も半端者みたいな連中をかき集めて、セールスを電話営業へと駆り立てる。営業マン達の潜在的パワーやモチベーションを全開させようとする姿は見ていてカッコいい。ここで見る限り、人心掌握はお手のものといった経営者だ。。

映画では集団での売り買いを株価操作という話にもつなげているが、実際バブルと言われた時代の日本の証券会社の支店フロアは同じような感じだったのだろう。推奨銘柄を支店長、営業課長が先頭に立ってこれを売れとばかりに営業に鼓舞し、顧客への電話営業に駆り立てる。当時シナリオ営業と言われN証券の得意技だった。

昨年のディカプリオ「ジャンゴ」ですごいワイルドな演技を見せ、「華麗なるギャツビー」は贅沢な雰囲気を楽しんでいる印象を受けた。ここでも若い美女を次から次に周辺にはべらせ前よりも楽しんでいる印象だ。この主人公同様ディカプリオがちょっとやそっとの刺激では満足できないようになっているのであろう。ドラッグで運転するシーンなんて面白くて笑えるが、映画を見終わる頃に、心なしか少し太って見える彼の姿をみると、公私ともども楽しんでいたのであろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「トゥ・ザ・ワンダー」 ベン・アフレック&オルガ・キュリレンコ

2014-01-15 15:31:58 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「トゥ・ザ・ワンダー」は2013年日本公開のドラマ
巨匠テレンスマリック監督の作品である。

監督の前作カンヌ映画祭パルムドールを受賞した「ツリーオブライフ」は抽象的すぎてよくわからなかった。気がつくと眠りにつく始末、感想も書いていない。今回も評判からするとどうかな?と思っていた。DVDになっても見ないかなと思っていたが、ジャケットを見るとついレンタルしてしまう。ロシア系美女オルガ・キュリレンコがフランスの景勝地モン・サンミッシェルをバックに映る写真が気になったからだ。
当然期待していない。しかし、見てみたら映像美に圧倒された。すばらしい!



セリフは少ない。脚本がある映画ではないのかもしれない。
逆にカット割りが多い。ものすごいスピードで次から次に映し出される映像コンテがどれもこれも完ぺきだ。
これは撮影者のウデが違う。そう思ってクレジットを見たらエマニュエル・ルベツキではないか!!
今をときめく「ゼログラビリティ」の撮影者である。
あの映画もすごいと思ったけど「トゥ・ザ・ワンダー」の方がすごい。そしてかつ美しい!



(作品情報より)
ニール(ベン・アフレック)とマリーナ(オルガ・キュリレンコ)はフランスの小島、モンサンミシェルにいた。故国であるアメリカを離れ、フランスへやって来た作家志望のニール。彼はそこでマリーナと出会い、恋に落ちる。10代で結婚し娘のタチアナをもうけたマリーナは、ほどなくして夫に捨てられ、いまや望みを失いかけていた。そんな彼女を闇から救ったのがニールだった。光の中、手をつなぎ、髪に触れ、愛し合うふたり。入り江に浮かぶ修道院を背に、潮騒を聞きながら、ニールは彼女だけを生涯愛し続けようと心に誓う。

2年後、彼らはアメリカへ渡り、オクラホマの小さな町バードルズビルで暮らしていた。ニールは故郷にほど近いこの町で、作家になる夢をあきらめ、環境保護の調査官として働いている。マリーナにとって、そこはとても穏やかな場所だった。愛さえあれば他に何もいらないと思った。前夫と正式な離婚手続きをしていないため、決してニールと結婚できなくても。

ニールはタチアナを実の娘のように愛した。タチアナもまた彼によくなついた。しかし、故郷から離れたその土地で、タチアナは友だちに恵まれずいつもひとりだった。彼女はマリーナに言う。「もうフランスへ帰ろう」

カトリック教会の神父、クインターナ(ハビエル・バルデム)は救いを求める人々に布教を行っている。町の人々に溶け込み、皆から親しまれるクインターナ。マリーナもニールとの関係を相談しに、彼のもとを訪れていた。しかし、クインターナは苦悩を深めていく。神はどこにいるのか? なぜ神は自分の前に姿を現さないのか?
彼はかつて持っていた信仰への情熱を失いかけていた。

ニールの心もすっかり冷えかかっていた。マリーナとの間には諍いが絶えず、タチアナには「パパ気取りはやめて」と非難される日々。滞在ビザが切れるため、マリーナはタチアナを連れてフランスへ戻ってしまう。

マリーナがいなくなった後、ニールは幼なじみのジェーン(レイチェル・マクアダムス)と関係を深めていく。傷を負ったふたりは瞬く間に互いを強く求め合ったが。。。


オルガ・キュリレンコがのっている。そうでないと機関銃のように続く撮影をこなしきれないだろう。

(eiga.comのオルガ・キュリレンコの記事を引用したい)
キュリレンコと本作の出合いは、シナリオもない1枚のメモによるオーディションだった。セリフを言葉にするのではなく、思い描いたキャラクターが表情に現れるかどうかが試され、むきだしの演技が引き出されたという。撮影開始後もシナリオが用意されることはなく、マリック監督との会話のなかですべてが与えられた。「彼がシナリオを与えないのは、事前に用意されたもので俳優に演技してほしくないから。その瞬間の反応を俳優に求めているのよ」。キュリレンコは撮影を通して、役どころから抜け出せなくなるほどに一体となった。

