映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

「円高の正体」とバーナンキとフリードマン

2012-02-15 20:09:08 | Weblog
ようやく日銀が金融緩和に動いた非常に好ましいことである。


アメリカがリーマンショック前の株価の水準に戻っているのに、日本はまだまだ下だ。
よくリーマンショックで米国資本主義が崩壊したなんて論調が目立つ。とんでもないことだ。1929年のいわゆる大恐慌の株安は戻るまで25年かかった。今回はあっという間だ。
これは金融当局の日米の姿勢の違いが表面に出たものだと思う。


FRBバーンナンキ議長のかじ取りは実にお見事である。しかし、これはミルトンフリードマンが大恐慌の理由としてあげたFRBの金融政策の失敗の逆をいっているからこそうまくいっているのだと思う。
2002年、ミルトンフリードマンの90歳の誕生日にバーナンキ議長(当時は理事)があらわれた。
バーナンキ議長は言った。
「大恐慌に関して、あなた方の意見は正しかった。連邦準備制度はあなた方が述べた通りのことをした。我々は極めて遺憾に思っている。しかし、あなた方のおかげで、われわれはそれを2度と繰り返さないだろう。」


ミルトンフリードマンは、大恐慌が悪化した理由としてFRBとニューヨーク連銀の主権争いにニューヨーク連銀が屈服したことをあげる。
もともとニューヨーク連銀にベンジャミン・ストロングという総裁がいた。彼は公債の買い入れの権限を大規模に行使すれば、恐慌を食い止められるといっていた。20年代の好況を後押しした。ところが、彼は1928年に亡くなってしまう。そして、1929年の大恐慌を迎える。
いったんは後任率いるニューヨーク連銀は公債買いをおこなったが、ニューヨーク連銀の影響力に嫉妬していたFRBはそれを食い止めた。当然マネーサプライは減る一方だ。その時点で政策の転換があればいいものを、それがないので、銀行に取り付け騒ぎが起きる。それなのに、1931年イギリスが金本位制から離脱したあとは、金流出をふせぐため公定歩合をあげるのだ。銀行が次から次へと倒産する。
なんと国内の3分の1の銀行がなくなり、1929年から33年3月までにマネーサプライが3分の1減少してしまうのである。ものすごい話である。血液が抜かれた状態では経済はノックアウトだ。

われわれは小学生から大学まで社会、政経、経済学の教科書でこんな話は習っていなかった。大恐慌で有効需要が減ってしまったことだけを学んだ。ニューディール政策でそれが改善されたと学んだ。日教組の先生ですら日本の政治家もまねろと絶賛していた。
実際ニューディール政策ではアメリカはよくなっていない。これは戦後日本教育がアメリカに押しつけられたものと考えるしかない。財政政策でよくなったのはナチスドイツだけである)
要はそれ以前に米国マネーサプライがFRBの意地っ張りで3分の1減ってしまった事実をわれわれは知らなかったのだ。その事実に焦点を当てたのはミルトンフリードマンである。
日本に新自由主義嫌いが多いのは、小学校から日本人が洗脳されてきたからだと思う。しかも、マルクス、学園紛争、労働組合に毒された人が多い。そういう人たちが多いと本質を見失う。

(だからといって自分はケインズが嫌いなわけではない。ハチャメチャなあとの処方箋はケインズの言うとおりだろう。しかし、ケインズは完全雇用に戻れば、新古典派の政策でいいと名著「雇用利子および貨幣の一般理論」24章で言っている。)


最近「円高の正体」安達誠司著という本を読んだ。この本は良かった。
基本的にはやさしく書いてある本だが、今まで勝手なことを言ってきた政治家、バカな学者ないしは評論家まがいの連中をコケにする。
痛快だ。

