映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「クリーピー 偽りの殺人」 西島秀俊&香川照之

2017-02-05 18:42:59 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「クリーピー 偽りの殺人」は2016年公開の黒沢清監督作品


予告編から不気味な映画であった。いやらしい役を演じると天下一品の香川照之の表情が狂気に迫り、いったいどうなるんだろうと思わせたが、怖そうなのでDVDスルーになってしまった。映画は黒澤清監督らしい展開で、徐々に恐怖感を強める。出来は悪くないと思うし、あれ?これってどうなるの?と思わせる場面も多い。

ある事件をきっかけに刑事を辞め、犯罪心理学者として大学講師になった高倉(西島秀俊)は妻の康子(竹内結子)と共に新しい町へ越してきた。 康子が隣の家へあいさつ行くと、その家の主人西野(香川照之)が顔を出したが、不気味な感じだった。


高倉は犯罪の研究で6年前に起きた一家失踪事件に関心を持ち、事件現場へと足を運んだが、異様な雰囲気を感じた。そんな時、高倉が例の事件現場へ出向いていたことを知り、かつての相棒 野上(東出昌大)が訪れる。二人でその現場へ向かうと、そこには現場の近くに事件の唯一の生存者、当時中学生だった娘の早紀(川口春奈)が立っていた。

高倉が生存者の早紀に接触をもち、話を聞くと、事件が起こる前に外から部屋の窓を見上げる男がいたらしい。再度気になり、野上が失踪事件の現場の隣家に入り込むと五人の遺体を発見する。その内三体は失踪した家族のもので、二体はその家の夫婦のものであろうと。あやしいと思ったその隣の家の人間は死んでいたのだ。


ある日高倉が家に帰るとそこには西野と彼の娘澪の姿があった。二人は康子に料理を教えてもらうために来ているのだという。他にも異常性を感じることがいくつかあったが、娘との関係も不自然で気になり、高倉は野上に西野の素性を調べるように依頼した。西野に関する情報を調べた野上は自ら西野の家を訪れた。野上は自分の持っている資料にある西野の免許証に写っている男ではないことに気づく。そのまま玄関から家の奥に戻っていった西野を追うように野上が部屋に入っていったが。。。。

1.宮台真司の評価
社会学者で首都大学東京教授の宮台真司はこの作品を「CURE」以降20年間の進化がみごとに封印されている。として評価している。そしてこう続ける「違和感」を抱かせる切れ切れの映像断片を用いて、違和感の淵源である全体を観客に想像させる。(宮台真司 正義から享楽へより引用)映画全般に怖いムードを立ち込めらせるのは、ヒッチコックと同じような手法であるその違和感を言語化すれば「存在してはならないものが存在する」という感覚である。次から次へと存在してはならないものが出てくるところが怖い。


2.中盤から終盤にかけて(ネタバレあり)
断片的な怖い場面が続き、積み重ねでこの映画が怖いものとなっている。中盤から竹内結子の動きがおかしい。香川照之と妙なやりとりをしている。しかも、手には注射針がうたれている跡がある。あの男にやられているのか!そういう中、西島秀俊が隣の家に突入する。そして香川照之ともみ合っているときに竹内結子が突如夫に注射器をうちつける。ものすごく怖いシーンである。え!西島までやられちゃうの?だったらあの男誰が始末するの?映画がどう決着するのか?ドキドキさせる予兆のシーンだ。こういうあたりの展開はうまい。


3.これって変?!と思ったシーン
引っ越した先の隣の家に変な人がいることがわかる。この人いやだと言いながら、竹内結子演じる妻はシチューが残っているのでと、その隣の家を訪問する。おいおい、こんなことするかね?しかも、食べ残りのシチューなんて食べたいと思う??病人がいるとわかっているということでなければ、食べ残りをもっていくこと自体失礼だよね。これって絶対変!

主人公の助手が一人で隣の家に入っていく。そして姿を消す。なんで一人なんだろう。街を走っているパトカーを見ると、必ず2人乗っている。何かあったらということで、コンビを組ませる訳である。しかも、同じようにベテラン警部が1人で隣の家に入っていく。そうしないとストーリーが進まないわけど、こんなことって現実にはないでしょう。

香川照之の家のなかは要塞のようだ。最初から設計しないと、普通の家ってなかなかこうは改造できないはずである。これだけ改造するなら金もかかる。自分じゃできないでしょう。しかも、この男は目を付けた家にかわるがわる侵入していくようだ。その都度こんな改造しているの?これもちょっと変

クリーピー 偽りの隣人
不気味な隣人


正義から享楽へ-映画は近代の幻を暴く-
宮台真司久々の映画評論はなかなかいける
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映画「モヒカン故郷へ帰る」 松田翔太&前田敦子

2017-01-03 03:33:34 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「モヒカン故郷へ帰る」は2016年の松田龍平、前田敦子主演作品

これはなかなかいける。
予告編は何度かみて、うーんちょっとという感じだったが、主人公の名前が永吉。父親が矢沢永吉好きで息子に永吉と名前をつけたという設定だとわかり見てみたくなった。これから結婚をしようと広島の離島に帰郷したロッカーの息子が、父親がガンにかかっていたとわかりしばし離島にとどまりドタバタするコメディドラマである。


モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン永吉(松田龍平)。妊娠した恋人・由佳(前田敦子)を連れて、故郷・戸鼻島へ結婚報告をするため7年ぶりに帰る。

永吉たちを待ち構えていたのは、矢沢永吉をこよなく愛す頑固おやじ・治(柄本明)と筋金入りのカープ狂の母・春子(もたいまさこ)、そしてたまたま帰省していた弟・浩二(千葉雄大)の3人。家族がそろったかと思えば、のらりくらりの永吉に治が怒り心頭!

いつもの一家総出でド派手な親子喧嘩が始まる。なんだかんだありつつも、二人の結婚を祝う大宴会が開かれたその夜、永吉は治が倒れているのを発見。病院で受けた検査結果はガンだった――。
(作品情報より)

東京でパンクロックバンドに所属している主人公が故郷に帰ってくる。広島の離島でいかにも時間がゆったり流れているようなところだ。でも人情は厚い。酒屋の息子が婚約者を連れてきたというだけで、酒盛りだ。こんな雰囲気好きだ。


でも永吉のオヤジは末期の肺がんで、あちらこちら転移している。永吉と恋人はそのまま残って看病を手伝うことになる。その後の逸話もハートフルな部分もあっていい感じだ。

1.印象に残ったシーン1
矢沢永吉が大好きな柄本明扮するオヤジは、地元中学校の吹奏楽部でコーチをしている。課題曲はなんと「アイ・ラブ・ユーOK」「広島県民にとってヤザワの歌は義務教育だ」なんて部員に向かって言ういうオヤジだ。これを演奏する中学生たちはいかにもという田舎の中学生の顔をしている。これがまたいい。さすがに吹奏楽で聞くのは自分も初めてだ。中学生がやるには渋すぎると部員たちもぐちるが、映画の中では3度もこの曲をやる。この反復が矢沢好きというキャラを浮き上がらせる。


入院していた病院の屋上から、すぐ目の前にある中学校の屋上にいる楽団の生徒たちに向かって指揮するシーンなんて実に滑稽でおかしい。

2.印象に残ったシーン2
オヤジと息子との関係って年をとると気恥ずかしくなるのか余計な話はしない。息子と恋人が来て、オヤジ夫婦の前で恋人の懐妊を報告する。驚く2人だ。それにしてはだらしないと、オヤジは息子に手を出す。家の中は大騒ぎだ。ところが、急に電話の受話器に向かい息子が帰ってきたと近所に電話しまくり酒盛りだ。このコントラストがコメディらしくていい。この映画は海辺の町の地元民が大勢出演していて、宴会の席のシーンでも素人とわかる近隣住民が大騒ぎである。これっていいなあ。


3.印象に残ったシーン3
このオヤジの自慢は1977年の矢沢永吉武道館初コンサートで、矢沢永吉と目があったということだ。それ以来熱狂的矢沢ファンで酒屋の店の中も昔からのヤザワのポスターと広島カープのポスターが壁中いっぱい貼ってある。そんなオヤジもがんで弱ってきたとき、唯一の願いは何か?と息子とに聞かれ、メモ紙に「エーチャンにあいたい」と書く。ここで本物が出てきたら面白いなあと自分はふと思ったが、結局弱ったオヤジが寝ている時に白い上下のエーチャンスーツを着て、息子の永吉が現れる。


意識もうろうのオヤジは再度「1977年の武道館コンサートで俺と目があったのをおぼえているね」という。うなずく息子の永吉にオヤジは絶叫。このシーンいいなあ。
先日137回目の矢沢永吉武道館コンサートに行ってきた自分からすると、この映画実にいいかんじであった。