これは随分と高度なことを求められている
実際にシナリオがなかったのかもしれない。しかもカットが多い。


あまりにカット割りが多いので、1分間にいくつカットあるのかストップウォッチ使いながら数えてみる。
だいたい1分間に12~15くらいのカットがある。映画の長さは実働1時間48分(108分)だ。
全部を数えているわけではないけど、約1500を超えるカット映像があることになる。
この映像のほぼすべてが完璧に美しいコンテである。
当然テリンスマリックの指示もあると思うが、ファインダーをのぞくのはエマニュエル・ルベツキだ。
いやはや参った。いかにも当代きっての撮影監督と評価されるべきだろう。
同時に編集の緻密さも感じた。5~10秒くらいのそれぞれのカットだが、撮影している時間はもう少し長いだろう。
これで満足という映像を探しあて、一本の映画にしていく作業は楽ではないはずだ。

まったく予想外の映像美に魅了されたすばらしい至福の時間だった。

参考作品

アルゴ
ベンアフレックがアカデミー賞作品賞受賞


トゥ・ザ・ワンダー
カット割りの美しい映像を堪能する
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「25年目の弦楽四重奏」

2014-01-02 06:08:23 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「25年目の弦楽四重奏」は2013年日本公開のアメリカ映画だ。

正月一本目にこの映画を見た。予想を上回るいい映画に出会った気分でいる。すばらしい!
見せ場が多い映画である。ベテラン4人の演技合戦だけではない。じっくり練られた脚本と逸話が見事で、寒波で強烈な雪景色となったニューヨークの風景と合わさりしっとりとした気持ちにさせる。バックに流れる音楽も素晴らしい。
上質な映画に出会えた喜びを感じさせる傑作である。

25年目の極めて精巧な演奏で魅了する第1バイオリンのダニエル(マーク・イヴァニール)、彩りを与える第2バイオリンのロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)、深みをもたらすビオラのレイチェル(キャサリン・キーナー)、チェロのピーター(クリストファー・ウォーケン)から成るフーガ弦楽四重奏団。結成25周年を間近に控え、ピーターがパーキンソン病と診断され、今季限りで引退したいと申し出る。カルテットの一角が崩れることを突き付けられた他のメンバーは動揺。嫉妬やライバル意識、プライベート面での秘密など、それまでに蓋をしてきた感情や葛藤が一気に噴出し、カルテット内に不協和音が響き出す……。

寒波で雪景色になったニューヨークが舞台だ。最初目が慣れるまでは、ここがどこかはわからない。カナダ辺りかと思っていたら、どうもNYセントラルパーク横にあるビルが雪景色の借景になって映し出される。ものすごく寒々しい風景がバックだ。そこに流れるのがベートーベンの弦楽四重奏である。これも暗い雰囲気が漂う。
タイトルからいって、演奏が中心の映画に思えてしまうが、実際には4人の演奏家と取り巻く人たちを中心にした人間ドラマである。プロ演奏家同士の葛藤と嫉妬のせめぎ合いだ。

(若手美女の活躍)
4人のベテラン俳優による演技合戦の様相が強い映画だが、その中に若い女優を2人放つ。これでこの映画では非常に効果的に化学反応がおきる。2人とも25年良好だった4人の関係をおかしくしてしまう魔女のような存在だ。そのうち1人(イモージェン・プーツ)はカルテットの中の夫婦の娘だ。

独身でバイオリンの技巧を究めるダニエルにレッスンを受けている。元々は単なる師弟関係でそっけない間柄が徐々に急接近する。彼女も非常に魅力的だ。

もう一人はロバートのジョギング仲間のフランメンコダンサーだ。エキゾティックな容姿にはドキドキする。魔性の女というわけではないが、この2人を映画に放つだけで最近よくある老人映画にさせない。


(TSエリオット)
この映画の主題曲ベートーベン作品弦楽四重奏曲第14番作品131を愛する人物として大物の名前が出てくる。「20世紀最大の知性」と言うべきTSエリオットだ。ウディアレンの「ミッドナイト・イン・パリ」にも彼の名前が出てきて、ドキッとしたが、今回は彼の詩が紹介される。大学受験の時、駿台予備校英語科に奥井潔というすごい英語教師がいた。構文主義の伊藤和夫に対して、高尚な雑談を中心として、自分ではこういう風には訳せないだろうなあという美しい訳語を用いて英文解釈をしてくれた先生だ。その奥井先生がよく雑談に出していたのがTSエリオットだ。当然のことながら、そんな名前は知らない。懸命に調べた。いくつか読んだが確かに難解だ。今もって理解に至らない。でもこの詩英語で読むほうがしっくりくる。へたに日本語訳しない方がいい。
Time present and time past
Are both perhaps present in time future,
And time future contained in time past.
If all time is eternally present
All time is unredeemable.

Or say that the end precedes the beginning,
And the end and the beginning were always there
Before the beginning and after the end.
And all is always now.

