映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

弓 キム・ギドク

2009-09-14 18:54:21 | 映画(韓国映画)
韓国の奇才キム・ギドク監督が描く偏愛物語。海に浮かぶ釣り船で生活する老いた男と16歳の女の子の話である。6歳のとき拾った少女を船上で育て上げ、17歳になったときに彼女と結婚することを夢見る男の気持ちを言葉を語らずに描いていく。

海上に浮かぶ釣り船で生活する老いた男と若い女性。男は弓の名手で、海上でブランコをする彼女の顔すれすれに弓を放っていく。釣り船の客が美しい彼女に手を出そうとすると、弓から矢を放って威嚇する。カレンダーを見ながらあと数ヶ月に迫った彼女の17歳の誕生日に結婚式を挙げようと準備を重ねていた。あるとき20代の若い男性が釣り客としてやってきた。彼女はその若い男に好意を示す。恋の強い吸引力を感じた彼女は夜中に若い男の布団に忍び込むが、老いた男に見つかり突き放される。そうしていくうちに彼女は次第に老いた男との距離を置こうとするが。。。。

絵描きを目指したキム・ギドクだけに映像コンテは非常に美しい。しかし、舞台は海の中の一艘の船に過ぎないので、夕焼けをバックにしてもさすがに美的限界がある。「春夏秋冬そして春」ほどの映像美はない。それを韓国特有の色彩感覚とチョゴリの派手な色で色をつけている。その派手な色と対照的に色白で美しい少女の主人公が、一言も発せず表情だけで感情を表現する。今回はむしろ東洋的な音楽のよさが際立った気がする。

どうもキムギドクは言葉を発せず、映像で気持ちを表現することにこだわっているようだ。でも、毎回毎回この手法はやりすぎかな?といった気がする。女の子は笑えるくらいで、言葉は話せるはずだからセリフはあっても良いような気がした。肉体を駆使する匂いは今回はあまりなく、その代わりに題名の「弓」がいつの肉体的暴力の代わりを演じた感がした。

それでもジーンとさせられたシーンがいくつかあった。二人が10年一緒に暮らしてきて、情がないのは寂しいものだと思っていた。映画の最後にかけて、やさしさに包まれた彼女から母性のような何かが発せられてドキッとした。
コメント (2)
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