あとよかったのは前田敦子、「イニシエーションラブ」では弟の松田翔平と共演だったけど、彼女うまくなってきたよね。初めての妊婦役も無事こなし一作ごとに成長しているのがよくわかる。劇中CARPのTシャツきていたなあ。今回の広島カープの優勝も喜んでいるだろう。

モヒカン故郷に帰る
広島での離島でのハートフルコメディ
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映画「君の名は」

2016-10-06 18:54:27 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「君の名は」を映画館で見てきました。


とんでもない人気の「君の名は」はDVDスル―のつもりだったが、「前前前生」の勢い良い音楽の響きを至るところで聞き、つい行ってしまう。アニメ映像の風景映像の作り方はなかなか精巧で、CMと言っていいくらいメーカーの実名をだしているのが印象的だ。

もともとファンタジーは得意な方でないので、話のつじつまがなかなか頭の中であわない。理解度が弱く、途中から微妙な違和感を感じながらラストに進んでいく。それにしても「RADWIMPS」の音楽が抜群にいい。2人がお互いの入れ替わりに気づく瞬間に「前前前生」が流れた時は背筋がぞくっとした。


千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に小学生の妹と祖母の3人で暮らす女子高校生・宮水三葉(声:上白石萌音)は、憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動や家系の神社の古き風習などに嫌気が差し、友人たちと小さく狭い町を嘆き、東京の華やかな生活に憧れを抱いていた。周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れは日々強くなっていく。


そんなある日、三葉は自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。三葉は、戸惑いながらも念願だった都会での生活を思いっきり満喫するのだった……。

一方、東京で暮らす男子高校生、立花瀧(声:神木隆之介)は、日々、友人たちと楽しく過ごしイタリアンレストランでバイト中。同僚の奥寺先輩へひそかに好意を寄せている。


ある夜、瀧は奇妙な夢を見る。行ったこともない山奥の町で自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている記憶と時間……。

出会うはずのない瀧と三葉は、やがてお互いの存在を知る。入れ替わってしまった身体と生活に戸惑いながらも、その現実を少しずつ受け止める二人。運命の歯車がいま動き出す……。(作品情報より)


ファンタジー作品だけに、当然のことながらありえないことの繰り返しだ。それは仕方ない。ただ、1つ気になることがある。瀧くんが奥平先輩と自分が見てスケッチにした風景を探しに行くシーンだ。行く前から飛騨だとわかって向かうけど、類似した風景がない。誰に聞いてもわからない。あきらめかけて、ラーメン屋に入ると、スケッチを見た店主がこれは自分の故郷だという。それは彗星の襲来で破壊されてしまったと。。。


でも仮に彗星が襲来して町が破壊されたなんてことになったら、日本をゆり動かすとんでもない大騒ぎになっているんじゃないだろうか?当然現地の風景はTVで再三放映されるような気がするんだし、どんなノンポリでもその事実はわかっているでしょう。しかも、そこで大勢の人たちが死んだという事実を知るわけだ。それ自体がつじつまが合わない気がするんだけど。まあどうでもいいことだ。
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映画「SCOOP」 福山雅治&二階堂ふみ&大根仁

2016-10-02 20:05:04 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「SCOOP」を映画館で見てきました。


「モテキ」「パクマン」の大根仁監督の新作で主演は福山雅治と二階堂ふみだ。両作品とも大好きな自分としてはすぐさま見に行くしかない。映画館にいくと、大根仁監督と福山雅治の舞台あいさつが放映されていた。福山雅治が演じるのは、パパラッチのような有名人の私生活に忍び込むフリーカメラマンである。二階堂ふみは雑誌社の新人記者で福山演じるカメラマンの助手として修行に出るといった役柄だ。

序盤戦からテンポよく、2人がタレントや政治家の私生活にむりやり忍び込む姿を映しだす。なかなか面白い。人気ラジオ番組「福山雅治のSUZUKI Talking F.M.」のようなトークで福山は最初から卑猥な言葉を連発する。それにからむのが編集長吉田羊と助手になる二階堂ふみだ。二人とも好演だが、何より凄いのがリリーフランキーだ。この怪演が映画のレベルをあげる楽しく見れた映画であった。


写真週刊誌「SCOOP!」に所属し、数々のスクープ写真を撮ってきたカメラマンの都城静(福山雅治)。しかし、今では借金に追われつつ、フリーランスのパパラッチとして生活していた。そんな中、副編集長(吉田羊)から「SCOOP!」に配属されてきた新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とタッグを組むことを依頼される。情報屋のチャラ源(リリー・フランキー)からのネタと場数を踏んできて培ったベテランならではの勘を武器に次々とスクープをものにする静たちである。やがて大きな事件に関わることになるが。。。(作品情報引用)



無精ひげにラフな格好の福山雅治の姿は珍しい。昔コンビを組んでいた吉田羊扮するスクープ雑誌の副編集長に新人記者二階堂ふみ の面倒を見てくれと言われ、いやいや引き受ける。

夜中に車の中でスクープの瞬間を2人で待つ。何でこんなに遅くまでという感じだが、待っていると知っている人気アイドル男性が現れ、芸能人御用達のバーに入って行く。するとあとからモデルと思しき女の子が入ってくる。よし!出番とばかり、2人はカップルを装い店に入る。しばらくすると、盛り上がった男女は奥のカーテン越しの部屋でチュッチュしているではないか。福山雅治はお前の仕事だと二階堂ふみに言い、おれは車を横につけるからと外へ出る。
携帯のシャメでキスをしている2人の姿を撮った二階堂はあわてて逃げる。店の入り口は機転を利かせた福山がドアがあかないようにして、二人は福山の車で逃げる。最初のスクープだ。

そんなサクセスストーリーが続き、二階堂ふみ扮する新人記者も盗撮が楽しくなってくるのだ。

1.福山雅治と大根仁監督の舞台挨拶
大根仁監督ってどう思うか?という質問が福山雅治に投げかける。
自分は脚本を兼ねている映画監督の方がやりやすいと言う。映画の現場にいると、撮影現場でしかわからないような場面に出くわす。そういったときに、脚本を兼ねている監督の方が臨機応変に対応してくれるからやりやすいとして、大根監督への信頼感を示していた。なるほど

2.政治家の浮気をパパラッチ
日本テレビのジップで映画紹介をしている斎藤工が将来の総理候補の有力政治家を演じる。情報によれば、女子アナといい関係になっているらしい。政治家はSPに囲まれてホテルに入る。でもこのホテルで密会という情報を得ている。変装してホテルに入る女子アナと2人きりになるようだ。


二階堂ふみと福山雅治は2人が部屋にいるのを確認すると、ホテルの正面のビルの屋上へ行く。そこでシャッターチャンスを待つが、部屋はカーテンが閉まったままだ。どうするのか?と思っていると、なんとビルの屋上で花火を打ち上げる。何だということで、カーテンを開けた政治家と女子アナをパパラッチするという構図。この後逃げる2人をSPが追いかけるカーチェイスが繰り広げられるが、このシーンなかなか面白い

3.二階堂ふみ
園子温の映画「ヒミズ」で彼女に関心を持ち、ずっと追いかけている。「脳男」「私の男」での彼女は抜群の演技力を示す。「ほとりの朔子」も好きだ。母校の後輩にもなり、ファン度は上がったが、全部がいいとも思ってはいない。前作「ふきげんな過去」はわざとらしいセリフが今イチだし、「この国の空」もあまり合わない。


でもこの映画の二階堂ふみ はいい。なんかちょっとドジな雰囲気をもつコミカルな役をやった方がうまくいく。ヌードシーンはなかなか拝めないが、下着姿で福山雅治の愛撫をうける。このくらいが精いっぱいかな。

4.吉田羊
ある意味CMクイーンで40代にしてここまで脚光を浴びるのも珍しい。ここ最近の露出度は高い。敏腕雑誌編集者という役柄がものすごく似合っている。福山雅治演じるカメラマンと昔コンビを組んでいたという設定で、2人の間に元々関係があったような匂いをぷんぷんさせる。福山雅治とのキスシーンが用意されているが、世の福山ファンの嫉妬を一気に浴びるであろう。福山雅治とのベットシーンはないけれど、キスシーンだけで2人の濃厚なエッチを想像させてしまう吉田羊の色気を感じる。なかなかいい女だ。