(ウォーレス・ショーン)
チェロのピーターがパーキーソン病になり、自分の後継チェリストを探そうとする。ピーターから依頼を受ける男を見て、「オ~!」とうなった。ウォーレス・ショーンだ。久々に見た。

「死刑台のエレベーター」で有名なフランスのルイマル監督による日本未公開だけど、隠れた名作がある。「my dinner with andre」だ。アメリカのインテリには受けている映画だ。それ自体は2人のトークだけで、観念的、抽象的な哲学的会話が交わされる。その1人がウォーレスショーンである。ウディアレンの初期の作品あたりではよく見る顔であったが、今は「トイストーリー」の吹き替えくらいだ。その彼が登場する。昔のいかにもダメ男風の風貌から若干貫禄がついてきた。教養人でもあり適役である。

(カザルスの余談)
クリストファーウォーケン扮するピーターが音楽学校で弦楽を教えている時に、チェロの巨匠パブロ・カザルスのパフォーマンスを取り上げる。

学生たちが一緒に演奏している時に、一人の学生がチョンボをする。それに対して別の学生が強く誤りを指摘する。そのしぐさをみたピーターはカザルスの前で演奏した時の経験を話す。巨匠の前で演奏する時、緊張していい演奏ができなかった。でもカザルスは良かったと言ってくれた。もう一度演奏したらもっと出来が悪かった。それでも「すばらしい、見事だ」と言ってくれる。自分はむしろカザルスは不誠実だと思ったくらいだった。その後プロになりカザルスと一緒に演奏する機会があった。あのときの出来の悪さを自戒し、パブロに対する自分の気持ちを告白した。するとカザルスに怒られた。カザルスはチェロを弾きだした。あの時こういう風に演奏したよねとあるフレーズを再現してくれた。一瞬でもいい演奏を聴かせてくれたことに感謝すると励ましてくれた。
すなわち、悪いところばかりを見ているだけでなく、良い所に着目するということだ。
なるほどと感じた。奥が深い。

パブロカザルスの名前を聞き、高校生の時に読んだ五木寛之「戒厳令の夜」を思い出した。この物語には4人のパブロが登場する。それはパブロ・ピカソ(画家)、パブロ・カザルス(音楽家)、パブロ・ネルーダ(詩人)の実在した3人のパブロと架空のもう一人のパブロである。彼らは1934年のスペイン内戦に関わっている。当時この小説のスケールに感動したものだった。38年ぶりに再読してみたい。
  
(ニナ・リー)
クリストファーウォーケンが自分の後継のチェリストとして、ニナ・リーという女性が推薦される。彼女は後半その姿を現す。彼女自体本物のチェロのプロだ。チェロを演奏するシーンでは、真剣に弦をあてがう姿が映し出される。表情が違う。おっとすごいや。リーという名のごとく東洋系だ。中国系かな?これも見モノだ。

4人はそれぞれの楽器のレッスンを受けたという。そうでないと弦の使い方など不自然すぎてしまうだろう。特に第1バイオリンのダニエルのプロっぽいしぐさがいい。今回は監督の力量が光る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ペーパーボーイ 真夏の引力」 ニコールキッドマン

2013-12-08 20:27:31 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ペーパーボーイ 真夏の引力」は今年公開のアメリカ映画。

なかなかの豪華キャストである。
ニコールキッドマンのあばずれぶりがいいという評判を聞いていたが、劇場には行かなかった。
彼女は刑務所の囚人に恋する女という設定である。これ自体はキムギドク「ブレス」や小池栄子主演「接吻」などで取り上げられた設定であるが、今回はその女性に恋する青年が主人公で、その兄貴もからんできて2作よりも若干複雑である。
「イノセントガーデン」でもニコールキッドマンの圧倒的存在感に目を奪われたが、こちらの方がすごい。

1969年、フロリダ州モート郡の小さな町。
大学を中退し、父親(スコット・グレン)の会社で新聞配達をしているジャック・ジャンセン(ザック・エフロン)は、取りたててやりたいこともなく、鬱屈した日々を過ごしていた。母親は幼い頃に家を出てしまい、父親の現在の恋人エレン(ニーラ・ゴードン)とはまったく馴染めない。極度にオクテでガールフレンドもいないジャックが心を許せる話し相手は、黒人メイドのアニタ(メイシー・グレイ)だけだった。

そんなある日、大手新聞社マイアミ・タイムズに勤める兄ウォード(マシュー・マコノヒー)が、同僚の黒人記者ヤードリー(デヴィッド・オイェロウォ)を伴い、4年前にモート郡で起きたある殺人事件の死刑囚の冤罪疑惑を再調査するために帰省する。人種差別主義者の保安官が刃物でめった刺しにされたこの事件は、ヒラリー・ヴァン・ウェッター(ジョン・キューザック)という貧しい白人男性が逮捕され、既に死刑判決が確定していたが、ウォードは裁判が極めて不公正な状況で行われたため冤罪の可能性があると睨んでいた。

運転手として彼らの取材を手伝うことになったジャックは、オフィス代わりのガレージに突然訪ねてきたシャーロット・ブレス(ニコール・キッドマン)に目を奪われる。今回の取材の依頼主であるシャーロットは、獄中の死刑囚ヒラリーと手紙を交換しただけで意気投合、婚約まで交わした女性だった。出会った瞬間に恋に落ちたジャックは、刑務所でのヒラリーとの面会に同行するが、ヒラリーは初めて対面した婚約者シャーロットへの欲望を剥き出しにする。

そんな中、ウォードは殺人事件当日の夜、ヒラリーが伯父のタイリー(ネッド・ベラミー)とともにゴルフ場に忍び込んで芝生を盗んだという話を聞き出す。タイリーはヒラリーのアリバイをそっくり裏付ける証言をしたが、ウォードとジャックは彼らが口裏を合わせたのではないかと疑念を抱く。やがて殺人事件の深い闇に分け入り、叶わぬ恋に身を焦がすジャックは、想像を絶する悪夢のような現実を目の当たりにすることになるが。。。(kinenote 引用)