この本を見てびっくりしたことがある。
P126のリーマンショック前後の日米マネタリーベースとドル円ベースのグラフだ。
「リーマンショック後FRBは量的緩和政策を実施、大量のドルを市中銀行に投入する政策をおこない、アメリカ経済全体に資金を潤沢に供給することで、経済に対する被害を最小限に抑えました。
しかし、日本銀行は、緊急的に少額で短期的な金融緩和は実施したものの、「マネタリーベースを増やす必要がない。」という態度であったため、ほとんど何もせず、日本のマネタリーベースはそれほど大きく増えなかった。」
(円高の正体:P125~126)
何よりこのグラフには説得性がある。(ここの引用はしません。本で見てください。びっくりです。)
アメリカのマネタリーベースはリーマンショック時点から2011年末までに3倍近くなっているのに、日本は1.3倍程度だ。しかも明らかに円高に進んでいる。

まさにバーナンキ議長ミルトンフリードマンの誕生日のスピーチで述べたことを徹底的に実行に移しているのである。さすがとしか言いようにない。

今後日銀が政策転換を維持するならば、期待インフレ率が高まり、円高が矯正され株高も始まると思われる。今日の相場がいい見本だ。
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マージンコール  ケヴィンスペイシー

2012-02-15 06:53:40 | 映画(洋画 2010年以降主演男性)
「マージンコール」は突如巨大損失を抱えて崩壊するウォール街の証券会社の一夜を描く作品だ。
日本では公開されなかった。比較的地味だからだろう。俳優を見ると超豪華だ。え!何で非公開?とも思わせる。ヒッチコックでも「ロープ」という室内劇があったが、おもしろくなかった。この映画も80%以上はニューヨークマンハッタンの街をを見渡せるビル内での動きだ。映画は動きのある背景があってこそ面白くなるというのを再認識した。

ウォール街の投資会社で大量解雇が発生した。その一人であるリスク部長のエリックは、別れ際に意味深な言葉と共に後輩のピーターにUSBメモリーを託す。その晩、USBメモリーに記録されたデータを調べた工学博士号をもつ数字に強いピーターは、会社倒産にも繋がる衝撃の事実を知る。
その後ファンドで多額の損失がでることが目前という、その事実を知った上司、部長から役員、そして社長も集まる。夜を徹して対策が練られるという話である。。。


ケヴィンスペイシーにデミムーアという高給取りに、オスカー俳優ジェレミー・アイアンズが加わる。彼ならではの役だ。それに最近の映画で活躍するポール・ベタニー、ザカリー・クイント、サイモン・ベイカーも出演している。見慣れた顔が並ぶDVDのジャケットをみて思わず手に取ってみた。


殺人事件が起きるわけではない。派手なアクションはまったくない。ひたすら室内での動きだ。演劇のようでもある。昼間に突如解雇になって、すぐさま退社しろと言われたリスク部長がリスクに気が付いていた。その内容をUSBにして後輩に帰り際に渡した。でも内容を伝えようと会社から外に出てみると携帯は停止されていて、事務所に電話できない。典型的なウォール街の金融マンの解雇の模様を語る。
内容は不動産ファンドのパフォーマンスが急激に悪くなって多額の損失が突如表面化されるということだ。要はファンドの前提が一定の範囲の価格変動内に収まるのならいいが、それを超えると大きな損失をだしてしまい。一気に会社で支えられる範囲を超えてしまうというのだ。



リーマンブラザースをモデルという話だが、ちょっと違うと思う。もしそうなら個人的にはこんな話は起こり得ないのではないかと思う。
解雇というのは、アメリカの投資会社では日常茶飯事のことである。しかし、それが大量となると、それまでに自分たちのリスクについてもう少し慎重に吟味されるはずである。
しかも、一晩で一気にということになると、「911」事件のようなブラックスワン的事件が起きるわけでなければ、ヴォラティリティが異常に高くなることはないだろう。でも、2008年のリーマンショック後の異様な証券価格降下の場面には確かに急激なヴォラティリティの上昇がみられていた。この一夜の動きが金融危機のあとの「リーマン」以外の別会社が舞台ということならわかるけれど、DVDジャケットのように「リーマンブラザース」がモデルとするなら矛盾がある。DVD販売会社の勇み足かもしれない。

そんなことよりも、ウォール街の高給取り金融マンの実像を描きたかったのであろう。びっくりするような高額の報酬の話が会話に出てくる。それをもとにどういう生活をしているのかという話も語られる。社会勉強にはいいだろう。
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