5.リリーフランキー
「凶悪」の時にも感じたが、こういう得体のしれない役柄をやらせると抜群にうまい。情報屋なんだけど、昔からの貸し借りがあって福山雅治演じるカメラマンと友情を越えた関係にある。ここでは腕っぷしも滅法強いという設定だ。意外性があってドキッとする。ネタバレなのでこの程度にしておくが、ここではとんでもない動きを途中からする。その狂気に迫る表情が実にうまい。今年見た映画の中でも最大級の怪演で、助演男優賞ものだと思う。


福山雅治の汚れ役というもっぱらの評判だが、「福山雅治のSUZUKI Talking F.M.」でのトークを知っている自分としては、地でいっているんじゃないかな?という印象をもつ。二階堂ふみと吉田羊福山雅治とのキスシーンで大満足だったろう。大根仁監督作品にはハズレはないな。
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映画「怒り」 綾野剛&松山ケンイチ&森山未來

2016-09-22 05:49:52 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「怒り」を映画館で見てきました。

「悪人」に続く吉田修一原作、李相日監督の作品、「悪人」が好きだっただけにチェックしていた。出演者は現代日本映画界で主演を張っている面々ばかりで超豪華である。


八王子のある住宅で夫婦の惨殺死体が見つかる。1人の男が指名手配される。やがて、千葉、東京、沖縄のそれぞれに素性のよくわからない3人が現れる。それぞれ指名手配犯に通じるところがある。一体誰が犯人なのかを映像で追っていく。この3人を演じるのが松山ケンイチ、綾野剛、森山未來の3人である。オムニバス系の映画はそれぞれが独立していてもあるとき急接近する場面がある。ここではまったく平行線で語られていく。設定自体になんじゃこれ??と思うことも多々あるが、坂本龍一の音楽もよく全体的な映画のレベルとしては高い。

八王子の閑静な住宅地で、惨たらしく殺された夫婦の遺体が見つかる。室内には、被害者の血で書かれたと思われる『怒』の文字が残されていた。犯人逮捕に結びつく有力な情報が得られないまま、事件から1年が経ってしまう。

千葉の漁港で働く洋平(渡辺謙)は、家出していた娘・愛子(宮崎あおい)を新宿歌舞伎町から連れて帰ってくる。帰郷した愛子は漁港で働き始めた田代という男(松山ケンイチ)と親密になり、父洋平に彼と一緒に住みたいと告げる。


二人のアパートを決めようとするとき、田代が前住所を偽っていることが判明する。さらに田代という名すら偽名だとわかり、洋平が愛子を問いただすと、彼は両親が残した借金でヤクザから追われているとわかる。そんな中、テレビで整形して逃亡を続ける八王子殺人事件の犯人の似顔絵が公開される。父娘は犯人の特徴に類似点があることに気づくのであるが。。。

優馬(妻夫木聡)は普通のサラリーマンに見えるが実はゲイ。ゲイの男たちのたまり場で直人(綾野剛)と親密になり、住所不定の彼を家に招き入れる。直人は末期ガンを患う優馬の母・貴子(原日出子)とも親しくなっていく。彼には犯人の特徴である3つのほくろがほほにあった。しかし、見知らぬ女性と一緒にいることを直人が隠していたことを問い詰めると関係がおかしくなる。そんなとき優馬のもとに警察から電話がかかってくるのであるが。。。


母と沖縄に引っ越してきた泉(広瀬すず)は、同い年の辰哉(佐久本宝)と離島を散策中、廃墟のような住居で一人暮らす田中(森山未來)と出会う。田中はここに住んでいるのは誰に言うなと伝える。ある日、辰哉と訪れた那覇で田中にばったり会い3人で酒を飲みに行く。飲み終わったあとはぐれてしまう泉がとんでもない事件に遭遇するのであるが。。。


最初淡々とそれぞれのストーリーが語られていて、いったいどういうことなんだろうと思うが、途中でそれぞれの話の中に登場する3人の中に真犯人がいるということが想像される。でも、よくわからない。綾野剛の3つのほくろが強調され、犯人が犯行に及ぶ時の映像は綾野が演じているように思える。整形後のエレベーターの犯人映像は松山ケンイチに似ているし、犯人の特徴と松山のしぐさが一致する。でも整形後の顔は森山未來が一番似ている。そう考えていくと、最後まで見ないとわからないな?と思ってしまう。

(以下は軽いネタバレあり)

印象に残るシーン1
妻夫木聡がゲイが集まるディスコではしゃいでいる。そして赤黒暗い照明のゲイがたむろう場所で1人の裸の綾野剛を見つけ、強引にバックから挿入し自分のものにしようとする。なかなか刺激的なシーンだ。映画「ブエノスアイレス」で香港の大スタートニーレオンとレスリーチャンの男色からみのエロさが印象的だが、この映画でも妻夫木は何度も綾野とキスをする。ゲイのたまり場での映像がなかなか刺激的だ。これはセットなのか?それにしても最後に妻夫木聡が思いあまって泣き出す。このあたりの心情もよくわからない。


印象に残るシーン2
宮崎あおいが泣くシーンが気になっていた。今回は家出して歌舞伎町の風俗嬢として働いていたところを父親への通報があり、連れ戻すという設定だ。宮崎あおい にしては珍しい設定で、普段演じる役よりちょっと知能が弱い役柄を演じる。これはこれでうまい。テレビに映る殺人犯の映像をみて、全然似ていないよねと言っていた彼女がなぜか警察に通報してしまう。そして家の中の指紋をとった結果を警察が持ってきた瞬間彼女は泣き崩れる。この涙はかなり情感がこもる。


あれと思ったところ?
沖縄に来た広瀬すず が離島で風来坊のような森山未來を見つけて、近づいていく。ただでさえも人のいないところで、乞食のようなかっこをしている男に怖くて親しく近づくかしら??

那覇で広瀬すず演じる泉が3人で飲んだ時、酔っていた同じ年の辰哉とはぐれてしまう。これって変じゃない?何ではぐれるのかしら?しかも、ちょっと気がつくと、米軍兵がたむろってオープンエアで飲んでいる場所にたどり着く。怖がりながら、公園を歩いていてレイプされる。おいおいいくらなんでも町のど真ん中で米軍兵がここまでやるかい?これは米軍兵への侮辱だよ!やばいんじゃない。しかも、その姿を遠くから辰哉が見ていたなんて話も滑稽
このあたりはかなり変!!

宮崎あおいも広瀬すずも好きな女優だけど、彼女たちが泣いてもこっちはちっとも泣けない。妻夫木の涙も変?まあ泣けない映画であった。
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映画「64 後編」 佐藤浩市

2016-06-12 20:38:42 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「64 後編」を映画館で見てきました。


横山秀夫のベストセラーミステリーの映画化である。わずか7日しかなかった昭和64年1月におきた未解決幼児誘拐殺人事件の時効があと1年に迫る中で、同じような誘拐事件が14年たって発生する。当初から刑事として捜査に加わっていた現在広報官になっている佐藤浩市と幼児を誘拐され悲痛に暮れていた永島正敏を中心に事件の推移を語っていく。

捜査当局と警察に入っている記者クラブとの関係、県警本部での地位を守ろうとする幹部と本庁幹部との関係それぞれにおきた葛藤を語りながら、事件を紐解いていく。佐藤浩市、三浦友和、夏川結衣のベテランに綾野剛、瑛太といった若手がうまく交わり合った豪華配役陣がうまくこなすのに加えて、久々登場の緒方直人がいい感じの演技を見せる。


昭和最後の年、昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件は刑事部で“ロクヨン”と呼ばれ、被害者が死亡し未解決のままという県警最大の汚点となっている。その事件から14年が過ぎ、時効が近づいていた平成14年、“ロクヨン” の捜査にもあたった敏腕刑事・三上義信(佐藤浩市)は、警務部広報室に広報官として異動する。記者クラブとの確執、キャリア上司との闘い、刑事部と警務部の対立のさなか、ロクヨンをなぞるような新たな誘拐事件が発生する。そして三上の一人娘の行方は……。
(作品情報より)

1.群馬のロケ
横山秀夫上毛新聞の記者をやっていたせいか、舞台が群馬となる。原作では架空の町となっていたが、地理的にもこのエリアを連想して書かれているので当然そのロケが中心である。


是枝監督の「そして父になる」でも群馬が舞台になったが、河川が流れる周りに発展するいかにも典型的な北関東地方都市風情の町は映画にはしやすい。古典的昭和チックな喫茶店もまだまだ残っているのもいい。

2.未解決事件
もともとの未解決事件があって、時効間際に同じような事件が起きるというパターンは割とある気がする。クライムサスペンスが得意な韓国映画にも「悪魔は誰だ」といういい作品がある。もちろん途中からの展開は異なるが、正直真犯人もこのひっかかりは間抜けじゃないかと思ってしまう。


群馬は人口20万前後の都市がいくつもある場所で、こういう狭い社会だったらきっちり調べれば犯人は特定するのが容易のような気もするんだけど、この映画のモデルにあった未解決事件やすぐ隣の両毛地区での「足利事件」など割と凶悪な事件が未解決になってしまうのはいかがなものかと感じる。

3.豪華な配役陣
やはりこの映画の主役は佐藤浩市がベストだろう。安定感が抜群である。三浦友和もヤクザ映画などへの出演をへて、ちょいと悪い奴の演技がうまくなってきた。永島正敏が犯人を見つけるために執念をしめした行動が凄いが、その時に見せる表情が狂気に迫る。好演である。

今回久々に見たのが緒方直人だ。


彼の近年の出演作を見ると、ほとんど見ていない。平成の初めの頃の大人気ぶりを思うと、何でこんなに影をひそめてしまったのかと思う。緒方直人の顔を見てすぐわかったが、しばらく出くわしていないので違う人と勘違いしたのかと思ってしまう。エンディングクレジットでは綾野剛よりも下になっている。オヤジのような凶暴なイメージはない。でも一見まじめ風で何をするかわからないなんて役は適しているかもしれない。今回の大活躍で少しは株をあげたのではないだろうか?