流れるのは60年代後半のモータウンサウンドである。乗っているアメ車も時代を表わす。
そこに現れるのが、長いつけまつげをしたニコールキッドマンだ。当時日本の流行歌手も辺見マリや奥村チヨとかは随分と長いつけまつげをしていたものだ。死刑囚に関心を持つ女だが、露骨に金目当てという印象が強い。
「ブレス」では女が牢屋に慰問を続けて、そこで交わってしまう。「接吻」では相手にキスするだけでなく、死刑囚を刺してしまう。いずれも驚くべき行動をとる。


ここでは死刑囚を訪問するときに露骨にエロティックなしぐさをとる。映画「危険な情事」のシャロン・ストーンのようだ。看守から「物理的に触れ合うことは厳禁!」と言われながら、ヒラリーはシャーロットに対して「足を開け」「パンストを破れ」と「命令」した上、それ以上の行為の要求をする。シャーロットはそれに応じ、媚態をさらしていく。接しているわけではないのにかなり挑発する動きをとる。男性陣の股間が破裂しそうになる。
その後、海でクラゲに刺されて身体じゅうがかぶれている主人公におしっこをかけるシーンまである。
おいおいすごいなあ。

でもそんなニコールキッドマンが昔より好きになっている自分に気づく。日本でいえば杉本彩が演じるようなアブノーマルでセクシーな役をやらせると抜群にうまいのだ。しかも、トムクルーズとの出会いである「デイズオブサンダー」に映る20年以上前の若い彼女よりもはるかに美しい。主人公はザック・エフロンだけど、完全に圧倒している。あとはジョンキューザックの不気味さもいい。ここでは書かないが、最後に向けてのえげつなさもすごい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「キャプテン・フィリップス」 トムハンクス

2013-12-01 18:47:15 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「キャプテン・フィリップス」を劇場で見た。
これは本年有数の傑作である。お見事だ。

2009年に起ったソマリア海域人質事件に基づく実話ドラマである。映画が始まって早々から緊張感が続く。ずっとドキドキしっぱなしで、眠くなるような中だるみがまったくない。船上であった「事実」を丹念に映し出す。手持ちカメラで撮る映像はいかにもドキュメンタリータッチでドキドキ度を高める。トムハンクスにとっては久々の当たり役ではないか?ソマリアの海賊たちは素人と言うが、骸骨のような顔立ちにリアル感がある。

2009年4月。アメリカのコンテナ船マースク・アラバマ号は、援助物資5000トン以上の食糧を積んでケニアに向かうべくインド洋を航行していた。リチャード・フィリップス船長と20人の乗組員にとっていつもと変わらない旅だった。だが、ソマリア沖に入った時、事態は思わぬ方向へ暗転する。アラバマ号が海賊に襲われ、占拠されてしまったのだ。

フィリップス船長は乗組員を救う為、身代わりとなり、海賊の人質になるという勇気ある決断をする。ソマリア海賊たちとの命がけの息詰まる駆け引きが続く中、アメリカも国家の威信を賭けた闘いに直面する。海軍特殊部隊ネイビー・シールズを出動させた作戦は、人質救出か? それとも海賊共々殲滅か? 生死を懸けた緊迫の4日間、彼を支えるものは「生きて、愛する家族のもとへ還る-」という願いだけだった-。(作品情報より)

前半は、海賊のボスのムセらとフィリップスたち乗組員との大型船内でのバトル。後半は人質となったフィリップスと、身代金を奪おうと彼を乗せて救命艇でソマリアに向かう海賊らとの一触即発の状況が展開される。

ハンクスとグリーングラス監督による記者会見で、ハンクスはソマリア人海賊について「やせ衰えた彼らはただの悪人ではなく、腐敗した国で絶望し、希望を持てない若者たち。映画を通じて、そういう複雑な背景があることがわかるはずだ」とソマリアが持つ社会問題的な要素にも言及している。やりたくて海賊やっているわけでもない。それは映画を見ればよくわかる。必ずしもアメリカ側にひいきしすぎていない。

自宅に帰って改めて世界地図を見た。インド洋から紅海を抜けてスエズ運河に向かう航路では、必ずソマリアとイエメンの間にあるアデン湾を通る。

そんなアデン湾にソマリア人の海賊たちが頻繁に登場するとなると大変なことだ。ここルートがいやだから喜望峰を通るなんてバカなことはできまい。時間と金の無駄だ。海賊の存在は世界貿易への損失となるのである。
ソマリアというと、地理上つい見逃してしまう。その昔帝国主義時代の世界史でソマリランドというのは習った覚えがある。要は同じ国だ。

トムハンクス以外ではそんなに有名な俳優が出ていない。それでも5500万$製作費がかかっているのは、貨物船や救命艇、そして軍艦が登場しているからだろう。ソマリア艇が近づくときの放水シーンはリアルだし、波を起こして追随する船に打撃を与えるシーンもすごい。途中から米軍による救出作戦が映し出されるが、手際良く実に見事である。ハイテクの極致というべき米軍精鋭の動きには見ていてわくわくさせられる。いまや南方諸島方面の制空権をめぐって日中の対立が浮き彫りにされるが、日米安保条約を基軸にした関係でアメリカの助けを借りたいものである。

今回のトムハンクスは久々のオスカー狙える気がする。
事実を淡々とつづっていく映画だけど、ラストに向かい死に直面した恐怖感を見事に演じていた。それよりもあのソマリア人の海賊4人で1セットにして助演男優賞をあげてもいいんじゃないかな?現代の海賊はリアル感に満ちあふれていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ラストスタンド」 アーノルドシュワルツネッガー

