映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「コップ・カー」ケヴィンベーコン

2016-09-21 10:43:02 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「コップ・カー」は今年公開のアメリカ映画


不思議な小品である。コーエン兄弟映画のようなブラックユーモア的な要素が強い。
ご存知ケヴィンベーコンはありとあらゆる映画にでつくし、ケヴィンベーコン数なんてけったいなものがあるくらい共演経験者が多いことで有名。その彼が出演を願望したという作品がこれだ。保安官であるが、どうも悪徳な匂いがプンプンする。そんな保安官が自分のコップカーを盗まれ、右往左往する話である。


放浪している2人の少年が荒野の草陰で無人のパトカーを見つける。好奇心だらけの2人がドアの取っ手をまさぐると開いてしまい、ダッシュボードには車のキーがある。面白半分にいじくるとエンジンがかかり、2人は運転をし出し、その場から遠く離れていく。。


時間をずらして、保安官を映す。死体をパトカーのトランクから引きずり降ろして、穴に埋めている。ケヴィン演じる保安官が悪であることはわかるが、どんな悪であるかはわからない。ところが、車を置いた場所に戻るとそこには何もない。大慌てで走り回る。保安官は車を盗まれたと言わず、署の女子職員に連絡して、無線に異常がないかを確認する。特に問題はないようだ。どうしたんだろうとあたりを探し回るあとに、放置されている自動車に目をつけ、盗んでしまう。発進した後、気づくと後ろからパトカーが追いかけてくる。検問のようであせるが。。。


少年の車はそのまま広大な大平原を通る一本道を走り回る。しばらくして、前方から一台の車が走ってくる。運転している女性は前面から蛇行運転をしているパトカーを避けると、そこに少年が運転していることに気づき驚く。


彼女は町で出会った警官に少年が運転していたよと訴えるのである。一方で、少年たちは車を止めた時にトランクで物音がするのが聞こえる。どうしたんだろう。空けると血だらけの男がいる。どうやらうごめいているようであるが。。。


たった半日の物語である。短編小説のようなものである。
凝縮して、ブラックユーモアを語り続ける。余計なことは言わない。登場人物は少ない。ここに関わるのは2人の少年、保安官、トランクの中にいる血だらけの男、子供が運転していると警察にタレこむ女が主要人物だ。少年たちの会話にそれぞれの家族の話が出てくるが、保安官と血だらけの男との関係はわからない。タレこむ女はただの通りすがりだ。


離れているように見える人物が、あるとき収束する。
そして考える。この先どうなるのか?と
こういう瞬間が一番楽しい。



予想と違うストーリーが続くは言うまでもないが。。。
伏線が散りばめられ、ここで終わりかと思った瞬間に逆転する。

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映画「教授のおかしな妄想殺人」 ウディ・アレン

2016-06-26 12:58:32 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「教授のおかしな妄想殺人」を映画館で見てきました。


ウディアレンの新作は、前作「マジックインムーンライト」の主演女優だったエマストーンと再びコンビを組むという。いつも通り映画館に向かう。ホアキンフェニックス演じる大学教授とエマストーン演じる女子大生が恋に落ちる話にサスペンス的な要素を持たせた映画である。


軽快なテンポでセリフを話すチャーミングなエマストーンウディアレンの好みなんだろう。いかにもウディらしい脚本のセリフがいつも通りセンスが良く、ホアキンフェニックスはウディのような早口ではないけど、少し変わりものの大学教授を巧みに演じる。
感銘を受けるといった作品ではないけれど、ミステリーだけに最後までスクリーンから目が離せない映画である。

並外れた変人と評判の哲学科教授エイブ(ホアキン・フェニックス)が、アメリカ東部の大学に赴任してくる。若い頃は政治活動やボランティアに熱中し、世界中を飛び回ったエイブだが、今では学問にも恋愛にも身が入らず、慢性的に孤独な無気力人間になっていた。

そんなある日、たまたま立ち寄ったダイナーで迷惑な悪徳判事の噂を耳にした瞬間、エイブの脳裏に突拍子もない考えがひらめく。それは誰にも疑われることなく、自らの手で判事を殺害するという完全犯罪への挑戦。すると、あら不思議、奇妙な“生きる意味” を発見したエイブはたちまち身も心も絶好調となり、ひたすら憂鬱だった暗黒の日常が鮮やかに色めき出す。一方、エイブに好意を抱く教え子ジル(エマ・ストーン)は、まさか彼の頭の中におかしな妄想殺人が渦巻いているとはつゆ知らず、ますます恋心を燃え上がらせていくのだが......。(作品情報より)

作品情報が肝心なところに触れないこんな紹介になっている。
でもあえて言ってしまうと、教授は自分でシミュレートした殺人を実際に試みるのである。


ウディアレンのミステリーは、末梢神経を刺激したり、血をみるような激しいものはない。ここでもいつもながらのウディらしい会話を楽しむ物になっている。「マッチポイント」で昔の映画であればありえないラストに持っていったウディアレンだけに最後までどういう結末にもっていくのか想像させないうまさがある。


ロケハンティングもうまい。緑あふれるキャンパスなどバックの風景が美しく、2人が歩きながら会話する姿をカメラを引っ張りながら撮っていくドリーショットの手法もウディ映画の定番のようにここでも見られる。見慣れた映像が展開するのを見ているのは妙な安心感がある。

1.女教師との不倫
鳴り物入りで異動してきたエイブ教授を意識する女性は多い。でも数年前に離婚した後は女性不信で下半身もどうにもならない。化学の中年女教授がワインをもって家を訪ねてきてエイブに押しかけ女房のようにちょっかいをだす。女性からの強いリードでベットに入るがうまく機能しない。


これと限らず、男性に積極的にいい寄る熟女って、最近はキャリア中年女性に目立つようになってきた。以前は英雄色を好むといわれたが、こういう熟女は何を好むと言ったらいいのだろう。それにしてもこの女優はそういう積極女性をうまく演じている。このミステリーの進展に大きくかかわっている肝の女性だ。

2.女子学生との不倫
美人女子大生ジルに対して、エイブ教授はレポートにユニークな意見が書かれてあるねと声をかける。インテリに知性をくすぐられたので、ジルは舞い上がる。ちょっと変わった男だけど、確かに哲学の道には詳しい。一気に彼女は引き寄せられる。


ジルには大学生の彼氏がいる。それでも、教授への想いは募るばかりだ。こんなかわいい女の子に言い寄られ我慢できる男は、男色家以外はいないだろう。腹が出ているホアキン・フェニックスがそんなにもてるかい?てな感じだが、エマストーンが中年知識人に惹かれる女の子をウディアレンのリードでらしく演じている。そうしていくうちに事件が起こり、取り巻く環境が一転する。謎解きが進むにしたがって、エマストーンのパフォーマンスに味が出てくる。

3.センスのいい音楽
ラムゼイルイストリオの64年の曲ジ・イン・クラウドが繰り返しバックでかかる。バックががやがやしたライブ録音の曲だ。いいねえ。



自分の世代だと、アースウインドアンドファイアモーリス・ホワイトと組んでファンキーなフレーズを奏でていたラムゼイ・ルイスの曲が脳裏に浮かぶ。
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映画「レジェンド 狂気の美学」 トムハーディ

2016-06-22 19:24:26 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「レジェンド 狂気の美学」を映画館で見てきました。


「マッドマックス」「レヴェナント」と人気作に出演し今一番の赤丸急上昇中といえるトムハーディが、英国ロンドンに実在した双子のギャングを一人二役で演じるという。しかも監督のブライアン・ヘルゲランド「LAコンフィデンシャル」の脚色で有名で、最近は映画「42」を監督している。これはみるしかない。

1960年代初頭、活気に満ちたロンドン。強い絆で結ばれた双子のギャング、レジーとロンのクレイ兄弟(トムハーディ一人二役)は、その頭脳と暴力で街を支配していた。アメリカン・マフィアと手を組み、政治家やセレブリティと親交を深めた彼らは一大犯罪帝国を築いていく。


そんな時レジーは部下の妹フランシスと出会い、恋に落ちる。フランシスのために悪事と手を切ると約束したレジーはナイトクラブの経営に注力するようになるが、それを快く思わないロンは破滅的な行動を連発。組織内に不協和音が生まれ、さらに警察の執拗な捜査が迫り、兄弟の絆と栄華は脅かされようとしていた―。 (作品情報より引用)


映画はレジーの恋人フランシスのナレーションで誘導される。ロンドンのイーストエンドのスラム街で育ったこの2人の兄弟はいずれも野獣のような凶暴性をもち、シャバと刑務所の往復である。レジーの方がフランシスという恋人を得て堅気に近い事業を進めようとするが、精神を病んで精神安定剤なしでは生活できないロンはハチャメチャになってしまう。そんな兄弟の異常とも言えるパフォーマンスを60年代の空気を感じさせる音楽をバックに描いていく。