映画としてはまあまあといった感じかな
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映画「海よりもまだ深く」 阿部寛&樹木希林

2016-06-12 06:46:27 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「海よりもまだ深く」を映画館で見てきました。


阿部寛主演、是枝裕和監督の新作が気になっていたが、ようやく見れた。元妻に未練たらたらのできの悪い作家くずれの物語で、大きな衝撃的な出来事があるわけではない。ギャンブル好きで夫婦関係をたたざるを得なかった阿部のダメ男ぶりが絶妙で、その母親である樹木希林がかなりアドリブが入っているんじゃないかと思わせるセリフを語っていく。いずれもうまい。さりげないセリフに味わいがある。

15年前に文学賞を一度獲った売れない作家の長男・良多(阿部寛)は、今は探偵事務所に勤めている。団地で気楽な独り暮らしをしている母・淑子(樹木希林)の家に行き、収納をほじくり出し金目の物を探して質屋に持ち込んで金策をしのいでいる。元嫁・響子(真木よう子)はギャンブル好きでふらふらしている良多に愛想を尽かして離婚した。良多は11歳の息子・真悟(吉澤太陽)の養育費も満足に払えないくせに元妻に未練たらたらだ。それでも響子を張り込みし、彼女に新しい恋人ができたことを知ってショックを受ける。


ある日曜日、良多と真悟が定期的に会うことになっている日だった。相変わらず、養育費が支払えない良多だったが、子供のために野球のスパイクをかったあと、むりやり母・淑子の家に連れて行った。響子が迎えに来たが、台風が強くなり、暴風雨で帰れない状態になった。団地の中で4人は一つ屋根の下で一晩過ごすことになる。


「歩いても歩いても」は同じ阿部寛と樹木希林のコンビで、無職になった主人公阿部がある夏に帰郷したときの日常を描いた非常に味わいのある映画であった。流れるムードはその映画と似ている。とてつもない事件が起きるわけではない。離婚した妻が偶然夫の実家に泊ってしまうということは、そうはある話ではないけど完全に日常を逸脱しているわけでない。

そんな状況の中での阿部寛と樹木希林の動きを楽しむ映画なんだろう。是枝監督が28歳まで過ごしたという清瀬の団地での映像がほとんどで、狭い団地の部屋で大柄な阿部寛が窮屈そうに演じているのがいい。

1.阿部寛
今回の阿部寛はダメ男である。ある文学賞を受賞したけど、その後泣かず飛ばずで気がついたら探偵業をしている。おそらくはギャンブル好きで、働いた給与も全然家庭に入れなかったのであろう。愛想を尽かさせて妻と息子は家を出ていってしまう。でもその妻に未練たらたらだ。
探偵業といっても、依頼人から妻の素行調査を引き受けて、浮気の現場をおさえた後にその写真を妻に持参し金をゆするなんて悪いやつだ。高校生に対しても同じようなゆすりをしている。真面目な人ならその不良ぶりに見て気分悪くする人もいるだろう。でも何か単なる悪とちがうムードがあるんだよなあ。


ゆすったお金を競輪場にいって、もっと増やしてやるとばかりに賭けてしまい外れて競輪選手に罵声を浴びせたり、妻が今付き合っている男を探偵業の業で見つけ出し、こっそり追っていくシーンなどあーあと思ってしまう。台風できっと帰れなくなるだろうと予測しながら息子を実家に連れていくなんて気持ちはわからなくもない。でも何やっても夫婦関係の修復は駄目なものは駄目である。どうやっても逆転しない。最後までそんなシーンが続き、ダメ男に徹しているのもいい感じだ。


2.樹木希林
夫に死に別れて、独立をした息子と娘が残った。めったに帰ってこない息子が金がないので、金目のものがないかと実家の押し入れの中を物色している。それを見て母はあんた金がないんでしょうというが、そうでないと言い張る阿部寛だ。調子に乗って母親に一万円札を小遣いとしてあげてしまう。でもそのお金は阿部寛が姉の小林聡美からせびったものだ。嬉しくなった母が姉に電話をしてばれてしまう。姉に呆れられる阿部寛。そんな逸話が続いていく。


元夫の実家に連れられて行った息子を迎えに行き、本当はすぐさま帰ろうとしたのに風雨がキツイ。絶対イヤなのに元姑は盛んに泊まっていけとうるさい。そもそも離婚していないとしても、こういう時、女が夫の実家に泊まりたがらないのは自分も経験あるのでよくわかる。でもタクシーもすぐさま来そうもないので、元嫁はついに泊まることを決断する。そこで樹木希林が大喜びだ。その後のパフォーマンスが妙に現実味がある。 同じような場面を経験したことがあるので、亡くなった母を思い出し樹木希林の動きが健気な気がした。

もう一度戻ってほしい気持ちが強い姑が戻れないかと元妻に懇願するシーンもどこかつれない。元嫁に帰ってほしい夫の母の気持ちがにじみ出ている。元妻には何の悪いところがないけれど、元夫だけでなく姑にまで言われるのはつらいなあ。

ここでも樹木希林の演技は神がかりの粋に達しているような気がする。コメディタッチが強い渥美清の演技がアドリブのセリフを織り交ぜて、境地に達したのと同じ類いだ。

そしてテレサテンの歌がしみじみとラジオ放送の中流れる。なんと情念のこもった歌なんだろう。香港のマギーチャン主演「ラブソング」の時に感じた同じような衝動を感じながら静かなラストを体感した。

(参考作品)
歩いても歩いても
是枝監督&阿部寛&樹木希林の名コンビ
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映画「ディストランクション・ベイビーズ」 柳楽優弥&小松菜奈&菅田将暉

2016-05-25 17:38:49 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「ディストランクション・ベイビーズ」を映画館で見てきました。


これは凄まじい映画だ。「過激」という言葉があてはまるバイオレンスアクションというと、銃やナイフ、爆発物を含んだものが大半だ。ここでは徹頭徹尾素手のケンカである。「ファイトクラブ」というケンカクラブの洋画があったが、ストリートファイトにこだわる。


ここまで最後までテンションをまったく下げない映画も珍しい。映画館には男女問わず若者が大勢いた。我々の時代と違い、教員が暴力をふるったり、校内暴力で荒れている時代とは異なる。暴力と無縁といった表情をした若者が刺激を求めて映画館に来ているのであろうか?同じバイオレンスものといっても園子温監督作品とも肌合いの違うテイストで、迫力に圧倒された。ヴァイオレンス描写のきつい韓国映画でもここまでのものは少ない。一見の価値ある傑作である。

愛媛県松山市西部の小さな港町・三津浜。海沿いの造船所のプレハブ小屋に、ふたりきりで暮らす芦原泰良(柳楽優弥)と弟の将太(村上虹郎)。日々、喧嘩に明け暮れていた泰良は、ある日を境に三津浜から姿を消す──。それからしばらく経ち、松山の中心街。強そうな相手を見つけては喧嘩を仕掛け、逆に打ちのめされても食い下がる泰良の姿があった。

街の中で野獣のように生きる泰良に興味を持った高校生・北原裕也(菅田将暉)。彼は「あんた、すげえな!オレとおもしろいことしようや」と泰良に声をかける。こうしてふたりの危険な遊びが始まった。やがて車を強奪したふたりは、そこに乗りあわせていたキャバクラで働く少女・那奈(小松菜奈)をむりやり後部座席に押し込み、松山市外へ向かうのであるが。。。(作品情報より)