2013-11-17 16:09:13 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ラストスタンド」は今年2013年日本公開のアーノルド・シュワルツネッガー主演作品だ。
知事の激務を終えて、久々に銀幕に登場した。

シュワルツェネッガーといえば、「ターミネーター」だ。得体のしれない不気味な姿で世界中に存在感を示した。
「ラストスタンド」最前線から引退したつわものが凶悪事件に巻き込まれるというパターンだ。元CIA、FBIの職員が引退しているにもかかわらず、事件にからんでしまう類の作品が数多くつくられている。似たようなパターンだ。
でもここでのアーノルド・シュワルツネッガーは老いを感じさせないファイトで十分楽しませてくれた。

元ロス市警の敏腕刑事オーウェンズ(シュワルツェネッガー)第一線を退いた彼はメキシコ国境付近の小さな町・ソマートンの保安官となり、静かな週末を過ごしていた。そんな彼にある時FBIから電話が入る。

「移送中の凶悪犯・麻薬王のコルテスが逃走、最新鋭の車を操り時速400キロでメキシコ国境に向かっている。君の街を通過するが、手をだすな」。 
しかし、軍隊並みに訓練された仲間のサポートでFBIを振り切り、凶悪犯は目前に迫る。

FBIの応援も間に合わず、十分な武器も無い中オーウェンズは眠っていた闘志を呼び起す。彼は戦闘経験の無い部下と、素人同然の仲間で≪最後の砦(ラストスタンド)≫のチームを結成。最新武装の凶悪集団に対し、第二次世界大戦時代の古い武器で闘いに挑む!!―辺境の町での前代未聞の大決戦が今始まる!(作品情報より)

今回の強敵は麻薬王である。まずは、どれだけすごい敵だということを示すところからスタートするのがアクション映画の定石だ。相手が弱くては面白くないからだ。FBIが凶悪囚の移送を図ろうとするのを、麻薬組織の巧妙な脱出作戦に厳重な護送作戦だったにもかかわらず、死刑囚を逃がしてしまうのだ。しかも、彼には麻薬組織のバックと最新の兵器を所有している。車はコルベットの1000馬力で最高時速は400KMもでるらしい。ヘリコプターと追いかけっこをしてまいてしまう。このあたりはいかにも現代のアクション映画的スピード感だ。

一方シュワルツネッガーはメキシコ国境の西部劇に出てくるような田舎町・ソマートンで、保安官として暮らしている。時計が止まっているような田舎町で町人ものんびりしたもんである。保安官たちも同様だ。以前「トラフィック」という麻薬がらみの名作があった。麻薬映画はメキシコ国境をめぐっての麻薬シンジケートとの攻防となることが多い。

でも、一体どうやって敵から守るのかと思ってしまう。

ハイテクとアナログの対決のような匂いがいい感じだ。西部劇的な要素も込められている。
相手から金をやるから国境越境を見逃せと何度も何度も言われても、シュワちゃんはいうことを聞かない。プライドだけで生きている。億単位の金額提示されたら、自分だったら素直に通してしまうような気もするけどね。



今回の監督は韓国のキムジウンだ。
あまりに凄すぎてブログ記事がアップできないでいる作品に「悪魔を見て」という韓国映画がある。「殺人の記憶」や「チェイサー」などの強烈な韓国映画にも引けを取らない凶悪な映画だ。そのメガホンをとったのがキムジウン監督だ。公開の時に気づいていれば見に行ったのであるが、シュワルツネッガーの宣伝文句ばかりに目が行って気がつかなかった。
予告編で凄味を感じてほしい。



圧巻は最後に向けてのトウモロコシ畑でのカーチェイス
これって日本では絶対無理な映像で、見応えがある。しかも、走りまくるのはコルベットだ。
一体どうやって撮ったんだろうと思わせるすごい撮影だ。
そして最後にファイトが続く。シュワちゃん若いねえ。いつも思うんだけど、何で最後に素手ファイトに戻るんだろう?
外国映画の七不思議だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「トランス」 ダニーボイル

2013-11-03 06:47:12 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「トランス」を劇場で見た。

ダニーボイル監督の新作だ。
「スラムドッグミリオネア」はすばらしい映画だった。そのあと「127時間」を撮り、ロンドンオリンピックの開会式の演出もやった。世間の評判は今ひとつだったが、デカプリオ主演の「ザ・ビーチ」も自分の好みだ。
今回は初期の作品同様に見ている観客を幻惑させる映画だ。


ゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」がオークションにかけられた。競売人のサイモン(ジェームズ・マカヴォイ)は万一に備えて、トラブル時に絵画を安全な場所に移す訓練を重ねていた。

競売の末、2750万ポンド(約40億円)という高値で落札が決まった。その瞬間、会場にガス弾が投げ込まれる。サイモンは、緊急時のマニュアル通り、絵画をバッグに入れて金庫へ向かった。そこにはギャングのリーダー、フランク(ヴァンサン・カッセル)が待ち構えていた。サイモンはフランクの首にスタンガンを突き付け、絵画を金庫に入れようとするが、怒ったフランクに殴り倒されてしまう。
フランクが鮮やかな手口で外へ持ち出したバッグを開けると、額縁だけが入っていた……。

病院で目覚めたサイモンは、殴られた衝撃で記憶の一部が消えてしまっていた。絵画の隠し場所も、そもそもなぜ隠したのかも思い出せない。そんな中、サイモンがフランクの一味につかまる。