1.トムハーディ
彼の存在を意識したのは、「ダークナイトライジング」においてバットマンを圧倒し、マスクをはがしてしまう極悪人を演じたときだ。その後キネマ旬報ナンバー1作品「マッドマックス」で強烈な印象を残し、近作「レヴェナント」ではレオナルドディカプリオの敵役を演じた。完全に主役が張れる存在になっている。


自分としては、DVDスル―になった格闘技映画「ウォーリア」でのトムハーディの強さに感嘆したクチである。「ダークナイト」ではマスクをしたり、「レヴェナント」ではヒゲもじゃであるのと対照的に「ウォーリア」では男前の素顔を見せてくれる。
この映画でもダンディなレジーがイタリアンスーツをカッコよく着こなす姿には女性ファンはぞくぞくするであろう。

2.印象深いシーン
銃で撃ち合うというよりも凶暴性を示すようなケンカシーンが多い。相手の陣地に弟と一緒にの乗りこみ、トンカチをもってロンが相手にぶち叩くシーンには目をそむけてしまう。

あとはレジーが刑務所に入った時、刑務官5,6人にリンチまがいにコテンパンに殴られ、留置された後に、最初は死んだふりをしていたレジーが水を飲ませてくれとオリの外に刑務官を呼んだとき、相手の手錠をさっと奪って刑務官の手をオリに手錠をかけてしまい、ボコボコにするシーンもすげえなあ。


でも一番は二人の兄弟げんかだろう。作品情報によるとトムハーディの専任スタントと2人でまじな殴り合いをしているそうだ。そりゃ迫力あるなあ。

大暴れぶりはここ↓



3.60年代のテイスト
政界や貴族にも影響力をもったクレイ兄弟が、要職の人物と記念撮影をしてその写真を送りつけたり、マスコミにリークして大騒ぎをさせて脅す。この時代は労働党政権でハロルド・ウィルソン首相時代だ。映画の中でも政治家がらみのシーンがいくつか出てくる。
自分の小学校低学年のころで、自宅には父親が持っていた「ハロルドウィルソン」に関する本があった。あの頃、イギリスでは「ゆりかごから墓場まで」の素晴らしい福祉政策が繰り広げられていると日教組系教員は絶賛し、小学校でも教えていたが、英国経済の停滞を招いたのは間違いない。ハイエク の影響を受けたマーガレット・サッチャー政権で真逆の自由主義になってようやくまともになった。


ケイト・ブランシェット「キャロル」に近い時代だ。映像のテイストは「キャロル」のようなしっとり感は皆無だが、音楽とファッションや登場する車で60年代の匂いがプンプンする。同時代のビートルズはまったく流れないが、ブリティッシュ・ロックやモータウンサウンドそして「夏の日の恋」のようなイージーリスニングを交えて映像に合わせて流れ続ける。これはこれで快適だ。

この2人に無記名債券を持ちこまれる。盗品もふくまれている。これを現金にしたら、盗んだ人に20%あと残り80%は持ち込んだ人間と換金したクレイ兄弟一家に半分づつという取り分だ。無記名債券で金丸信元副総理のことを急に連想した。彼が逮捕された時、無記名債券が金庫から億単位ででてきたなあ。クレイ兄弟に頼んでいれば換金できたのにね(笑)

(参考作品)
マッドマックス 怒りのデス・ロード
トムハーディ主演絶叫映画



ウォーリアー
トムハーディの格闘技映画これがかっこいい
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映画「スポットライト」 マイケルキートン&マークラファロ

2016-04-27 18:30:53 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「スポットライト 世紀のスクープ」を映画館で見てきました。


「スポットライト」は2015年度のアカデミー賞作品賞、脚本賞に輝く作品である。余計な先入観なく見に行った。神父による性的虐待事件の取材活動が進み、真実が暴かれていく姿に緊迫感を感じた。丹念にインタビュー重ねるだけでなく、あらゆる記録を調べていく。ミステリーのように予想外の結末でないのはわかっていることながらドキドキ感が高まっていく作品だった。

それにしても神父から子どもたちへの性的虐待はひどい。ここまでカトリック教会がハチャメチャになっているのを世の教会通いの信者さんたちは知っているのであろうか?教会だけでなく、学校の教師にも神父たちはいて、次から次へと色狂いがわかっていく。自分が無宗教で本当によかったと思わせる映画である。

2001年の夏、ボストン・グローブ紙に新しい編集局長のマーティ・バロン(リーヴ・シュレイバー)が着任する。


マイアミからやってきたアウトサイダーのバロンは、地元出身の誰もがタブー視するカトリック教会の権威にひるまず、ある神父による性的虐待事件を詳しく掘り下げる方針を打ち出す。その担当を命じられたのは、独自の極秘調査に基づく特集記事欄《スポットライト》を手がける4人の記者たち。デスクのウォルター"ロビー"ロビンソン(マイケル・キートン)をリーダーとするチームは、事件の被害者や弁護士らへの地道な取材を積み重ね、大勢の神父が同様の罪を犯しているおぞましい実態と、その背後に教会の隠蔽システムが存在する疑惑を探り当てる。


やがて9.11同時多発テロ発生による一時中断を余儀なくされながらも、チームは一丸となって教会の罪を暴くために闘い続けるのだった・・・。(作品情報より)

1.聖職者の独身
こういった神父からの性的虐待はボストンだけの問題ではないようだ。エンディングロールで示すように、今回の報道がきっかけで数多くの都市で同じような事件が繰り返されていたことがわかった。
でもこれって、カトリックの神父が結婚できないとこが大きな原因であることは間違いあるまい。聖職者の俗人化や聖職売買で一気に進んだ腐敗をなくすために、カノッサの屈辱で有名な教皇グレゴリウス7世がおこなった改革で聖職者が独身であるべきということになる。まさに11世紀から12世紀の中世の暗黒時代に定まったことがそのまま現在まで残っている。

一方でプロテスタントの聖職者は結婚ができる。宗教改革の先駆者マルティン・ルターは結婚しているし、カルヴァン「キリスト教綱要」で独身制を否定している。これは私見だけど、ルターがサンピエトロ寺院建設のための免罪符による腐敗を訴えることが宗教改革のきっかけになったというのが世界史の教科書にあることだ。でも本当は聖職者が結婚できないことに不満だったことが改革を起こした原因だったりして。

東西両教会が歴史的面談をするような時代になったわけだから、少しは考え直した方がいいのでは??

2.米国新聞の取材
特集記事欄のチームということで精鋭が集められているという設定である。そのこと自体がはっきりと映像に示される。徹底的なインタビュー取材、ある仮説をたてるための分析とそこでピックアップされた人物への徹底取材、そして裁判記録の確認などなかなかすごいなあと思わせる新聞記者たちの動きである。議事録が削除されていることに疑問を感じて、カトリック教会から圧力があったことがわかりそれを懸命に追及する。そういう動きをかなりやってもすぐさま記事にしない。記者たちはものすごいフラストレーションを感じたと思うが、時期が来るのを待つ。この辺のもどかしさをこの映画では映像で示している。なかなかうまい。


3.近年アメリカ映画の俳優たちの名演
エンディングロールではマークラファロがクレジットトップである。マイケルキートンがリーダー役だっただけにちょっとこれは意外だ。マークラファロはここ数年いい作品にずいぶんと出ているが「フォックスキャッチャー」での殺されレスラー役が印象的だ。ここでも特ダネを持ってきたのに時期が来るまで待てとリーダーのマイケルキートンに言われ、激高して逆らうシーンの激しさが印象的だ。


マイケルキートンは前作「バードマン」でマイケル本人とかぶるような過去に栄光があった俳優を見事に演じあげた。「スポットライト」で二年連続でアカデミー賞にからみ、俳優としての地位を復活させているような気がする。
レイチェルマクアダムスも近年活躍がめだつ。個人的にはブライアンパルマ監督の「パッション」での悪女の演技が好きだ。


あとは編集長役のリーヴ・シュレイバーも近年の活躍が際立つ名優だ。「完全なるチェックメイト」トビ―マクガイアのライバルである冷静沈着なチェスチャンピョン役が印象的だ。ここでも編集長役で肝心な場面で威厳のある言葉を語る。いい感じだ。



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映画「砂上の法廷」キアヌ・リーヴス&レニー・ゼルウィガー

2016-04-06 19:29:16 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「砂上の法廷」を映画館で見てきました。