1.柳楽優弥
最後の最後までケンカに次ぐケンカである。港町でもケンカに明け暮れていたが、ぷいっと姿を消して松山の町へ行き、ミュージシャンやチンピラにからんでいく。圧倒的な強さを示すわけではない。鼻を狙われたパンチで潰されたりもする。それでも、復讐は欠かさない。やっていくごとに強くなる。ずっと出ずっぱりであるが、セリフは少ない。それなので何で暴れるのかもわからない。不気味である。
これは凄い好演で、来年の賞を総取りするんじゃないかと思う。


2.菅田将暉
名作「そこのみにて光り輝く」のチンピラで一皮むけて、その後の出演作でも好演が目立つ。「そこのみにて」では綾野剛よりも強い印象を残した。最初は公園でごみ箱をあさっている主人公をからかう3人の高校生の1人で女みたいなへろへろした奴だ。


それが主人公がケンカに次ぐケンカに明け暮れている姿を見て接近する。そこからは「そこのみにて」のチンピラ役と同じように急激にテンションが高まる。
SNSを使って大暴れする姿を投稿したり、急激に暴力的になったり大きく変化する。ここから別人のような姿を見せる。こういう演技は抜群にうまい。

3.愛媛のロケ
最初映画が始まってしばらくは、どこの町を舞台にしているのかがわからない。松山に関するセリフは出ない。小さい船がたくさん停泊している港町が映し出され、主人公の精神の錯乱を示すような激しいロックがバックに流れる。やがて路面電車が出てきて、なんとなく松山を連想させ、南海放送の中継とあわせ松山の文字が出てくる。この映画はかなり地元の協力がなければできない映画だと思う。三津浜のお祭りシーンはスゲエ迫力だ。でもここまで暴力沙汰ばかりを映しだされたのを県の人が見るといい気はしないだろう。

4.印象に残るシーン
これでもかとケンカのシーンが続く。顔がむちゃくちゃになるくらい殴られ何度目をそむけたことか。しかし、ここまでやるとなるといわゆる通り魔と同じだ。でも、一番印象に残ったのが最後に向けての小松菜奈の逆襲パフォーマンスである。


キャバクラの「送り」の車に運転手と一緒に乗っていた小松菜奈が車ごとさらわれる。その間、テンションの上がった菅田将暉にいいようにやられるが、今までの映画で見たことのない激しさをここで見せる。これがいちばん目に焼きつく。

いくつか分散していた物語が主人公の弟や世話になったおじさんを含めて最後に向けて少しづつ接近していく。弟役の村上虹郎の存在感も良く好演だ。暴力シーンが多いけど、なかなか練られた脚本である。真利子哲也監督の今後の作品に注目したい。




(参考作品)
誰も知らない
柳楽優弥の出世作


そこのみにて光輝く
菅田の存在感が凄い



ディストラクション・ベイビーズ
あくまで暴力のテンションを下げない主人公
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映画「俳優 亀岡拓次」 安田顕

2016-01-31 21:29:23 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「俳優 亀岡拓次」を初日いきなり映画館で見てきました。


心温まるいい映画で、安田顕演じる主演の亀岡拓次に気持ちが同化してしまう。笑いあり、恋あり、そしてトジありで2時間いい感じで過ごせた。意外に女性の多い館内では常に笑い声が響いていた。

安田顕が脇役俳優亀岡拓次を演じる。亀岡は映画の玄人筋ではひっぱりだこになる脇役だけど、殺されたり、殴られたり、川にぶち込まれたりハチャメチャなシーンに登場させられる。私生活では独身で一杯飲み屋やうらびれたスナックで飲んだくれることも多い。突然もてたり、売れっ子になるわけでもない。そんな彼に焦点をあたえる。ある意味、渥美清の「男はつらいよ」に通じるストーリーだけど、安田顕が抑制のきいた演技で、まったくきどらない。亀岡拓次が自己顕示欲とは無縁の謙虚な人柄であることを示す。しばらく出会ったことのない非常に味がある映画だ。雰囲気に酔いしれる。

亀岡拓次(安田顕)、37歳独身。職業は脇役メインの俳優。泥棒、チンピラ、ホームレス・・・演じた役は数知れず。監督やスタッフから愛され、現場に奇跡を呼ぶ?と言われる“最強の脇役”。呼ばれればどこへでも、なるべく仕事は断らない。プライベートは一人お酒を楽しむ地味な生活。


そんなある日の夜、ロケ先で訪れた長野県諏訪市でのこと。初めて入った居酒屋「ムロタ」のカウンター席でうとうと眠りこけていた亀岡。冷たい隙間風に起こされると、そこには美しい若女将の姿があった。
名は室田安曇【アヅミ】(麻生久美子)。地元の名物だという寒天をつまみながら、気の利いた彼女の会話にすっかり癒される亀岡。「淋しくなったら、また飲みに来てくださいよ」―優しく微笑む安曇に、亀岡は恋をしてしまう。


甘い時間も束の間、再びロケや撮影所など、都内から地方へと忙しく飛び回る日々。はじめて引き受けた舞台の仕事で、劇団・陽光座の稽古場にも通う。ある日、亀岡に大きなチャンスが訪れた。彼が心酔する世界的巨匠、アラン・スペッソ監督が極秘で来日しており、その新作オーディションを受けることになったのだ。
カメタクの一世一代の恋の行方は?そして初の海外進出なるのか・・・?
(映画の作品情報を引用)

1.亀岡拓次
映画のHPを見て、設定の年齢が37歳ということを知ったが、全くその年には見えない。どう見ても40代後半の設定のようだ。仕事があれば、やりたくなくても引き受ける。独身なので、気楽に地方ロケも行ってしまう。普段は殺され役や殴られ役など何でもこなす。それを演出する監督たちから絶大な信頼がある。ストレス発散なのか、夕方は居酒屋で過ごす。それも一人酒が多い。気がつくとカウンターやソファで寝てしまうこともある。このしがない感じがいい。


飲み屋のカウンターで見る夢と、自室で見る夢と演技している時演じている姿が交錯して、ふらふらしながら亀岡拓次は生きている。そんな亀岡を安田顕が実にうまく演じた。
飲み屋でのパフォーマンスが、1人で自分が飲む時のパフォーマンスに通じていて引き込まれてしまう。




殴られ役を演じているとき、改めて亀岡を撮った映像をみると、目の玉が飛び出している。それを見てみんなから亀岡さん凄いなあといわれている姿がある意味かっこいい。

2.麻生久美子
小さい一杯飲み屋にいる女将という設定である。
これまでテレビ「時間ですよ」で影のある藤竜也が場末の小料理屋のカウンターで一人飲んでいる時、対応する女将篠ひろ子やテレビ日曜劇場「課長さんの厄年」萩原健一が小洒落たバーでしみじみ飲む時、山口いずみママが着物をきて対応する姿、ちょっと違うかもしれないが「はぐれ刑事純情派」で刑事藤田まことが通うバーで対応する真野あずさママなど、男性の自分から見てうらやましいなあ!!と思うような飲み屋のお相手を映像で見てきた。



それらに匹敵するいやそれ以上にいい感じなのが麻生久美子の女将ぶりである。普段着のようなセーターを着て、手作りのたこぶつや寒天をだす。そのしぐさや亀岡に勧められて飲む酒の飲みっぷりのかわいさなどにむちゃくちゃそそられる。客は1人しかいないけど、こんな素敵なママが1人でいたら、それを目当てに次から次へと客は来るよ。いくつもそんな店あるなあ。でもここまで癒し系はいない。

3.映画監督役
山崎努も三田佳子も50年以上映画界の現役で活躍している。凄い話だ。ここでの両者がまたいい味出している。山崎努が演じるのは巨匠のベテラン監督、スタッフからも恐れられている。俳優たちが演じた後、なかなか監督が口火をきらないで、一瞬沈黙の世界だ。この間がおもしろい。OKをだした後、周囲がほっとする感じをうまく横浜聡子監督が描き出している。


あとは大森一樹監督が地のままでている。新井の監督もいい感じだ。フィリピンバーでホステス役のフィリピン人と亀岡拓次の会話を何度も撮り直す時の染谷将太の監督姿がまた滑稽だ。なかなかOKの出ない2人のかみ合わない会話は下手な漫才よりムチャクチャ笑える。


それにしても、日本映画で西川美和、呉美保、タナダユキなどの女流監督の活躍が目立つ。この映画ってちょっとうだつのあがらない飲んだくれの役者という設定だけに普通だったら男性がメガホンとりそうなものだが、横浜聡子監督は見事に演出したと思う。まさに女性監督恐るべしといった感じだ。