フランクはサイモンの記憶を取り戻すため、催眠療法士を雇う。普段は肥満やパニック障害を治療している療法士、エリザベス・ラム(ロザリオ・ドーソン)をサイモンが訪ねる。

フランクの指示で、失くした車のキーを見つけたいと偽って治療を受けるが、その一部始終は胸につけた隠しマイクからフランクに筒抜けだった。しかし、事の次第を知ったエリザベスは、フランクにパートナーを志願。彼女の本格的な催眠療法が始まるが。。。

ネタばれなしに話をすると、こんなところまでだろう。
話が進むにつれ、意外な展開を見せていく。エリザベスも単なる療法士ではないのだ。

最初から観客をだましてやろうとする意欲に満ち溢れている映像がつづく。
何も解説がないうちに、ギャングの襲撃を受けるので、主人公がギャングとつながっていることは、想像もつかない。
そこが1回目の騙しで、あとは騙しの連発である。最後まで続く。話は単純ではない。
催眠療法で夢なのか現実なのかよくわからないようにストーリーをつないでいる。
デイヴィッドリンチで夢だか現実だかわからない映画がある。見ているものに真相を想像させようとする流れだが、ここでは観客を騙した後、そのカラクリを説明してくれる。
でも真実はなかなかわからない。そこがうまいのであろう。

映像が美しいが、きわどい映像も多い。
あわせて顧客の末梢神経を刺激する。音楽がガンガン鳴り響く。この映画は劇場で見たほうがいい映画の部類だ。

メインの3人ジェームズ・マカヴォイ、ヴァンサン・カッセル、ロザリオ・ドーソンはいずれも好演だ。その昔だったら、白人男性と黒人女性の絡みのシーンなんてありえない世界だった。
ロザリオ・ドーソンのダイナマイトボディにはビックリ。ダニーボイル監督の元彼女と言う噂があるけど、あんな女性相手にスタミナ続かないよね。別れたのもわかる。自分は無理そう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「キング・オブ・マンハッタン」 リチャードギア

2013-11-02 18:22:30 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「キング・オブ・マンハッタン」は今年公開のアメリカ映画

ニューヨークの大富豪である主人公をリチャードギアが演じる。
投資の失敗でヤバイ状態に陥った大富豪が、浮気相手の女性と車に同乗した時に事故を起こして、彼女を死なせてしまう。
そういう二重苦にあえぐ主人公を描く。

ロバート・ミラー(リチャード・ギア)は、ニューヨーク在住の投資会社の経営者だ。
最初に華やかに妻のエレン(スーザン・サランドン)をはじめとした家族全員から60歳の誕生日を祝ってもらう姿を映し出す。しかし、ディナーが終わると愛人ジュリー(レティシア・カスタ)の家に向う。同じように祝ってもらうのだ。ジュリーは、彼が出資するギャラリーのオーナーだった。

見かけは華やかだったが、ロバートは苦境に立たされていた。監査を通すために用立てしてもらった4億1200万ドルの返済を延期してもらおうと、ジェフリー(ラリー・パイン)のオフィスを訪れる。しかし、ジェフリーは「すぐ返すといったのに話が違う。」と即刻返却するように言われる。ロバートは、ロシアの銅への投資で大きな損失を出したのだ。そのために、自分の会社をある銀行へ売却することを目論んでいた。その夜、金融会社代表のメイフィールドと交渉の席を持っていたが、そこに相手の代表は現れなかった。ロバートは焦っていた。

ロバートは、交渉のためのアポで、彼女の大切なイベントに参加する時間がずれてしまい、ジュリーとケンカしてしまう。それで仲直りに深夜にジュリーを誘って、彼女の車で別荘へ向かう。ところが、行く途中、居眠運転で事故を起こしてしまう。車が転倒し、気づくとジュリーは即死していた。そのあと車は爆発炎上。間一髪、脱出したロバートは、近くの公衆電話から黒人の若者ジミー(ネイト・パーカー)を迎えにくるように頼んだ。ジミーに口止めした後、何もなかったような顔をして自分のベッドに戻る。

事件が発覚した後、担当刑事のブライヤー(ティム・ロス)は、彼女の事業の出資者であるロバートに当日のアリバイを聞く。自宅にずっといたとロバートは答える。刑事はジュリーとの関係を問い質すが、無罪を主張するロバートに何かキナ臭さを感じる。ブライヤーは現場周辺の公衆電話の通信記録に注目する。そこで浮かび上がったのが一本のコレクトコールだ。その受信者を探り、ジミーにも接近した。

いったん出頭を要請されるが、敏腕弁護士がついていったん釈放された。黙秘する彼に、司法妨害で起訴される可能性があると迫る。一方で会社の投資責任者である娘のブルック(ブリット・マーリング)は4億ドルを超える不明金と二重帳簿に気づき、ロバートに訴えるのだが。。。

映画が始まり、題名が映し出させる。「arbitrage」(アービトラージ;裁定取引)だ。いかにも金融相場のプロが仕掛ける取引だ。全くイメージが違う。日本題は安易に付けられている。
割安を買い、割高を売る。そのポジションをそのままにして、割安で買ったポジションを売って、割高で売ったポジションを買い戻すのだ。相場の上昇下落に関わらず、そこで利益が出る。これは2つの商品の値幅が広がった時、狭まった時あるいは価格が逆転した時に仕掛ける。
日本市場でもっとも有名なのは、日経平均の現物と日経平均先物との裁定取引だろう。一日に何回もその瞬間が来て、利幅が少ないが確実に利益が出る。ただ、日経平均の現物については225採用銘柄の現物を大量に所有したり、取引しなければならず、証券会社や機関投資家レベルのプロでないと普通はできない。いずれにせよ、プロの手法だ。arbitrageが原題とすればウォール街関係者にとっては、一応見ておこうと思うのではないか?逆に「キングオブマンハッタン」の日本題では日本の金融関係者は「半沢直樹」は見ても、これは見ないだろう。