キアヌリーヴスの新作法廷映画は予測不能のどんでん返しの展開だという。気になって見に行ってしまう。父親殺しの嫌疑をかけられた息子の弁護を引き受けたキアヌリーヴス演じる弁護士が不利な状況から無罪を目指すという展開だ。それだけであれば、どうってことない。どのようにラストに進むかと思ったら、さすがに前評判通り意外な展開に進み、確かに自分も騙されていた。

「評決」「フィラデルフィア」「情婦」という法廷ものの名作ほど映画としての深みはないけど、娯楽としては十分楽しめる作品になっている。最低限の事前知識だけで見た方が楽しめるかもしれない。

アメリカの南部。大邸宅に住む大物の弁護士ブーン・ラシターが殺害される。逮捕された容疑者は、ブーンの息子で17歳のマイク(ガブリエル・バッソ)。拘留されたマイクは、何も喋らない。マイクは、父親と同じ法律家を目指していて、法律にも詳しい。ラシターの妻ロレッタ(レニー・ゼルウィガー)は、家族ぐるみでつきあいのある敏腕の弁護士ラムゼイ(キアヌ・リーヴス)に、息子の弁護を依頼する。


法廷でも、マイクは発言しない。検察側の証人たちは、マイクに不利な証言をする。ラムゼイの許に、ジャネル(ググ・ンバータ=ロー)という黒人女性弁護士がヘルプとして手伝う。

ジャネルには、証人の偽証を見破る才能があった。ジャネルは検察側の証人たちの偽証を見破っていく。マイクに不利な状況が変化し始めた頃、マイクが衝撃的な発言をして、法廷でのやりとりが大きく変わるのであるが。。。(作品情報より)

主人が大変なことになっていると被害者の妻が警察を呼び、婦人警官が豪邸の中をゆくと夫がナイフで刺されていて死んでいる。


その横には少年がいる。いかにも自分がやったと思わせるような発言をしている。
この豪邸だけを見ると、被害者は実業家のようだが、弁護士だ。その後、この被害者が家族や周辺に横暴な振舞いをしていた映像が次から次へと映しだされる。なんじゃいな??要は被害者が妻や息子を虐待していたことへの反発で殺してしまったということなのか。しかし、単なる殺人だと思わせるような証拠しかない。被疑者の少年は何も話さない。キアヌリーヴス演じる弁護士は不利な状況だ。そこに若い女性弁護士がきて少しづつ挽回していくという展開だ。

1.法廷もの映画
和解の申し立てを断り、不利な裁判に挑んだのは「評決」のポールニューマン演じる弁護士である。相手は有名法律事務所でポールニューマンは酒びたりの小者弁護士にすぎない。少しづつ逆転への道筋をつけて最後逆転に持ち込むというのは法廷映画の定石のようなものだ。
そこでいったん終了をむかえた後にどんでん返しをつくるのが、ビリー・ワイルダー監督の傑作中の傑作アガサクリスティ原作の「情婦(検察側の証人)」だろう。最初この映画を見た時の衝撃はすさまじかった。チャールズ・ロートン演じる老練な弁護士の演技もユニークだけど、出来過ぎと思える結末には驚いた。まさに検察側の証人マレーネ・ディートリッヒの大戦後における最高の演技だろう。ネタバレ気味だが、どちらかというと、この映画は「情婦」に近い衝撃を与える映画といえる。


比較的単純な展開で判決の先行きも読める。でもそんな読める展開では終わらないんだろうなと、どうけりをつけるのか考えているとあと10分だ。そこで異変が起きる。これだけは言えないなあ。

2.レニーゼルウィガー
被害者の妻役の中年女がいい感じだ。軽く肌を見せて色っぽい。この話の重要なカギを握る。終わってエンディングロールでクレジットを見るとレニーゼルウィガーじゃないか。いやー本当に気付かなかった。彼女の映画はかなり見ているんだけどね。そういえば最近見ないと思って作品情報を見ると何と6年ぶりの登場だ。軽いしわがあって中年女らしいけど、比較的スリムでブリジットジョーンズとは違う。でも今の彼女が魅力的に見えるのは自分も年をとったということか


3.キアヌリーヴス
キアヌリーヴスが出ているせいか女性客が多い。彼の作品って割と相性が合うことが多い。前作「ジョンウィック」もよかった。ここでは割と普通、でもこの役柄はそんな感じでいいんじゃないかな。最初裁判で不利な状況な時に、モハメド・アリの話をする。1974年連戦連勝のジョージフォアマンと対戦したアリが絶対的不利を克服して、相手がパンチを打ち疲れたところを逆転した話にたとえ、まずは相手側にやるだけやらせてから逆転を狙うと言っていた場面が印象的だ。

(参考作品)

情婦
史上最高のどんでん返し映画


評決
法廷映画の最高峰
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映画「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」 ベンアフレック&ヘンリー・カビル

2016-03-27 17:42:44 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「バットマンvsスーパーマン 」を映画館で見てきました。


予告編から気になっていた対決である。小学校低学年の頃、日本版の円谷系「ウルトラマン」シリーズや「ゴジラ」シリーズに熱狂する一方で、実写版の「バットマン」や「スーパーマン」を見て同じように興奮していた。そんな両者が対決するなんて、すげえ話だなあと思ってすぐさま見に行く。

ただ、この両者はあまりにも偉大なヒーローなので、その昔のプロレスでジャイアント馬場が外国レスラーと60分三本勝負で1対1で時間切れ引き分けになるような構図になるんだろうと予測して見に行った。最初それぞれのルーツを語ったりするんだけど、ちょっと前置きが長いし、意味不明な展開にかなり戸惑う。一瞬寝てしまう場面もあった。予告編で見た二人の対決シーンが登場し、胸をわくわくさせてからあとは、展開もよく、意外性も充満していい感じかもしれない。


結局のところは「アベンジャー」のようなキャラクター満載の世界となる。
映画館のきっぷ切りのところでクリアファイルをもらった。バットマンとスーパーマンがいるのはわかるんだけど、ワンダーウーマンがいるのでへえーと思った。何でと思ったが、その謎は徐々に解明されていった。


人類を守るために異星人からの地球侵略を防いだスーパーマン(ヘンリー・カビル)。だが皮肉にも、戦いの結果は平和をもたらすと同時に、都市に甚大な被害を及ぼし、多くの犠牲者を出してしまう。その強大なパワーを、ある者は“神の御業”と崇め、またある者は“悪魔の脅威”と感じる。バットマンとして悪と戦ってきたブルース・ウェイン(ベンアフレック)も世界を滅ぼす力を目の当たりにした1人。スーパーマン不要論の盛り上がりに呼応するかのように、強烈な憎しみを抱き“脅威”を取り除こうと立ち上がる。

同じ頃、巨大企業レックス・コープを率いる若き実業家レックス・ルーサー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、異星人の遺物を集めていた。その動きを探る謎の女も登場。人類はまた混沌とした状況へと追い込まれようとしていた……。(作品情報より)

それにしても豪華な顔ぶれである。「ソーシャルネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグやエイミーアダムスなど現代映画界でしょっちゅう見る顔ぶれと20年以上前に活躍したホリーハンターダイアンレインをまぜて登場させるところもうまい。
それぞれに重要な役割を持たせるのがいい感じだ。
ネタバレ少しあるがバットマンとスーパーマンを振り返ってみる。

1.バットマン
小学生の時、フジテレビでテレビシリーズが放映されていた。バットマンを演じるアダムウェストを名声優広川太一郎を吹き替えしていた。バットマンカーが凄くてあこがれた良き時代だった。そんな時から20年以上たって突如登場したマイケルキートン演じるバットマンにもう一度しびれた。悪役ジョーカーをジャックニコルソンが演じ、ティムバートン監督らしい暗黒の雰囲気にグスタフマーラーのようなダニエルエルフマンの音楽が高らかに鳴り響く。これは今見ても古さを感じさせない傑作である。そして「ダークナイト」において、クリスチャンベールに対決するヒースレジャーの怪演がすばらしい。そんな感じでバットマン映画は傑作目白押しである。


今回のベンアフレックの登場は意外といってもいいだろう。良くもなく悪くもなくといったところかなあ。

2.スーパーマン
小学生の時、TBSでスーパーマンが放映されていた。空を飛べたらどんなにすばらしいことなんだろうと思いつつ、画面にかぶりついていた。実際のところアメリカで放映されていたのは1950年代のことで自分の見たのは再放送だろう。主演のジョージ・リーヴスは若くして亡くなっている。大学生のとき突如として映画「スーパーマン」が製作されアッと驚く。これは見に行った。続編もつくられたが、主演のクリスファーリーヴも早死している。おいおい、これって呪われているんじゃないの?
そうなってくるとヘンリー・カビルも心配だろう。「マンオブスティール」は見たけど、コメントアップしていない。彼のスーパーマン役は良いと思うけど、今後どうなるんだろう。


3.ワンダーウーマン
バットマンとスーパーマンが対決をする場面で時計をみるとまだまだ時間がある。え!永遠と取っ組み合いをするのかな?と思いしや、途中で展開がかわる。思いもかけない奴が登場するのだ。そこに加えて登場するのがワンダーウーマンだ。


これがかっこいい!女子プロレスラーのように大柄でアマゾネスを連想させる。ガル・ギャドットという演じる女性は元ミスイスラエルだという。ユダヤ系のエキゾティックな顔つきだ。ユダヤ系というと古くは「男と女」のアヌークエーメ、新しいところでは「ブラックスワン」のナタリーポートマンを連想する。ヌードにならないのにガル・ギャドットにゾクゾクしてしまうのは男の悲しいサガだ。

(参考作品)
バットマン ワーナー・スペシャル・パック
マイケルキートンのバットマン


マン・オブ・スティール
スーパーマンの前作
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映画「ヘイトフル・エイト」 クエンティン・タランティーノ

2016-02-28 18:45:49 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ヘイトフル・エイト」を映画館で見てきました。


タランティーノ監督の新作は閉鎖空間での8人のもがき映画だという。早速見に行く。正直3時間はちょっと長すぎの感じもしなくもない。途中得意のダラダラ会話に眠くなりそうになる時間もあった。でもある場面から一気に目が覚める。「ジャンゴ」同様に手綱をゆるめるが如くに一気に加速させるところからいかにもタランティーノ映画色が強くなる。「パルプフィクション」などと同様に時間軸を前後に揺さぶる脚本はいかにもタランティーノらしくていい。

白銀の世界を疾走する1台の駅馬車が、行く手を阻む一人の男の前で停まる。北部の元騎兵隊で今は賞金稼ぎのマーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)、椅子代わりに座っているのは、レッドロックへ運ぶお尋ね者3人の凍った死体だ。この寒さで馬がやられ、誰かが通りかかって拾ってくれるのを待っていたのだ。馬車の客は、同じく賞金稼ぎのジョン・ルース(カート・ラッセル)。ゴツい腕にはめた手錠の先には、連行中のデイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)がつながれている。1万ドルもの賞金をかけられた重罪犯の女で、散々殴られた顔で不敵に笑っている。


迫り来る猛吹雪から避難するため、ルースはレッドロックまでの中継地で、うまいコーヒーにシチュー、装飾品から武器まで何でも揃っているミニーの紳士洋品店へ向かうが、途中でもう一人、クリス・マニックス(ウォルトン・ゴギンズ)を乗せる。マニックスは新任保安官としてレッドロックへ向かう途中だと主張するが、彼が黒人殺しの南部の略奪団の一員だと知っているルースは信じない。

ミニーの店へ着くと、ボブ(デミアン・ビチル)と名乗る見知らぬメキシコ人が現れ、母親に会いに行ったミニーの代わりに店番をしていると言う。凍えたルースはさっそくストーブの上のコーヒーを飲むが、ボブが作ったらしいそれは泥水のようにマズく、自分の手で淹れ直す。


店には、3人の先客が吹雪で閉じ込められていた。まずは絞首刑執行人のオズワルド・モブレー(ティム・ロス)、洗練されているが、どこか胡散臭い英国訛りの男だ。そしてカウボーイのジョー・ゲージ(マイケル・マドセン)、無口で何を考えているのかわからない。母親とクリスマスを過ごすために帰る途中だと言うが、とてもそんなタイプには見えない。そして最後に、サンディ・スミザーズ(ブルース・ダーン)、大勢の黒人を虐殺した南部の元将軍だ。(作品情報引用)

この8人が意味はあるんだろうけど何気ない会話を交わしているが、ある時点から急激にストーリーが急転する。サミュエルジャクソンが銃をぬいたあたりから一気にキタ―!!という感じだ。
それからは、誰が誰を騙しているのか?騙し合いの種明かしを読んでいくが如くだ。

1.クエンティン・タランティーノ
16歳で学校をドロップアウトしたタランティーノは演劇塾へ行ったあと、ビデオ屋に勤務する。ちょうどビデオレンタルが普及した頃だ。ここではビデオを見放題だし、勝手に借りて家でも見れるのだ。ありとあらゆる映画を見まくっている人は多い。自分もその端くれだが、美食家や大食漢から料理人になる人がめったにいないように、タランティーノのように映画づくりに自ら乗りこんでいく人は少ない。彼は圧倒的に見続けた映画のエッセンスを、自らの作品に生かしながら常に進化しているまれな人だ。


最初に「パルプフィクション」を見たときに、そのバイオレンス表現のすさまじさに驚くと同時に時間軸のずらし方の見事さに感心した。この映画は90年代のトップといってもいいくらいの出来である。ここでも時間軸がずれる。その微妙なずらし方に軽い解説を加えて、ストーリーを展開させる。しかも、常連のサミュエル・ジャクソンティムロスだけでなく、大ベテランのブルースダーンを巧みに使う。ヴァイオレンス表現も境地に達する。お見事だ。


2.ジェニファー・ジェイソン・リー
この映画全般を通じて、一番の存在感を持つのはジェニファー・ジェイソン・リーだろう。初期段階で、タランティーノ得意のダラダラ会話でしのいでいくときも、彼女がカートラッセルやサミュエルに逆らって、ぶっ飛ばされる場面が刺激的だ。2人が女を女と思わないで殴っていく、ここでの暴力表現はゾクゾクしてしまう。アカデミー賞助演女優賞へのノミネートはある意味納得する。最後に向けての流血が流れまくる修羅場での彼女の存在感はすごい。


この映画の特徴は、登場人物がすぐには死なないということ、不死身だ。死んだと思っても死んでいない。そうしていきながら最終場面に向かう。ゾンビみたいな奴らだ。ジョンカーペンターの名作「遊星からの物体X」から影響を受けているというのはそういう所でわかっている。ちなみにその映画もエンニオ・モリコーネの音楽だ。「夕陽のガンマン」から50年、頑張るね!!

(参考作品)
ジャンゴ 繋がれざる者
黒人奴隷ジャンゴの生き残り物語
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映画「ドリーム ホーム 99%を操る男たち 」アンドリュー・ガーフィールド

2016-02-11 17:16:17 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ドリーム ホーム 99%を操る男たち 」を映画館で見てきました。


スパイダーマン2代目のアンドリュー・ガーフィールドが主演で、高利の住宅ローンで破綻した人たちを描くという。おもしろそうなので映画館に向かう。リーマンショック以前からサブプライムローンによる破綻が目立っていた。地価上昇に支えられていた、アメリカの住宅流通の仕組みが崩れたからだ。ここでは債務滞納で銀行から立ち退きを命じられている居住者たちと立ち退きしたあとの住宅を転売するために疾走する不動産ブローカーの話が中心だ。


闇金に追いつめられた連中の話はときおりみるが、保安官と一緒になって立ち退き命令を出す時のパフォーマンスをここまで詳細に記した映画は少ない。日本とは違う退去命令方式なので興味深く見れた。
ヤクザに追い込まれていったん破綻したが、そのヤクザの手下に転換して活躍するなんてストーリーって東映やくざ映画にはありそうなパターンだよね。

デニス(アンドリュー・ガーフィールド)は小学生の一人息子コナー(ノア・ロマックス)と母親(ローラ・ダーン)と一緒にフロリダ州の住宅地に暮らしている。リーマン・ショック後の大不況により住宅ローンを滞納し、ある日突然、たった2分間の猶予しか与えられず長年暮らしてきた家から強制退去させられる。自宅と土地を追われた一家はモーテルに移り住む。デニスは家を取り戻すためにやむなく、自分たちを強制的に家から追い出した不動産ブローカーのリックカーバー(マイケル・シャノン)の右腕として働き始める。債務を滞納している庶民の家を次々と差し押さえて売りさばくのだ。


母親と息子に真実を言えないまま仕事に没頭して派手に遊ぶようにもなる。そんなデニスにカーバーはあることを命じるが。。。

1.立ち退き命令と退去

妹の幼稚園から小学校の同級生に美しい少女がいた。その妹も可愛く、自分の家のすぐ近所に住んでいた。小さい頃から雑誌のモデルになるくらいの美貌で賢い。その後、東京ではセーラー服が可愛いと言われている夏目雅子の通った有名校に行き、近隣の男子校の少年たちにもてまくったようだ。自分は子供だったので、知り合いのお母さんを美人と思う余裕はなかったが、母上も半端じゃなく美しい。自分が大学に入った時に母上がものすごく喜んでくれたのが懐かしい。

そんな家族で、父上は工場を経営していた。自分が大学生の時、たまたま家にいたら、先方のお母さんから自分の母に助けを求める電話がかかってきた。その家の前には強制退去命令をしている人たちがいた。細かい事情はわからない。さかんに抵抗していたが、相手は容赦なかった。結局、家族が荷物を泣きながら運ぶのにうちの母と近所のおばさん2人でつきあって、この家族は自分の家の近くから去って行った。母は銀行というのは容赦ないんだとさかんに言っていた。今思うと高利の金融会社からも借りていたのかもしれない。瀟洒でかわいいご自宅だったが、抵当権を駆使された。大人になってからこれはこれで仕方なかったのかと思ったが、凄い情景だった。


この映画をみて30年以上前のその事実が突如思いだされる。


この映画では、いきなり主人公が追い込みをかけられるシーンが映し出される。日本ではこういうことはないと思うけど、強制退去に保安官がたちあう。横には不動産ブローカーのカーバーがいる。今日が退去期限だ。2分以内にすぐ貴重品をまとめて出て行けという。妹の友人の家族と同じようにさかんに抵抗するが、無理である。保安官までいるのだ。いやいやながら、荷物をトラックに運び、家族はモーテルへと向かう。
主人公は建設工事のフレーマーをやっているが、工事が中止になったからと言って失職してしまう。一生懸命探そうとしてもうまくいかない。そんなとき、ブローカーのカーバーから糞まみれになっている退去した家の掃除をやらないかと言われ、金のない主人公デニスがげろを吐きながら依頼を受けるのだ。

2.不動産ブローカー
不動産ブローカーのカーバーは支払い破綻になっている人たちの情報を得ている。裁判所で退去命令された人たちの情報を得て、ここでは映っていないが、銀行などの債権者と通じてこの不動産を自分の手に入るようにしているのであろう。日本でもその手の話はよくあることだ。抵当権を駆使させる前にいい値段で不動産ブローカーに買ってもらうなんてこともあるだろう。銀行だってこういう人たちがいることで助かっているのだ。
しかも、これ自体は法的に何もおかしなことではない。むしろ、サブプライムローンのような高利のローンを組んでしまう入居者の方が常軌を逸した行動をしているということなのだ。


(ネタバレあり)
ここでの最終決着については、この不動産ブローカーちょっとお粗末としか言いようにない。それまでのことはあくまで普通のビジネスと解せることだが、ここから重大なコンプライアンス違反を強いるのである。これはもったいない。それまで巨満の富を得ているのだから、たった一軒くらいのことで無理しなくてもいいのにと思ってしまう。でも、この映画では脚本家はこの不動産ブローカーを悪に仕立てたいのがミエミエだからね。

リーマンショックからすでに7年たち、ここ数年は米国経済はかなり良好である。しかも、住宅着工は好調が伝えられる。であるから、最近はこんなこと少ないと思うけど、アメリカ人の住宅への固執が意外にもあるんだなあと思わせるシーンは多かった。




ただ、※本作の下敷きとなっているのが、ノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者ジョセフ・E・スティグリッツが『世界の99%を貧困にする経済』の中で唱えた「世界中の富の4分の1をたった1%の最富裕層が所有しており、残り99%は貧困である」という説。現在、世界中でその格差が広がり、問題視されている。(作品情報より)

こういうことが作品情報に書いてあったが、この映画に関してはあまり関係ない気がした。支払えない借金をする方がわるいでしょう。住宅ローンというのはわずかな頭金で実力以上の借金をするある意味株の信用取引と同じである。そのことがわかっていないとダメ。ここで借りる側はかばえない。

(参考作品)
ドリーム ホーム 99%を操る男たち
抵当権を行使された家主と悪徳不動産業者
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映画「オデッセイ」 マット・デイモン&リドリー・スコット

2016-02-10 20:19:02 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「オデッセイ」を映画館で見てきました。


マットデイモンが演じる火星に一人取り残される男のサバイバル映画だというのは予告編を何度も見てわかっていた。なんとなく関心を持って映画館に向かったが、「ゼログラビティ」などとは違うスペースファンタジー映画で、一人取り残されたマットデイモンが前向きに生き抜いていこうとする姿を描く。マットデイモンのサバイバルパフォーマンスのバックで70年代のディスコミュージックをがんがん流すのが予想外、自分が大好きなアップテンポのディスコの名曲をきいていくとご機嫌になってくる。

火星での有人探査の最中、宇宙飛行士のワトニー(マットデイモン)は嵐に巻き込まれてしまった。ルイス船長(ジェシカ・チャンスティン)をはじめとした仲間の宇宙飛行士たちは緊急事態を脱するため、死亡したと推測されるワトニーを置いて探査船を発進させ、火星を去ってしまう。NASAはワトニ―の死亡を発表する。しかし、ワトニーは奇跡的に死を免れていた。


酸素は少なく、水も通信手段もなく、食料もあとわずかという絶望的環境で、懸命に生き延びようと、あらゆる手段を尽くしていく。一方で火星を映しだす映像をみて、NASAはワトニ―の生存を確認するのであるが。。。

1.マットデイモン
ワトニ―は植物学者という設定である。ジャガイモを栽培しようと、仲間たちが排泄したものを肥料にしようと引っぱり出し、土を耕す。水が必要なので、火を起こして水素と酸素を化合して水をつくろうとするが爆発させてしまったりしてうまくいかない。それでもなんとか水をつくりだし、土から芽が出てくる。そういう場面を見ていくのは気分的に悪くない。しかも、船長のルイスが音楽コレクションにしていた70年代のディスコを聞きながらハイテンションで頑張る。


普通サバイバル映画というと、この間の「白鯨との闘い」もそうだったが、いかにも暗い。そう見えないところが、この映画のいいところ。何度も何度も難関が訪れるが、めげずに頑張る姿がいい。筋肉もりもりとやせ細った姿の両方を見せつけたマットデイモンは好演といえる。

2.映画「オデッセイ」のディスコミュージック曲
火星でのサバイバルをはじめたころから、ディスコミュージックが流れ始める。最初はTurn The Beat Around だ。これって自分が高校のころによく流れたアップテンポのディスコミュージックの曲だけど、いかにも70年代中盤の匂いが強い名曲だ。今でもテレビのバックミュージックでよくかけられている。



マットデイモン曰く、船長の持っているディスコ曲の中で一番ディスコぽくない曲がこれだということで流れるのがドナ・サマーの「ホットスタッフ」だ。おいおい何?思わず吹き出してしまう。だって78年から79年にかけての日本のディスコ全盛時代にどこでも流れていたオーソドックスなディスコミュージックだもんね。



宇宙遊泳の場面で流れるのが故デヴィッドボウイの「スターマン」これ自体はディスコミュージックとちがうが、一番映像にしっくりあっていたと思う。自分の記憶ではデヴィッド・ボウイの曲の中で最初に日本で大ヒットした曲だと思う。



エンディングでオージェイズの「ラブトレイン」とグロリア・ゲイナーの「恋のサバイバル」が流れる。いずれも全米ヒットチャートナンバー1の名曲だ。「ラブトレイン」は73年3月のナンバー1、この当時はまだディスコ時代の前だ。



「ラブトレイン」の前後のヒットチャートナンバー1の顔触れを見ると、エルトンジョン「クロコダイルロック」、ロバータフラック「やさしく歌って」、ドーン「幸せの黄色いリボン」なんてポップスの歴史上重要な曲が並んでいる。

ぞれにしてもいったい誰がディスコミュージック好きなんだろう?やっぱりリドリースコット監督の権限なのかなあ。映画の中ではジャシカ・チャンスティン演じる船長の趣味ということだったけどね。

でも彼女の無重力状態での遊泳は優雅でいい感じだったよね。NASAが映画づくりに全面的に協力しているというのが映画を見るとよくわかる。彼女の出演する映画みんな相性がいい。でも最後に向けて、どうやって助けようかという説明は残念ながら自分の科学への理解度からするとよくわからなかった。
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映画「ザ・ウォーク」 ジョゼフ・ゴードン=レヴィット

2016-02-03 15:46:30 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ザ・ウォーク」を映画館で見てきました。


この映画の予告編を見るだけで背筋がぞくっとしてしまう。怖いもの見たさでつい映画館に向かう。
38階の高い所に自分のオフィスがあるけど、きっちりガラスがあるので下を見下ろしてもちっとも怖くはない。でもガラスがなかったらどうなんだろう。しかも、フィリップが体験しているのは110階で400mほどの高さで、オープンエアで命綱もない。本当にこんな凄いことやった人がいるのかと思うが実際にいるのだ。でも実際の映像は残されてはいない。ここでは再現フィルムのように綱渡りを見せる。

もちろんマンハッタンのワールドトレードセンターの両方の棟での綱渡りシーンがヤマだけど、この映画はそれを実行するために、いろんな人たちを巻き込み周到な準備を重ねて本番に挑むところが見どころだ。


8歳の頃にサーカス団の綱渡りを観て以来、フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、細いワイヤーの上を歩くことに魅了されていた。そして綱渡り師パパ・ルディ(ベン・キングズレー)に弟子入りして技を磨き、パリのノートルダム寺院での綱渡りに成功していた。
1973年、ニューヨークにワールドトレードセンターが建設中だと知った瞬間から、世界最高層のツインタワービルの屋上の間を歩くことが彼の夢となる。街の大道芸人をやっている時に知り合ったストリート歌手の恋人アニー(シャルロット・ルボン)やカメラマン志望の青年ジャンルイと入念な準備を経たフィリップは、翌年の8月6日ワールドトレードセンターに忍び込み、高さ411メートルのタワーの屋上に直径2.2センチのワイヤーを渡し、命綱なしで歩き始めるのであるが。。。


「アルカトラズからの脱出」という1979年のクリントイーストウッド主演の映画がある。脱出不可能といわれていた有名な刑務所の島アルカトラズから周到に準備をして脱出する実話に基づく映画がある。そこでは味方を誰にするのか、時期はいつにするのか、監視の目をどう欺くのか、そして脱出に向けてのプロセスを丹念に描く映画がある。私はその映画をすぐさま連想した。やることは違うけど、周到な準備をかさねて決行するということでは同じようなものだ。

すでにお膳立てされて両方のビルの屋上がワイアーで連結されているわけではないのだ。どういうワイアーを使うのか、フランスから器具を持ち込んだあともワ―ルドトレードセンターの日常を丹念に観察し、現地でビルで働いているビジネスマンやワイアーの知識のある人を味方に入れる。そんな味方を経て、ようやくビルに入り込むが、夜中に40m以上離れたビルの間を連結する作業自体は容易ではない。まず設定の状況にすること自体がたいへんなのである。こんなこと本当によくできたと思う。

フィリップ個人に焦点が当てられているように見えるが、同時に人間社会で成功するには他人の助力が必要不可欠ということも語っているような気がする。

1.フィリップ・プティ
本職は大道芸人ということなのであろうか、ワールドトレードセンターの綱渡りのあともずっと続けているそうだ。

度胸の座り方は年季が入っている。実際に一回渡った後で、すぐさま元のビルに戻ったり、慌てて駆け付けた警官から逃げるようにワイアーの上を行ったり来たり、ワイアーの上で寝そべったりするのを実際にしたのかと思うとこれはすげえと思ってしまう。


2.ジョセフ・ゴードン=レヴィット
今回はかなりきっちり役作りをしている。アメリカ生まれのジョセフがやけに上手なフランス語を話している。やけにうまいなあと感心したら、履歴をみるとコロンビア大学でフランス文学を学んでいたそうだ。それはうまいはずだ。それでもフランス人がしゃべるフランスなまりの英語も勉強したそうだ。これは立派だ。あとは綱渡りだ。ほとんどがスタントかと思ったら、実際に低い高さのところを綱渡りを本人がしているシーンが次々にでてくる。どうやらフィリップ・プティ本人から特訓を受けたようだ。


ワールドトレードセンターを綱渡りするシーンは12フィート(約3.6m)の高さでやったとのこと。映画の撮影だから何度も何度も往復したんだろう。けっこうたいへんな撮影だ。ある意味熱演だと思う。
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映画「ブラック・スキャンダル」 ジョニー・デップ

2016-01-31 19:41:25 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ブラック・スキャンダル」を映画館で見てきました。


ジョニーデップの新作はハゲ頭姿でちがった雰囲気だ。何度か予告編で見て、FBIとアイリッシュ・マフィアと上院議員が共謀する映画だとわかってはいた。ジョニーデップ作品では「ラムダイアリー」などのように世間一般で評価が高くなくても自分には悪くないと思えるものがある。ともかく見てみようと映画館に向かった。


FBIの捜査官としてマフィア浄化に取り組んでいたジョン・コノリー(ジョエル・エドガートン)は、南ボストンのイタリアンマフィアが自分と同じアイリッシュ系ギャング組織を率いるジミー・バルジャー(ジョニーデップ)のことを狙っているという噂を聞き、ジミーに忠告する。そして、イタリアンマフィアをつぶすためにジミーの情報を得ようと密かに協力者にしようとする。FBIの上司(ケビン・ベーコン)はコノリーのたくらみに反対するが、押し切られる。FBIの協力者になったことで、ジミーの組織はあやういことをしても捕まらない。しかも、ジミーの弟は州の上院議員ビリー(ベネディクト・カンバーバッチ)である。

やがて、イタリアンマフィアのボスが捕まると、ジミーはし放題となってしまうのであるが。。。


1.ジョニーデップ
いつもと面構えがちがう。個人的には彼の出演作品で一番好きなのはマイケルマン監督作品「パブリック・エネミーズ」である。稀代の銀行強盗ジョン・デリンジャーを演じた彼の人相はまさに殺人鬼の凄顔だったし、作品のテンポも抜群によかった。正直テンポの良さでは本作品は「パブリックエネミーズ」に劣るが、ジョニーデップのギャングとしての脅しはこの映画の方が効いている。特にFBIの協力捜査官に脅しを入れる場面には背筋がさむくなるような凄味を感じる。

自分の組織の情報を漏らそうとする人間の制裁場面も恐怖を感じさせる。誰も救えない世界で、なすすべもなく密告者は追いつめられる。

2.東映映画「県警対組織暴力」
ハリウッド映画でも実話ものも多いが、どちらかというと「ブラック・スキャンダル」は70年代の東映実録路線の映画に通じるものがある。「仁義なき戦い」との共通点もあるが、1975年の東映映画で深作欣二監督菅原文太主演の傑作「県警対組織暴力」と類似点が多い。「仁義なき戦い」の大ヒットで東映は山口組に関する映画の公開が難しくなっていた。そんな時「仁義なき戦い」名脚本家笠原和夫に警察を主演とする作品をつくらせたのだ。


主演の菅原文太演じる刑事は、ヤクザとの癒着や暴力捜査もやるすご腕刑事だ。松方弘樹演じるヤクザの若衆頭と旧知の中で、互いに情報を共有していた。そこに梅宮辰夫演じるエリート警部が強力な捜査に乗り出して組織潰しに入るという筋書きだ。「ブラック・スキャンダル」をネタバレすると、FBIとアイリッシュ系ギャングの癒着に対して、連邦検察官がメスを入れるという構図に持ち込む。全体的構図は似ている。
演歌の節回しがどれもこれもにかよるのと同じで、ヤクザギャング映画も似たような感じになるんだよね。

エニグマで好演したベネディクト・カンバーバッチはここでは普通かな。適役だと思う。うまかったのがジョエル・エドガートン。「華麗なるギャツビー」ではギャツビーの恋のライバルトム・ブキャナンを演じ、最近日本でも公開になった傑作トムハーディ主演「ウォーリア」ではボクサーを演じる。徐々に腐敗に手を染めていくワルをうまく演じて、ジョニーデップの怪演を引き出したと言える。

(参考作品)
県警対組織暴力
日本版「ブラックスキャンダル」警官の腐敗を描く(参考記事


パブリック・エネミーズ
稀代の銀行強盗を演じるジョニーデップ(参考記事)
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映画「白鯨との闘い」ロンハワード&クリス・ヘムズワース

2016-01-17 19:43:05 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「白鯨との闘い」を映画館で見てきました。


ロンハワード監督の作品にはハズレがない。前作「ラッシュ」でも2人のレーサーのライバル物語をエキサイティングなレースシーンをからめながらすばらしい作品に仕上げた。今回の作品を予告編で何度も見て娯楽作品として楽しめそうなので早速映画館に向かう。
超有名なメルヴィルの文学作品「白鯨」のもとになった捕鯨船沈没事件を題材にしている。男を描かせると天下一品のジョンヒューストン監督によるグレゴリーペック主演の「白鯨」は以前見ている。「ジョーズ」のもとになったような映画だった。まさに白鯨との闘いが中心ではあるが、最終的にはサバイバルがテーマになっている。後半は軽くだれるが、迫力ある捕鯨シーンは見どころある。

1850年、アメリカの作家メルヴィルは、ニカーソンという男を訪ねた。彼は30年前エセックス号という捕鯨船に乗り組み、事故に巻き込まれた最後の生き残りだった。最初は渋っていたニカーソンだったが、やがてその重い口を開き始めて壮絶な話を語り始める。


石油が発掘される前クジラから取れる鯨油は産業革命以降の工業製品などに使われ、捕鯨は儲かる仕事であった。
1819 年、捕鯨船エセックス号はアメリカのナンタケット港を出航する。船長になれると思っていた一等航海士のオーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワース)は、経験の浅い名家の息子ジョージ・ポラード(ベンジャミン・ウォ―カー)が船長をつとめることにいらだつ。

航海途中でも2人の意見の相違が目立っていた。南大西洋を進んでいくが、鯨油が思ったほど取れていない。鯨を発見できずに、エクアドルで寄港する。そこで、ある船長から巨大な白鯨に遭遇した話を聞く。その情報を信じて鯨の群れを追って太平洋の沖合へ向かい、巨大な白いマッコウクジラと遭遇する。船員たちは喜ぶがこの白鯨はこれまでとは違う凶暴さをもつ。退治に手間取るのであるが。。。


予告編も迫力ある



1.迫力ある捕鯨シーンと大暴れする白鯨
最初に嵐に遭遇するシーンが出てくる。船長のミスジャッジで船を破損させるが、ミスを認めない。嵐で船がめちゃめちゃになるこのシーンも豪快だ。捕鯨のシーンでは、クジラを見つけると、ボートを海に落としてクジラに向けて船員が漕いで行く。そこからクジラ退治が始まるわけだ。こんな感じで捕鯨するんだなと、映像に見とれる。

最初は捕鯨に成功するシーンを映しだすが、次に出会う30mほどの白鯨との格闘シーンは大迫力だ。クジラというよりも怪獣のようだ。だって30mといえば、10階建のビルと同じ大きさだもんね。クジラは船に体当たりして、ムチャクチャにする。アレアレ?と思っているうちに底も水浸しで船は撃沈する。

これを見るだけでも元はとれるわけだ。映画館で見ないとダメな映画だなあ。

2.サバイバル(ネタバレあり)
船が撃沈し、3つのボートにわかれて漂流する。それでも白鯨がしつこくボートを追いかける。このしつこさにはあきれる。これが実話なら、よく助かったなあと思うが、食料も尽きて疲労困憊で亡くなってしまう人も出てくる。そうなると、亡くなった船員の人肉を食べて生き延びるしかないという発想がでてくる。本当にこのような状況になったら仕方ないよね。釣竿を持って魚を釣って食べたらいいのにと思ってしまうが、そうはいかないのかな?でも人肉を露骨に食べるようなシーンは見せない。もし、園子温監督だったら、「冷たい熱帯魚」のように人肉を刻んだりするシーンを見せるのかな?と映画を見ながら思っていた。

(作品情報)
白鯨との闘い
元になった原作


白鯨
ジョンヒューストン監督とグレゴリーペックのコンビ
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映画「グローリー 明日への行進」

2016-01-13 20:56:04 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「グローリー 明日への行進」は2015年日本公開のアメリカ映画


黒人の人権運動家として、歴史上の偉人になっているキング牧師が指導した「セルマの大行進」の全容が語られている。キング牧師の名前を知っていても、具体的に彼の活動はどんなことだったのかを知っている人は少ないと思う。私もその1人である。映画の内容は1965年におけるキング牧師の南部での活動に絞っている。強烈な黒人迫害の実像が浮かび上がり、気分が悪くなる。近代アメリカ史の重要な事件の全貌を垣間見れるだけでも見る価値はあった。


1965年、アメリカ。前年にノーベル平和賞を受賞したキング牧師(デヴィッド・オイェロウォ)は、差別撤廃に理解を示すジョンソン大統領(トム・ウィルキンソン)への働きかけとともに、ジョージ・ウォレス州知事(ティム・ロス)を中心に黒人の選挙人登録を妨害し続ける南部アラバマ州での抗議運動に力を入れていた。そんな中、セルマから州都モンゴメリーへと向かう黒人のデモ行進が白人の州警察らによって襲撃される「血の日曜日事件」が起きる。その様子はテレビでも報じられ、アメリカ中に衝撃をもたらした。やがてキング牧師の呼びかけに応じ、人種の壁を越えて全国から多数の人々がデモ参加のために集まってくるが…。


1.歴史背景
自分がものごころついた時のアメリカ大統領はリンドン・ジョンソンだった。テレビでみるジョンソンはやさしそうに見えたが、北爆の指令をだし、ベトナム戦争に本腰を入れた大統領として後年批判にさらされることも多い。ジョンソンはケネディ政権の副大統領だったが、1963年11月ケネディ暗殺のあと大統領に昇格する。そして黒人人種差別を撤廃させる公民権法を成立させ、1964年大統領選挙に当選する。同じ年キング牧師はノーベル平和賞を受賞している。この映画にも何度も場面が出ているが、2人の間はホットラインでつながれていた。


しかし、法律が成立した後も南部では黒人の選挙権が認められていない州もある。アラバマ州はジョージウォレス知事のもと、人種隔離廃止政策に反対する動きをとっている。この映画ではティムロスがウォレス知事を演じ、いかにもイヤな奴という嫌われ役を好演している。そこでのデモ行進に対して、警官隊が強烈な襲撃をする場面は目をそむけたくなる。


2.黒人弾圧
1967年にアカデミー作品賞を受賞した「夜の大捜査線」という映画がある。この映画を最初に見た時は黒人迫害が顕在化している南部の州が描かれていてビックリした。まさにリアルタイムで映像化されたものだ。黒人嫌いの白人警察署長とフィラデルフィアから来た敏腕黒人刑事の関係を描いたものだが、助っ人できた黒人刑事がエライ目にあうシーンが続く。
「グローリー」を見て、とっさにこの映画を思い出した。暴力的に白人を痛めつける場面がずっと続くのには驚く。さすがに今はこんな感じではないと思うが、保守的な人が多いエリアではどうなっているのであろうか?

「血の日曜日事件」が全米に報道され、多数の白人をはじめ、全米から行進に多数参加する場面には救いがあった。

グローリー/明日への行進
キング牧師の非暴力運動の実像


夜の大捜査線
黒人差別の激しい州で活躍する敏腕黒人刑事
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映画「ブリッジ・オブ・スパイ」 トムハンクス&スティーヴン・スピルバーグ

2016-01-11 05:02:13 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ブリッジオブスパイ」を映画館で見てきました。


スティーヴンスピルバーグ監督の新作は、トムハンクス主演でコーエン兄弟が脚本を担当しているという。超豪華なメンバーでつくられた作品だ。冷戦時代にアメリカで逮捕されたソ連のスパイをトムハンクス演じる弁護士が裁判で弁護するという話だ。
彼が演じるジェームズ・ドノヴァンという弁護士のことはこれまでまったく知らなかったが、すごい人だ。民主主義社会ではすべての人に公明正大に裁判を受ける権利があるということで、敵対国のスパイを弁護する。また、ソ連上空を偵察機で飛行していて爆撃を受け捕虜にされた米軍兵とアメリカで留置されているソ連スパイの交換交渉にもあたる。ものすごく行動力のある人のようだ。
スピルバーグ監督作品ならではの安定感のある映画で、無論トムハンクスも好演だが、ソ連のスパイを演じた俳優マーク・ライアンスの演技が抜群によかった。

1957年アメリカとソ連との冷戦が続いていた。お互いにスパイを忍ばせて情報収集にあたっていた。ソ連からニューヨークに来て密かに諜報活動を行っていたスパイのルドルフ・アベル(マーク・ライアンス)の身柄が確保された。民主主義国家アメリカでは弁護人をたて公明正大に裁判をやることでソ連とは違う立場をとることにした。その時保険関係の裁判を得意にしていた弁護士ジムドノヴァン(トムハンクス)に弁護の依頼が来た。いやいや引き受けたドノヴァンはアベルと面会したあとは、徹頭徹尾無罪を主張する。

陪審員からは有罪の決断がなされたが、両国における政治の駆け引きを考慮して、判事に死刑を避けるように申し出て、結果的に懲役30年の判決が出された。世論はなぜ死刑にしないのかと猛烈に反発した。しかも、ドノヴァンは最高裁に上告するということで、国賊扱いされ、自宅に銃弾が撃ち込まれる始末まであった。


アメリカ空軍はソ連の上空2万1000メートルの高さで偵察機を飛ばしていたが、ソ連軍に撃沈された偵察機のパイロットであるパワーズがソ連で捕虜にされていた。米露両国は互いに敵対していたが、アメリカの国務長官ダレスがドノヴァンを呼び出し、実際には政府の依頼ではあるが、秘密裏に民間人の立場でソ連のスパイで留置されているアベルを交換する交渉を依頼される。そしてドノヴァンは交渉のために東ベルリンへと向かう。手探りでおこなう交渉は難航するのであるが。。。