(参考作品)
ウルトラミラクルラブストーリー
横浜聡子監督作品
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映画「FOUJITA」 オダギリジョー

2015-12-02 19:52:28 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「FOUJITA」を映画館で見てきました。


「泥の河」小栗康平監督の久々の新作である。オダギリジョー演じる主人公である藤田嗣治の絵も国立近代美術館で見てからずっと気になっていたこともあり、映画館に向かう。


若干暗めのトーンの映像なので少し見にくい。あえてそうしたと思う。そんな中1920年代のパリにおける藤田と1940年代戦時中の日本において戦争高揚の絵を描いていた藤田の両方を映しだす。暗めのトーンで見にくいとは言え、映像表現は美しい。特にパリの1920年代の場面がいい。同時にバックに流れる音楽がすばらしい。見にくい画面なので、少し眠くなってしまう時もあったが、まあまあという感じかな。

画家藤田嗣治、通称フジタ(オダギリジョー)はパリにわたったあと、1920年代パリで裸婦を描き、評判を高め、絵も売れてきた。画家仲間たちやモデルのキキ(アンジェル・ユモー)とともに、パリのカフェで連日遊びまくる。そうしていくうちに新しい恋人、ユキ(アナ・ジラルド)が現れる。


フジタの絵「五人の裸婦」が完成すると、乳白色をした裸婦の肌色が大評判となる。フジタはモンパルナスで、仮装パーティを開き、フジタは女装して、ユキといっしょにゲストを迎える。吉原の花魁まがいのキキが会場を下駄で歩き、大はしゃぎである。

第二次世界大戦のパリ陥落の前に日本に戻ったあと、いわゆる「戦争協力画」を描く。戦意高揚のための「国民総力決戦美術展」が、全国を巡回している。フジタの描いた「アッツ島玉砕」の絵のそばで、観客は絵に手を合わせ拝む。フジタは、絵が人の心を動かしたことに驚く。

東京の空襲が激しさを増し、フジタは五番目の妻君代(中谷美紀)と田舎に疎開する。農家の離れが、フジタの住居とアトリエになる。母屋には、小学校の教師の寛治郎(加瀬亮)とその母(りりィ)が住んでいる。フジタは、なおも「戦争協力画」を描いていた。そんなとき、寛治郎に赤紙が来る。出征の前の夜、寛治郎は、みんなに村のキツネの話をする。母は寛治郎に「帰って来い!」と言うのであるが。。。




1.1920年代のモンパルナス
1920年代のパリの映像を見ると、ウディアレンの「ミッドナイトインパリ」を連想する。気がつくと20年代の文化人たちと交流を深めている大人のおとぎ話に魅せられた。あの映画ではエロティックな雰囲気はなかったが、ここでは満載だ。連日のようにカフェで遊びまくる。フェリーニの「8・1/2」も連想させるハチャメチャ騒ぎだけど、女の子も気前よくどんどん脱いでいくだけに、この映画の方が凄くみえてしまう。あえてうす暗いトーンにしているのもその過激性のせいなんだろうか。
それにしても向こうで3人と結婚したくらいだから、かなり遊んだんだろうなあ。


2.出征前夜の場面
あえて暗いトーンにしている理由の一つには、戦争時の暗さもあるかもしれない。フジタの描いた「戦争協力画」は映し出されるが、トーンが暗いのでよくわからない。あえてよく映し出さないのであろう。
しかも、出征前夜の加瀬亮の話が超暗い。久々にりりィを見たが、加瀬に向かって「帰って来い」というシーンが実に印象的だ。同時に軍部がフジタに崖から飛び降りて自殺する女性たちの映像を見せるシーンも映す。でもこれって、サイパン戦線で日本人女性が自害するのをアメリカ人たちが映しだした映像ではないかと思う。あれちょっと違うな?とそれは感じた。


3.佐藤聰明の音楽
音楽が鳴り響くとメロディラインがただものでないのがわかる。バックの音楽が鳴り響くわけでなく、淡々と映画は進んでいくが途中でハッとさせられる音楽が鳴る。佐藤聰明という作曲家なかなかやるなと思ったら、音楽界では割と有名な方のようだ。ちょっと勉強してみよう。

映像は美しかったことだけは確かだけどね。
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映画「バクマン」 佐藤健&神木隆之介&大根仁

2015-10-08 18:02:05 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「バクマン」を映画館で見てきました。
これはおもしろい。娯楽としてよくできている作品に仕上げられている。


映画「モテキ」で最高のエンターテインメント作品を作り上げた大根仁監督の最新作で、同名漫画の原作を映画化したもの。佐藤健はすばやい剣捌きで一世を風靡した「るろうに剣心」とは一転、高校生の役を演じる。部活も入らず勉強もしない2人の男子高校生が漫画家を目指し、悪戦苦闘する話が基調だ。一時は600万部以上も売れまくっていた週刊「少年ジャンプ」に自ら売り込む少年たちのサクセスストーリーである。青春の匂いをさせながら、少年たちの一喜一憂をテンション高く表現するのは「モテキ」と同じ、それに加えて漫画出版界の裏側も見せて大人の世界も映し出す。映画の最後まで実に楽しく見れた。

真城最高(佐藤健)は高校2年生、勉強に身が入らないし、かといって部活にも入っていない。叔父(宮藤官九郎)が漫画家で小さい頃からその仕事ぶりを見て絵心があり、クラスで席が近くの美少女亜豆美保(小松菜奈)のスケッチをこっそり書いていた。そのスケッチをうっかり同じクラスの木秋人(神木隆之介)に見つかったところ、一緒に漫画を描かないかと誘われる。秋人は子供のころから作文を書くのが好きで、自分がストーリーをつくって最高が絵を描けよとコンビを組もうというのだ。

最高の叔父は「少年ジャンプ」の連載をおろされ、失意のまま病気で8年前に亡くなったが、漫画を描く仕事場はそのまま残っていた。


突然の誘いに最高はまだ気がのらない。そんな時ひょんなことで描いていた美保のスケッチが見つかってしまう。とっさに漫画家を目指していると2人が言うと、美保も最高に好意を寄せていて、自分は声優になろうと思っているけど、もしお互いに夢が実現したら結婚しようという話になり、俄然やる気を出す。

2人で作品を頑張って完成させ、少年ジャンプの編集者服部(山田孝之)のもとへ持参した。こういう持ち込みの世界は2度読んでくれて、こう変えたらいいんじゃないかと批評をしてもらったら上出来と言われ、喜ぶ2人。懸命にやりなおして再提出したら、手塚賞に応募したら佳作くらいにはなるよと。それでは連載にならないので最高は満足できない。すると横で聞いていた編集長の佐々木(リリーフランキー)が口出しまだまだ未熟だと言う。


同じ高校生の新妻エイジ(染谷将太)が入選して「ジャンプ」連載を目指していて、2人はまだそのレベルに達していないという。2人は落胆して帰ったが、そこから夏休みを二か月仕事場で缶詰めにして張り切る。

結果として手塚賞に応募し、準入選した。ただ、長年苦労して連載を目指しているライバルたちが大勢いて、いざ連載するとなるとハードルがまだまだ高いのであるが。。。


私自身は「少年ジャンプ」に育てられたわけではない。もっとも初期の「男一匹ガキ大将」や「ハレンチ学園」は楽しんでみた方だけど、高校過ぎてから、普通の読書にはまっていったので漫画に縁が薄くなった。そういった自分でも、少年ジャンプの編集会議で連載する作品が選ばれていく過程や、読者アンケートの返送によって、上位が称賛され、悪いと打ちきりになる話などは興味深く見れた。しかも最後に向けてのエンディングロールで漫画本の裏表紙でスタッフ名を紹介するのには驚く。編集を含めてよく練られてできている印象を受けた。

1.佐藤健
「るろうに剣心」で一皮むけてきたなと感じていたが、いきなりの高校生役はすでに26歳にもなっていると若干戸惑う所もあるだろう。ぼやけ気味で解像度が高くない映像もさすがに配慮している。うれしい出来事があった時に神木と一緒にテンションの高い大声をだしたり、小松菜奈との純愛場面が初々しかったりで目線を落としている部分がいい感じだ。


神木隆之介「るろうに剣心」では佐藤健と互角並みの剣の捌きを見せていたけど、ここでは「桐島部活やめるってよ」で見せたようなナイーブなパフォーマンスが高校生らしくて見える。

2.大根仁
映画「モテキ」は非常に楽しめた。ただ、映画「恋の渦」はごちゃごちゃしてどちらかというと、そんなに好きではない。でも今回は「モテキ」の匂いを感じて映画館へ向かう。大根仁には雑誌「POPEYE」で連載記事がある。「東京タイアップデート」という企画で、毎回雑誌社などの業界人のかわいい女性とデートする企画だ。これがムチャクチャおもしろい。だいたい20代後半から30前半にかけての女性と大酒飲みながらデートするんだけど、ふられキャラがフーテンの寅さんみたいなんだよね。
(実はある時POPEYEがすごくおもしろくなったことに気づいて読むようになった。会社の人たちは自分が読んでいるのをみてビックリ。でも読ませてあげたら、内容の充実ぶりに再度ビックリ。)

それ以外でも大根仁の話っておもしろいんだよなあ。この映画を撮り終わって編集に移ろうとした時、一息ついて女性をデートに誘おうとしたら13人連続でふられたなんて話もPOPEYEに書いてあったな。


このふられキャラがあるから今回の映画もできたんだろう。それにしても小松菜奈をずいぶんとキュートに撮るねえ。

サクセスストーリーって、年をとってもなんか元気づけられるところあるんだよね。
いくつも障害がころがっていて、何度もくじけそうになる2人の主役が少しづつ成長していく姿を見るのは気分いい。
おすすめの映画だ。

(参考作品)
るろうに剣心 京都大火編
佐藤健と神木隆之介の共演(参考記事


モテキ
大根仁監督作品(参考記事
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映画「味園ユニバース」 渋谷すばる&二階堂ふみ

2015-09-22 20:58:25 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「味園ユニバース」は2015年公開の渋谷すばると二階堂ふみの共演映画だ。

大阪を舞台にした「関ジャニ」渋谷すばる二階堂ふみ共演の音楽映画を「苦役列車」の山下敦弘が監督するとなると本来は見に行かねばならないはずだが、2月中旬から忙しすぎてdvdスル―。記憶をなくした歌唱力抜群の男が、地元バンドのマネジャーとともに再生をはかろうとするドラマだ。


平成のはじめに大阪のミナミで仕事をしていたので、映像がしっくりくる。特に地元バンドの「赤犬」と渋谷すばるの組み合わせが相性良くそれなりには楽しめた。

大阪のある広場で開催されていたバンド「赤犬」のライブに男(渋谷すばる)が突如乱入し、マイクを奪う。観客たちは男の他を圧倒するような歌声に息をのんだ。バンドマネージャーのカスミ(二階堂ふみ)は一体何者なのか詰め寄るものの、彼は記憶喪失になっており自分の名前すら思い出せないでいた。歌声に惹かれたカスミは男をポチ男と呼ぶことにし、祖父と暮らす自宅のスタジオで働かせ面倒をみることにする。

男はヴォーカルとしてバンドに迎えられるが、男は少しづつ記憶をフラッシュバックさせていくのであるが。。。。

1.渋谷すばる
記憶喪失した歌好きの男ということだが、もともとは裏社会に近い仕事を請け負って刑務所にも入っていた男の役だ。それにしても「関ジャニ」のメンバーなのに「なにわのチンピラ」が実にぴったりはまっている。大阪出身でそういうDNAがもともとあるんじゃないかと思わせてしまう。


ポチ男(渋谷すばる)の写真が写ったバンド大会のポスターを見て、昔の仲間がポチ男のところへ来るシーンが印象的だ。カスミ(二階堂ふみ)にちょっかいをだそうとするのをみて、昔の仲間に猛烈なパンチをくらわす。まさしく狂犬のようだ。映画「仁義なき戦い」に出てくる前後見境なく暴れまわる思慮のない連中と同様の直線的動きをする。いやはや凄い。面構えがよくまたこういう役で声がかかるのではないか。

2.二階堂ふみ
鈴木紗理奈がコテコテの大阪弁を話しているのが印象的。その一方で沖縄出身の二階堂ふみが今回は大阪弁に挑戦だ。「この国の空」では古典的上流の東京弁を話していたが、自分はピュアな関西人でないけど及第点だ。「あんた」とポチ男を呼ぶそのリズムが、関西育ちの家内が自分を呼ぶ響きに似ていて親しみを覚えたのも事実。二階堂ふみらしさが感じられるしぐさがかわいい。
さすが当代きっての女優というだけある。


3.味園ユニバース
ライブをやっている千日前の店の名前である。千日前というと大阪ミナミでもうらぶれた感じで、暗いイメージがただよう。千日前デパートの火災で多くの人が亡くなったり、バブル末期には尾○縫なんて有名な千日前の料亭女将が興銀をはじめとした天下の一流銀行員を相手に4000億を超える借金を踏み倒した話もあったのがなつかしい。


映像に出てくるバンドの映像はいかにもキャバレーのステージである。そこで歌いまくるバンド「赤犬」が実に味がある。大衆演劇の泥臭さをそのままバンドの世界に持ち込んだようなうさんくささが実に土着の大阪らしくて自分は大好きだ。

(参考作品)

味園ユニバース 
渋谷すばるのやさぐれ男ぶりを楽しむ
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映画「赤い玉」 奥田瑛二

2015-09-18 21:33:33 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「赤い玉」を映画館で見てきました。

奥田瑛二の不良オヤジ姿が妙に気になる。エロっぽさにあふれている気がしたので、見てみた。
離婚して2回目の独身を謳歌する映画専攻の大学教授が、はるかに年下の高校生の姿に翻弄されるという話だ。監督の高橋伴明は現在京都造形芸術大学の教授で映画を教えている。主人公の設定をある意味監督本人とかぶらせているので、今回は大学での教え子たちがかなりこの映画製作にからんでいる。そういう素人ぽさも見せるが、主演奥田瑛二と不二子の2人はきっちりプロの仕事をこなすので締まるところは締まっているという印象だ。


大学で映画撮影の教鞭をとりながらも、自らは新作映画の撮影に入れないでいる映画監督・時田修次(奥田瑛二)。“映画とは自らの経験が投影されるもの”と考えている時田は、まるで自分が映画の登場人物でもあるかのように、人生を流浪しているようにも見える。新作の脚本に取り掛かる時田の私生活には、唯(不二子)という愛人の存在が根を下ろしているが、その現実から虚構である映画の世界に誘うように、女子高生・律子(村上由規乃)が時田の前に現れる。
やがて、世界の境界さえも喪失してゆくように、いつしか律子の存在が時田の人生を狂わせて行く……。(作品情報より)

ムードはにっかつポルノって感じ。高橋監督が撮っているんだから、その匂いをさせるのは当然でしょう。
映画専攻の大学生の素人たちのふるまいがなんか冴えないなあと思う場面がずいぶんと目立った。主人公がはまっていく女もそれほどいい女ではない。もちろん目の前に現れたら、同じように一気に引き込まれるだろうけど。それでも京都を舞台にしたのは大正解で、ロケハンを丹念にしたと想像できる京都の街並みが映画に絡みつくセンスがよく、バックに流れる音楽も粋で映画のレベルをかなり高めている。




1.奥田瑛二
昨年娘2人の活躍がめだった。「0.5ミリ」「百円の恋」を自分も見に行ったが、いずれも昨年を代表する作品だと思う。それなのにオヤジはどうなのか気になってしまう。奥田が女性に人気最高だったのは昭和の最後の頃だったかもしれない。年齢を重ねた今もいい男で奥さんはさぞかしやきもきしてきたことだろう。


映画製作の指導ではときおり鋭いことも言うが、どちらかというと、かなりぼんくらな大学教授を演じる。妻子がいたのに離婚、別れた2人の面倒もちゃんと見てはいない。大学の事務員である不二子扮する唯の家にもぐり込んで生活している。脚本を書こうとしているが、すべて口述である。そんな主人公がある時ビビッとくる女子高生を見つける。ストーカー気味に後ろをつけていくとダンススタジオにたどり着く。そこでエキゾティックなダンスを踊るのだ。そんな女の子にはまっていくスケベ親父だけど、精子打ち止めの「赤い玉」が出てもおかしくないくらいエレクト能力は衰えているのであるが。。。

2.不二子
映画やテレビではよく見かける女性だけど、考えてみれば名前と一致していなかったかもしれない。
ここではいい味出していると思う。ヌード姿もスリムボディに形のいいバストで男をやる気にさせるナイスバディだ。奥田にくらみつく裸体の動きが活きのいい魚のようだ。今回は高校生を演じる女の子に関心を持って出かけたが、結果的には逆となってしまう。


主人公が勤務する大学の事務室職員だ。わけありで京都に流れてきて独身で一人住まい。ちゃっかり主人公がもぐり込んで来ている。女の一人住まいは男が住み着いちゃうものだ。かなり献心的に主人公に尽くす。どんなに自分勝手な男でもこういう女にはまるだろう。

3.高橋伴明と高橋恵子
関根恵子が結婚するというだけで、当時たいへんな話題になったものだ。それまでかなり大胆な私生活だったけど、結婚してからは悪いうわさはなくなった気がする。きっといい男なんだろう。ここでもセリフなしで出演したけど、あの独特なムードはいつになってもいい感じだ。

自分の仕事を今回の主人公に演じさせているので、脚本も作りやすかっただろうと思う。
でもこの役は奥田瑛二しかいないよね。まさにぴったりだ。


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映画「きみはいい子」 呉美保&高良健吾&尾野真千子

2015-07-01 19:53:37 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「きみはいい子」を映画館で見てきました。


自分にとって昨年ベストの「そこのみにて光り輝く」の呉美保監督の最新作なので、見に行くしかない。子供への虐待、学級崩壊、痴呆症、自閉症などテーマは多岐にわたっている。前作の出来からみて、期待感をもって見たが、映画の構成はちぐはぐな印象をもった。それでも印象に残る場面は多く、主演の高良健吾、尾野真千子2人の演技は悪くない。それよりも呉美保監督の前作に引き続き出演の池脇千鶴が色あせた主婦を演じていたのが印象に残る。一作ごとにいい役者になっているように見える。

岡野(高良健吾)は、桜ヶ丘小学校4年2組を受けもつ新米教師。まじめだが優柔不断で、問題に真っ正面から向き合えない性格ゆえか、児童たちはなかなか岡野の言うことをきいてくれず、恋人との仲もあいまいだ。


雅美(尾野真千子)は、夫が海外に単身赴任中のため3歳の娘・あやねとふたり暮らし。ママ友らに見せる笑顔の陰で、雅美は自宅でたびたびあやねに手をあげ、自身も幼い頃親に暴力を振るわれていた過去をもっている。
あきこ(喜多道枝)は、小学校へと続く坂道の家にひとりで暮らす老人。買い物に行ったスーパーでお金を払わずに店を出たことを店員の櫻井(富田靖子)にとがめられ、認知症が始まったのかと不安な日々をすごしている。
とあるひとつの町で、それぞれに暮らす彼らはさまざまな局面で交差しながら、思いがけない「出会い」と「気づき」によって、新たな一歩を踏み出すことになる―。(作品情報より)

いくつかの逸話を同時進行で語っていく。
どちらかというと、長まわしで情感を高めるのが呉美保監督の得意技だが、いくつもの話を組み合わせているので接続の仕方がもう一歩でちぐはぐに見える。ただ、いくつか印象に残るシーンがあった。ネタばれありなので注意

1.尾野真千子の幼児虐待
これには驚く。どうでもいいことなのに母親である尾野真千子が娘に対して完全に切れる。子供をこれでもかこれでもかと殴りまくる。長まわし得意の呉美保監督は1回や2回ひっぱたくのを見せるだけでは止めない。時間をかけてひっぱたくのを映しだす。いい加減やめろよといいたくなるくらいだ。尾野真千子もまさか本当にたたいているわけじゃないだろうと思っていたら、どうやら自分の手をぶっていたらしい。それにしてもあれだけ叩いたら痛いだろうなあ。


2.池脇千鶴が抱きしめるシーン
ママ友池脇千鶴の子供は男の子でいうことをきかずに暴れまわる。そんな子供と尾野真千子の娘が池脇の家で遊んでいる時に、娘が誤ってボールをおもちゃのバットで打ったら尾野のコーヒーカップを直撃し、割れてしまう。娘はにらまれ、これからまた母親にひっぱたかれるんじゃないかと泣いてしまう。今にも娘をたたこうとしたときに池脇千鶴尾野真千子を抱きしめる。
この映画の一番のクライマックスである。これには感動した。館内ですすり泣く声が響く。
「あなたも小さい頃親に虐待されていたんでしょ」「私も同じだったのよ」と池脇に言われ、腕にあるタバコの跡を指さされる。思わず泣いてしまう尾野だ。そして涙が尾野の目からこぼれおちる。演技とはいえ情感こもっているんだろうなあ。


3.難しい宿題
高良健吾は子供が言うこと聞いてくれないのに加えて、母親からのクレーム電話が次から次にかかってきて嫌気がさしている。そんな高良を慰めるように甥が抱きついてきた。彼は安らぐ。
それで、高良は子供たちに宿題をだす。「家族に抱きしめられてもらうこと」難しいと言って出した宿題にたいして、生徒たちが答える。子供たちが答える言葉って妙に自然で素直だ。これだけは実際に父親や母親から抱いてもらった感想を素直に答えているように見える。一種のドキュメンタリー的な感覚だ。このあたりの持っていき方は絶妙にうまい。

こんな感じで印象に残る場面は多い。
どうやら坂の多い小樽で撮影したようだけど、ロケ地選択はなかなかうまい。

(参考作品)
そこのみにて光輝く
呉美保監督による絶妙なムード作り
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映画「新宿スワン」綾野剛

2015-06-14 17:48:06 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「新宿スワン」を映画館で見てきました。


東京に異動して以来、今までに増して夜の新宿を歩く機会が増える。歌舞伎町の中でもディープなゾーンへ行く回数も増えてきた。また、綾野剛、伊勢谷友介、山田孝之の主演3人の面構えも印象強くこの映画は気になる存在だ。

一文無しで歌舞伎町に流れ着いた白鳥龍彦(綾野剛)が町のチンピラたちにからまれてケンカしている横をスカウトマン真虎(伊勢谷友介)が通りかかる。1人で大勢のチンピラに立ち向かうきっぷのいい龍彦を見て、気に入った真虎は仲間にする。
スカウトマンたちは歌舞伎町を歩く女性に声をかけ、風俗、AV、キャバクラに紹介し、バックマージンをもらう。真虎は歌舞伎町内で幅を利かせるバーストというスカウト会社の幹部だった。


最初は真虎は声をかけるのに戸惑ったが、真虎の指導ですぐさまコツをつかんでくる。
歌舞伎町内で声をかけていると、むしろ相手側からスカウトマンである龍彦に店への紹介をおねだりしてくる女たちもいた。みんなわけありの女性だった。その女たちはそのまま働きにつくが、店から過酷な要求をされているケースが多い。龍彦は時にその女性の味方になることもある正義感の強い男だ。


ライバルのスカウト会社ハーレムとは常に歌舞伎町内で縄張りをめぐって争っていたが、次第にエスカレートしていった。バーストの幹部にハーレム側の縄張りの中でスカウト活動をしろと命令され、龍彦が女の子に声をかけていると、気がつかれボコボコにされた。相手側には南秀吉(山田孝之)がいた。秀吉は裏でクスリの売買に手を出していた。その秀吉は龍彦を見て、何か違う何かを感じたのであるが。。。


新宿と限らず、街でスカウトマンらしき男たちが若い女性に声をかけるのはよく見かける。キャバ嬢たちと話していても、ほとんどの子は町で声かけられた子がほとんどだ。でもスカウトマンやその所属する組織がこういう構成になっているとは知らなかった。キャバクラの店長とかは何回か顔を見ているうちに仲良くなったりすることもあるが、ある意味怖い筋とつながっているという感じはあまり持っていなかった。

その昔からこの手の愚連隊のように怖い筋の若者中心の下部組織を描いた映画は多い。大島渚の「太陽の墓場」もそうだし、70年代前半の東映のピンク路線でスケ番池玲子あたりと組んで町を荒らす愚連隊には、その上部組織のような組が存在する。ストーリーは異なるが、愚連隊が主役であっても、そこには必ず上部組織が関係するというのはあまり変わらない。


綾野剛「そこのみにて光り輝く」では大きく評価されたが、自分としては菅田のほうがよく見えた。ここでは真逆のキャラで、むしろあの映画における菅田のキャラである。むちゃくちゃケンカ早くて、ハチャメチャだ。暴力描写のエグさはいかにも園子温監督作品らしく、この映画の方が思いいれが強い印象を受ける。よく見えたのは山田孝之でこいつは非常に強そうに見える。ボーリング場のリンチには面食らった。面構えもよくいい出来だ。メイン通りでなく新宿の裏通りもきっちりロケハンティングしているので、バックの風景もいい。

新宿の夜が舞台で、園子温監督作品というと、いつも通りのエロティックな場面を想像するがそれだけは肩透かしかな?沢尻エリカの大胆なヌードを期待するとエッチ系の表現のソフトさに驚く人もいるかもしれない。

(参考作品)
そこのみにて光輝く
綾野剛が主演賞総なめ


恋の罪
園子温監督が描く夜の渋谷の風俗


ヘルタースケルター
スワンの沢尻よりも大胆なので推薦
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