ロシアの銅相場への投資の詳細は触れられていないが、損失の穴埋めに顧客の出資金に手をだしたとなっている。おそらくはレバレッジの効いた証拠金取引で反対の動きが出て追証がでたのであろう。
いずれにせよ、お金を返す必要があるのだ。

しかも、彼女を乗せた車が横転して死んでしまう。普通であれば、警察に届けたらいい話のはずだが、こういうトラブルを起こしたことが判明したら、自社の売却話も難しくなると考えて警察に届けない。
逃げ回るのである。ここでは、主人公を徹底的に追い込むという構図になっている。最後の最後まで決着の道筋はよくわからない。昔であればこういう場合の決着は映倫の指導で必ず正義が勝つようになっていたけど、そうならないことも多いので息をつけない。

同じマンハッタンの投資家を描いた「コスモポリス」という映画を最近見たが、難しいせりふが続いて何がなんだかよくわからなかった。それに比べたらマシだが、映画自体は普通の映画という印象を受けた。

(参考作品)
キング・オブ・マンハッタン -危険な賭け-
窮地に陥るニューヨーカー


アービトラージ入門 裁定理論からマーケットが見える
裁定取引を知る
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「グランドイリュージョン」 ジェシー・アイゼンバーグ

2013-10-27 20:39:22 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「グランドイリュージョン」を劇場で見た。


これは想像以上におもしろかった。
出足からぶっ飛ばす。最初4人のマジシャンの腕を披露する場面でまずひきつけられる。その後、マジックショーでアッと驚いた。マジックが絡む映画って割と楽しい。ここではスケール感があり、大金をかっさらう。映像に躍動感があり、カメラワークもドキドキさせる。アクション映画の色彩も強く、逃走シーンやカーチェイスなど絶対日本ではつくれない見事なものだ。
かなり大満足であった。

ラスベガスで新たな伝説が生み出された。“ザ・フォー・ホースメン”と名乗る4人組のスーパーイリュージョニスト・チームが、巨大ホールを埋め尽くした大観衆の前で「今夜、銀行を襲います!」と高らかに宣言し、前代未聞のマジックに挑んだのだ。


客席からひとりのフランス人男性を無作為に選んだ4人は、ステージの装置に彼を乗せ、パリのクレディ・リパブリカン銀行の金庫室へのテレポートを実行。その驚くべき一部始終は、男性のヘッドギアに装着されたカメラを通して会場のモニターにリアルタイム中継されていた。さらに4人は金庫に保管されていた320万ユーロ紙幣を消失させ、会場に“札束の吹雪”を舞わせる完璧なフィナーレを達成。こうしてラスベガスにいながら遠く離れたパリでの金庫破りに成功したホースメンは、一夜にしてその名を全米に轟かせた。

実際にパリの銀行から320万ユーロが消失したため、FBI当局はホテルに滞在中のホースメンの身柄を拘束し、特別捜査官ディラン(マーク・ラファロ)に捜査の指揮を命じる。その相棒としてインターポールのフランス人捜査官アルマ(メラニー・ロラン)をあてがわれたディランは露骨に彼女を煙たがり、ケチな手品師どものトリックを暴く気満々で取り調べを開始。ところがホースメンは、ディランの想像をはるかに超えた手強い相手だった。4人の釈放を余儀なくされたディランとアルマは、マジックの種明かしを生業にしているサディアス(モーガン・フリーマン)に助言を求める。(作品情報より)

豪華メンバーである。
まずは4人組のリーダーであるジェシー・アイゼンバーグ「ソーシャルネットワーク」マークザッカーバーグ役を思わせるごとくに早口でしゃべりまくる。映画のテンポにピッタリだ。

彼がいきなりカード手品をする。カードをサーと見せて、「一つのカードを思い浮かべて」という。自分もカードを見ていた。気になったカードがない。気がつくと高層ビルに「ダイヤの7」が映し出される。これって自分が思い浮かべたカードだ。ちょっとビックリだ。

催眠術の披露の後に、引田天功ばりの「水槽脱出マジック」アイラ・フィッシャーが演じる。


いきなり水の中に飛び込む。手には鎖が。。。懸命に脱出しようとするが、うまくいかない。助けを求めて、観客が水槽のガラスを壊そうとするが割れない。1分たつと、ピラニアが水槽にぶち込まれる。血に染まる水槽だ。。。。ところが、観客の中にアイラフィッシャーがいる。絶妙のマジックである。これを見てドキドキしてしまう。

そこからは次から次へと驚きの連続だ。
取り調べを受けていると、手錠がいつの間にか捜査官の手に映っているではないか。


しかも、そこに追跡アクションが次から次へと繰り広げられる。ニューオリンズの街中での雑踏の中の追跡劇が刺激的で、ニューヨークのチャイナタウンからクイーンズ橋へ繰り広げられるカーチェイスには末梢神経を激しく刺激される。それを映し出すカメラワークはアクション映画を知り尽くしている見事な映像だ。マジックの会場を俯瞰的に映し出すカメラもいい感じだ。観客をイリュージョンの渦に陥れる色彩設計も抜群だ。ラストにかけてのメリーゴーランドはヒッチコックの「見知らぬ乗客」を連想した。