1.トムハンクス
「キャプテン・フィリップス」と「ウォルト・ディズニ―の約束」以来軽いブランクがあった。トムの弁護士役というと、エイズ裁判でアカデミー主演男優賞を受賞した「フィラデルフィア」が印象に残る。ただ、あの映画では実際にはデンゼルワシントンが弁護に立って、エイズで弱り切ったトムハンクスを助けるというやつれ役だ。ここでは堂々とソ連スパイを弁護し、米露両方に留置されている2人を交換する交渉にあたるのだ。まさに交渉人だ。正統派レジメンタルタイでスーツを着こなし、50年代の雰囲気を醸し出す。立場の違うソ連スパイであるアベルとの友情がこの映画の見どこるで、ラストに向かっていい感じだ。


2.マーク・ライアンス
いきなり自画像を描いている場面が映し出される。ふけたオヤジだ。一体誰だ?どうも彼がソ連のスパイのようだ。FBIとニューヨークの地下鉄付近で捕りもの劇を演じる。途中ボブマーレイに似ていると思ったけど、違う。履歴をみると、演劇で活躍してきた人のようだ。激情とは無縁の無表情で淡々と演じているが、実に渋い。本当のスパイって007みたいな動的でなくこんな静的な感じの人なんだろうか?各種賞レースで助演男優賞の候補になっているようだが、これはもらっても全然おかしくない。お見事というしかない。(ネタバレだが)最後の橋の場面で見せる弁護士ドノヴァンを信じる一言にはジーンときてしまった。


3.雪の降るベルリン
資料を見ると、実際にベルリンでも撮影されたようだ。雪が激しく降る中で、廃墟のような東ベルリンでのトムハンクスの交渉は難儀する。雪の降る中、貧しい東ドイツの若者にコートを奪われてしまい、寒そうに歩く場面が気の毒だ。最後の橋のシーンでは実際に交換が行われたグリーニッケ橋で撮影され、メルケル首相が見学に来ていたそうだ。東ドイツ政府がベルリンの壁をつくったのは1961年、これを越えようとして200名もの人が殺されたという。映像でも殺された場面が出てくる。


4.アメリカ史から類推すると
もともとアメリカのダレス国務長官はソ連に対して強硬な姿勢をとっていた。ところが、1956年ソ連のフルシチョフ首相が劇的なスターリン批判をおこなった以降は雪どけ政策に転換する。ソ連のスパイが死刑にならなかったのにはこういった背景もあったのであろう。でも結局ダレスは1959年4月に国務長官をやめ、翌月がんで亡くなっている。この映画では主人公ドノヴァン弁護士ダレス長官が会い、交渉を依頼されている。当然亡くなった1959年より前に会っていることなので、ベルリンでの交渉より3年ほど前ということになる。映画ではすぐさま交渉しているようにみえるが、この間、1960年5月1日のU-2撃墜事件が起きパイロットがつかまり、ベルリンの壁が1961年にでき、経済学を勉強する1人の学生がつかまるという映画の構図である。実際には米ソで交換を成立させたのは1962年民主党のケネディ政権になってからなのだ。

50年代のアメリカの映像も白黒テレビの映像も交えながらいい感じだ。いつもながら思うけど、アメリカ映画では50年代の自動車がいつもふんだんに出てくる。一体どんな所に保管されているんだろうと思ってしまう。トムハンクスの妻役のエイミーライアンがいかにも50年代の雰囲気を醸し出していて、子供の使い方では天下一品のスピルバーグらしく3人の子供たちも映画に良い味付けをしている。

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映画「完全なるチェックメイト」 トビー・マグワイア

2016-01-06 20:21:19 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「完全なるチェックメイト」を映画館で見てきました。


映画「ボビーフィッシャーを探して」というチェス好きの少年の成長物語がある。そこでチェスの名人ボビーフィッシャーという名前は知ったが、どういう人物だったのかは知らない。今回スパイダーマンのトビー・マグワイアボビーフィッシャーを演じるというのも見に行きたいと思った理由だ。超人的な能力を得てもどこかナイーブな姿を見せていたスパイダーマンでのトビ―の演技が好きで、勝負の駆け引きをどう演じるのかが気になっていた。

ここではブルックリンで育ったボビーフィッシャーの子供のころからの成長物語と最強チェス王者ソ連のボリス・スパスキーとの世界王者をめぐって対戦する試合の様子を描く。50年代から70年代の世相を選曲のいい音楽を合わせながら的確に映し出しているのに好感が持てる。頭の使いすぎなのか精神が不安定になっているボビーフィッシャーの奇怪な行動をトビ―・マグワイアが表情豊かに演じている。
ただ、2人の対戦が終わった後、あっけなく映画が終了してしまう。あれ??これで終わりなの。と思ってしまうのは何か物足りなかったのかもしれない。

ブルックリンに生まれたボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)は幼い頃からチェスの才能を発揮し、1958年に史上最年少の15歳でグランドマスターとなる。弁護士ポール・マーシャル(マイケル・スタールバーグ)を代理人にし、チェスの名手ビル・ロンバーディ神父(ピーター・サースガード)をセコンドに付けたボビーは快進撃を展開する。


だが、IQ187の天才はチェスにのめり込むあまり精神のバランスを崩し、奇妙な言動が増えていく。1972年、ボビーはいよいよソ連のボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)への挑戦権を手に入れてアイスランドのレイキャビクで対決する。当時は冷戦時代、この勝負には米露両国の威信がかかっていたのだ。


小学校の時、チェスの盤を買ってもらって友人と遊んだことがある。でも全くうまくならなかった。将棋とちがうのは得た駒を打つことができないことだが、駒の進み方は将棋と似ている。電脳チェスがチェスのチャンピォンを破った記事が気になってもう一度トライしようとしたが、歳を重ねた後では難しかった。

ボビーフィッシャーも幼くしてチェスが好きになり、腕自慢の大人をまかすほど強くなる。日本の将棋名人たちは神童と周りに認められると、小学生時代から奨励会に入ってプロの道を歩んでいく。大学からスタートして奨励会育ちの神童たちに追いつくことなんかそうはできない。チェスも将棋も同じようなものだろう。我々には到達できないエリアだ。

1.トビー・マグワイアとリーヴ・シュレイバー(少しネタバレあり)
トビー・マグワイアも以前ほど主演作が多くはない。この映画でも製作に携わっているが、むしろプロデューサー業に関心を持っているのかもしれない。最近作「華麗なるギャツビー」のニックキャラウェイ役は適役だったし、ボビーフィッシャーの奇行も表情豊かなトビ―ならではの絶妙な演技でこなす。


でも、この映画でうまくいったのはライバルであるボリス・スパスキー役のリーヴ・シュレイバーのキャスティングであろう。比較的冷静沈着なのに、自分の立場が悪くなってきて見せるパフォーマンスがおもしろい。それにしてもあの場面での拍手って実際でもやったのかな?中盤というよりも序盤から新手の連発だったようで、とてつもない「常識外の新手筋」だったのであろう。勝負はあくまで2人なので受ける方の演技がうまくいかないとダメなだけによかった。

2.冷戦時代
いつのまにか冷戦時代の米露両雄ニクソンとブレジネフの代理対決になっている。キッシンジャーからボビーフィッシャーに直接電話が入ったり、スパスキーが優勢になったことでブレジネフが機嫌がよくなって19世紀の貴重な酒に手をつけたりする言葉が妙におもしろい。

3.60年代から70年代にかけてのバックミュージック
味のある曲が流れていて、いずれも映像にぴったり来ていた。
その中の3曲をピックアップ、どれもこれも好きだ。

まずはベンチャーズ「ウォークドントラン(急がば廻れ)」
日本でもいまだにファンが多いよね。全米ヒットチャート2位
全盛時代の映像です↓リードギターのノ―キーエドワーズも若い



CCRの「トラベリンバンド」
CCRは全米ヒットチャートでこの曲も2位だ。CCRは2位が多いんだよね。。
これもその曲の一つで、リトルリチャードばりのオーソドックスなロックンロール



ドゥービ―ブラザース「リッスントゥザミュージック」
このバンドだとすぐサーファーロックの「チャイナグローブ」か「ロングトレインラ二ング」だけど、これもいい感じだよ。



(参考作品)

完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯
文章でボビーフィッシャーの生涯を追うノンフィクション


ボビー・フィッシャーを探して
ボビーフィッシャーに憧れるチェス好きの少年の成長物語


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