この映画はマジックの種明かしをしてしまうのが親切である。
それを見ると同時にこのからくりを考えた脚本家と監督の腕に感嘆した。ルイ・レテリエ監督「トランスポーター」「ダニーザドッグ」と一連のリュックベッソン製作映画で鍛えられたのがよくわかる。ともに面白い映画だった。
これもまあ凄い映画である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ザ・マスター」  ポールトーマスアンダーソン

2013-10-14 07:37:49 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ザ・マスター」は2013年日本公開のアメリカ映画だ。

名匠ポールトーマスアンダーソン監督の新作。日本のみならず、キリスト教の国アメリカにも新興宗教は存在する。戦争終えたばかりの元軍人が本来の職業にうまくなじめないときに、一人の教祖に出会う。その教祖と主人公の触れ合いを描く。
戦争が終わった後に、精神が錯乱して一般社会となじめない軍人を描いた作品は多々ある。これもその一つだが、新興宗教に結びつけるところが興味深い。大きな波や意外性があるストーリーではない。それぞれの場面の映像コンテが非常に美しく、映画の格をあげている。

第二次世界大戦末期。海軍勤務のフレディ・クエル(ホアキン・フェニックス)は、ビーチで酒に溺れ憂さ晴らしをしていた。やがて日本の敗北宣言によって太平洋戦争は終結。だが戦時中に作り出した自前のカクテルにハマり、フレディはアルコール依存から抜け出せず、酒を片手にカリフォルニアを放浪しては滞留地で問題を起こす毎日だった。

ある日、彼はたまたま目についた婚礼パーティの準備をする船に密航、その船で結婚式を司る男と面会する。
その男、“マスター”ことランカスター・ドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、フレディのことを咎めるどころか、密航を許し歓迎するという。フレディはこれまで出会ったことのないタイプのキャラクターに興味を持ち、下船後もマスターのそばを離れず、マスターもまた行き場のないフレディを無条件に受け入れ、彼らの絆は急速に深まっていく。

マスターは“ザ・コーズ”という団体を率いて力をつけつつあった大物思想家だった。独自の哲学とメソッドによって、悩める人々の心を解放していくという治療を施していたのだ。
1950年代。社会は戦後好景気に沸いていたが、その一方では心的外傷に苦しむ帰還兵や神秘的な導きが欲されていた時代であり、“ザ・コーズ”とマスターの支持者は急増していった。フレディにもカウンセリングが繰り返され、自制のきかなかった感情が少しずつコントロールできるようになっていく。マスターはフレディを後継者のように扱い、フレディもまたマスターを完全に信用していた。

そんな中、マスターの活動を批判する者も現れるが、彼の右腕となったフレディは、暴力によって口を封じていく。マスターは暴力での解決を望まなかったものの、結果的にはフレディの働きによって教団は守られていた。
だが酒癖が悪く暴力的なフレディの存在が“ザ・コーズ”に悪影響を与えると考えるマスターの妻ペギー(エイミー・アダムス)は、マスターにフレディの追放を示唆。

フレディにも断酒を迫るが、彼はそう簡単にはアルコール依存から抜けることができなかった。やがてフレディのカウンセリングやセッションもうまくいかなくなり、彼はそのたびに感情を爆発させ、周囲との均衡が保てなくなっていく……。(kine note引用)

新興宗教そのものが、本質的にはデタラメなものである。ただ、宗教に頼らないと精神の安定を取り戻せない人が多い。それだから、オカルトなものであっても意外に続いていくのだ。マインドコントロールで信者を狂わせる映像はここでは多くはない。逆にオカルトだと疑われてもおかしくないわけであるから、新興宗教の教祖を論破しようとする人が必ず出てくる。その時にヤクザの用心棒のように、厄介な出来事を暴力で解決しようとするのがホアキン・フェニックスだ。解決にあたる主人公の猛獣性が印象的。日本における新興宗教がらみのいくつかの事件を連想した。

ここではポールトーマスアンダーソンの映像づくりに関する天才ぶりを見せ付けてくれる。
映像の色合い、コンテいずれもなんて美しいのであろうと思わせる。格調が高い。
プロットというよりも映像そのものに魅かれる。
序盤戦、海辺のシーンでの美しさでうならせてくれるが、もっと凄いと思わせるのは荒野のバイクシーンだ。果てしなく続く、乾ききった荒野でフィリップ・シーモア・ホフマンとホアキン・フェニックスが猛スピードでバイクを走らせる。こんなロケ地はおそらく日本ではない。見ていていつバイクが転倒してしまうのか?とドキドキしながら見てしまう。何気ないようで重要な場面だ。


あとは牢獄におけるホアキン・フェニックスの暴れっぷり。牢屋の柵の中で、便器を蹴って蹴って蹴りまくる。これも印象に残る。


ポールトーマスアンダーソンというと、何よります「マグノリア」のカエル落下シーンだ。これには本当に驚いた。もしかして、驚きの度合いはたくさん見た映画の中でも5本の指に入る。そして、「ゼア・ウイル・ビーブラッド」における猛獣のようなダニエルデイルイスの演技だ。この映画見た後、あまりにも強烈なインパクトでブログ記事まとめようと思っても全然うまくいかない。そのうちに時間がたってしまった。いずれ書こうと思うが、それくらい鮮烈な印象を与えた。それと比べると、衝撃度は薄いが、さすがポールトーマスアンダーソンと思わせる作品だと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする